人狼は不死者の王と共に異世界を謳歌したい   作:モノクロさん

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自己紹介も済ませたし、少しずつだけどこの世界の情報をゲットしましたよ。モモンガさ……アインズ

 モモンガさん……いや、アインズさんがアルベドと共に全身鎧の騎士達に襲われている村へと向かった後、私は助けた姉妹を警護すべく……いや、警護する必要すらないのだが、彼女達の傍に居る事で安心させようと、周囲を警戒する素振りを見せながら話しかけた。

 

「そういえば、君達の名前を聞いてなかったね。もしよかったら教えてくれるかな?」

 

 出来るだけ優しげな声で、それでも、人狼の姿では、どうしても警戒してしまうのだろう。それに、自分達を殺そうとしていたとはいえ、同じ人間の騎士を殺したのだ。殺したうえで、その事に罪悪感を感じていなかったという心境をもしかしたら察しているのかもしれない。先程まで服を掴んで離さなかった妹も、今は姉の背中に隠れる様に此方の様子を窺っている。仕方がない。少しでもこの子たちが落ち着くならそれなりの格好をするとしよう。

 

「ほら、私は人狼という種族でね。先程までは半分が人間で半分が狼の見た目をしていただろう? このように、人の姿になる事も出来るんだ。凄いでしょ?」

 

 と、人狼の姿から人の姿に変化する。その分のステータスは下がるのだが、騎士達の実力を見るに、この姿のままでも十分対応が可能だろう。人の姿になった事で、幾分か二人から警戒の色が少なくなったように見える。

 

「と、その前に、私の方から名乗った方がよさそうだね。私はジンクス。先程君達を助けたアインズの友人だ」

 

 にこやかにそう言うと、姉の方がおずおずとした様子で口を開く。

 

「エ、エンリ……エンリ・エモット……です。この子は、ネム・エモット……」

 

「そっか、改めて宜しくね。エンリさんにネムちゃん」

 

 言いながら二人をじっと見つめる。見た所、目立った傷はない。とはいえ、森の中をあてもなく走り続けていたせいか、腕や足の彼方此方に細かな傷が見受けられる。この程度の傷なら問題ないだろうが、手当てをしておこう。

 

 魔法で治すか? 治癒魔法とはいえ、いきなり魔法を唱えたら驚くかもしれないな。そもそも魔法を行使する事は出来たがこの世界の人間が魔法に対してどれだけの知識を有しているか分からない。ポーションなどのアイテムもその辺りも確認するべきだろう。

 

「所で、二人にいくつか質問したいんだけど良いかな?」

 

「は、はい! 私達で宜しければなんでも!」

 

「うん、ありがとう。じゃあ先ずは、さっきの騎士達?の事なんだけど、あの騎士達は何かな? 私達は……そうだね、旅の者でこの辺りの情勢に詳しくいないんだ」

 

 旅人に似つかわしくない格好なんだけど、その辺りは察してくれているのか、エンリは私の質問に答えてくれた。

 

 曰く、先程の騎士は帝国、バハルス帝国の騎士らしい。らしいというのは、彼女達が住むこの土地は、バハルス帝国と対立しているリ・エスティーゼ王国所有の土地との事。何故彼等が此処に来たのかは不明。例年、収穫の時期になると決まって仕掛けてきて労働者を戦地に赴かせているという。

 

(うわぁ、まじか。私でも分かる。収穫の時期に戦争仕掛けてくるとか相手国の国力を落とす気満々じゃん。王国は何も対処してないのか? それとも、そんな事すら気付いてないとかそれ以前の問題か?)

 

 そもそも、王国もそうだが帝国の場合どうなのだ? 収穫の時期だってそう変わらないだろう。それとも、王国とは異なった穀物を育てているから収穫の時期がずれているとか? それとも、単に国民を徴収する必要がない状況とか……それだったら自国に余力を残しつつ王国の国力だけを低下させていき、ある程度まで落としてから一気に落とす算段か?

