「いろいろ話したいことはあるだろうから、この牢に私の権限でラフィタを呼ぼうか?さっきあんたから取り上げたお手紙もエストレージャ語だから私には読めないし。」ケチャが思い出したかのように話題を変える。
「あれはインティ前皇帝陛下にしたためた手紙だよ。恐れ多いことだけど。私の元同僚のラ・パルカが書いた。」
「はぁ!?」ケチャもカイもあんぐりと口を開ける。
「あの手紙の内容は、私の扱いについて書いてあるみたいだ。私がエストレージャを脱走するときに、幼馴染みで黒い中隊の2番機であるパルカが追いかけて持たせてくれたんだ。もしピスカ・スーユに捕まったらこれを前皇帝陛下に渡すようにと」
「そのパルカとやら、なんて失礼な。不敬な。…あんたの友達をけなして悪いけどさ」カイは怒り出す。
「すまないな。…でも、正確には、パルカはもう私の友達ではないんだ。」フェリアは力無く笑う。「次に会う時は敵同士。戦場で命を奪いあうことになる。だから私が脱走する時、最後の最高の友達として別れてもらったのさ。もう二度とパルカに会わないことを条件にさ。」
カイの目が潤っていた。ケチャもふっと息をついた。そして先にケチャは落ち着きを取り戻してフェリアに向き直った。
「まあ、手紙がどういうものかわからないけど、エストレージャ語で書いてあるんでしょ。ラフィタに訳して貰うしかない。ラフィタを呼びましょう。」
「待ってくれ。」
「何よ?」カイが問いかける。フェリアは手錠をカタカタ言わせて牢屋の格子に寄りかかった。彼女はほおをぷっと膨らませる。
「!…やっぱり、アイツには会いたくない。」
「どうしたのよ。仲よかったでしょ。」
「どうしてもよ。私はパルカだけじゃない。…考えてみれば、脱獄する時、ラフィタも裏切ったんだ。だから本当はエストレージャを逃げ出しても、ピスカで受け入れてもらえるかどうか、自信がない。もしこの国にも居場所がないなら、前捕まった時カイにも言ったが…異形の私をいっそころ…」
「うるさい」ケチャはフェリアの言葉をさえぎって腕組みをする。
「何が彼との間にあったかわからないけど、フェリアさんとやら、あんた自分の立場わきまえなよ?捕虜なんだからそういう要望は出せないよね。」
「…言葉が過ぎました。…少尉殿。」フェリアは格子から身体を離して直立する。
「通訳としてラフィタを呼ぶか呼ばないかはこちらで決めること。こっちの都合なら、エロ猿のクシュリュや…アラウィを呼んでもいいんだよ。ヤツらに悪戯される方がいいか?」
「…あんたそれでも女か!っていつか、あんたの部下のカイにも言ったな。気の合う上官と部下だね。…うらやましいわ。私たちと違って。」フェリアは力無く苦笑した。ちょっとの間席を外したカイが戻ってきた。
「とりあえず食べなよ。あんたも好きなチューニョのスープ。」
カイが持ってきた芋のスープをすすめる。
「泣ける味だな、塩味がするよ。」
少しだけ、フェリア・ゲレーラが笑った気がした。