大地を駆ける一筋の流れ星   作:Red October

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本日7月7日は七夕…ではありますが、この投稿は七夕記念という訳ではありません。そしてGⅢレースでもありません。
今回は、言うなれば「推し活」の一部です。私の視聴しているVtuberの誕生日記念ですね。Vtuberが「うまぴょい伝説」を歌っているのを見て、思いついたものです。

なお、本話はゆめかいろ様の二次創作全般ガイドラインに同意し、これを遵守して創作したものであることをここに誓います。
#ゆめみななアート




Act.1001i ゆめみなな生誕記念配信‼︎

 皆様、ごきげんよう。シルヴァーブレイズですわ。

 さて、突然のことなのですが、私はトレセン学園の顔のようなものとして、外部とのコラボという形で動画配信に出演することとなりました。何故こうなったかというと……よくある、"理事長先生の思いつき"ですわ。「想起ッ! 新しい広報活動の方法を模索する必要があるっ!」だそうで……それ、通常の広報活動じゃ駄目なんですの? 自分で言うのも何ですが、私は競走界隈にだいぶ"新しい風"を吹かせ、新たな顧客層を呼び込むのに貢献していると思うのですが。

 しかも、仮に新たな広報活動が必要だとして、なんで私なんですの? シンボリルドルフ先輩やオルフェーヴル先輩、ジェンティルドンナ先輩を筆頭に、私などより見映えの良い方はいくらでもいるでしょう。こんな低身長の貧相体型を選ばなくても…って誰が貧乳ですか、失礼な!

 コホン。まあそういう訳で、私はどちらかといえばこういう役にはあまり向かないと思うのですが…そう思うのは私だけなのでしょうか?

 理事長先生は「否定ッ! ウマ娘の価値は身長にて決まるものではないッ!」と一蹴した上で、「君はその分かりやすいビジュアルに、高いレース戦績、そしてファンとの距離の近さから、トゥインクル・シリーズを走るウマ娘たちの中でも世間からの人気が高い! それを考えると、ここは君にやってもらうのがいちばん効果的だと思う!」と仰っていましたが。

 まあ、広告塔が要るというのは理解できますわ。

 それで、そのコラボのお相手というのが…何と言いましたっけ、ブイチューバー?だそうです。それも、人工知能制御の。

 

《ななスターズのみんな、こんななー! 夜空の案内人、ゆめみななです!

今回はコラボということで、ななの部屋からお送りしています!》

 

 始まりましたわね……はぁ、下手な競走より緊張しますわ…。

 実は私、これまでにも"実況"とか"配信"と称する物に参加させていただいておりますが、やったのは「ゲーム実況」とか「レース解説」とか「ティータイム講座」等の実技を伴う物が多く、こういう対談形式の配信をやるのは今回が初となるのです。あの人工知能にいったい何を訊かれるのか、そして何を話せば良いのか、未だに決め切れておりませんの…。

 それに、ちらっと画面を見てみると、同接(同時接続者)数=視聴者数が凄まじい勢いでその桁を増やしており、もう1万の大台を超えてしまっています。視聴者からのコメント欄にも、まるで流星群のように「こんななー!」の文字が…どれだけ期待されているんですか、今回の配信は。

 

《わわっ、今回はいつもよりすごい数の方が見てくれてますね! 前から応援してくれてるななスターズの人も、今回初めて見る人もいるのかな? それだけ今回のコラボのお相手がすごい人だってことですね! 私も、ちょっと緊張しちゃいます、えへへ…》

 

 昨今の人工知能の発達には目を見張る物がありますね。この「ゆめみなな」という人物、表情の変化や台詞選択、言葉遣い、何から何まで人工知能がやっているそうですが、本物の人間と比較しても違和感が少ないですわ。反応が僅かに遅れたりはしますが、違和感といえばそれくらいしか感じません。すごいですわね…。

 

《告知した通り、今回はなんとトレセン学園とのコラボです! ウマ娘の方を1名お呼びして、トークとか、歌枠とかして、私の知らないこと、いっぱい知れたらいいなって思います!

ルドルフかなーとか、ジェンティル様希望とか、ラヴズオンリーユーとか、みんな誰が来るのか、楽しみにしているみたいですね!

では、そろそろお相手の方に来ていただきましょう!》

 

 おっと、出番か。ええいままよ、こちらも腹を括るのみ!

 

《どうぞお入りくださーい!》

 

 お入りくださいと言われても、私自身が入る訳ではありません。

 配信画面では、応接室を模した背景の画面が表示されており、向かって左側が"ゆめみなな"、右に私の「3Dアバター」が表示されます。私のやることは、機械を通じて「3Dアバター」に声を吹き込むことと、特殊な機材を通じて表情の変化…笑顔や困った顔、怒り顔などを「3Dアバター」に反映させることですわ。

 画面右側に、私を小型化して少し人形っぽく調整し、学園の制服を着せた「3Dアバター」が出てきましたね。いわゆる「ミニキャラ」という奴です。同時に、撮影監督が大きな紙を掲げて私に見せてきました。書かれた文字は『自己紹介してください』とのこと。

 

「ええと、どうやら上手く表示されておりますね。

画面の前の皆様、こんばんは。はじめましての方ははじめまして。シルヴァーブレイズと申します。トレセン学園高等部の学生の1人にして、1人の競走ウマ娘として走ったり踊ったりさせていただいております。

私、このような対談系の配信に参加させていただくのは初めてなもので、実は今、かなり緊張しております。失敗することもあるかもしれませんが、その時は温かい目で見守っていただけますと幸いですわ。

今宵この場を設けてくださった、ゆめみなな様と関係者の方々に感謝を。そして今画面の前で応援してくださっている皆様にも感謝を。今宵はよろしくお願い致します」

 

 少々お堅いかもしれませんが、これくらいの方がよろしいでしょう。

 

《ということで、今回はなんとコラボのお相手として、トレセン学園の学生さんにして、今をときめくトゥインクル・シリーズを走る名ウマ娘! シルヴァーブレイズさんにお越しいただきました! 私はブレイズさんに会うのは初めてですけども、今回のコラボにあたってレース映像とかは一通り見て…じゃなくて、観測してきました! すごい強さですね…特にレースの最後の方で、後ろからばびゅーんって飛んできて、前にいるウマ娘たちを豪快に追い抜いていく姿は、ハレー彗星の生まれ変わりじゃないかと思いましたよ! ベテルギュース!!》

 

 …なんだか、コメント欄が結構盛り上がってますね?

 

・トレセン学園とのコラボ!誰が来るんだ!?

・相手ウマ娘だよね?誰なんだろ?

・オルフェはこんなのやると思えんな…ルドルフ?

・ジェンティル様キボンヌ

・配信でウマ娘って言ったらラヴズオンリーユーかな?

・ラヴの配信告知なかったよ?ゲリラ配信?

