吟のキャライベで言ってた「みんなでゲーセン行こうよ」をマジでやれよって怒り狂った結果自分で書こうってなってしまったんですね。

時間軸は二週目の6章後の自由時間とかあたり。
要するに全員キャライベ終わってて一番平和な時間という話。

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帰宅部 in ゲームセンター

 リグレット、そして楽士との戦いの最中。

 パトロールを行ったり、楽士の情報を集めたりする間の日常にも大切な時間はある。

 

 仮想世界とはいえここで出来た友達との交流は大切にするべきで、バイトといった楽しいだけではない疲れることもやって損はない。

 

 戦い続けるには息抜きは必要となるものだ。

 

 

 

『帰宅部 in ゲームセンター』

 

 

 

「で、着いたけどどうするよ。部長」

 

 先頭を歩いていた吟が振り返り、目的のゲームセンターに到着したぞと報告をする。

 

 以前にみんなで行こうと言っていたゲームセンターに、全員で都合をつけて来たのが本日だった。

 

「私、ゲームセンターなんて初めて来たわぁ! どんなゲームがあるのかワクワクしちゃうね」

「あまり離れないように気を付けてください編木。ここは広いのではぐれると合流しにくいですから」

 

 ささらが筐体の光による煌めきと音のうるささに目を輝かせてあちらこちらと見まわし、それを微笑ましそうに見ながらも、はぐれないように注意する鍾太。

 

 レベルワンというこのゲームセンターは、このリドゥでも最大手故に相応の広さを誇っている。ゲームセンター以外にもダーツやボウリングもあったり、スポッチャンという時間制遊び放題のスポーツエリアもあるので、後でそちらに行くのもいいかもしれない。

 

「はいはい! ニコ、あの景品欲しいです! 誰か取るの手伝ってくれませんか!」

「お、なら俺に任せとけ。ニコちゃんのためならどんな物でも取ってみせるぜ!」

「程々にしときなよニコ。どうせ取りづらい設定になってるんだからさ」

 

 可愛らしい大きなクマのぬいぐるみをクレーンゲームの中に見た二胡が、挙手をして参戦者を募りながら走っていき、それにいつもの如く小鳩が乗っかって、二胡と仲の良い切子が諌めた。

 

 そんな彼女らを見て、劉都が冷静に行動方針を提案する。

 

「とりあえずクレーンゲームエリアで絞って好きに分かれればいいんじゃないか。いくら広いと言っても一つのゲームに九人は多すぎるだろ」

「そうですね。二胡さんたちも待ちきれなくて行っちゃいましたし、WIREもありますからいいと思います」

 

 茉莉絵も苦笑しながら賛成した。

 何かあればWIREで合流してもいいのだから、問題になることはそうそうないだろう。

 だが。

 

「まあオマエらは大丈夫だと思うけど、キィとしては鐘太の言う通りササラが一人になった時が心配だなー。ササラだけは誰かしらが常に一緒にいたほうがいいと思うぞ」

 

 己の内側からのキィの発言の通りだ。

 

 マイペースにふらふら見物して一人になっているなんて場面はささらの場合だと想像に難くない。

 ましてや初めての場所で気持ちが上がっているようだから、一人だと気づかずにWIREを確認することも忘れそうだった。

 

 ささらに目をやった後、吟に目くばせをする。

 それだけで吟は分かってるよと言わんばかりに軽くうなずき、ささらに声をかけた。

 

「ささらさんは欲しい景品ありますか?」

 

 尋ねられたささらは所狭しと並べられたクレーンゲームに近寄ってガラスを眺めた後、困ったように眉を寄せる。

 

「そうねえ。うーん……可愛い物がいっぱいでみんな欲しくなっちゃうな。鍾太ちゃんは欲しいものある?」

「お、俺には選べないので聞かないでください……」

 

 苦虫を噛み潰すような顔で鍾太がそっぽを向いた。

 

