人狼は不死者の王と共に異世界を謳歌したい   作:モノクロさん

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「ジンクス殿……そのデス・ナイトを召喚したのは何時ですか?」

「つい最近だね」

「その手に持っている衣服を手に入れたのは?」

「……つい最近だね」

「もう一つ、質問しても良いですか。私の部下の、スリング君(仮名)は何処に行った?」

「「っ!!」」

「……君の様な勘の良い陽光聖典は嫌いだよ」


楽しい交渉術 その2

 魔法詠唱者からデス・ナイトにジョブチェンジしたスリング君(仮名)。かつての面影など何処にもなく、鉄格子の先で怯え切った表情を浮かべるかつての仲間を威嚇する様に低い唸り声をあげている。落ち着いてね、この人達は襲っちゃダメだからね。かつての仲間の成れの果て。人間至上主義を掲げる法国の特殊部隊の彼等からすれば、異形の化け物に変貌した同僚の姿は、まさに悪夢そのものだろう。

 

 彼等の狼狽振りを観察しながら、私は次なる一手を打つ。

 

「この子とは別に、私達はデス・ナイトを使役しています。そうですね、取り合えずは百体、法国の国内に解き放つとしましょう。無論、ただ解き放つのではなく、あらかじめ貴方がた法国の要人達に宣戦布告した上で……と、なりますが」

 

 無秩序にデス・ナイトを解き放つのではなく、あくまでも、法国がナザリックに危害を加えた旨を伝え、その報復として法国国民に対して死を振りまく。彼等、陽光聖典が王国の要人であるガゼフを暗殺する為に王国国民を虐殺したように。自分達が行った行為を自身もまた被る。それこそが罰にふさわしいと言わんばかりに。

 

 私の言葉に、陽光聖典の隊員達から動揺が伝わってくる。デス・ナイトを百体も使役しているなど、普通なら有り得ない事なのだろう。だが、目の前に仲間の亡骸を触媒としたデス・ナイトがいる以上、可能性は否定できない。何より、こうして亡骸を触媒にデス・ナイトを召喚できるのだとしたら、此処にいる陽光聖典のメンツ分のストックがある事になる。

 

 いや、それ以前に、今頃彼等は別の事を危惧しているのだろう。こうしてデス・ナイトを簡単に召喚出来る事を話したという事は、デス・ナイト以上に強力なアンデット、もしくはそれに類する存在を隠し持っている事を暗に示唆しているかもしれないという事だ。

 

 その上で、私は陽光聖典の面々に問い掛ける。

 

「その上で皆さんにお聞きしたい事があるのですが、宜しいでしょうか?」

 

「……質問……だと」

 

「はい、実は、長い間、外界との接触を断っていたせいか、デス・ナイト程度で何処まで法国の上層部に私達の脅威をお伝えする事が出来るか分からない状況でもあります。まぁ、貴方がたの反応から察するに、この子達だけでも十分脅威にはなるとは思うのですが……」

 

 と、一拍間をおいて、ニグンを真っ直ぐ見据えた状態で問い質す。

 

「法国の特殊部隊、六色聖典……でしたか? その、六色聖典に属する貴方がたにお聞きします。私達が使役するこのデス・ナイトに対抗できる戦力が法国に存在するか、教えて頂けると幸いです」

 

 陽光聖典とガゼフ率いる戦士達の戦いはこの目で見て理解した。彼等のレベルではデス・ナイト一体を足止めするので精一杯だろう。その上で、デス・ナイトを基準に、法国の戦力を、ある程度把握しておく必要があると、私達はそう判断したのだ。私達基準では、デス・ナイトは足止め出来れば良い程度の存在。正直な所、デス・ナイトが伝説級のアンデットと言われているだけで、彼等のレベルはそこまで高くないと言っているようなものだ。しかし、集団としてではなく、個人のもつ実力は別物だ。もしも、法国の特殊部隊の中で、ひと際戦闘に特化した個人がいるとしたら、十分に脅威と言えるだろう。

 