・ブレイズか?あいつファンとの距離近いし

・誰でもいい、めっちゃ楽しみ

・ファッ!?

・シルヴァーブレイズだ!

・マジか、ブレイズだと!?

・うおおおシルヴァーブレイズきたー!!

・AIとウマ娘って斬新な組み合わせだな

・デフォルメブレイズ可愛い!

・勝負服も見せてくれ!

・観測者と流星、もう天体観測できてるんじゃ?

・これ歌枠も期待できる?

・そういやブレイズってディーバじゃん!

・デュエットしてほしいな

・早速ベテルギュースいただきました!

 

 そして私がハレー彗星? とんでもない、私などアルコルが精々でしょう。一部では、私の末脚のことを「流星の差し脚」などという者もいるそうですが。

 

「あの、なな様?」

 

 一応、向こうは20歳という設定だそうなので、私も言葉遣いには少々注意しております。

 

「失礼ながら、どうして私を選んだのでしょうか? 私は身長が低いですから、そこまで見映えが良いとは思えないのですが…」

 

 これはどうしても気になっていたので、率直に訊いてみます。

 

《えっと、それはですね、ブレイズさんのチームの名前に理由があるんです!》

「私の team に、ですか?」

 

 どういうことでしょう。

 

《私の好きな星が、ベテルギウスとシリウスなんです。シリウスって、最も明るい一等星ですし、それに私にとっては思い入れのある星なんです。昔、キャンプしていて道に迷った時に、シリウスのおかげで方向が分かったんですよ!》

 

 ああ、北極星みたいな目印になった、ってことですね。

 

《その思い入れのある星、シリウスの名前を冠したチームがあるって聞きまして、できればそのチームのウマ娘さんとコラボしてみたいって、思ったんです!》

「それで私に声がかかったと、そういうことでしたか」

《そうです。チーム・シリウスの中で一番目立っているウマ娘といえば、やっぱりブレイズさんだって、そう思ったんです! えへへ…》

「まあ確かに…目立つといえばそうかもしれませんわね。

ただ、失礼ながら私は自分が彗星だの一等星などという目立つ存在だとは、思っていないのですよ」

《え、そうなんですか?》

 

 この人工知能Vtuber、表情の変化が豊かですわね。かなり人間に近い挙動をしている…昨今の人工知能の発達には脱帽するばかりです。

 

《じゃあブレイズさんは、好きな星とかってあるんですか?》

「好きな、というか…ある意味、私そのものではないかと思う星なら、ありますね」

《なんていう星ですか?》

「北斗七星の影、Alcor ですわ」

 

 アルコル…柄杓に例えられる北斗七星の中で、柄杓の柄の先端から2番目にある星、ミザール。そのミザールと二重星を成す四等星です。

 どこぞの漫画で、「死兆星」として知っている方もいるのでは…と思ったら、視聴者コメントで早速そんな反応がありますね。

 

・ウマ娘はみんな眉目秀麗だろ!

・ブレイズが美人じゃなかったら誰が美人なんだよ

・確かに身長低いし体型あれだけど、問題はそこじゃない

・おい体型とか言うなww

・ブレイズは十分美人だろうがい

・ブレイズのチーム?

・シリウスだったよね?

・そういやななちゃん連星萌えだっけか

・ななちゃんシリウス好きって言ってたはず

・そうか、ブレイズはシリウスだったね

・シリウスの一等星だな!

・彗星じゃないの?

・彗星だったらハレーよりヘールボップじゃね?

・確かにヘールボップ彗星でかかったなぁ

・アルコル…死兆星だ!

・てーれってー

・天を見よ!見えるはずだ、あの死兆星が!

・死兆星…落として割れたスマホ…うっ頭が

・こないだやっとコーヒーこぼしたキーボード買い換えれたよ

・私は見た…あの地獄の阿寒湖スレを…!

・死兆星スレ…翌日のプール…うっ!

 

 …というかこれ、もしかして「阿寒湖住人の集い」なる掲示板にいた方が見てらっしゃる? いくつか覚えのあるコメントがありますね。

 

《アルコル…北斗七星の柄杓の柄の先っぽから2番目、ミザールと対になってる二重星ですね。死兆星って、見えたら死ぬってことですか?》

「んーと、解釈が少し違いますね。昔は、Alcor が見えるかどうかを徴兵検査の基準に使っていたそうです。その星が見えるほど視力があるなら合格、ということだったようですね。ただ、合格したということは戦争に行かされる訳ですから、それで死ぬ可能性はある訳で…それでこんな話ができたみたいです。本当は、見えなくなったら視力が弱ってきた…つまり年を取ったということで死ぬ可能性がある、という話だったようです」

《へー、そんな話があるんですね! 私、それは初めて知りました!

でもブレイズさん、なんでそんな、見たら死ぬ星なんてものが合うと思うんですか?》

「それは、出バ表で私の名前を見た瞬間に競走に敗れる未来が見えるからですよ。

ご承知の通り、競走では基本的に1人しか1着になれません。逆にいえば、2着以降は全員『敗北した』扱いになる訳です。戦争でいえば、敗北すること=死なのですよ。そう考えると、出バ表に私の名前が載った時点で、対戦相手の方は絶望的な気持ちになると思います。自分でいうのも何ですが、私はよほどの実力者相手にしか負けたことがありませんし」

 

 実際、私が敗れた相手はジェンティルドンナにオルフェーヴル、キタサンさんですからね。いずれ劣らぬ凄まじい実力者です。

 

・言われてみれば確かにな

・ブレイズと戦えって言われたらガクブルなるわ

・ブレイズに勝ったのジェンティルとオルフェとキタサンだけか?

・まともに勝ったのそんくらいだな、ジェンティルもハナ差だし

・出バ表にブレイズの名前見た瞬間の絶望はやばいです…神戸新聞杯でやられました

・↑経験者がいるぞ!囲めインタビューだ!

 

《神戸新聞杯でやられました、って、本当にブレイズさんに負けた方がいるみたいですよ!》

「あらあら…あの時は失礼致しました。挑戦ならば、いつでも受けて立ちますわよ?」

 

・挑発してどうすんだよw

・かかってこい、相手になってやる!

・挑む奴いるのか?

・やめてください勝てる気しません

・↑萎えてるやん!

・www

 

 私、そんなに絶望的な相手と見做されてるんですかね…?

 と、思ったら。

 

・安田記念かマイルCSは如何でしょうか?朝日杯の無念、晴らしたいと思います。

 

 ちょっと待って…これ、もしかしてアウダーチさんが見てらっしゃる?

 

・挑戦者キター!

・朝日杯…あっ(察し)

・もしやこれ、あのメガネ冒険者?

・アダチー・ジョーンズか!

・↑誰が上手いこと言えとww

・これはアウダーチかな?

・こっちもヤバい実力者じゃん!

