フェリアの運命   作:藤沢 南

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フェリア、再び

 ところが、フェリアがその雰囲気最悪の牢に入ってから、数日後に、彼女の姿が見えなくなった。フェリア失踪の報がラ・パルカの元に届く。

 

「フェリア。フェリア。」

 

 ラ・パルカが血相変えて飛んできた。いない。フェリアがいない。彼女の入っていた牢にはべっとりと血の跡が。

 

「まさか。ここから脱獄したの!?」

「おう姉ちゃん。」 反対側の牢からくすんだ男の声がする。

「そこにいた女、血だらけになって今朝立ってたぞ。いい女だったのにな。楽しみがなくなったよ。」

ゲスた笑いをした男を睨みつけ、ラ・パルカはその牢獄の頭上に飛び立った。牢獄の中ではアルマグロ父子が血眼になってフェリアを探している。

 

「フェリア。フェリア。かわいそうなフェリア…」

 

 ラ・パルカはまだ完治していない腹をさすりながら、周辺一帯をぐるぐる飛んでいる。「どこなの?」

 

 気配には敏感な彼女だが、フェリアの気配がない。

 

「私が牢番でなくなって、誰も見張りのいないこの機会を待っていたの?」

 

 ラ・パルカは感情を抑えきれず、涙をこぼした。感情をあらわにすることがめずらしい彼女が、気を動転させている。

 

『ラ・パルカ…』

 

 フェリアの声が聞こえた気がした。

 

「そこへ行くわ。動かないで。」ラ・パルカは気配の方へ飛んでいく。

 

『ああ。待ってるよ。』

 

30分ほど飛び続けた後、ラ・パルカはフェリアの姿を見つけた。

 

「ここだったか。」

 

ピスカ・スーユ勢力圏の直前だろうか。クスコ市街の端の上空にフェリアはいた。

 

「フェリア…」

 

 あのトゲトゲの鉄格子から無理やり体を引き裂きながら出てきたんだ、そう言ってフェリアは力のない笑い方をする。彼女のお気に入りのミニスカートの軍服は引き裂き傷でボロボロだ。

 

「凶悪犯どもの目の保養になったかもな。」

 

はすっぱな笑い方も彼女らしかった。ラ・パルカは感情がこみ上げてきた。

 

「どこへいくのよ!もうこの世界にあなたの居場所はなくなるわよ。エストレージャに戻りなさい。」

「もうこの人生は終わったも同然。…ならば一目ラフィタに会いたい。」

「バカ言わないで。私が皆に取りなしてみせる。」

「ピサロは私を処刑するだろう。あのレイ・コリブリを味方に取り込んだんだろ。あいつが私の処刑を条件にしてピサロに忠誠を誓ったとしても不思議はない。」

「それは…。」

 

ラ・パルカは言葉に詰まる。

 

「私、ピスカで水の女と、そいつの友達のカイって女と知り合ってさ。水の女は倒錯的にカイって女が好きなわけよ。女が女を好きになるのはもう無限大に感情が持っていかれるらしいな。子どもができないからかな。」

「何が言いたいの?」ラ・パルカは震えながら話の続きを促す。

 

「アルカンヘルとレイの関係だよ。私、あの2人の中に入ってしまった。だからレイはどんな手を使っても排除しようとしている。私を亡き者にしてでも。」

「でも、あなたが好きなのは男の人…レイとは趣味がちが…」

「その男はどこにいるんだよ。それを口にすれば私の裏切りは確定だ。」フェリアはラ・パルカの言葉を遮った。

まずい。このままではフェリアを説得できない。ラ・パルカは焦りを感じた。

 

「どうしてもこのまま逃げるなら、私がここであなたを始末することになる。」

 

ラ・パルカは巨大なメイスを背中から取り出した。

 

「パルカに私は殺せないよ」

 

服のあちこちが裂かれている傷だらけのフェリアがラ・パルカを挑発する。

 

「そんな手負いのくせに、私を挑発するとは!」

 

ラ・パルカはメイスを振り上げる。

 

「…んぅ!!」彼女の腹部に痛みが走る。思わず彼女はメイスを落としそうになった。

 

フェリアが彼女の懐に飛び込んで、そのメイスを支えに入った。

 

「無理しないで。まだ全快してないんでしょう。」

 

フェリアが優しく語りかけた。

 

「そ、そんなこと、…うぅっ。」

 

ラ・パルカが腹を押さえる。

 

「かなり傷は深いはずよ。そんな1ヶ月で治るような傷ではないよ。さぁ。もう無理しないで帰って。」

「いや…。」

 

いつになく強情なラ・パルカにフェリアも心配になってきた。

 

「今から私が戻ったところで、脱獄犯になるだけ。もういいよ。パルカは良くやった。もういいから、私は死んだとみんなに伝えて。このままピスカに行ったところで、処刑されれば一緒なんだし。その前にラフィタに会えれば。それでいい。だけど、一番の友達のあなたがここまで私を追っかけてきてくれたのは、・・・本当にうれしいよ。」

フェリアが泣いて、笑っている。

 ラ・パルカはメイスを振り下ろすのをあきらめ、懐から一枚の手紙を差し出した。

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