(まぁ、ガゼフ暗殺に起用されなかった時点で、色々と問題を抱えているか、そもそも存在しないかのどちらかだろうけど、さぁ、どう答えるかな)

 

 ニグンは私の問いかけに答えず、何かを考えるように視線を落とす。そして、ゆっくりと口を開いた。

 

「その問いに答える前に、一つだけ聞かせて欲しい」

 

「えぇ、良いですよ」

 

「ジンクス殿、貴方の質問に正直に答えれば、先程の話、考え直して頂けますか?」

 

 ニグンが持ちかけたのはデス・ナイトによる蹂躙の撤回。その内容だけで、法国の戦力はある程度絞られたけど、此処はもう少し話を聞いてみる事にしよう。

 

「そうですね。貴方がたから得られる情報次第で、此方の方針も多少は軟化するかもしれません。ですが、私は人狼。人狼という種族は他人の感情に敏感でね。もしも、その情報に偽りがあると判断すれば、交渉の余地はなしと判断して、先の提案以上のやり方で対処する可能性がありますが、宜しいですか?」

 

「さ、先の内容以上の事……ですか。一体それは……」

 

 情報を提供する事自体、偽る様子はなかった。しかし、此方の匙加減でどうとでもなる状況でもあった為、ニグンは先程の提案以上のやり方について戦慄を覚えたようだ。

 

「そうですね……例えばですが……」

 

 と、此処で私は、彼等がこの牢屋に閉じ込める前に秘かに手に入れていた情報を開示する。

 

「――・―――さん、――歳、性別は女性、――生まれ、法国の――出身。幼いころから両親と共に孤児院の手伝いに参加し、孤児院の子供達からの人望がある。――さん、性別、男性……」

 

 と、名前と年齢、性別、そして個人の情報を細やかに羅列する。その人物の名が上がる度に、一人、また一人と、陽光聖典のメンバーが小さく悲鳴を漏らし、ガタガタと分かりやすいくらいに震えていた。

 

 おぉ、効いてる効いてる。解呪した際に一部の面々を支配(ドミネート)で操り、その人が大事に思っている人物の情報をあらかじめ入手していたのだ。勿論、この時の状況を彼等は覚えているので、こうして、自分達の大事な人を読み並べるだけで十分な効果を発揮しているようだ。

 

「ま、待ってくれ!! 彼女は関係ない!! 関係ないんだ!!」

 

「頼む!! 許してくれ!!」

 

「こ、殺すなら俺を殺せ!! 頼む!! 妻には手を出さないでくれ!!」

 

 地面に頭をこすりつけて懇願する者もいれば、涙ながらに叫び出す者。阿鼻叫喚とはこの事だ。私はただ、彼等から得た情報を並べているだけなのに。と、言いつつも、これって結局、『お前たちの大事な人たちに危害を加えるぜ。皆デス・ナイトの素材だ! ヒャッハー

!!』と言っているようなものだ。

 

 この状況に耐え切れなくなったニグンも、表情を蒼褪めたまま、力なく項垂れ、『……私の知っている事は何でも話します。どうかおやめください』と、私の見事な交渉術もあり、自ら進んで情報を提供する事を宣言してくれた。

 

 

 

 

 

 

―アインズの部屋―

 それから少しして、ニグンから得た情報を元に、私とアインズさんは今後の方針について考えていた。ニグンから得た情報は、それなりに有用だった。歴史上の偉人達や自分達が崇める神々、更には世界を支配した存在。そして、デス・ナイトを超える存在がいる可能性を知る事が出来たのは僥倖だ。

 

 漆黒聖典。特殊部隊の中でも群を抜いた実力者揃いであり、皆が英雄級の実力者。少なくとも、ガゼフ以上の実力者という事だろう。それに加えて、噂程度の情報だが、漆黒聖典の中でも、飛び抜けた実力を持つ者がいるらしく、その存在は公にされていない極秘中の極秘情報との事。曰く、神の血を引く『神人』と呼ばれる人物だそうだ。

 

