少し短いのでその1としています。
カルネ村からナザリックへ帰還してから少しして、私はアインズさんと一緒に、村を襲撃した六色聖典に属する魔法詠唱者達の件で話し合う事になった。
アインズさん曰く、情報を吐かせるだけ吐かせて、後は彼等を素材として有効活用しようという案が出て、私は私で、今後、法国と対峙する上で必要な手札になるのではという意見で、そこから互いに納得がいく形になるよう擦り合わせていく事となった結果、アルベドによって頭部を失ったスリング君(仮名)は素材にする事が決定。アインズさんの魔法で人間の魔法詠唱者からアンデットのデス・ナイト君にジョブチェンジする事になった。
「そういえばアインズさん、彼等の事調べていたら呪いにかかっているみたいでしたよ」
「呪いですか?」
「はい、詳しくは調べられなかったんですけど、あの時の状況を考えると、あまり碌なものじゃないんじゃないですか?」
「あぁ……証拠隠滅的な感じですかね」
「だと思います。どうしましょう。彼等の情報は出来るだけ多く欲しいので、解呪しておきましたけど」
「そうですね、もしも対情報魔法みたいな呪いだったら此方も被害が出る可能性がありましたから、問題ないと思います。ただ、低位の蘇生魔法で復活できるか実験したかったですが、それはまた今度にしておきましょう」
などと、他愛のないやり取りをしながら、取り合えず六色聖典のいずれかに所属しているであろう隊長さんは無事に生存ルート。やったね。
後、情報収集に関しては適任がいるんだけど、彼女(彼)?が頑張ると、最悪死人が出るかもだから別の誰かが代わりになる必要がある。この事を頼めるとしたら守護者の中でも頭脳明晰な設定のアルベドかデミウルゴスが適任だろう。パンドラもありと言えばありだけど、多分、アインズさんが『ダメ!』の一点張りでこの案は通る事はないだろう。他の子達だと情報を聞き出す前に殺しちゃいそうだし、守護者以外の子だったら……あぁ、恐怖公とかもありかもしれないな。
でも、彼等は特殊な訓練を受けているだろう部隊の筈だ、肉体的なダメージで情報を吐き出す可能性は低いかもしれない。此処は一つ精神支配の魔法でもかけた方が……いや、きっとその手の魔法に対しても耐性があるかもしれない。。
此処は一つ、肉体的なものでも魔法によるものでもない、相手の心に訴えかけるような手段を用いる必要があるのかもしれないな。
「所でアインズさんは、彼等からどうやって情報を引き出すつもりですか?」
「え、ニューロニストにお願いしようと思ってますけど。ジンクスさんは他に何か案があるんですか?」
「勿論です。相手は特殊部隊。きっと肉体的な拷問を受けても耐える筈です。此処は一つ、彼等の心に訴えかける方法が良いと思うんですよ」
「ほぉほぉ、それで、その案というのは?」
「先ずはですね……」
そして私は、モモンガさんに作戦内容を話した。話を聞いた後、アインズさんがちょっと可哀そうな目で私の事を見ていたけど、一体どうしてだ?
―ナザリック 地下牢 ニグン視点―
場所は変わってナザリック地下大墳墓内にある何処かの地下牢。そこに収容される事となった陽光聖典のニグンと彼の部下達は、装備を全て奪われた状態で身を寄せ合って震えていた。
(何故だ……何故こうなってしまったんだ)
悪夢としか言いようがなかった。ガゼフ暗殺の命を受け、多大な時間をかけた計画の最終段階まで持ち込み、あと一歩のところで任務を達成できると、そう思っていた。しかし、気が付けばたった一人で対峙するガゼフの代わりに奇妙な魔法詠唱者と全身鎧が入れ替わる様に現れ、任務の妨害にあったのだ。
最初は何処かで雇われた傭兵の類だろうとたかをくくり、二人諸共抹殺しようと考えたのが運の尽きだった。彼等から発せられる気配、それに気付いたニグンは、彼等と交渉し、それが決裂した事によって交戦となった。天使達の一斉攻撃、それを魔法詠唱者は平然と受け止め、更にガゼフ率いる戦士達ですら苦戦を強いられる天使達を一掃。それを見て恐怖に駆られた部下達による一斉攻撃すらダメージを受ける様子がなかった。最後の切り札にと、魔法封じの水晶を取り出し、最高位の天使を召喚しようとした所で記憶が途絶え、気が付けば囚われの身となっていたのだ。
目が覚めた時の部下達の反応から察するに、相当痴態を晒してしまったらしい。不安なのは皆も同じ筈なのに、部下達から慰めの言葉を一身に受けた時はどう対応すればいいのか分からなかったくらいだ。必死にあの時の事を思い出そうとしても、何故か霧がかったようにその時の記憶が曖昧となり思い出す事が出来ない。なんだか、暗くて狭い所に閉じ込められた上に、身体の所々に妙に尖った硬い何かが当たってチクチクしたような痛かったようなよく分からない感覚や閉じ込められた状態で身体を大きく揺さぶられたような……ダメだ、思い出せない。きっと何かしらの魔法……精神系の魔法を受けてしまったのだろう。そうに違いない。錯乱状態となってしまった私を見たからこそ、部下達は私の安否を気にしているのだろう。全く、部下達には見苦しい所を見せてしまったかもしれないな。もしも無事に此処から逃げ出す事が出来たら食事でも奢ってやろう。折角だ、奮発して高い酒も振舞おうじゃないか。
とはいえ、此処に閉じ込められてからそれなりの時間が経った筈だ。にも関わらず相手から何のアプローチも無いとはどういう事だ?