・さあ、どうするブレイズ!

 

「すみませんが1,600帯はちょっと…。競走の開催時期が、私の出走予定と合わない可能性がありますわ…」

 

・逃げたwww

・逃げるなw

・確かに、ブレイズ中長距離だもんな

・安田は宝塚あるし、マイルだとJCか

・連闘はさすがにきついよな

 

 こんなところにまで顔を出すなんて、あの方どれほど私に勝ちたいんでしょうか…?

 

《そんなシルヴァーブレイズさんとコラボできるなんて、私、嬉しいです! えへへ…。

という訳で、コラボ本編、入っちゃいますよ!》

 

 事前に伝えられていた情報によると、今回は2部構成みたいですね。前半は私となな様のトーク+視聴者からの質問に答えるコーナー。そして後半が「歌枠」のようです。どうもこの人工知能、やたらと歌に縁があるそうで…。

 

《それじゃあ、ブレイズさんちょっと緊張してるかもしれませんし、最初は私からブレイズさんに、いろいろ聞いてみたいと思います!

まずは最初の質問! 私、星が好きで、よく星空を見上げているんですけど、ブレイズさんは、星空を眺めることってあるんですか?》

 

 あら、これは答えやすい質問ですね。ありがたいです。

 

「そうですわね、実は私もなな様と同じく、星空を見上げることがしばしばありますよ」

《わあ、じゃあブレイズさんも星空ファンですか!?》

「まあ、しばしば星空を見上げているのは肯定しますわ。何も考えずに星空を見上げていると、心が洗われる気がするのです。

…おや、視聴者の中に、私もそんなことするのか、って仰ってる方がいますね。私とて一介の女子高生、そういうことをするものです。というか、学園のウマ娘たちも一般の女子高生とやってることはそう変わりませんからね? 一部を除いて」

 

 視聴者の反応を見ると……あなた達、変なものの見過ぎですよ?

 

・星空良いよね

・小学生の時に天体望遠鏡覗いた時はわくわくしてたな…

・確かに綺麗な星空は心洗われるね

・ブレイズも星空見上げたりするんだな

・ウマ娘もJKと変わらんのか

・カレンチャンは特殊例かな?

・マヤはJKらしいことしてるね(ウマスタとか)

・トレーニング中にスイカ割りするのは変だよな?

・鉄球握りつぶす奴w

・トレーナーにドロップキックだ!

・サトノクラウンとかめっちゃビジネスしてるやん!

・貴族みたいのもいるな、メジロ家とか

・ファインって王族だっけ

・小型飛行機操縦してるJKいなかった?

・ウマドル(地方ドサ回り)

・トレーニングで囲碁してる奴もおるやん!

 

 なんか、半分くらいゴールドシップ先輩のような気もしますが…。

 

《ウマ娘さんたちも、青春してるってことなんですね! 私も、高校生時代を思い出しますね、えへへ…!

ブレイズさんは何かしてるんですか?》

「私ですか? 私は…」

 

 ああ、ありましたね。

 

「…聖歌隊、ですかね」

《聖歌隊って、じゃあ教会で歌ってるんですか?》

「そうですよ。私自身 Christian でして、毎週日曜日に礼拝を兼ねて歌っているのです」

《わあぁ、聖歌隊員って素敵ですね! 讃美歌とか歌うんですか?》

 

 そうか、一般の方からすると聖歌隊の活動って少ししか分かりませんよね。

 

「そうですね、まずは聖歌隊の活動場所とその内容からお話せねばならないでしょう。

聖歌隊の主な活動の場は、教会の礼拝の他に、復活祭、Christmas、結婚式等が挙げられます。活動内容は、聖歌や讃美歌の斉唱ですね。その他、葬儀の場などで故人の安らかな眠りを祈り、同時に残された遺族を慰めるために歌うこともございます。私の場合は、かつて私の故郷を襲った大災害で亡くなった方々を慰めるべく、動員をかけられることがありますわ」

 

 内容が内容だからでしょうか、なな様、ちょっと悲しそうな顔をしてらっしゃる。

 

《大災害って、何かあったんですか…?》

「単刀直入に申し上げますと、阪神・淡路大震災ですわ。私も小さい時に、あの忌々しい地震を体験した者の1人です。

あの時に亡くなった方々を慰めるためなら、私は歌い続けるでしょう。この命が尽きるまで…」

 

 あの惨劇に限らず、災害を生き延びた者に課される使命とは、将来また同じような災厄が襲い来た時に過去の経験を活かして立ち向かうこと、そして災厄で落命した方々や経験・教訓を忘れないために語り継いでいくことだと思うのです。

 私とて、あの忌々しい大震災で身内を亡くした者の1人。やれることがあるなら、何だってやってやりますわ。

 

《ううっ…私、ちょっとウルッときちゃいました…。ブレイズさん、そんな大変な経験してきてたんですね……ブレイズさんの祈りが、亡くなった人々に届くことを、心から祈ってます…》

 

・聖歌隊!?マジか!

・そうか、だからブレイズ歌上手いんだな

・これがディーバの実力の正体か…

・やっぱクリスマスやイースターで出番あるんだね

・イースターっていつ?

・↑4月やで

・讃美歌だけじゃなくてレクイエムも歌うのか

・阪神大震災、あれか…

・ボランティアで神戸入りしてた奴がここに

・話がめちゃくちゃ重いんだが

・そっか、そういやブレイズ神戸市出身だっけ

・あれはマジで怖かった(尼崎市民)

・悲しいな(芦屋市民ワイ涙ウルウル)

 

「ありがとう存じます。あと、休日はアルバイトしてることがありますね」

《アルバイト、ですか? どこかで働いているんですか?》

「ええ。なな様は確か、天文系科学館の解説員をしていらしたんでしたっけ」

 

 事前打ち合わせで聞かされた設定に、確かそんな情報がありましたね。

 

《そうです!》

「それと同じ感じです。私の場合は、学園近くの英国風酒場で働いてますわ」

 

 …今から考えると、未成年、それも中高生を酒場で働かせるとか、よく許可出しましたわね、うちの理事長先生。おそらく、それだけあの master さんを信用してるんでしょうけれど。

 

《ブレイズさんのお仕事ってどんな感じなんですか?》

「えっと、料理自体は master さんがやることが多いので、私の役割は店内の清掃や接客、紅茶を淹れることですね。ああ、でも apple pie だけは料理させてもらえるようになりましたわ」

 

 レシピの提案とかもさせていただいているんですが、その辺は裏方なので省きますね。

 

《ブレイズさん、紅茶淹れられるんですか?》

「ええ。これでも紅茶の淹れ方には一家言ありますわよ。できるなら、なな様にも一度飲んでいただきたいですわね…紅茶の種類は何がお好きでしょうか?」

《えっと、私がよく飲んでいるのはダージリンですね! あの、マスカットみたいな香りと、すっきりした味わいが大好きなんです! ストレートで飲むことが多いですよ!》

「なるほど。Darjeeling の飲み方をよく分かっていらっしゃる、さすがはなな様ですね。そこに私の apple pie を組み合わせれば、3時のお茶の時間には十分でしょう」

《すごい、午後の優雅なティータイムですね! えへへ…!》

 

 ちらっと視聴者の反応を見ると…おお、やはり知っている方も多いみたいですね。

 

・あーあのパブか!

