「なんというか……
昔から変わってませんね……」
人参をリスの様にぎょうさん頬に溜めこんどる
チビだった頃のアイツの写真を見てウチはふと呟いた。
「サンタさんに何でもお願いしていいだよ。って言ったら
山盛りの人参が欲しいって。あの子がね」
「食いしん坊は筋金入りやったんですね」
「だから、タマちゃんが料理上手で助かるわ~。
あの子いつも嬉しそうに言うのよ。
『おかあさんの料理に負けないくらいなんだ』って」
「安くて早いモンしか作れませんけどね……」
オグリのお母ちゃんを前にして
どーしてもウチは緊張を解くことができへん。
見て見ぬフリをしとった罪悪感も浮かんできてまう。
腹割って話そうと仕向けたんわ自分やのに。
アイツを『ウチに遠慮せんと地元の友達から祝れてきーや』
なんて抜かしてまで二人きりになったのに。
ウチはヘタクソな逃げをかまし続けている。
「それにしても、オグリキャップはコッチ以上に大人気ですね。
最初から注目されとったんです?」
「本格手に人気がすごくなったのは
やっぱり、タマちゃんと一緒に走っていた頃からかな。
みんな中央最強のウマ娘と走るって大盛り上がりだったわ」
「やっぱウチはこっちでは憎まれ役やったんですね。あはは……」
「あら、私はタマちゃんも応援していたわよ。
タマちゃんが力強く走れば、走るほど
あの子もどんどん強くなって、楽しそうに走ったから」
「アイツは誰とでも楽しそうに走りますよ」
実際、アイツはウチがおらんくなっても
どんどん強くなっていった。
燃え盛るイナリの気迫を
成熟したクリークの思考を
夢を胸に抱くバンブーの想いを
アイツは自分の力にしてもうた。
それで、アイツはウチが出来んかった
オベイへのリベンジを果たしながら
あの娘と一緒に事件と言われるまでの記録を共に刻んだ。
アイツやウチと同じ芦毛の娘と。
後悔も未練も、それから嫉妬もある。
自分から去ったクセに。
こんなヤツがアイツには相応しくないやろ。
日本で一番愛されたウマ娘。
オグリキャップの隣には。
「私ね。あの子がタマちゃんと一緒になって良かったと思う」
「え――?」
「あの子ね。タマちゃんの話をする時が一番うれしそうにしてるの。
私はあの子がタマちゃんに出会えて良かったと思うの」
オグリのお母ちゃんはオグリに似とる。
アイツと同じ薄紫色の瞳にウチが居る。
「ホンマにウチでええんでしょうか……」
「ええよ。それに私ね。
タマちゃんも自分の娘になるのすっごく楽しみなの!」
「……そう言うてもらえて、めっちゃ嬉しいです」
「今度、お義母さんにモヤシお好み焼き教えてね」
「よろこんで……!」
そんな時やった。
玄関の扉の向こうからアイツの声が響いた。
「すまない。両手が塞がってドアを開けられない」
「ちょいまっとき」
ウチが玄関を開けると
そこにはプレゼントの山がおった。
ほん中からアイツの声が聴こえてくる。
「また、ぎょーさんもろてきたなぁ」
「みんなたくさん祝ってくれたんだ」
ホンマにコイツは誰からも愛されとるな。
それでも、やっぱり隣にはウチが立ちたい。
このワガママだけはどーしても捨てれへんかった。
「改めて言うのもなんやけど
お誕生日。おめでとうな!オグリ!
それから!おかえりなさい!」
ウチはそう言って出迎えた。
オグリキャップの家族として。