捕らえたは良いが、別件で此方に手が回らないか、想定外の何かが起こっているのか。楽観的な考えは良くないが、ただ此処でじっとしているにしても、今の部下達の様子では、いざという時に動けませんでしたでは目も当てられないな。
「皆、聞いてほしい」
私の声に、部下達が顔を上げる。酷く怯え切った顔だ。仕方がない。少し仰々しいかもしれないが、それで少しでも士気が上がれば儲けものだ。鉄格子を背景に立ち上がり、皆の視線を一身に浴びる。
「確かに我々は敗北した。こうして牢に閉じ込められ、装備も奪われ、国に助けを求める事も出来ない」
状況は絶望的だ。だが……。
「だが、此処で全てを投げ出し、諦める事は許されない。我々はまだ戦える。戦えるのだ。我々人類は、諦めなかったからこそ亜人蔓延る世界の中で生き残り続けてきたのだ。無論、我々だけの力ではない。我らが信仰する神々の恩恵があったからこそ、人の歴史を残し続ける事が出来たのだ。信仰を胸に、我々は戦い続けなければならない。幾千、幾万の敗北を重ねようと、戦い続ける限り、我々人類に負けは『へぇ、面白い話をしているね。演説と言っても良いのかな?』……」
戦い続ける限り、敗北はあっても負ける事はない。そう言いかけた刹那、背後から生暖かい息が吹きかけられた。ゾワリと背筋が凍りつく感覚と共に、部下達が悲鳴交じりの声を漏らして後ずさりしている。
嘘だろ……このタイミングで?
ごくりと唾を飲み込み、ゆっくりと振り返る。
「こんにちは。折角演説をしているところ悪いんだけどさ、君とお話をしに来たんだよね」
そこには、にこやかな笑み?を浮かべているであろう、人語を解する獣がそこにいた。
―ジンクス視点―
ちょっと驚いたな。カルネ村で大分心が折れてたみたいだから、まだ復活するのは先と思っていたけど、あぁして演説する程度には回復していたみたいだ。これは僥倖。ニグンも部下達も気付いてないみたいだからアインズさんに耳打ちした後、獣人から獣の姿に変わって、完全不可視化の魔法で姿を消した状態で牢屋に近付いてみた。
「こんにちは。折角演説をしているところ悪いんだけどさ、君とお話をしに来たんだよね」
その結果、最高のタイミングで声を掛けたら凄い形相をして固まっている。お、顔色がどんどん悪くなっていく。何かを思い出したように口をパクパクさせながら何か言って……
「アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ‼‼‼‼」
びっくりするくらい甲高い悲鳴を上げた後、部下達と一緒に壁際まで一気に後ずさって行っちゃった。マジですか。先程幾千幾万敗北を重ねようと戦い続ける限りって言いかけてたじゃないですか。即落ち2コマですよ。どこぞの魔と戦う忍か何かですか?