 なんにせよ遊ばないクレーンゲームの前にいても仕方がない。ふらふらと六人で歩き出す。

 色々見ていけば取りたい景品も見つかるだろう。

 

「俺はクレーンゲームはやらないから分からないんだが、景品一つ獲るのにどれくらい金が掛かるものなんだ?」

「んー……台の設定とか、前の人の頑張り次第によるから一概には言えないけど、フィギュアだったら千円、二千円とかかな。ひどい時は万とか行くらしいけどね」

「万……普通に買ったとしても余るどころの話じゃないだろ」

「だから見極めが必要なんだよ。技術もないと獲れる物も獲れないしさ」

「見極めるにも技術を得るにも、カネを大量に使って何回も挑戦しないといけないのだろう? カネを使わないためにカネを使うなんて本末転倒だぞ。ニンゲンは本当に変な苦労をするな」

 

 何の気なしに聞いた劉都とキィが、吟の答えに信じられないとばかりに慄く。

 実際そこまで行くのは稀だろうが、二千円ぐらいなら普通にありえるのが怖いところだ。

 

「その分簡単に獲れた時は嬉しいですよ。このキーホルダーも友達と獲ったんですけど、可愛くてお気に入りなんです」

 

 その話を聞いていた茉莉絵がカバンに付いていた、頬が丸々としたリスを掲げる。

 女子はリスのような小さくすばしっこい動物が好きなイメージがあるが、茉莉絵もそうらしい。勿論友達との思い出という側面も強いだろうが。

 

「いいなー。私も茉莉絵ちゃんとお揃いの物欲しいな」

 

 リスを見て可愛い可愛いとささらが賛同する。

 それを見ているうちに何か思いついたのか、「そうだわ!」と声を上げた。

 

「帰宅部のみんなでお揃いの物を獲るのはどう?」

「いいですね! 同一のものを所持する、それは実に秩序立っていて俺も賛成します。欲を言えば制服を揃えたいところですが」

「ショウタはお揃いの物が欲しいんじゃなくて秩序が欲しいだけだろ」

「や、やめてくださいよ直球で刺してくるのは……」

 

 鐘太とキィのやり取りはともかく、その提案は悪くなさそうだった。

 世の中には部活Tシャツなんてものがあるのだから、似たような物を用意して連帯感を深めるのは良さそうだ。

 

 ただ――

 

「私も賛成しますが、ゲームセンターで十個分集めるのはちょっと難しいかもしれませんね」

 

 茉莉絵の言う通りである。

 

 一個取るのも難しいのに数を用意するのは大変だ。

 小さい物を一度に数個取るような台もあるにはあるが、無理にゲームセンターで用意しなくたっていいだろう。

 

 また別の機会にしよう。

 

「そっかー……ちょっと残念ね。」

 

 自分と茉莉絵の言葉にささらはしょんぼりとする。

 

「まあクレーンゲームは店側との戦いみたいなところあるからね。欲しいものは欲張らずに一個ずつがいいと思いますよ――ゲッ」

 

 そんな話をしていると吟がしかめ面でひっくり返ったカエルのような声を出した。

 

 目線の先を見てみると、そこには人型の小さい人形が数種類景品として存在していた。

 それらはコートを着たショートカットの赤髪や、フードを被った灰色のサイボーグといった出立をしている。

 その中には宇宙服を着たピンク髪も存在しており、吟の声の理由はどう考えてもそれだった。

 

「ゲームセンターでまでアイツを見たくないよ。まったく」

「楽士のグッズか。この世界じゃ神の使いみたいなものだからな。それはそれは売れることだろうさ」

「敵対している俺たちとしては複雑な気分ですけどね」

 

 男子陣のテンションが一瞬で下がった。

 

「今日の息抜きが終わったら打倒リグレットのためにまた頑張るのだぞ帰宅部よ! こんな物を売り出す邪智暴虐は滅ぼさねばならないのだ!」

 

 逆にキィとしては火がついたらしい。グッズを売る分には放っておいてもいいだろうと思わなくもない。とはいえ自分も欲しいとは思わないが。

 