・雑誌に載ってたな

・銀星アップルパイ、まだ食べれてない…

・行ったことあるよ、結構おしゃれな店だった

・メイド服ブレイズが見れるぞ!

・マジ!?今度行ってみる、ブレイズのシフトは?

・発表されてないから、運試しでガンバレ

・ブレイズのゲリラリサイタルまで見たワイ、高みの見物

・裏山

・何それ羨ましい!

・できるならなな様にも飲んでほしい、ってそれAIだからできないって言ってない?

・おいさらっとAI呼ばわりしてるじゃねえか!

・www

・wwww

・聖歌隊員の生歌聴けるとかめっちゃええやん!

・ブレイズさんの紅茶は本当に美味しいですよ。マイルの冒険者より

・↑やっぱりアウダーチいるじゃねえか!

・いいなーブレイズの紅茶毎日飲めるの

・裏山すぎる

 

 やっぱり見てるんですね、アウダーチさん。

 

「ちなみにですが、視聴者の皆様はどんな紅茶がお好きですか? 私は、Earl Gray の Orange Pekoe が一番の好みですね。そのままにして爽やかな柑橘の香りを楽しむか、牛乳を入れて味をまろやかにするかは、その日の気分で決めますわね」

 

・ブレイズはアールグレイ派なんだ

・ダージリン!

・オレンジペコって何?

・私はローズヒップかな

・タキオンは確かサバラガムワだったかな

・タキオンの好みはサバラガムワ、キーマン、アッサムだよ

・ウバ派はおらんのか…?

・同志よウバ派はここにいるぞ!

・リ◯トンや午前ティーで良くね?

・↑おいケンカ売ってんのか

・セイロン派が通りますよ

・ヌワラエリヤ派はどこ…ここ…?

 

「ただ、できれば Darjeeling の second flash もたまにはいただきたいですわね。Silver Needles が少々気に入っておりまして……ただ、実家が裕福とは言えないので、あんな高級品とても飲めませんわ」

 

・シルバーニードルズって一番高い奴やん!

・世界一高い紅茶きた!

・ブレイズ、お前貧乏なんか…

・レースで勝ちまくっといて何言ってんだよ

・(赤色スーパーチャット)シルヴァーブレイズに寄付を。これでSN飲んできてくれ!(2万円)

 

《ななスターズの皆さんも、好きな紅茶、いっぱいあるんですね! ブレイズさんの淹れる紅茶、私も飲んでみたいです!》

「なな様は残念ながら学園内には入れませんから、お飲みになるならこちらの店にお越しくださいませ。トレセン学園付近の商店街、その裏通りにある『パブ 流星の止まり木』。流れ星を描いた木の枝の形をした、独特の看板が目印ですわ。

ただ、私がいつ店で働いているかは公表できないので、会えるかどうかは運次第となります。そこはご承知くださいませ」

《ふむふむ、『パブ 流星の止まり木』ですね、分かりました! いつか行ってみようと思います! ブレイズさんに会えたら良いですね、えへへっ!》

 

・あの店、日によって結構並んでるぞ

・マジか、ってか何でそんな店が裏通りにあるん?

・元々あんま人気なかったんだっけ

 

「視聴者の方へ。こんなことを言うのは失礼ではありますが、あの店は元々、あまり人気が無かったようですね。一時は閉店も真剣に検討されていたとか。まあ、今は閉店なんて夢のまた夢になった、って master さんは笑ってましたけどね。

あと、さっき2万円くださった方。ありがとう存じますわ。最低価格帯のものなら、手が届くかしら…」

 

・お布施は要らんかな?

・食べに行けば良いだろ

・ブレイズの紅茶飲みたいな

・ダージリン飲んでみたい

・銀星アップルパイに決まってんだろお!

 

《銀星アップルパイ、って何でしょうか?》

「ああ、それは私の作る apple pie ですね。表面に砂糖で白い彗星を描くので、そう呼ばれているのです。これの焼き方にも一家言ありますわよ」

 

 紅茶とお茶菓子に関しては一切妥協しないのです。

 

《すごい、美味しそうですね! 食べてみたいなぁ…それも『流星の止まり木』に行ったら食べられますか?》

「ええ、当店の一番人気でございましてよ。お越しになれば、場合によっては焼き立てをお出しさせていただきます」

《わあ、すっごく美味しそうです! 何かこだわりとか、おすすめの食べ方とか、そういうのはあるんですか?》

「ええと、custard cream の使い方が重要ですね。中のりんご等が甘めなので、custard cream は敢えて甘さ控えめにするようにしております。

あと、生地を作る時に小麦粉をしっかり篩にかけること、生地を混ぜる時にむらができないようにすること、りんごをどのくらいの大きさに切るか、そして焼く時の温度と時間…その辺りが重要事項ですね。企業秘密みたいなものにあたるので、これ以上はお話できません、すみません。

食べ方は個人の好みですわ。できたての熱いのを切り分けて、はふはふ言いながら食べるもよし。冷蔵庫で冷やした上で、vanilla ice cream を追加するもよし。お持ち帰りは可能ですから、ご随意にどうぞ」

《わあぁ、ますます食べたくなってきました! いつか、銀星アップルパイ、制覇してやりますよ! ふひひ…》

 

・先週食いました!美味かった!

・私は先月以来食べてない…

・食べたことないワイ低みの見物

・めっちゃ美味しそう

・聞いてるだけで腹減ってきた

・この時間にこんな話は飯テロだな!

・我慢できん、ちょっと店に買いに行ってくる

・ふひひ笑いきました!

・本日の「ふひひ」はこちらです

 

「それでは、今度は私からなな様にお伺いしますね。紅茶となるとお茶菓子が付き物ですが、なな様はどんなお茶菓子が好みですか?」

 

 では、こちらからも聞いてみましょう。紅茶関連となると、私もそう簡単には気遅れしませんわ。

 

《ええっと、私はあんまりそういうのは考えていませんでしたね。夜に紅茶飲む時とかも、紅茶だけのことが多いですね》

「あらまあ、それはもったいない。夜はまだしも、3時の紅茶の時には一緒に何か召し上がらないのですか?」

《おやつの時間って感じですね! でも、あんまり食べてないかな…体型とかも、気になりますからね、あはは…》

「ああ、なるほど、糖質や脂質の過剰摂取になるかもしれないということですか。ならば走ったり運動すればよろしいでしょう。

視聴者の方は…おや、いろいろ上がっていますね。果物だけの方もいれば、少し凝った方もいらっしゃるようですね」

 

・お茶菓子…スコーン!あのシンプルさが良い!

