最近、昼寝をしている時に限って空を自由に飛び回る夢をよく見る。
その夢を見ているときは自分が夢を見ているとは全く気付くことが無い。飛行機や鳥ポケモンの力を借りるわけでもなく、自分の意思で空を自由に翔る、涼しい風を身に受ける、まるで現実のような爽快感だ。そのため、目が覚めるとちょっとがっかりした気持ちになる。
目が覚めるなり浮かない顔をする私をフシギダネが心配そうに見つめる。ああ、ごめんね心配させちゃって。
あーあ、私に本当に翼があったらなー。
ゴミ出しをしていると近くのアパートの○○さんもちょうどゴミ出しをしているところだった。僕が挨拶をすると○○さんは挨拶を返した後、少し考えてから更に言葉をかけてきた。
「そうだ××さん、最近近所で発生しているポケモンの変死事件って知ってますか?」
「もちろん知ってますよ。怖い事件ですよね、死体は大型のポケモンに食べられたような痕跡があるんでしたっけ。この辺にはそんな大型ポケモンなんていないのに。」
「ええ、何者かが大型のポケモンを連れてきてるんじゃないのかと言われてますね。しかし、野生ポケモンだけならともかく、誰かの手持ちポケモンに被害が及んでいるのは本当に怖いし許せないですよ。」
「○○さんも気をつけてくださいね。」
「私のこと心配してくれてるんですか?××さんって優しいんですねー。」
シンオウ地方の民話にはポケモンと結婚した人間の話がある。たかが民話と笑い飛ばしたくなるけど、私は限定的ながらエスパーポケモンのような力を扱える人を見たことがある。そんな人たちの先祖はエスパーポケモンと結婚したから特別な力を持っているのかな。ひょっとしたら、エスパーポケモン以外にもポケモンの力を発揮できる人がいるのかも、例えば飛行タイプの空を飛ぶ力を扱えるとか…。
フシギダネがいなくなって1週間、一向に手がかりは見つからない。近隣で相次ぐ事件が脳裏をよぎり、恐怖と絶望で涙が出そうになる。
「お願い、無事に帰ってきて…。」
私には無事を祈るしか出来ない。大丈夫、あの子はまた私に笑顔を見せてくれる、そう自分に言い聞かせていると瞼が落ちてくる。そういえば最近まともに眠っていなかったっけ…。
今日も風が心地良い、眼下の木々や建物がとても小さく見えるのがなんだか面白い。
思わず笑みを浮かべていると急にお腹が空いてきた。さっき食べたばかりだけど、やっぱりあんな一口だけじゃ足りなかったみたい。どうしようかと思っていると、今まで見たことの無いような大きな食べ物が目に入った。しかも大きいだけじゃなく美味しそうで栄養も豊富そうだ。私は唾を飲み込むとうごめくそれに全速力で向かう、いただきまーす!
例の殺人犯の取り調べは思うように進まない、奴は口を開けば無実を主張するばかりだ。何が「見たことも無いやたら大きい鳥ポケモンに襲われてとっさに発砲したら○○さんの死体になった。」だ、嘘をつくにしてももう少し騙す努力をしてもらいたい。
しかし、被害者の女性も危険極まりない人物だったとは思わなかった。彼女の部屋からはポケモンの血や毛の付着した衣類やフシギダネの骨が見つかったのだ。
彼女こそが近隣で相次いでいたポケモン変死事件の犯人だったのだろう。なんでも、彼女は死の数日前にはフシギダネの失踪を涙ながらに警察や周囲の人々に話していたという。自分が殺しておいて何を言っているのか、実に薄気味悪い。あるいは演技でもなんでもなく、本当に自分のしたことを覚えておらず本気で心配していた、なんてな…。