人狼は不死者の王と共に異世界を謳歌したい   作:モノクロさん

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設定盛るのは良いけど限度があったね。おじさん反省しているよ

 第六階層、円形闘技場。

 

 ローマのコロシアムを連想させる造形のそれは、私とモモンガさんがよくPVPで利用していた場所だ。

 

 基本的に接待的な形でモモンガさんに手加減してもらってはいたが、それでも最初の白星以降、一度も彼に勝利した事はない。

 

 なんなら、最初の白星ですら、モモンガさんに勝利したとはいえ、手加減+接待+情報収集という名目で遊ばれたようなもので、偶々命中した高火力の魔法ダメージによる判定勝利だった。それでも、モモンガさんに初めて勝った時は浮かれてログアウトした後にちょっとした贅沢品を買ってプチ祝いをしたなと、昔の思い出に浸りながら闘技場内を歩いていたら、遠くからダークエルフの子供がこちらに向かって走ってきた。

 

 一人は男装した女の子であるアウラ・ベラ・フィオーラ。もう一人は女の子の格好をしている所謂男の娘、マーレ・ボロ・フィオーレ。この第六階層を守護する双子のダークエルフである。

 

「お待ちしておりました! モモンガ様。ジンクス様」

 

「よ、ようこそおいで下さいました。モモンガ様。ジンクス様」

 

 活発なアウラに対し、少し内気な様子のマーレ。この子たちは同じギルメンのぶくぶく茶釜さんが創ったNPCだ。二人とも子供の外見も相まって、とても可愛らしい。

 

「やぁ、アウラにマーレ。元気にしていたかい?」

 

 膝を曲げて目線を合わせながら話しかける。そのまま両手を広げてみれば、アウラが目を輝かせて飛び込んできた。軽い。そう思いながら抱き上げて高い高いの要領で持ち上げた後、地面に降ろす。次いでそれを羨ましそうに見ていたマーレにも同じようにすると、表情がぱぁっと明るくなった。うん、可愛い。ぶくぶく茶釜さん。貴女が創ったNPCはとても可愛いよ。

 

 アルベドの時もそうだったが、二人の行動や手に残る感触、持ち上げた際に感じた重みは、ゲームの世界で感じる事が無かった感触だ。とてもゲームの世界とは思えない。

 

(やっぱりおかしいな。ゲームの更新では説明できない感覚だぞ。それにアウラやマーレの表情や仕草、うん、やっぱりおかしい。そして可愛いな)

 

 と、双子ちゃん達との談笑に花を咲かせていたらモモンガさんが咳ばらいを一つ。いけないいけない。此処には他の守護者達を集める名目で訪れたのだった。二人が姿勢を正すのを見て、私も同じく姿勢を正す。

 

「すまないなアウラ。少しばかり此処を邪魔をするぞ」

 

 普段とは違う、魔王ロール時の口調と声質。ゲームの時と違い、威厳に満ちた雰囲気に圧倒されながらも、私はモモンガさんに従い、『よろしくね』と合いの手を打つ。

 

『モモンガさんは魔王ロールでいくんですね』

 

『一応、このギルドの長ですからね。多少は威厳に満ちていないと』

 

『私もその方が良いですか?』

 

『いえいえ、ジンクスさんは今のままで充分ですよ。怖い上司が二人もいたら部下たちも息苦しいでしょうからね』

 

 メッセージ越しにやり取りをする。そういえば、GMコールやチャットは出来なかったけど魔法は普通に使えるんだ。特に何かしたわけじゃないのに、魔法が普通に使える。もしかしたら他の位階魔法も行使出来るのだろうか?

 

 そんなことを考えていると、階層守護者達が続々とこの闘技場に集結した。

 

 第一・第二・第三階層守護者のシャルティア・ブラッドフォールン

 

 第五階層守護者、コキュートス

 

 第七階層守護者、デミウルゴス

 

 皆、ギルメンが創ったNPCだ。懐かしい。ユグドラシルがサービス終了すると知ってから、時間の許す限り拠点内を巡ったが、こうして改めて皆を見直すと感慨深いものがある。

 

 シャルティアはペロロンチーノさんが創ったNPCで、エロゲーをこよなく愛する彼の趣味がてんこ盛りでありながら守護者の中で最強クラスの実力者だ。

 

 コキュートスは武人武御雷さんが創ったNPCで性格やコンセプトはThe武人である。

 