 

 他にもスレイン法国やローブル聖王国、竜王国など、様々な国があるみたいだが、その辺りの詳しい情報は特に得られなかった。ただスレイン法国だけは要注意かもしれないな。人以外の種族は認めない人間至上主義みたいだし、私達みたいな異形種で構成されたメンツとは相容れないだろう。まぁ、この辺りはおいおい考えていく必要があるだろう。モモンガさん……アインズさんと相談だな。

 

 魔法に関する情報も得た。エンリ自身は魔法は使えないが、友人の薬師が魔法を使えるらしい。どの位階魔法まで行使するかは不明だが、先程の騎士達を相手にして、そのレベルの低さから第二位階か三位階くらいの魔法が妥当な所か……これもアインズさんと要相談だな。それに、薬師がいるという事は、もしかしたらポーションなどのアイテムも存在するのかもしれない。

 

 試しに、下級治癒薬(マイナー・ヒーリング・ポーション)をアイテムボックスから取り出し、それをエンリに見せてみる。

 

「これ、治癒薬……ポーションなんだけど、エンリさんの友人はこういうお薬を扱っているのかな?」

 

「は、はい……でも、ンフィー……私の友人が扱っているポーションは赤色ではなく青かったような」

 

 おっと、此処でユグドラシルとは微妙に異なる違いが出てきたぞ。青のポーション。興味深いけどエンリは持っていないらしい。とても貴重で、それなりに高価な品なのだという。では、このポーションと青のポーション、効果の差異はどれ程のものだろう。

 

「……そっか、これ、私達の国で扱われているポーションなんだけど、傷を癒す効果があるんだ。問題ないとは思うけど、傷口にばい菌が入って悪化したら大変だ。これを飲むと良いよ」

 

 そう言って、二人分のポーションを用意する。それを恐る恐る受け取ったエンリは、ネムとポーションを交互に見つめ、意を決したように一口で飲み干した。多分、自分が先に飲む事で毒見も兼ねているのかな。ポーションが高価なものみたいだし、それを見ず知らずの自分達に無償で渡すなんて何か裏があってもおかしくない。そう思うのは当然の事だ。特に思う事はないんだけどね。ただの効果の実験と、青のポーションとの効果の差異が分かれば御の字程度の腹積もりなんだけど……あぁ、いけないいけない、異形種の精神が侵食しているのだろうか。助けるという考えよりも情報収集を優先してしまうのは悪い考えだ。うん。

 

「うそ……傷が塞がっていく」

 

 ポーションを飲み干すと共に、効果が出てくる。細かな傷ではあったが、みるみるうちに塞がっていき、傷のない元の状態へと回復した。成程、この世界ではこんな感じで傷が癒えていくのか。それなら、魔法で治癒した場合の効果もおいおい確認する必要がありそうだな。アインズに治癒魔法を使えばダメージしか入らないから出来れば人で試し……あぁ、ダメだダメだ、すーぐそっちの方に思考が回っていく。

 

「よかった、効果があったみたいですね。さぁ、ネムちゃんも怪我をしています。飲んで下さい」

 

 傷が癒えた事に驚くエンリにしがみついていたネムにも飲むよう促す。ネムも恐る恐るといった様子で一口飲むと、細かな傷がたちまち治り、効果がしっかり出ている事を確認した。

 

「うん。取り合えずこれで安心ですね。村の方もアインズさんとアルベドが何とかしてくれるでしょう」

 

「あの……本当に、本当にありがとうございます! 助けて頂いたばかりか、こんな貴重なポーションまで」

 

「ははは、気にしないで下さい。私達も旅の途中で此処に立ち寄っただけですから。それに困った時はお互い様ですよ。こうしてこの国と周辺の国の情報も得られましたので」

 

 とはいえ、二人は助かったが村の方はどうなのだろう。父親はダメだろうな。あの傷で生きているとは思えない。母親は……いや、そもそも他の村人達も、私達が来る前に大分やられていた筈だ。果たして何人生き延びているか判断できない。見た所、開拓地の様だったし、人出も少ないだろう。最悪、村を放棄して国に頼るしかないのだろうが、果たして彼女達にこの後の生活を維持していくだけの財産があるとは思えない。