「ヒィ……ヒィ……お、お前は……あの時の……」
「はい、あの時の狼です。少し前ぶりですね。私はジンクスと申します。折角ですし、親しみを込めてジンクスと呼んで頂けると幸いです。えぇ、くんとかさんとか、様みたいな他人行儀ではなく、ジンクス……と、呼んで頂けると、とてもとても幸いです」
仕事で培った営業スマイルも、此処では通用しないようだ。それもそうか、あれはあくまで人対人で成り立っている。獣対人では成り立たない代物だ。仕方がないので獣人の姿に戻ってみると、先程と違って、少しは気持ちを落ち着かせたのか、恐る恐る此方を窺う様子に、私は改めて話しかけた。
「さて、この姿であれば多少は宜しいかな? では、改めて、私の名はジンクス。此処、ナザリック地下大墳墓の主、アインズ・ウール・ゴウンを守護する者です。以後、お見知りおきを」
「ア、アインズ……ウール……ゴウン」
「えぇ、カルネ村で貴方がたと対峙した魔法詠唱者こそが私達の主、アインズ・ウール・ゴウンです。あぁ、そういえば、私はまだ、貴方の名を知らないままでしたね」
そう言うと、ニグンはさっと顔を蒼褪めながら、捲し立てる様に自身の名を明かした。うんうん、ニグン・グリッド・ルーインさんね。漸く彼の名前が分かった。
「それではニグンさん。先程、私は貴方とお話がしたいと言いましたが、宜しいでしょうか?」
「お話……ですか?」
「はい、とても大事なお話です。何せこれからお話しする内容は……」
貴方がたが所属するスレイン法国と私が所属するナザリック地下大墳墓間における、国対国に対する大事なお話ですから。
「国対国……だと」
「えぇ、まぁ、これからその件でお話しする前に、色々と貴方がたにはお話ししておかないといけない事が多々ありますので、要点だけでもご理解して頂けると幸いです」
大仰な事を言ったけど、私は一般市民であり、その手の話題に関わる事のなかった私にとって、政は全然からきしなんだけどね。
それでも、国同士の問題と聞いて、ニグン達は顔を蒼褪める蒼褪める。やっぱり、国のお抱え特殊部隊にとって、国の要人であるガゼフを暗殺する事自体相当問題があったから隠密に行動していたんだろうね。
そんな彼等に、話を進める。
曰く、ナザリック地下大墳墓は遥か昔からこの地に根付いていた。
この地は元々ナザリックの主であるアインズのもの。
許可なく開拓地として移り住むカルネ村の住民達の事は知っていたが、無害であった為黙認していた。
しかし、カルネ村を全身鎧の騎士達が襲撃。
助ける義理はなかったが、元々この地はアインズのもの。ただ住むだけなら黙認したが、虐殺までは黙認できず、アインズ自らが出陣し、騎士達を撃退。
その後、カルネ村を訪れたガゼフから、この一件が帝国に扮した法国の陰謀であったと知り、王国の要人であったガゼフから村人だけは守ってほしいという願いを聞き入れ、彼等を守っていた。
だが、そんな彼の精神性に心を打たれたアインズは、ガゼフも保護対象とし、彼を守る為にニグン達と対峙した。
これが大まかな流れだ。そして、此処から先が重要になってくる。
「さて、此処までお話をしましたが、此処からが重要です。貴方がたスレイン法国は、このナザリックの支配者、つまり、『王』であるアインズに危害を加えた。如何なる理由があろうと、決して容認する事は出来ない。と、言う事です」
一国の主に危害を加えたのだ。そして、その事件の犯人であるニグン達が此処にいる。傍から見ればナザリックなる国が所有していた土地に無断で侵入し、事の発端を解決していた王を法国の特殊部隊であるニグンが襲ったという形になる。無論、法国は今回の件をニグンが勝手に暴走したと捉えるか、そもそもこの地は王国の所有地であり、ナザリックなる国は歴史を遡ってみても確認出来なかったと、そもそも今回の一件が国際問題に当たらないと言い張るだろう。
それを理解した上で、私はニグン達をじっと見つめながら口を開いた。
「別段、否定しても構いません。ですが、其方から先に攻撃を仕掛けた事は私達からすれば真実。私達は私達で勝手にやらせてもらいますよ。えぇ、彼等を使って」
そう言って、アインズさんから預かっていたモンスターを連れてくる。そのモンスターを見た瞬間、ニグン達が口々に悲鳴を上げながら恐れおののいた。
「デ、デス・ナイト!!」
「バカな……伝説のモンスターがなんで……」
お、新たな情報ゲット。此処ではデス・ナイトは伝説級のモンスターなのか。まぁ、それも仕方ない。デス・ナイト一体で全身鎧の騎士達が蹂躙されたんだ。その脅威はニグン達も十分に理解しているのだろう。
「あぁ、良かった、この子の名称は皆さん理解しているのですね。はい、私達はデス・ナイトを数多く使役しています。この子も、つい先程、アインズ様が追加で召喚したものです」
そう言って、懐からあるものを取り出す。それは、ニグン達が纏っていた装備品の一つ。それを見たニグンはハッとなって部下達の数を数え、一人足りない事に気付いた。あぁ、この人は勘が言い様でよかった。
「ま、まさか……それは……」
「えぇ、察しがよくて助かりました。この子は少し前に、アインズ様に不貞を働いた貴方達の同胞の一人を触媒として召喚したデス・ナイトです」
個人的にオーバーロードで好きな4名なので、作品に登場させる予定ですが、皆さんはこの中で誰が好きですか、参考までに教えて下さい。
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アルシェ・イーブ・リイル・フルト
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ニニャ
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ネイア・バラハ