 最後にデミウルゴスだが、彼はウルベルトさんが創ったNPCで外交や内政、軍事関連においてかなり優秀な悪魔だ。

 

 第四と第八階層守護者の姿はない。まぁ、それは仕方がないなと思いながら、守護者統括のアルベドがモモンガさんの隣に並び立った事で全員が集合した。こうしてみると守護者が集結するって初めてだ。中々の圧巻である。

 

 単純な実力は皆レベル100相当の強者揃い。それらがモモンガさんと私の前で跪き忠誠を誓う儀式を行った後、今後の方針を定めで一時解散となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーモモンガの部屋ー

「……流石に驚きましたね」

 

「皆、忠誠心が高すぎるといいますか……うへぇって感じですね」

 

 忠誠の儀を終えた後、自室に戻ったモモンガさんの第一声に私は同意した。リアルの世界では決して体験する事が出来ないと断言できるレベルで深々と首を垂れる守護者の面々に、私もモモンガさんも正直ドン引きだった。更に、各々が私達の事をどう思っているかの問いに対する答えも相当だった。

 

 美しいだの慈悲深いだの、聡明だの賢明だの行動力があるだの、圧倒的強者だの……私、守護者のメンツとタイマンしたら負ける自信があるんだけどね。特にシャルティアやコキュートスと戦えば一気に距離詰められて瞬殺ですよ瞬殺。アウラは彼女の職業柄数の暴力で圧倒されるし、マーレもマーレで結構ガチなんだよなぁ。デミウルゴスは……戦えば多少は奮闘できそうだけど、最終的には負けそうなんだよね。あれ、これって私、集まったメンツの中で最弱なんじゃないかな?

 

 でも、マーレに優しいお方って言われたのは嬉しかったな。後でもう一度高い高いしてあげよう。

 

「まぁ、私達に好印象を持っている事が分かっただけでも御の字ですよ」

 

 ギルメンの創ったNPCに反逆されるなんてそれこそたまったものではない。だが、先の遣り取りを見るに、その心配はないだろう。私は兎も角、モモンガさんに至っては特に……だ。

 

「……そうなんですけどねぇ」

 

 歯切れの悪いモモンガさん。仕方がないだろう。なにせ、守護者の面々に対する評価に加えて、守護者統括であるアルベドが言い放った一言は、私も含めて驚愕した。

 

『至高の御方々であり、私どもの最高の主人であります。そして、モモンガ様は私の……愛しき夫でございます』

 

「……設定してましたね。モモンガさんの嫁って」

 

 あの時、ユグドラシルがサービス終了するにあたって、ナザリック内をくまなく散策した時に、皆が作成したNPCの設定を見るにあたってアルベドの『ビッチ』設定を『モモンガの嫁』と変更した。あの時はちょっとした悪ふざけとノリでやった事なのだが、その設定が反映されているとは思いもしなかった。

 

 モモンガさんの事を夫と公言した後、一時は周囲が騒然としたが、そう設定していた事を思い出したモモンガさんが何とかその場を収めたけど、その後が怖くてこうしてモモンガさんの自室に逃げ込んだのだが……。

 

「嫁……嫁かぁ。なんだろう。嬉しいような恥ずかしいような複雑な気分ですよ」

 

「タブラさんの創ったアルベド。凄く美人ですもんね」

 

「それもありますが、俺からするとNPC達は皆の子供みたいなものですから。娘から言い寄られている気分ですよ」

 

「あーそれは確かに」

 

 子供の好意は嬉しいと同時に少し気恥しいものだ。それが異性ともなれば尚の事。私だってそうだ。もしアウラやマーレ……マーレは男の娘だったてへぺろ。他にもシャルティアや、他の異性のNPCから言い寄られたらどう接するべきだろうと悩んでしまう。当の本人じゃない分、まだ心に余裕はあるけど、モモンガさんはそうじゃないもんなぁ……。

 

「それで、どうするつもりですか?」

 

 どうするとは無論、アルベドの事である。先程、守護者達の前で宣言したのだ。妻だと。モモンガさんはそれに対してどうこたえるつもりなのだろうか?