 

「…………」

 

 暫し考えた後に、私はアイテムボックスを漁っていた。これは偽善だ。少なくとも問題を先延ばしにしているだけだろう。でも、此処であった縁を簡単に捨てる程、薄情ではない。薄情ではない筈だ。取り出したアイテムは私達にとってはハズレアイテム。でも、この子にとっては、いや、この世界においては貴重なアイテムになるかもしれない。

 

「それと、まだ油断は出来ません。エンリさんにはこれを渡しておこうと思います」

 

「……これは?」

 

「これは小鬼将軍の角笛というアイテムです。吹けば小鬼と呼ばれる小型のモンスターを召喚する事が出来ますその子達は貴女の身を守る為の盾となるだろう。それに……最悪、働き手として活躍する事も出来ます」

 

「っ!」

 

 エンリは察しが良いな。帝国からすれば働き手である大人の男は邪魔な存在だろう。大人の男から働き手として活躍できる年齢の者を順番に選別して殺していてもおかしくはない。その代わりの人材を用意したと言ったようなものだ。ごめんね。酷い事を言ったよね。私が謝った所で何も変わらない事は分かっている。だから謝らない。謝った所で死んだ人間は蘇らないのだから。

 

(いや……私達は蘇らせる方法を知っている。でも、それを言う事が出来ないんだな)

 

 死者を蘇らせる方法はある。蘇生魔法。これを使えば死んだ人間も蘇る事が出来るだろう。でも、これを二人に言う事は出来ない。魔法の存在を知り、アイテムの存在も知った。だが、あくまでも上辺の情報を得ただけだ。仮に蘇生魔法がこの世界にも存在するとしても、それを使用する事が何を意味するのか想像に難くない。傷を癒す魔法を行使する者と死者を蘇らせる事が出来る者、どちらが厄介ごとに巻き込まれるかと問われれば明らかに後者なのだから。

 

(流石にこれ以上は、私の独断でアインズさんに負担をかけさせるわけにはいかないな)

 

 恐らく、ポーションや小鬼将軍の角笛も厄介ごとの種だろう。特にポーションに関してはエンリには秘密にしてもらわなければならない。最悪の場合、記憶を操作する事も視野に入れておこう。

 

 と、そんな事をしている間に、村の方も問題が解決したのだろう。アインズさんから伝言(メッセージ)が届いた。

 

『此方の問題は解決しました。ジンクスさんの方は大丈夫ですか?』

 

『はい、こっちも大分落ち着きました。それと、この世界の情報についてもいくつか。その点で擦り合わせておきたい話もありますので、一度村で合流しましょう』

 

『そうですね……後、怪我人と死人が結構多いのでナザリックからルプスレギナを呼ぼうと思います』

 

『あぁ、彼女なら聖職者(クレリック)の職業を持ってますから適任ですね』

 

『はい。では、村で待っています』

 

『分かりました。直ぐに行きます』

 

 伝言を終え、一息ついた後に立ち上がる。

 

「エンリさん。ネモちゃん。どうやら村の方もアインズさんが何とかしたみたい。だから一度、村に戻ろう」

 

「……はい」

 

 エンリにとって、村に戻る事で見たくないものを沢山見る事になるだろう。少し前まで一緒にいた友人や知人、家族すらも失ったのだ。早いか遅いかの違いかもしれないが、二人に現実を突きつけてしまう事に……それでも何も感じられなくなっている自分に罪悪感を感じつつ、私は二人を連れて村へと向かった。

 

個人的にオーバーロードで好きな4名なので、作品に登場させる予定ですが、皆さんはこの中で誰が好きですか、参考までに教えて下さい。

  • アルシェ・イーブ・リイル・フルト
  • 番外席次
  • ニニャ
  • ネイア・バラハ
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