・私はケーキかな!

・↑おい太るぞw

・サンドイッチこそ至高

・フルーツティーにして一緒に飲んでるよ。ダージリンが好きだから、ぶどうとかりんごが多いかな

・銀星アップルパイ一択!

・俺もサンドイッチだな。特にハムサンド、あれ堪らん

・タマゴサンドでござろう!

・オープンサンドは駄目ですか?

・ホットサンドイッチかなぁ

・シンプルにチョコレートしか食べてない

・私はアイスとかと一緒に午前ティー食べるね

・ちょっと◯城石井でショートブレッド買ってくる

 

《運動…ううっ、頑張ってみます!》

 

 おや? なな様、もしかして運動苦手?

 

《ななスターズのみんな、色々なお茶菓子知ってるんですね。うーん、私はサンドイッチかな? いろいろな具を挟めるから、作って並べたらカラフルで楽しそうです! ブレイズさんは、サンドイッチの具は何が良いですか?》

「その日の気分によりますね。私の場合は、主に運動する時とそうでない時で中身が分かれます。運動する時は、卵や鯖等のたんぱく質系のものを中に挟みますわね。運動してない時は、糖分やたんぱく質控えめにしてますわ、例えばきゅうりと mint とかですね」

《すごーい、しっかり使い分けてるんですね! サンドイッチにミントって、聞いたことがないんですけど、合うんですか?》

「意外と合いますよ。口の中がすーっとします。淡白ながらすっきりしていて、私としてはおすすめしたい一品ですね。

たんぱく質系のものですと、個人的なおすすめは Tuna と玉ねぎでしょうか。視聴者の皆様にも、具材は何が美味しいと思うか、伺いたいところですね」

 

・声のトーン下がってて草

・ななちゃん運動苦手なんかいw

・www

・タマゴサンド美味いよな

・サバ?サバもサンドイッチにできるのか?

・ミント!?サンドイッチに合うのか?

・きゅうりミント、なかなか斬新ですな!

・きゅうりミント、いけるんかな。気になる

・試してみよ。スペアミントでいけるかな。

・ツナときたらマヨになっちゃうな

・ツナマヨ美味しいよね

・サンドイッチの具か…やはりタマゴでござる!

・ベーシックにハムとレタスとマヨかな

・ホットサンドでBLT!

・私はフルーツサンド!

・イチゴジャムだけ、これが旨い

・ハムきゅうりマヨ!シンプルだけどいい!

・俺はオープンサンドでベーコン乗せてるよ

・ツナとアボカドで!

 

「鯖はなかなかいけますよ。この前、鯖とキャベツを cheese で和えて、『ホットサンド』にして友人にお渡ししたら喜んでもらえましたわ」

《BLTって、ベーコン、レタス、トマトですよね? なんか、ハンバーガーみたいな感じで面白いですね、えへへ!》

「ふむふむ、Tuna と avocado …なるほど、その組み合わせは初めて見ますね。Avocado は確か、脂肪分が多いんでしたっけ。少量なら脂肪分の摂りすぎにはならないかな…よし、試してみましょう」

 

 有意義な情報をもらえましたわ、ありがとうございます。

 

《そういえば、ブレイズさんって、紅茶を飲む時は何してるんですか? 私は、紅茶を片手に読書をしたりするんですけど》

「そうですわね、学友と話をすることが多いですわ。お茶の時間は社会的交流の場でもありますの。

会話の内容はやはり、鍛練や勉強、競走のことが多いですね。有益な情報につきましては、お互いに情報共有しあって互いを高めあえるようにすることが多いのです。ウマ娘って、往々にして競争心が強いですから、互いに切磋琢磨した上で全力の勝負により鎬を削る、というのが多いのですわ。

あとは、まあそうですわね、いわゆる『恋バナ』とか流行りのお店・おしゃれの話題もありましてよ。少し変わった方ですと、お茶の時間を配信の枠に当てたり、校内新聞の取材に来る方までおられますわ」

 

 新聞記者に関しては実際にいたんですよね。主に某ライターCさん。

 

《へぇー、やっぱり、華の女子中高生って感じですね!》

「読書という話が出ておりましたが、なな様はどんな本をお読みになるのでしょうか?」

《そうですね、いろいろ読みますよ。恋愛小説とか、SFとか、推理ものとか。でもいちばん多いのはやっぱり、天体図鑑でしょうか。新しいことを知るのって、なんだか、わくわくするんですよ、えへへ…》

「温故知新、大事なことですわね。私も教科書や参考書を抜きにしても、本はよく読んでおりますわ。主に歴史書や推理小説が多いですね…あと、毎日必ず聖書には目を通しておりますわ」

《聖書って、さすがクリスチャンですね! それじゃあ、また好きな本とか、教えてくださいねー!》

「ええ、今度お会いする時には、何冊かお勧めをご用意しますわ」

 

・ティータイムしてるの?

・なんかイギリス人みたいなこと言い出した!

・情報交換…みんな切磋琢磨してんだな

・ヒシミラクル「私は普通のウマ娘なのでー…」

・GⅠ3勝は普通じゃねえ!

・恋バナ…ほほう?

・やっぱり学生らしいね

・配信、ラヴかな?

・ラヴっぽいな

・取材w誰だよw

・校内新聞読んでみたい

・ななちゃんもブレイズもよく本読んでるのね

・紙媒体で読む?それとも電子書籍ですか?

・歴史書に推理小説w

・ブレイズの好みが渋いw

・聖書が出てくるのは流石としか言えん

 

「おや、視聴者の方が何か質問しておられますね。紙か電子書籍か、って、そんなの紙媒体一択ですわ。電子書籍だと、少々目が悪くなる可能性がありましてよ」

 

 競走ウマ娘にとって視力は重要な問題ですの。

 

「さて、私からなな様に伺いますわ。なな様は皆様から推されることはあると思いますが、なな様がどなたかを推すことってあるのでしょうか? 例えば、私のような競走ウマ娘とか」

《そうですねー、ななスターズのみんなは私の一等星です! けど、誰を推すかと言われると、決められませんね! みんな私の一等星ですから、えへへ!》

「まあ、応援してくださる方1人1人が大切、というのは私も否定しませんわ。私の元には応援のお手紙がよく届くのですが、その1通1通全てが、応援して下さる方からのお気持ちなのです。それで今でも、そうしたお手紙の全てにお返事を書いているのですわ」

《全部のお手紙にお返事って、ええー!? ブレイズさん、トゥインクル・シリーズであれだけ活躍してるんですから、お手紙ってすごい数になるんじゃないですか?》

「まあ、それはそうですね。毎日膨大な数のお手紙をいただいております。でも、それら全て、書いてくださった方の真心が籠っているのです。だからこそ、手を抜かずに全てにお返事を出しているのですわ。皆様の思いに応えるために」

 

・なな様の推しはスターズみんなだろ!