 そうしてまたどれが可愛い何が可愛いだのと喋りながらふらふらと練り歩くと、グッズ景品エリアからお菓子景品エリアに移動していた。

 

 

 いつ見てもでかいと思える菓子箱が至る所に鎮座している。

 こういうのは専用に卸されているのだろうか。

 現実でもこちらでも、ゲームセンター以外に見たことがない。時々欲しいとは思うが、かと言って取れるか分からないクレーンゲームに金を注ぎ込む気にはなれなかった。

 

 まあ今日もスルーだろうなと思っていると、予想外にささらが食いつく。

 

「ねえねえ、このおっきいお菓子を獲ったら、みんなで食べれて楽しそうだと思うの!」

 

 普段から懐に飴を忍ばせているささららしい考えだった。

 

「一人で食べると不健康になりそうな大きさですね。しかしこれらをアームで持ち上げるのは相当難しそうに見えます」

「実は私も大きいお菓子は獲ったことないので気になります。能登君は獲ったことありますか?」

「んー、まあね。獲れないことはないかな」

 

 吟の返答におぉ、と一同で尊敬の声を上げる。自分とここに来る時は奥のゲームコーナーばかりで、クレーンゲームをすることは少ない。だからいつの間にそんなことをと驚いた。

 

「凄いとは思いますが、お菓子ばかり食べるのは体に良くありませんから、しっかりと食事を取るよう気をつけないと駄目ですよ。能登くんはただでさえ細いですからね」

「ちゃんと体鍛えてそうな鐘田さんに言われると説得力が強いな……」

 

 日常的に筋トレする人間の忠告にはさすがに勝てないぞ吟。

 

 吟はンン、とひとつ咳払いし、それはそれとしてとささらへと向く。

 

「獲れなかったら最悪僕が手伝うんで、ささらさん自分で頑張ってみます?」

「いいの? じゃあみんなのために頑張るわね!」

 

 ささらが遊べるようにレクチャーが始まった。

 まずはここにコインを入れて、その後このボタンを押し続けると横に動くから良いところで離して、今度はこのボタンを押し続けると奥に行くから良いところで離して。

 一般的なクレーンゲームの操作だ。何も難しいことはない。

 ただどの位置に止めるかの判断とタイミングが難しいのだが。

 

 ささらが選んだお菓子は三角錐のような形をしたイチゴチョコレート菓子。それが普通の数倍でかい薄型の箱になって、たった二本の横に伸びた棒に倒れた状態で台に鎮座している。

 

 順当な獲り方を考えるとすれば、箱の手前か奥の端を斜めにずらしていって最終的に横にすることで落とす、そんな感じだろうか。

 

「えっと、ここにコインを入れて、これを押し続ける……あ、動いたわ! このへん、かな?」

 

 ウィーンと横軸を動くアームが止まった。

 位置的には、誰がどうみても既に中心からずれていた。まず獲れそうもない。

 

「これじゃだめねえ。でもまだ諦めないわ。奥をあわせればもしかすると……駄目よねえ」

 

 奥に動くクレーンもやはり中央より進んで腕を開いて下がり、ぶすりと言わんばかりに箱を押し込んで何の成果もなく上がっていった。

 

「戦いでもそうだけど、タイミングを合わせるって難しいねぇ」

「部長の指示がなければ酷いことになっているかなとは俺もいつも思います。いつもありがとうございます部長」

「そう思うんだったらもっと戦闘会議しないか?」

 

 おいおいね。おいおい。

 

 曖昧に肯定しておく。

 会議自体は賛成してもいいが、すぐ小鳩と喧嘩になってしまうのはさすがに看過し難い。

 劉都には喧嘩のつもりはないのだろうが、小鳩としてはそこがまた腹立たしいのだろうと思う。

 

「初めてですし尚更難しいですよね。まずは挑戦したいだけやってみましょう」

「うん、頑張るわね茉莉絵ちゃん!」

 