 詳しい戦力は不明だが、可能性としてデス・ナイト以上の実力があると判断して良いだろう。問題はその『神人』なる人物が何人いるかだ。流石にそれ以上の情報を持っていなかったニグンを責めるわけにもいかず、今回得られた情報を以ってアインズさんと検討する旨を伝えて今に至る。

 

「それで、どうしますか?」

 

「少なくとも、デス・ナイト以上の実力を持つ人物がいると分かっただけでも十分な成果ですね」

 

「問題は神の血を引くって言われている『神人』の事ですけど……これってもしかして」

 

「そうですねぇ、もしかしたら、俺達は勘違いをしていたのかもしれませんね」

 

「この世界に、私達以外のプレイヤーが流れ着いてはいたけど、時系列がバラバラ……という事ですか?」

 

「その可能性は十分に考えられますね。例えば、『六大神』『八欲王』『十三英雄』それら全てか、もしくは一部か、まだ憶測にすぎませんが俺達と同じプレイヤーだった可能性があります」

 

 私達は当初、同じ時系列にプレイヤーがこの世界に転移していると考えていた。しかし、その実、転移したプレイヤーの悉くが別の時系列で転移し、それぞれが様々な逸話を残してこの世を去っているようだ。この世界に流通している位階魔法も、言語が翻訳されている状況も、もしかしたら先に転移したプレイヤーがワールド・アイテムを用いて使用する事が出来る様になったと考えれば辻褄が合う。

 

「話から考えると、『六大神』と『八欲王』は既に滅びていて、『十三英雄』も一部を除いて亡くなっている。そして彼等以外にも、歴史に名を残していないだけで、生きてこの世界にいるプレイヤーも存在している可能性がある。それに、プレイヤーの有無は兎も角、彼等の残した遺産が法国に残されている可能性がある事も分かりました」

 

 仮に、生きていないとしても、彼等の血を引き継いだ子孫は残っているし、今後も継続的にプレイヤー達がこの世界に流れ着く事も十分に考えられる。その上で、私達はこれからどうするか、そのかじ取りをしていかなければならない。既にこの世界に流れ着いた者や今後流れ着く予定のプレイヤー達と協力していくか、それとも、必要とあれば敵対するか。

 

「法国にプレイヤーの血を引く『神人』がいる以上、彼等の装備を所持している可能性もある……と、言う事ですよね」

 

「ですね。伝説級や神器級はもちろん、最悪、ワールド・アイテムを所持してる可能性も否定できないですね」

 

「だとしたら、迂闊に手を出すのは得策じゃないですね。アプローチを加えるにしても、出来るだけ多くの情報を入手しないと……」

 

「手痛いしっぺ返しをくらうのが俺達になる。という事ですね」

 

「必要でしたら、外での任務を与える守護者達にはワールド・アイテムを所持させておいた方が良いかもしれません。奪われるかもしれないという危険性をはらんでいますので、行動時は最低でも二人以上で行動するか、しもべを数体控えさせておくか、撤退用のマジックアイテムも所持させておくのもありですね」

 

 モモンガさんには奥の手のアレがありますし、私もユグドラシルサービス終了前に、リアルマネーでワールド・アイテムを数点所持している。恐らく、歴代のユグドラシルに存在するギルドの中で最も数多くのワールド・アイテムを所持している組織かもしれない。そう考えると、リアルマネーでワールド・アイテムを手に入れた私はファインプレーと言えるだろう。やったね。

 

 とはいえ、私が持つ上で適したアイテムがあるかと言ったら正直ないのが現状である。うーん、此処は一つ……。

 

「アインズさんは兎も角、私は何を持っておきましょうか? いっそのこと、『スマイル』でも所持しt「それは絶対ダメです」……」

 

 言葉を遮られた。

 

「ジンクスさん。確かに、必要とあらばワールド・アイテムを所持するのはやぶさかではありません。でも、『スマイル』だけは絶対にダメです。アレが使われたせいで、ユグドラシルがどうなったか、忘れたわけじゃないでしょ?」

 

