牢番となった療養中のラ・パルカはフェリアに語りかける。
「アルカンヘルは女の私やあなたに対しては甘いのよ。言葉がなくても、それは昔から知っていたでしょう。いくらあなたが裏切り者扱いを受けているとしても、あの子があなたを殺せるはずはないわ。それを彼女に求めたのはあなたの落ち度よ。」
「そんなこと言うなよ。私すごくあの時つらかったんだ。私、…ラフィタより祖国を、エストレージャを選んだんだよ。それでインティワタナの牢屋から脱出して、2日間ぶっ続けで飛んできて黒の中隊のみんなと再び合流できたのに。水の女に操られて、こっちでも反逆者扱いなんて。」
「あなたに悪気はないことはわかっているわ。だけど、この傷。見て。」
ラ・パルカは仮縫いをした腹の傷をフェリアに見せる。痛々しい。
「これは事実。あなたが私を刺したのよ。」
「それは本当にごめんなさい。」
「…それで済まないのが軍隊というところ。しばらく大人しくしてなさい。私もしばらくは戦線復帰できないから、ここであなたとお話しして過ごすことにするわ。ピスカ・スーユでのこと、教えて。」
ようやくフェリアに笑顔が戻ってきた。…彼女はラ・パルカに感謝した。やはり彼女は私の第一の友人だ。
夜な夜な、フェリアとラ・パルカはおしゃべりを続けた。
しかし、その夜がひと月ほどすぎる頃、フェリアの収容される牢屋が強制的に変えられることになった。場所の違う新しい牢へ移動を彼女は命じられた。
新しい牢は鉄格子に鋭利な棘が突き出ている。凶悪犯向けの脱出が難しいものだった。
「牢番のラ・パルカを戦線復帰させる必要があってな。」アルマグロが淡々と語る。
「まだあの傷では無理です!」フェリアはムキになって叫んだ。
「で、牢番抜きでも脱出は難しいこの牢にお前が入ることになったというわけだ。」アルマグロはフェリアの話を聞かずに淡々と話を進めた。
そしてフェリアはその雰囲気最悪の牢に閉じ込められることになった。
ラ・パルカの戦線復帰を急いだのは裏事情があった。
エストレージャ植民地政府の内輪もめだった。
キートの政変の失敗で、ピサロとアルマグロの確執が生じていたのである。早々にブラソを護衛に取り込んだピサロは、さらにフェリアと仲が悪いレイを取り込んでいった。すでに療養中のアルカンヘルは自分の忠実な部下として確保している。
そこでアルマグロはラ・パルカに接触した。黒の中隊の実質作戦指揮を取る彼女がいなければ、黒の中隊を他に何人揃えようとも主導権は取れない。アルカンヘルを取られたのは痛かったが、単騎がけができるのは彼女だけで、その彼女もキートでは水の女チャルチと覚醒したカイに圧倒され、いいところなく敗れ去った。
「まだ完治していないのは承知している。だが、頼む。私と息子が期待しているのだ。君には。」
こうしてアルマグロはラ・パルカの取り込みに成功した。しかし彼女には作戦行動に参加はさせず、別のアルマグロ勢力下の病院で療養を続けさせている。実質仕事はさせていない。要はピサロ勢力下の牢屋番をさせていたら、彼女も取られてしまうとの恐れからこのような人事が発生したのだった。
「フェリアには気の毒だが、しばらくあの凶悪犯の牢で我慢してもらうしかない。私の権限で管理できるのはあの施設だけだから。」