 そう意気込んで硬貨を投入するも、またもやあえなく撃沈。持ち上げることもなくおおよそ同じような形で終わってしまう。

 

「あーん……うまくいかないなぁ」

「ささらさんは普段からペースがゆっくりだから、気持ち早めでボタンを離せばいいんじゃないか?」

「確かにそうかも。劉都ちゃんありがとう!」

 

 どういたしましてと返す劉都の顔は満更でもなさそうだった。

 そうしてまた挑戦するも、今度は離すのが普通に早過ぎて反対側のアームで押し込んでしまった。

 

「やっぱり駄目ねえ。うーん……ねえ劉都ちゃん、代わりにやってみる?」

「俺が? ささらさんは満足したの?」

「私だとこのまま頑張っても獲れない気がしてるの。でも賢い劉都ちゃんなら獲れると思うのね」

「……ささらさんがいいって言うならやるけど」

 

 ささらから劉都への選手交代が入った。

 

 おそらくは先ほど劉都自身が言っていたクレーンゲームをやらないという発言から、自分と同じ様に体験させてあげようというささらの優しさだろう。やりたいなら普段からやっているだろうが、とはいえ隣から口出ししてると次第に自分の手でやりたくなるものというのは良くある。

 

 普段から優秀だと自負している劉都がクレーンゲームに対してどう出るのか。見ものである。

 

「吟くん、これタイミングよくボタンを離すだけだよな?」

「うん。それ以外の操作はないよ」

 

 劉都は再度の操作確認を行った後、じいと台内の様子を観察し始めた。

 彼の脳内ではおそらく凄まじい速度で計算が行われているのだろう。箱の形状と推定の重さとささらのプレイで見たアームの動きからなる答えを。

 

「結局は真ん中を持ち上げるのが一番良いわけだろ。どこかに偏って持ち上げたらバランスが悪くて落としてしまうなんてことは誰でも分かる。その位置調整が難しいんだろうが、俺ならタイミングを図ることくらい余裕だ」

 

 そう講釈を垂れて余裕を持ったボタン操作を見せる。

 計算のおかげか、横軸も奥軸も、完璧だと思えるほど真ん中に到着し、あとは掴むだけ。

 俺にとってはクレーンゲームとて児戯に過ぎない。そう言うかのように劉都の口角が少し上がっていた。

 まあそもそも児戯そのものな現状ではあるのだが。

 

「ほら。丁度真ん中だ。二千、三千も使わなくともワンコインでこうやって――はぁ!?」

 

 箱の中心を目指して下りたアームが腕を広げ、がっしりと箱の両端を挟む。

 そして持ち上げた……と思いきやすぐさまアームから零れ落ち、何事もなかったかのように箱はまた二本の棒へと寝ころんでいた。

 

「持ち上がらないってどういうことだ……? 持ち上げるゲームなんじゃないのか……?」

 

 今起きた光景が信じられないとばかりに顔からいつもの余裕が消えた劉都がアームを睨みつける。

 ここらでクレーンゲームの真実を教えてあげるとしよう。

 

 クレーンゲームは、残念ながらただ持ち上げるゲームじゃないんだよ劉都。

 

「じゃあどういうゲームだって言うんだよ部長」

 

 アームの挟む動きを利用して横にずらしたりで、地道に位置を調整するゲームでこざいます。

 

「……あぁそう。理解したよ。元々ワンコインでは取れないようになってるってことね」

「やーい。リュートの珍しい顔を見れてキィは大満足だ」

「うるさいよ。僕だって狼狽することぐらいあるさ。子供なんだから」

「オマエのそういう都合の悪い時に子供を持ち出すのキィでもズルいと思うぞ」

「事実だからな」

 

 返答に納得したのかリュートの顔はすぐに仏頂面に戻った。キィの言う通り稀に出る焦ったような表情は若さがあふれ出ていて可愛らしいが、この仏頂面はいかんともしがたいものである。笑顔の破壊力なんかも凄いのだからもっと色んな顔をみんなに見せてあげればいいのに。いやたまに出るからこそ良いのかもしれないが……。

