結局、ケチャがフェリアから回収した手紙は、ラフィタの手を経て前皇帝に届けられた。
フェリアの牢にはラフィタも他の男兵士も訪れなかった。
「フェリアさんのことについて書いてあります。もしフェリアがピスカ・スーユに流れ着いたら、前皇帝陛下の元で働かせてやって欲しいと。」
「余に宛ててくるとはな。アタタルカでなく。」
「差し出し主はラ・パルカと書いてあります。」
ラフィタはうやうやしくそのフェリアから取り上げた手紙をインティ前皇帝に差し出す。
「ラ・パルカだと?」
「陛下が銃を向けた黒の中隊の女性です。彼女は巨大なメイスでその銃弾を弾き返しました。」
「…ああ、あの別嬪の姉ちゃんか。ふむ、それなら面識のある俺に宛てて手紙を書いたのもうなずける。」
「確か、あの時の会話で彼女は陛下の事を高く評価しているように思えました。」
「だが、その後俺を袋詰めにして、誘拐したがな。」
「…ご無事で何よりでした。」ラフィタは膝を折ってかしこまる。
ラフィタが読み上げた手紙の内容を理解した後、インティはラフィタに向き直る。
「お前は、そのフェリアという女とはどういう関係だ?」
ラフィタは少し顔を紅潮させ、ふっと息をついた。
「祖国エストレージャにいた時に、知り合いました。」
「付き合っていたのか?」こういう時、前皇帝は本音、直球で会話をしてくる。ラフィタも威儀を正して答える。
「いえ、そういう仲では。彼女も、その手紙の差出主のラ・パルカもエストレージャの特殊部隊の訓練を受けていたため、私が会って会話をしたのは一度きりです。」
「それなのに彼女たちはお前のことを覚えていたようだが。」
「きっと特殊部隊の訓練の仲間以外の子どもと交流することがなかったのでしょう。私が唯一の一般人の子どもだったから、印象に残ったのかもしれません。彼女は自分達の事を孤児と言っていましたが、やけに高価な服を着ていて上等な鞄を持っていました。考えてみれば、不自然なことです。きっと行動の自由や人権を制限される代わりに、高価な品物を与えられていたのだと思います。」
「そして不穏な人体実験の実験台にされていたというわけか。」
ラフィタの顔色が青ざめる。「陛下、なぜそれを。」
「ヤコブ=フィードラなる錬金術師の話は余も聞いている。」そこでインティは葡萄酒を口にした。
「南蛮の産物で良いものはこの酒ぐらいだ。奴らは俺たちを野蛮人などとうそぶくが、なんの事はない。奴らこそが野蛮人の最たるものよ。お前もそのエストレージャの在り方に疑問をもったから余の元に参った。違うか。」
「…それが全てというわけではありませんが、ある程度は陛下の思し召し通りでもあります。」
「まぁ、なんにせよ。そのフェリアとやらがこちらに罠をかけにきた可能性も否定できない。ワランカ・アルパの小隊を一人で全滅させるほどの戦力をもつ戦士が投降してきたのだ。俺たちピスカ・スーユの皇帝の処刑に失敗したとはいえ、パイタやキートなどの都市はエストレージャに奪われたままだ。エストレージャの優勢は変わっておらんだろう。フェリアとやらの身柄はこちらで預かろう。アタタルカの手には余るはず。」
「ご配慮、感謝致します。」