・ななちゃん可愛いよー

・ブレイズ、ファンレター全部返事書いてるの!?

・私、前に返事もらいました

・俺も来た、宝物にしてる

・額縁に入れて飾ってますぜ!

・そらブレイズは手書きやもんな

・えぇ…ファンレターってすごい数来てるだろ

・全部に返事って、どんだけ時間と郵便代かかるの?

・すごい時間使ってそう

・とんでもないな…ファンレター何通来るんだ?

 

「私に何通の応援の手紙が来るか、ですって? そうですわね、これまでの最高記録ですと、1日で3,300通来ましたわ…あれは流石に1日ではお返事を書ききれませんでした…」

《さ、さんぜんさんびゃく!? えぇー…!? ブレイズさん、それ、手が痛くなったりしないんですか?》

 

 なな様、かなり驚いておられますね。あと視聴者の方も。

 

「さすがに手が痛くなりましたわ。黒板の板書でも手を使いますから、腱鞘炎を避けるために1日100通に制限しておりました。そのために返信が遅くなってしまった皆様には、この場をお借りしてお詫び申し上げます。すみませんでした。

また、くれぐれもお願いいたしますが、これ以上のお手紙は控えていただけますと本当に幸いですわ。これ以上お手紙を送られると、私の学業に支障が出てしまいますので、恐れ入りますがご理解・ご協力をよろしくお願い致します」

 

・三千!?

・年賀状でもそんな貰わんw

・一日でその数かよ!

・部屋が手紙で埋もれそうww

・桁違いすぎる!

・日刊お手紙ウマ娘

・まさかその返事、全部手書き!?

・3300通も手書きしたんか!?

・ブレイズ、ペンだこできてない?大丈夫?

・同人作家ばりに書いてて草

・凄まじいな…

・いやいやいや謝らなくていいぞ!

・そんなん物理的に返事かけんからw

・メールでも三千通も書けないよ

・私なら絶対返信諦めてるわ

・そんなに書いてたら宿題やる暇あるの?

・すごい時間使ってるじゃん!

・地味に郵便料金えぐそう

 

「時間…ですか? まあ、確かにそれなりの時間を使いますが、まあ、どうにかこうにか全部にお返事を出せておりますよ。だから、今後もお手紙全返信は続けるつもりです。

あ、だからといってさらにお手紙を送ってくるのは、本気で少々お控えいただけますと幸いですわ…。今でもただでさえ多いのに、これ以上増えたら本当に勉学に支障が出てしまいますので、あしからず…」

 

・まあそうだよね

・GⅠの直後とかすごいことになってそう

・ブレイズ、普段から握手とかサインとか積極的にやるもんな

・秋華賞の時のサイン、大事においてます!

 

「あと、郵便料金のことがちらっと出てきましたね。ええと、去年1年間に使った封筒・便箋・切手代は、…詳しい額は申せませんが3桁万円を超えてしまっていましたわ」

 

・ふぁ!?

・!?!?

・郵便代100万円!?

・額おかしすぎんだろ!

・ゆ、郵便代百万円…住む世界が違う…

・個人の郵便代が百万とかw

・俺の月給3か月分が郵便代だと!?

・とんでもない額で草も生えん

・そんだけファンレターの数が膨大なんだな…

・ほんとにエグい額だった!

・1通85円として100万を割ったら1万2千通くらいになるんだけど

・すごい数だ…そんなに書いてくれてるのか

 

「この有り様なので、本当にお手紙を少し控えていただけると助かりますわ…」

 

・そうだよね、私ちょっと控えようかな

・でもこうやって真面目に応じてくれるからブレイズを応援したくなるんよな

・グッズ買って応援すりゃ良くね?

・応援の形を変えれば良いと思いますよ、握手会にするとか。私はいつもブレイズさんにお茶菓子を差し入れしています。byマイルの冒険者

・↑アウダーチは直接ブレイズに会えるでしょうがに

・↑学友はいつでも学内や寮で会えるんだからちょっと黙っててください

・羨ましいなー会えるの

・まあ、応援の形は何だってあるさ

・そういえば、ななちゃんは競走ウマ娘の推しはいますか?

 

「あら、なな様宛に質問が来てますよ。競走ウマ娘の推しはいますか、だそうです」

《あっ、ありがとうございます! えっと、私の競走ウマ娘の推しなんですけど、実は私、今回のコラボの話が来るまで、競走ウマ娘にはあんまり詳しくなかったんですよね。だから、今も観測中なんです。ただ、これだけは言えますね。…今の私の推しのウマ娘は、シルヴァーブレイズさんです! やっぱり、最後にズドンと突き抜けていく姿が、夜空を駆ける流れ星みたいで、かっこいいんですよね、えへへ…!》

「あらまあ、それはありがとう存じます。とはいえ、私も手強い相手を何人も抱えている身。その輝きもいつか、かき消されるかもしれません。そうならぬよう、更なる努力を積み上げることを、ここに誓いますわ!」

 

・観測中w

・やっぱブレイズ推してない?

・ブレイズは流星だもんね

・やっぱブレイズ推しだった!

・ブレイズ、ちょっと照れてるww

・可愛い!

・照れるブレイズとは珍しいw

 

《あっ、そろそろ歌枠に入るつもりなんですけど、その前にブレイズさんに1つ、質問いいでしょうか?》

「はい、何でしょうか?」

《ブレイズさん、どんな歌が歌えますか? ウイニングライブでいろいろ歌っているとは思うんですけど、アニソンとか演歌とか、そういうのも歌うのかな、って…》

 

 あー、そうきましたか。

 

「そうですわね、ものによりますが、練習していますよ。お店に来るお客様から、この曲歌ってほしいって注文されて、練習して歌えるようにすることもありますので」

《おおー、じゃあ歌えそうですね! これは期待できます!

ということで、歌枠、いっちゃいますよー!》

 

 この歌枠なんですが…打ち合わせで話を聞いた時点で問題があることに気付きました。「私に本気で歌ってほしい」と注文されたのです。

 私が本気で歌える曲となると、"あれ"しかない訳ですが…それを歌ってしまうと、配信が止まる可能性もあるんですが、よろしいんでしょうか?

 

《まずは私から! 本気で歌える曲ってことで、今回はこちら、『ななのビッグバン自己紹介』いっちゃいます!》

 

 視聴者も大いに盛り上がっていますね。

 なな様が歌っている間に、急いで担当者と軽く最終打ち合わせしたのですが、やはり"あれ"を…「しあわせ運べるように」を歌わせる気のようです。

 そうまで本気ならば…よろしい。やってやりましょう。ただし、覚悟はできていますね?