 

「そういうことだね。全部が全部ワンコインで獲れるとゲームセンターも潰れちゃうだろうし仕方ないさ。で、まだお菓子は寝てるけどどうする? まだやる?」

「いや、俺はもういいよ。大体わかった」

「じゃあささらさん、僕の手助け有りでやりますか?」

「うん、お願いするわね」

 

 吟がささらの隣に立ち、指導を始める。

 まずは横軸をここに止める。奥はここ。タイミングは吟の声。

 今です。今離して。ちょっと惜しかったですね。まだリカバリー出来ますよ。今の完璧なタイミングです。

 吟に合わせてボタンを離していくうちに、アームが箱の角をずらしていき縦長だった箱の向きが横長へと変わっていく。

 

 そうして漸く棒に支えられなくなった箱が落下し、みんなで歓声を上げた。

 

「獲れた! 獲れたよ吟ちゃん!」

「ええ獲れましたねささらさん。指示はしましたけど、操作したのはささらさんなのでささらさんのお手柄です」

「んーん、吟ちゃんの指示がなかったら獲れなかったもの。ありがとうねぇ」

 

 二人ともお見事。

 

 普段の戦闘での連携のおかげか、ボタンを離すだけとはいえ吟の指示にスムーズに応えることが出来ていた。

 吟の声に合わせてささらがデジヘッドらを打ち上げ、そこに吟が追撃の矢を放つ。その流れは帰宅部の当初から続いて今や慣れたものだ。

 何の疑問もなく、すぐさまに反応して応える。それは信頼関係がなければ到底出来ないことだと思うと、部長として嬉しさが湧き上がる。これが戦闘であれば自分が飛んで更に追撃をかけるところだが、クレーンゲームでは出番がない。少し寂しい。

 

「折角ですから中身を見てみませんか? どれくらい入っているのか私気になります」

「そうね、さっそく開けて見るわね。――あら?」

 

 しっかりとした箱を開けて中を見てみると、入っていたものは実に質素。どこでも買える普通の菓子箱が縦横二個の計四個入っているだけだった。

 今回使った金額は千円弱。

 四個の金額は税を含んで多めに見ても六百円だろう。

 損といえば明確に損ではある。

 

「案外少ないんですね。大きいお菓子の中身って」

 

 少し残念そうな茉莉絵。

 箱の大きさからして中身は豪華だ、という期待を持っていたのは自分も同じなのでとても分かる。

 一般の箱が並んでるだけって。

 さらに言うなら外箱内箱をもう少し薄くすれば重ねて二倍は入るでしょこの箱と思わざるを得ない。

 

「なんかさ。聞くところによると景品に使える金額が、法律かなんかで安くないとダメって決まってるらしいんだよね実は」

「風俗営業法ですね。クレーンゲームだと例外的に八百円以下の景品で運営を許されていたかと」

「く、詳しいですね鐘田さん」

「……生徒の財布が標的にされないよう気を付けておく必要がありますからね」

 

 ゲームセンターに詳しい吟が箱の謎を答えたかと思うと鐘田が補足説明を行う。

 過去を鑑みれば、鐘田なら確かに知っていてもおかしくは無かった。

 この理想の世界にいる原因であったとしても、その時に矜持を持っていたことは間違いないだろう。だからか、驚いた吟へ返答するその顔には、どこか誇らしさを感じた。

 

「そうなのね。法律で決まってるなら仕方ないねえ」

「僕はゲームを遊んだ、っていう体験にお金を出してると納得してるんでそのぐらいが精神衛生上いいかもですね」

 

 景品獲れるのが前提でムキになって変にお金突っ込みまくるよりはね。そっちの方がいいよね。

 

 獲った後はまたぐるぐる回る。ボールを弾ませるタイプや、小物を数取れるタイプ等、適当に遊んで景品で喜んでいたあたりでWIREのグループチャットに気づく。

 

『部長たちどこいる?』

 

