フェリアを追い詰めていたレイの顔面に一筋のひっかき傷が入った。
「え?なに?」
白い影。レイの前にはその残像が残った。頬から垂れてくる血を感じる。レイが我に返った次の瞬間には、彼女の武器であるフランキスカが白い糸で絡みとられた。
「何者だ!邪魔するな!」
フェリアをいたぶるつもりだった彼女が、新手の白い影の登場によりそちらに対処しなければならなくなった。すぐにレイはフランキスカを糸から外し、その白い影に向かってフランキスカを投げつける。
「当たったか?」
白い影は器用に狭い牢屋内を跳躍し、さらに少しスピードを上げ、次の瞬間になんと牢の屋根を突き破った。そしてフェリアとレイの間に屋根上から無数の白糸を垂らした。レイはフェリアへの攻撃を一旦諦め、牢から空中に舞い上がり、その白い影を追った。
「後ろがお留守ですよ」
レイが我にかえると、彼女の両腕は白い糸にからみつかれていた。
「ふふ、貴様が私を捕まえるのを待っていたよ。」
レイはフランキスカ・アックスをぶん投げる。その白い影はその軌道を避けたように見えたが、
「フランキスカにはワイヤーがついているんだよ。そしてどこまでも私のそばにいて私を守ってくれる。」
「ごん!!」鈍い音がした。
レイの前にはリゲルが息を乱していた。その顔、姿にレイは驚く。
「何、貴様も、ノッカーズか!」
レイはリゲルに馬乗りになり、フランキスカをその首筋に当てようとする。
「そうですよ、よくわかりましたね。」
「しかし貴様は猫の化身か。天翔ける鳥の化身である我々に勝てるとでも思うか。」
「腕力は及びません。しかし、猫は柔軟・敏捷なのが取り柄です。」
レイはリゲルの首を斬ろうとしたが、リゲルはするりと体を反転させ、牢屋の屋根から、レイの身体を絡ませて地面に飛び降りた。
「どうです?猫はこのぐらいの高さなら綺麗に着地できるのですよ。」
翼を持つはずのレイが着地に失敗して足を折ったか、悶絶している。
「なめるなぁ!!」
尻餅をついたままのレイが、怒りを込めてフランキスカ・アックスを振り上げ、リゲルに向ける。
「無駄ですよ。」
リゲルはしなやかな身のこなしで、レイのフランキスカを避けて、レイの懐に飛び込む。
「ククク。かかったな。」
レイは懐から切れ味鋭いククリを取り出し、リゲルの腹部を突き刺した。
「!!がはっ。」
「…我々は戦闘訓練を受けた黒の中隊なのだ。いくら貴様がノッカーズといえど、黒の中隊に敵うわけがないだろう。」
「ぐっ」
リゲルが、血を吐いて倒れた。