交流会も終わり、何事もなく過ごしていた日々に起きた事件。夜蛾学長の前に、正座して座る大人2人組。
「はあ。卒業してもお前らは変わらないな」
「やだなぁ、夜蛾先生。褒めないでくださいよ。明日雪が降るじゃないですか」
「本当だよね。明日の任務が大変だ」
「褒めてない」
五条先生と怒られている人と出会ったのは、1時間前のこと。
「なあなあ、あの人カッコよくね?」
午前の座学が終わり、休憩中。飲み物を虎杖と釘崎と買いに行く。自販機に愚痴る釘崎を待っていると、遠くを見ていた虎杖が声をかけてくる。
「あ?・・・伊地知さんと話している人のことか?」
虎杖がいう人を見る。10、いや20代ぐらいか?スタイルがよく、シャツにジーパンというラフな格好なのによく似合っている。
「呪術師の人だよな・・・。伏黒は知ってる?」
「いや。初めて見るな」
「ちょっと何を話してるのよ」
話していると、釘崎が割り込んでくる。
「いや、あの人カッコいいなって」
「だれよ?」
「ほら、伊地知さんと話している・・・」
「・・・・・・は、兄貴!?」
驚いたように声をあげた釘崎。目線の先の人が振り返って、
「野薔薇!!」
伊地知さんをほったらかしてこっちに来る。
「ちょっと、何でいるのよ!」
「野薔薇が心配だったんだよ。大丈夫?ナンパされたりしてない?ストーカーされてない?虐めてくる先輩とかいないか?なんかあったら、いつでもお兄ちゃんに言うんだぞ」
「ないわよ!!」
すごい勢いで話始めたその人。その会話をぶった切って、教室に戻る釘崎。取り残されたその人に、虎杖が声をかける。
「えっと、」
「ああ、ごめん。えっと、野薔薇の同級生、かな?いつも妹がお世話になっています。初めまして。野薔薇の兄の釘崎蓮です。よろしくね!」
「初めまして!虎杖悠仁です!!」
「伏黒恵です。よろしくお願いします、釘崎さん」
「蓮でいいよ~。敬語もなしでいいから」
妹とは似ても似つかない笑みで笑う、蓮さん。
「虎杖くんも伏黒くんもカッコいいね。恋人いるのかな?」
「いませんよ」
「・・・いないですね」
恥ずかしそうに答える虎杖。何でこんなこと聞いてくるんだ?五条先生と同じタイプか?
「ああ、ごめんね。初めましてなのに、踏み込んだ質問しちゃって」
「いえ、別に」
「全然気にしてないっすよ。蓮さんこそ美人な彼女がいそう」
「僕?いないいない」
変な人かと思ったが、意外とまともそうだ。
「出会ったばかりの僕が言うのもあれだけど、2人ともいい人と結婚できるといいね。まあでも、」
蓮さんは途中で会話を切って、俺ら2人に顔を近づける。
「同級生だろうが、仲間だろうが、友達だろうが、野薔薇に手出したら分かっているよね?」
先程の笑みが一切ない顔で言う。人を殺すのもためらわなさそうな目をしているのは、気のせいだと思いたい。
「「はい」」
「ならいいや~。なんかあったらいつでも言ってね。担任がウザいとか」
一瞬で表情を切り換える蓮さん。
「君らも大変だよね。担任が五条さんとか」
「五条先生と知り合いなの!?」
「学生時代の後輩なんだよね。ところで、その五条さんが何処にいるのか知ってる?」
「話があるんですか?」
「まあね。聞くところによると、妹のスカートはいたらしいからね」
再び先程の顔に戻りつつある。
「いいえ。知らないです」
怯えた顔の虎杖が首を横に振る。
「伊地知に聞くか・・・。じゃあね、虎杖くん、伏黒くん。・・・くれぐれも魔が差さないようにね。僕、遠くの獲物を射止めるのは得意なんだ」
最後に脅して去っていった蓮さん。しばらく沈黙した後、どちらかともなく声を出した。
「・・・気を付けようぜ、伏黒」
「間違っても手出すなよ、虎杖」
「全く。その年になっても教室で暴れるとは」
「僕は平和的に解決しようとしたよ?蓮が攻撃してきたんだよ」
「よく言いますね。僕の顔を見て逃げようとしたくせに」
「だからって暴力は駄目でしょ?」
「声で止めてたら、貴方は逃げますよ。聞こえないふり、見ないふりは得意でしょ?」
「後輩がこんなに立派になって、僕は嬉しいよ」
「先輩が成長してなくて、僕は悲しいです」
「いい加減にしろ」
止まらない言い争いに、学長が終止符を打つ。
「先生も先生ですよ。こんなセクハラ野郎に、教師が務まるわけないでしょ。まだ僕の方がマシですよ」
「超絶シスコンに務まるとは思わないけどな」
「お前ら・・・」
学長もお手上げ状態らしい。
「まあ、今日はこの辺にしときますよ。伊地知が可哀想ですし。もう1人、嫌、もう1匹話さないといけない奴がいますしね」
「今頃は校庭にいるんじゃない?」
「蓮!」
「それじゃあ失礼します」
いってら~、と手を振る五条先生を無視して、俺らに手を振って出て行った蓮さん。
「俺らも行くか」
「そうだな」
虎杖の言葉に頷いて、校庭に向かう。
この後、パンダ先輩を脅していた蓮さんは、釘崎に怒られて渋々任務に行ったらしい。
・釘崎 蓮(くぎさき はす)
野薔薇の兄。伊地知と同級生。野薔薇大好きなシスコン。ダーツなど、何かを狙ったところに投げるのが上手い。
一級呪術師。
【一矢呪魂】(いちやじゅこん)
特別な弓と矢を使って戦う。矢はそのまま打つこともできるし、狙った相手を追い続けることもできる。
刺さった矢を爆発させることもできる。