 切子からの捜索チャットだった。返答しようと文字を打っていると、送り切る前に二人の姿が目に入る。

 

「あ、部長さんたちここに居たんですね! ポッポ先輩を止めるのを手伝ってください!」

 

 二胡の開幕発言に皆が怪訝とした顔で見合わせた。

 二人と合流し小鳩の元へと向かいながら、何があったのかを聞いていく。

 

「また風祭が何かしたんですか?」

「あー……したっていうかされてるっていうか……。クレーンゲームでちょっとね」

「クレーンゲームで? 小鳩さんなら大体のクレーンゲームには勝てる筈だけど」

 

 欲しがってる物を獲ったら女の子が喜ぶから、と相変わらずの邪さでクレーンゲームも極めた小鳩。彼が負けるとはあまり考えづらいが。

 

「でも現に負けちゃってますよ。いっぱいお金入れていっぱい負けていつもみたいにお怒りしてます!」

 

 負けるところはあまり想像できないが、一方でお怒りの小鳩は想像できてしまうのが変なところだった。普段の行いというやつだろうか。面倒見の良さは随一なのだが……。

 

 入り口付近まで戻ってくると、ちょうど小鳩がまたもや負けたらしい場面に出会った。

 

「あ゛あ゛クソッ! アームが弱けりゃロクに下がりもしねえこいつクソ台すぎんだろが!」

「おい風祭! 筐体に暴力を振るうのはやめろ!」

 

 ダンと一発、ガラスに振り下ろされた腕が音を鳴らし、慌てて鐘田が羽交締めする。捉えられながらもウガアアと暴れる小鳩の様子は、女子と一緒に居てご機嫌だった最初とは打って変わって、二胡の言う通り攻撃的な面が表に出ていた。

 

 いくら突っ込んだ?

 

「五千だよ五千! こんなクソ台に五千も飲まれたのムカつくってレベルじゃねーぞ!」

 

 ごっ、ごせん……けっこうつかいましたね。

 

 大体のものは余裕を持って獲れる小鳩にしてはあまりにも大きい額だ。一夜の付き合いが多い小鳩にとって珍しく長く付き合いのある部のメンバー。その仲間の一員である美女達からの願いとして、青春を謳歌するのが目的の小鳩としては引くに引けなくなったのだろうか。

 でも退き際が悪いのは逆に印象悪そうだなと思う。

 

 吠える小鳩を見て、劉都が馬鹿だなと声をかけた。

 

「数回遊ぶならゲームを楽しみたいとは理解できるが……。獲れるまで挑戦するのは頭が悪いとしか思えない。普通に買った方が安いんだから」

「うるせえな。負けた気がするからムカつくんだよ」

「私でもさすがにクレーンゲームに対して勝った負けたなんて考えないのに……。小鳩先輩の負けず嫌いって相当だよね」

 

 気持ちはわかるよ気持ちはね。

 

 でも財布は気持ちじゃ膨らまない。残念ながら。

 その場にいる全員が呆れた顔で小鳩を見やる。さてどうしようかと考えていると、往生際悪く、そして口も悪い小鳩に劉都が「なあ」と声を続ける。

 

「まだそれ挑戦するつもりなのか?」

「なんだチビ。アホらしいからやめとけってか? そりゃ賢いお前から見りゃ間抜けに見えるんだろうよ!」

 

 小鳩もまた、いつもの調子で買い言葉のように強く返すが、下らないとばかりに劉都はため息を一つついて、そうじゃないと言った。

 

「やるなら俺が協力してやるって話だ」

「協力だあ?」

「ああ。俺たちは同じ部の仲間だろ?」

 

 劉都からの想定外な発言に小鳩は口を開けて少しの間呆然とし、すぐさま気を取り直してニヤリと笑った。

 

「いいぜ。受け入れてやる。で、どうするつもりだよ」

「これの問題はハマってしまっている臀部だ。そうだな?」

「ああそうだ。アームが届かないところまでケツが落ちたせいで持ち上げるに持ち上げらんねえし、かと言って押し込むのも限界だ。当然回転なんか出来るわけもねえ」

 

