「もしあなたに幸運が届くなら。これをインティ前皇帝陛下に渡して。」ラ・パルカは言う。
「…。…ええっ!あなた、ピスカの前皇帝陛下さまと面識あるの!?」
フェリアはおったまげる。
「面識あるも何も。あんたが離脱したあの時の皇帝拉致作戦よ。私とアルカンヘルが、恐れ多くもピスカの皇帝陛下をキートまで誘拐し奉ったのよ。」
「それはそれは。…ってごめん。私がサボった作戦だね。」
「あんた捕えられてたんでしょ。」ラ・パルカが笑い出した。
「何が書いてあるの?」
まだ封してなくってよかったわ。そう言って、ラ・パルカは読み上げる。
「ふぅん。私を雇ってやってください、ってことね。」
「この手紙はあなたに追いついても説得できない時に渡すつもりだったの。渡したくはなかったんだけどね。…インティ前皇帝陛下はなかなかの御仁。できたら私もお仕えしたいわ。」
「ならばパルカも。」
知ってるでしょ、私は国を裏切れない立場なの。ラ・パルカが暗い顔をした。
…そうだった。ラ・パルカは孤児の私とも違う立場だ。元々は孤児だったけど、亡命した家族が後になって見つかり、その家族に将来引き合わせてくれるのを条件に「黒の中隊」に入隊したのだった。
…じゃ、ここで、お別れね。
フェリアは、ラ・パルカの腰にメイスをくくりつける。
「あの手紙は、封をしておいたから。通訳のラフィタを通してでもいいから、必ず前皇帝に渡して。」
ノリをいつの間に貼ったのだろうか。パルカはいつも手早い。
「これで、…永遠のお別れね。私は死ぬまでエストレージャの臣民でいる運命。あなたはピスカに自分の運命を託した。次に私たちが生きて再び逢うことになったら。それは、敵同士ということ。お互い、命をかけて戦いましょう。」
パルカが、絞り出すように、語り上げる。フェリアはうなずく。
そして、右手の拳を合わせた。
「さようなら、永遠の親友」
「さようなら、パルカ。」「さようなら、フェリア。」
クスコ手前の上空で、2機の黒い影が交差して、そして赤い大地に見守られるように消えていった。
数秒の後、数ミリリットルの水滴が数滴、クスコの地面を濡らした。
数日後、ラ・パルカはアルマグロ父子に報告した。
「フェリアを追いましたが、途中で足跡は途絶えました。あの出血の量からいって、落命したかもしれません。」
「そうか。…ご苦労。下がって良い。」
アルマグロは、腕組みをする。
「まだ本調子でないラ・パルカ1人しか我々の陣に引き込めなかったか。」
「父上。悲観するのは早いかと。」
アルマグロの息子、通称「若」と呼ばれる人物が助言する。なかなかの切れ物で、今後の作戦行動の為に、部下たちには自分の名前を明かしていない。「若様」「若」が通称だ。
「焦りは禁物です。ピサロは老いており、判断を誤ること甚だしく、3人の中隊のメンバーとて心から信服しているとは思えません。ピサロの兵士からの信望も先のキートの一件で地に落ちました。機を間違えなければ、我々の勝利は堅いかと。知恵袋のラ・パルカもほぼ同じ意見です。」
「わかった。ラ・パルカには十分に治療と手当を行え。ストレスのかからぬよう、女医と女看護師を手配しろ。」
「御意に」