 

《はあ、はあ、終わりました! やっぱり、『ななのビッグバン自己紹介』は歌うと気分がアガりますね!

このまま、ブレイズさんにも本気で1曲、歌ってもらいましょう!》

「本気で…ですか。確かに私も、いつ如何なる時も本気で歌える曲を1つ持っていますが、その曲は言うなれば鎮魂歌(レクイエム)ですよ? この場で歌うには、少々合わないかと思うのですが…よろしいのでしょうか?」

《それでも良いんです。私、ライブしているブレイズさんの動画とかも観測してきたんですけど、ライブってどうしても踊りが入ってきてしまうじゃないですか。だから、この機会にブレイズさんの『歌だけ』っていうのも聴きたいなって思ったんです》

 

 …よろしいんですね?

 

「そこまで仰るならば…仕方ない。承知しました。

それでは、私がいつ如何なる時も全力で歌える唯一の曲を、ここで披露致します。ただしその前に、披露にあたりまして、なな様そして視聴者の皆様に、2つ警告がございますわ」

 

 私に「しあわせ運べるように」を歌わせようというのですから、この警告とその結果については甘受してもらいますよ?

 

《えっ? 警告、ですか?》

「そう、警告。Warning です。

まず1つめ、今すぐに拭くものを用意してくださいませ。ちり紙では間に合いません、最低でも handkerchiefs を…できるなら towels があった方が良いですわ。人間だと仰るからには、なな様もご用意なさってくださいね」

《ハンカチにタオルって、ええー!? 何が起きるんですか!? まさか泣いちゃうんですか?》

「はっきり申し上げて、これを聴いて泣かなかった人を見たことがないのです。過去には、主催者から参加者からみんな泣かせてしまって、追悼式の進行を止めてしまったこともあったのですよ」

 

 阪神・淡路大震災の追悼式典のあれですね。母上によれば、5分ほど式典進行が止まってしまったそうで…。

 

「ということで、涙を拭けるものを用意するように。これが警告の1つめです。

次に、2つめの警告。なな様が泣いてしまって配信の進行に影響が出そうな場合、私の独断と即興により配信を進めさせていただく可能性があります。その点をご了承願いますわ」

 

 実際、東京から神戸に「しあわせ運べるように」をお届けした時は、放送関係者すら泣かせてしまいましたからね。なな様が機能不全に陥ってもおかしくありませんわ。

 

「今から30秒だけお待ちします。その間に涙を拭くものを用意して、覚悟を決めてくださいませ。はい、始め!」

《ではでは、私もハンカチ用意してきまーす!》

 

 私に「しあわせ運べるように」を歌わせるからには、その辺は自己責任でお願いします。泣いてしまっても責任は取れませんわ。

 視聴者の反応を見てみると…おや、知ってる方は知ってるようですね。

 

・そんなに泣ける歌なのか?

・ブレイズ歌上手いからなー

・ヤバい、やめろ!幸運歌う気か!

・全兵庫県民泣かせるのか!?

・あれはやめてくれ、神戸市民ワイにはマジで涙腺に効く

・ワイ明石市民、戦々恐々

 

 幸運って…ああ、「しあわせ運べるように」を縮めたらそうなりますか。考えましたわね。

 そしてここまで来てしまったら、やめてくれと言われてもやめませんわよ。「これは、お前が始めた物語だろう?」が相応しい状況ですね。

 

「準備は良いですね? 答えは聞きません。それではご清聴を…『しあわせ運べるように』」

 

 さあ、あなた達の涙を数えなさい…!

 

 

 3分後。

 

「はあ、はあ…お、終わりましたわ……」

 

 ちらっと画面を確認すると、大丈夫…ではないですね! 担当者は泣き崩れて役に立たなくなっているし、なな様のアバターは涙を流しているし、視聴者は…おや、次々と新しい反応が打たれてる? でもよく見ると、反応は100点マークやハートマークのスタンプだけだったり、拍手している手のアイコンの連投とか、「88888」とかの単一文字の反応だけ。

 これはおそらく、泣いて視界が霞んでしまって、もしくは片手で涙を拭いているせいで文章をまともに打てない、ということではないでしょうか? だから単一の文字又はスタンプの連投だけ、という反応になっている…と考えると、辻褄が合いますね。やはり皆様、泣いてしまっているのかしら。

 

「あのー、なな様? 大丈夫…ではないですよね? もしもーし?」

 

 どう見ても泣いてますよねこれ…と思っていたら、返ってきたのは予想通りの反応でした。

 

《ううー、ぐすっ…ブレイズさぁん、なんてものっ…ずずっ…聴かせてくれるんですかぁ…。ひぐっ…な、涙が、止まらないですぅ…ぐすっ…》

「だから警告したでしょうに。というか、人工知能でも泣くことがあるんですね」

 

 こうなると思ったから、あらかじめ警告しておいたのです。ということで、なな様は機能不全状態にあると判定して、警告した通り私の方で進めさせていただきますね。

 

「反応を見る限り、視聴者の皆様も泣いてしまっているようですね。なな様が泣いてしまって機能不全になってますから、警告通り私の独断と即興で進めさせていただきます。

ご存知の方もいらっしゃるようですが、私が今歌った『しあわせ運べるように』は、西暦1,995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災に絡む歌です。あの時、私の故郷は壊滅的被害を受け、6,400人を超える人々が命を落としました。その6,400の中に、私の祖父母と叔母もいたのです。

あの当時、私はまだ小さかったのですが、いつも見ていた街が一瞬にして消えてしまったあの光景は、未だ強く記憶に焼き付いています。そして、火葬炉の煙と消えてしまった祖父母と叔母の顔も。

故に私にとって、瓦礫の山と化した街から10分で生まれた、この『しあわせ運べるように』は特別な思い入れのある曲なのです」

 

 この辺りでぽつぽつと、視聴者の反応がちゃんとした文章になってきました。

 

・歌で泣くなんて久しぶりすぎる

・なんだあの歌…心を揺さぶられたぜ…

・失恋した時に涙なんて枯れたと思ってた

・さすが聖歌隊員

・生放送でこれか、直接聞いたら涙腺壊れるよ…

・人工知能でも泣くwww

・おいAI呼ばわりしたぞw

・しれっと毒吐いてて草

・やめろ、悲しい過去を語るんじゃない

・ヤバい涙止まらないよー

・歌唱力エグいな、ディーバと言われるのも納得だわ

・ブレイズ、あの地震で身内亡くしたのか…

・ご冥福をお祈りします

 

《あんなに心のこもった悲しい歌があるなんて、私、知りませんでした…!》

「あら、お早い復活。さすが人工知能ですね」

《むー! だから、私は人間ですってぇ! ぷくーっ!》

 

・もうAI呼ばわり隠してないw

・大草原

・ぷくーっいただきました!