 もちろん、忘れる筈が無い。元々の所持者であるプレイヤーがアレを使用した事で、ユグドラシルに存在する九つの世界の内、一つが文字通り壊滅的打撃を受けたのだ。そして、その一件が原因で、多くの拠点が壊滅し、更には他の八つの世界から多くのプレイヤーがなだれ込み、大規模なPKが発生。被害を受けたプレイヤー達の多くがこのワールド・アイテムの使用に対して制限を設けるよう懇願する問い合わせが殺到したのだ。

 

 運営も、その膨大な苦情や抗議文に対応する羽目になり、その後、このワールド・アイテムは表舞台から消え去り、サービス終了を以って、記念に残され続けてきたそれをリアルマネーで売却され、件のアイテムが私の手元に残されている。

 

 正直な話、自分たち以上の実力者たちが多く存在するのなら、このアイテムを使用すれば全て解決……とまではいかないが、最上位クラスの抑止力になるのは間違いない。何故なら、このアイテムを持っているとほのめかしただけで格上のギルドを相手に牽制する事が出来るからだ。まぁ、その場合、後々に多くのギルドが結託して、最大火力と殲滅力を以って、叩き潰されてしまうのだが……。

 

 そういえば、あの時の映像ってまだ残ってたっけ?

 

「ジンクスさん個人が入手したアイテムでしたら優遇しても良いですが、『スマイル』は諸刃の剣というより、共倒れの危険性もはらんでいるんですから。他ので我慢してください」

 

「残念ですが仕方ないですね。でも、私達だったら『スマイル』に対する対処法が確立しているから、一応問題はないんですけどね」

 

「それでも、少しでも可能性があるのなら、危険は回避した方が良いでしょ」

 

「それもそうですね。では、『スマイル』はまた別の機会に」

 

 『スマイル』はあくまでも抑止力。使うとしたら法国との交渉の際にちらつかせるのも悪くはない。法国が私達プレイヤーの存在を知っていて、彼等が持つアイテムの価値を十分に理解しているなら、人類至上主義の彼等も、無暗に干渉してくる事はないだろう。

 

 この後、私とアインズさん、そして外で活動予定の守護者達にはワールド・アイテムを持参させる事にし、ニグンと一部の陽光聖典のメンバーは一時解放。法国の上層部に此方の主張を伝えるメッセンジャーとして役に立ってもらう事にした。デス・ナイト達による侵略? そんな事しません。アレはあくまでも法国の出方次第で此方にもそれ相応の対応が出来る事を教えただけですから。

 

 陽光聖典と全身鎧の騎士達には、今回の作戦の一環で罪のない王国の住民を虐殺した実行犯として、それなりの灸を据える兼ね合いもあったが、上からの命令なら思うところはあっても拒否する事が出来ないからね。そこは仕方がないが、カルネ村の皆や他の犠牲になった方々からすればたまったものではない。それなりの償いを追加でしてもらう事にしよう。

 

 それにしても、私の見事な交渉術で、私達におかれた状況がぼんやりとだが分かったのは大きい。遥か過去からプレイヤー達の活躍があり、それが良くも悪くもこの世界に影響を与えている。それについて、思う所のある存在も多々いるだろう。そんな彼等の対応も今後の視野に入れつつ、私とモモンガさんは守護者の皆と情報を共有すべく、玉座の間にて彼等を招集するのであった。




「あぁ、それとジンクスさん」

「はい、なんですか、アインズさん」

「先程の彼等との遣り取りですが」

「あぁ……どうでしたアインズさん。私の見事な交渉術は」

「あれはですねぇ、交渉というより脅迫でしたよ」

「……はっはっは。またまた御冗談を」

(ダメだこの人。俺が何とかしなきゃ)

個人的にオーバーロードで好きな4名なので、作品に登場させる予定ですが、皆さんはこの中で誰が好きですか、参考までに教えて下さい。

  • アルシェ・イーブ・リイル・フルト
  • 番外席次
  • ニニャ
  • ネイア・バラハ
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