 

「うぅん……正直言って困っていますよ。別に嫌ではないんですよ? でもほら、やっぱり心の何処かでアルベドの事は娘みたいに思ってしまうし、後、彼女を見ているとドキドキはしますけど……その……」

 

「あぁ……そうですね。アンデット。というより、骨だから『アレ』もないんですよね。因みに性欲とかはあるんですか?」

 

「少しはあるみたいですけど、やっぱり『アレ』がないのは大きいですね」

 

 モモンガさんの言葉に私は心底納得してしまった。リアルでは絶対に味わえない感覚だ。特に性的な興奮を覚えると、その反動で非常に虚しくなってくる。アルベドの胸を見た時のあれも賢者モードではなくアンデットとしての特性なのか、昂った気持ちが沈静化したものらしく、色々と難儀な身体になっているようだ。

 

「そういえば、この世界のアイテムってどうなっているんですかね? 魔法とかも使えるみたいだし、もしかしたら……なんて考えたりもしましたけど」

 

「流石にそこら辺は調べないと分からないですね。折角ですから調べてみますか?」

 

 そう言って、無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴァザック)を取り出し……あれ?

 

「メニューも開いてないのにアイテムは取り出せるんだ」

 

「その様ですね」

 

「では早速……お、これは……っ‼ モモンガさん‼ これとかどうですか‼」

 

中に入っているものを取り出すと、そこには指輪があった。それは、アルベドの設定を変更した時と同じ時期に入手した種族変更の指輪だった。

 

「それって、確か悪魔に種族変更できる指輪ですよね」

 

「はい、モモンガさん専用の装備品ですよ。ほら、あれですあれ」

 

「あれって……確か、キャラデザは良かったけど設定があれのあれですよね?」

 

「はい、そのあれです」

 

 運営にBANされるかもしれないとモモンガさんが静かに怒っていたあれである。

 

 アイテム名、悪魔化の指輪。装備者は種族が変更される。その際、種族値に振られたレベルが変更されるが、装備を変えると元に戻るといった効果がある。問題は、キャラデザを作成した後に追加で設定した説明文である。

 

『死の支配者たるモモンガの別側面。圧倒的なカリスマを持ち、かの王の前ではありとあらゆる存在が跪き首を垂れるだろう。更にあらゆる性技を手中に収め、100を超えるサキュバスすらも一夜にして堕とす手腕はまさにオーバーロードである』

 

「ジンクスさん。この設定を見た時の俺の感想をどうぞ」

 

「オーバーロードたる俺はあっちの方もオーバーロードだったぜ‼」

 

「ははは、ぶっ〇しますよ」

 

にこやかな笑みと共に殺意が溢れている。でも私は怯まない。何故なら私は知っているからだ。モモンガさんはなんだかんだ言って優しいからだ。でもごめんなさい、許して下さい何でもします。

 

「まぁでも、これを装備すれば外見も変わりますし、そっちの方も解決するかもですよ」

 

「解決した後も問題なんですけどね。取り合えず、装備自体は出来るみたいですし、試しにやってみますか?」

 

 モモンガさんが指にはめると、一瞬だけ指輪が光を放つ。そして数秒後、その光が収まるとそこにいたのは、黒いローブを纏った悪魔の姿があった。人としての特徴を残しつつ、頭部には悪魔の象徴であるツノが生えている。見た目も私がキャラデザした通りに渋面のイケオジ。姿見の前に立ったモモンガさんも、その見た目を改めて見た後、感嘆の声を漏らしていた。私も同様だ。やだ……何このイケオジ。こんなモモンガさんだったら心臓どころかケツだって差し出す所存だよ。

 

「へぇ……結構いい感じじゃないですか? でもステータスは……うん、やっぱり下がっていますね。でも、それでもかなりの高水準ですよ。悪くはないですね」

 

「悪くはないですけど、流石に元々のステータスと比べたら能力は下がりますし、一部のスキルも使用できないでしょうね」

 

「そうですね、この状態で何処まで立ち回れるかも後で調べるとして……ん?」

 

 身体の彼方此方を触りながら確認するモモンガさんだったが、何かに気付いたのか、視線が下半身へと向けられる。

 

「モモンガさん、どうかしましたか?」

 

「いえ、あの、なんか、こう……ちょっと違和感があるというか……」

 

「え? あぁ……それは仕方ないですよ。さっきまでなかったものが今度はついているんですから。それで、どうなんですか、そのローブの下に隠されたサキュバス殺しの魔剣グラムもしくはレーヴァテインの性能は」

 

「い、言い方……。でも、そうですね……少し確かめておきたいと思います」

 