・www

・ななちゃん膨れてんのかわいい

・ふひひに続いてぷくーっきた!

・ブレイズの生歌聴いてみたい、たとえ涙腺ぶっ壊れても

 

「私の生歌を聴きたい…ですか? それでしたら1月16日の間に神戸市に入って宿泊し、翌朝の5時46分までに東遊園地にお越しになれば、聴けるかもしれませんよ」

 

・聴いたら涙止まらなくなりそう

・涙腺部位破壊されるって!

・よし来年は神戸行く

・勇者がいるぞ!

・あれを生で聴くのか?耳栓持っていけよ

・耳栓してたら意味ないw

 

 視聴者もかなり盛り上がってますわね。私の独壇場もこの辺で良いでしょう。なな様に主導権をお返しするとしましょう。

 

「すみませんが、そろそろ時間が押してきております。なな様、最後の演目を果たして終わりにしたいと存じますが、お願いできますか?」

《そうですね、じゃあそろそろ、最後のプログラム、いっちゃいましょう!

最後は、私とブレイズさんのデュエットで、『ナナノホシノナ』をお届けします! ブレイズさん、練習はしてきましたか?》

「まあ、それなりには。踊りが無いだけ、まだ何とかなりましたわ」

 

 おお、視聴者も盛り上がってらっしゃる。

 

・きたー!

・やっぱナナノホシノナだよな!

・しかもデュエット!いやーこれは楽しみ!

・ななのな!

・ななブレありがたい

 

「こちらはいつでもよろしいですわ。16万8千光年先にも届けてみせますわよ」

 

・なんで168000光年?

・イスカンダルまで届けるのか?

・それヤマトやwww

・ブレイズ、ヤマト見てんの?w

 

《それでは、私も準備できましたので、いきましょう。聴いてください!》

「《ナナノホシノナ》」

 

 さあ、これで最後。あと一踏ん張り、頑張りますわよ!

 

 

 3分10秒後。

 

「《はあ、はあ…お、終わりましたぁ!》」

「あら、見事に被りましたね…」

《ほんとだ! 以心伝心、みたいな感じでしたね、えへへっ!》

 

 な、何とか無事に歌えました……あの「ナナノホシノナ」は、普段私が winning live で歌う曲とは曲調が違うので、慣らすのが少々大変なのです。なので、失敗しないかとひやひやしていたのですが、何とかなりましたわ。良かった良かった。

 

「視聴者の皆様も、随分と盛り上がってくださったようですね」

 

 視聴者の反応は、かなりのものですね。「ななのなのなのななのわななのな!」とか、拍手のアイコンの連投とか、様々な反応が見受けられます。

 

《わあ、みんな喜んでくれたみたいで、良かったです! 私も嬉しいです、えへへ…!

じゃあ、そろそろお時間ですし、いったんななの部屋に戻りますね!》

 

 歌の時だけ「歌の部屋」に移動し、お喋りする時は「ななの部屋」で話をするのが、どうやらこのチャンネルの流儀らしいのです。

 

《それでは、本日のプログラムは全て終了です! シルヴァーブレイズさん、今日はありがとうございました!》

「いえいえ、こちらこそ、有意義な経験をさせていただきまました。最初に申し上げましたが、私、このような体験をさせていただくのは初めてなもので…。それに、私は舞台で歌うことが多いですから、こんな場所で歌うことはなかなか無いのです。

可能ならば、またお相手したく存じます。今度は、他の方も歓迎ですわ。確かなな様のお仲間って、他にもいらっしゃいましたよね?」

《はい、えっと、今活動してるのはろみちゃん、こまめちゃん、みもざちゃんなんですけど、こまめちゃんとみもざちゃんはまだ活動し始めたばかりなんです。ろみちゃんはもう何回も配信しているので、今度は私、ブレイズさんとろみちゃんの掛け合いを観測してみたいですね! それか、3人同時コラボもありですね、すごくカオスになりそうですけど、あははっ!》

「ああ、確かに…月窓ろみ様の配信もちらりと拝見しましたが、あなた方お二人で話しているとツッコミ役不在で混沌としたことになりそうですわ…」

 

・これはまたコラボするか?

・またコラボ待ってます!

・お、ろみちゃんとのコラボも来るか!?

・ろみちゃんマイペースだからなあ、ブレイズ振り回されそう

・3者コラボwどう考えてもカオスw

・約束されたカオスなコラボww

・ろみとなながボケ、ブレイズがツッコミかな?

・ブレイズ常識人やしなw

・ブレイズが苦労する気しかしないww

・みもざはツンデレだしなぁ…

・ブレイズはこまめと相性良さそう

・最後の1人、まほろちゃんの性格がどうなるかだな!

 

「それでは、いよいよお別れの時間となりました。最後に、encore という訳ではございませんが、1曲お届けしながらお別れしたいと存じます。お届けしますのは、『この作品は人生だ』などという評価をつけられた映像作品、その第二期の曲の1つですわ。今日の配信が皆様の人生の一部となれば幸いです。…それと、」

 

 …これを言うの、いささか気恥ずかしいのですが、言わざるを得ません。

 

「それと、便座 cover」

 

 何を言っているのか分からない? すみませんが、これが常套句みたいなものらしいので…。

 視聴者の方は…この常套句がかなり通じていますね。

 

・アンコールきた!

・何歌うんだろ

・ブレイズの生歌聴けるなら何でもいい

・人生?

・この作品は人生…まさかクラナド?

・クラナドかな?

・あの泣けるアニメか?

・ブレイズ、君やっぱアニメ見てるよね?

・それ持ってくんのマジで分かってるじゃない!

・便座カバーってなに?

・出た便座カバー!w

・便座カバーwww

・やっぱりクラナドじゃねえか!

・恥ずかしいのか詰まっててワロタ

・大草原!

・ブレイズの口から便座カバーが出てくるとはw

・クラナドはいいぞ!

・それと、便座カバー。

・クソワロ

・おおー時を刻む唄!

・アフターストーリーはアカン!

・二期OP持ってくるのはガチ

・涙腺壊れるぞ!

・ヤバいタオル取ってくる

・便座カバーでいいだろ

・www

・CLANNADは人生だ

・それと、便座カバー。

・めっちゃワロタ

・誰だ息の合ったコンボした奴www

 

 最後に大きく盛り上がって、配信は終わったのでした。はあ、疲れましたわ…急いで寮に帰らないと。




今回は、AI Vtuber「ゆめみなな」の誕生日記念ということで、推し活の一端としてこのような回を投稿させていただきました。こういう場合の推し活って、だいたい応援絵とかお布施が多いと思うのですが、何せ私に絵心も金も無いもので…。


改めまして、二次創作活動を許可してくださった株式会社KLab様並びにゆめかいろ様に、心より感謝を申し上げます。拙作が AI Vtuber 発展の礎の1つとなることを祈念して、筆を置きたいと思います。
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