 そう言って、そそくさと部屋の隅に移動し、確認する。そのまま暫し硬直した後、いそいそとそれをしまうと此方に戻ってきたモモンガさん。やだ、イケオジな見た目なのに顔真っ赤じゃないですか。可愛い。

 

「どうでした?」

 

 何気なく聞いた私だったが、モモンガさんが身振り手振りでそれを説明すると、思わず吹き出してしまった。

 

「あははははははははっ‼ え、モモンガさん本当ですか‼」

 

「笑い事じゃないですよ‼ これはこれで大問題なんですからね‼」

 

 モモンガさんが言う様に、ある意味大問題だ。何せサイズが凄い。あれがあれだけ大きいとなるとサキュバスすらも堕とすというのは比喩表現ですらなくなる。しかもそれが人外レベル。悪魔だから人外なのは仕方ないけど、もうね、モモンガさんの股間から生えてるものはそんなチャチなものじゃ断じてない。もっと恐ろしいものの片鱗を味わった気分だ。

 

「あははは……いやぁ、すいません。でも、本当に凄いですね。文面での設定は私がしましたけど、此処まで外見に影響が出るとは思いませんでしたよ。これってもしかして、他の設定も大きく反映しているのかもしれませんね」

 

「……そういえば、ジンクスさんの設定はどうなっているんですか?」

 

「え、私の設定?」

 

「ほら、最古図書館に寄贈した魔導書とかジンクスさん自身の設定とか」

 

「私の……設定……」

 

 そういえば、私もジンクスの設定にアレンジを加えていたのを忘れていた。確か、魔法の深淵へと至った……。

 

 次の瞬間、私の脳内に存在しない筈の記憶が大量に流れ込んできた……。

 

 あれ、これってやばくないか?

 

 確か、追加設定でモモンガさんも私と同じ設定にしてたはず。

 

「ジンクスさん‼ 大丈夫ですか‼」

 

「……うはぁ……これ……やばいですねぇ……モモンガさんも気を付けて下さい」

 

 一瞬だけど、意識を刈り取られ、頭がくらくらする。吐き気もするし、眩暈もだ……。

 

 モモンガさんのお陰で気を失わずに済んだけど、これって私の設定でモモンガさんも同じ状態になるんじゃないだろうか。だとしたらちょっとこれはまずいな……。

 

「モモンガさん、一気に思い出そうとしたらダメです。少しずつ、少しずつ取り込んでください。でないと私みたいになりますよ。記憶の波に押し流されそうです。うへぇ……気分が悪くなってきました」 

 

「え、わ、分かりました。ゆっくりと、ですね」

 

「はい……ゆっくり、慎重にお願いします」

 

「分かりました」

 

 私の設定とはいえ、モモンガさんも巻き込んでしまった。深呼吸しながらゆっくりと設定上の知識を馴染ませると二人揃って大きなため息を漏らした。

 

「ふぅ、お互い。悪ふざけもありましたけど、設定に振り回されてますね」

 

「この調子だと、種族設定とかも反映されているかもしれません。私だったら人狼の、モモンガさんだったらアンデットとしての……そのずれが今後どうなるかも考えていかないと、戻れなくなるかもしれませんね」

 

「そうですね。それにしても、ユグドラシルの設定が現実に反映されるとは思いもしませんでした」

 

「そうですね……でも……」

 

 問題は山積みで、分からない事も沢山ある。だけど、今のこの状況を、何処か楽しんでいる自分がいる。リアルの世界とは異なる世界。この拠点の外もユグドラシルとは異なる事も、外の様子を見に行ったNPC達から聞いている。だからこそ、この世界の全てが未知であり、これから何が起こるか、どんな出会いがあるのか。それを想像すると胸が躍る。

 

「……ジンクスさん?」

 

「いえ、何でもありません。ただ、これからが楽しみだなと思いまして」

 

「そうですね。折角ですし、色々試してみましょう」

 

「はい」

 

この世界で、この未知の世界を体験する。それをギルメンが残したNPC達と共に歩んでいく。それはなんて素晴らしい事だろうか。私は、モモンガさんと一緒に笑いながらそう思った。

 

個人的にオーバーロードで好きな4名なので、作品に登場させる予定ですが、皆さんはこの中で誰が好きですか、参考までに教えて下さい。

  • アルシェ・イーブ・リイル・フルト
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  • ネイア・バラハ
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