 この台はささらが最初に挑戦していた台と同じ、棒二本に支えられるタイプのようだった。

 しかし、押し込みやらなんやらをやり過ぎたのか、棒の間にお尻がハマったせいで体が折り込まれ、胴体と脚の合計の太さが棒の幅に入り切らないという形になってしまっているのが現状だ。

 

「いいや。だからこそ押し込むんだよ」

「はあ? 俺の話聞いてたか? 見ての通り身体は入んねえの」

「身体じゃない。押し込むのは頭だ」

「……あーそういうことね。理解したぜ」

 

 話すや否や、小鳩はすぐさまコインを投入して操作を行った。

 話していた通りにアームは頭の位置まで動き、下がっていく。

 すると、ぐぐぐっとアームはクマの頭を押し込み、身体がハマった穴に対して外側に向かって折れた頭の影響で胴体が少し持ち上がった。

 

「そこまで上がったなら……次は脇を挟んで持ち上げられるか?

「誰にもの言ってんだ。俺様だぞ。出来るに決まってらぁ!」

 

 劉都が指示を出し、小鳩が的確にクレーンを動かす。冷静さを取り戻せば彼のボタン捌きに乱れはない。操作と言っても離すだけだが。

 

「さっきまでガッチガチだったクマさんが動いてるよ切子ちゃん!」

「普段喧嘩ばっかな割には息ぴったりじゃんね」

 

 切子の言う通り申し分ない二人のコンビネーションによってクマは徐々に腰を上げていき、その道程で大きくはみ出した頭側を最後に押し込んでクマは落下。

 

 苦心の果てに大きなクマを手に入れることに成功し、嬉しそうに抱き止める二胡の手へと納められた。

 

「す、凄いです二人とも! めちゃくちゃ息ぴったりでびっくりしました!」

「俺も驚いたぜ。チビちゃんがクレーンゲームが得意だなんてな。優等生がゲームセンターみたいなワルいとこに来るとは思わねえからよ」

「いや? ゲームセンターにはたまに来るけど、クレーンゲームはさっきささらさんの手伝いをしたのが初めてだ」

「はあ? 二回目であんな俺得意ですみたいな顔して指示出してたのかよお前」

「まあね。俺は優秀だから、クレーンゲームだって当然出来るさ」

「ケッ。あいっかわらず可愛げのねえ奴」

 

 そういつもの様に愚痴る小鳩の顔は、いつもとは違って楽しそうなのが印象的だった。

 喧嘩することもよくある二人がこうして穏やかに話せているというのは部長としてとても嬉しいことだ。

 

 なので劉都の一回目のクレーンゲームでの狼狽は言わないであげようと思った。

 

「しっかし、カネが減っちまったぜ。あーあ、バイトしねえとなぁ」

 

 財布を見ながら愚痴る小鳩。

 不憫なので活動中に手に入った部費から出そうか、と言ってみるも、手を振って断られる。

 

「正直欲しいけどよ、女のために使う金はやっぱ自分のじゃねえとな。じゃないとカッコ悪いだろ?」

「小鳩さんのそういうところ、尊敬してますよ僕」

「へっ、ノトギンは分かってんなオレサマの良さをよ!」

 

 小鳩がそういうならやめておこう。とはいえひもじい友人を見るのは辛いので、別の機会にご飯を奢る等して負担を軽減してあげることにする。

 

 何にせよよくやったものだ。

 みんな笑顔なのだからこれ以上ない成果であった。

 

 

 




本当は後半にカーレースで小鳩に勝つ鐘太とか、ダンスゲームで盛り上がる切子と二胡とか、ガンシューで活躍する吟と茉莉絵のガンナーコンビとか、ネタはあったんですけど書く暇とノリが消えてるので供養でした。

星の巡り合わせが良かったら書くかも。
というか10人を同じ場所で回すのきつ過ぎる。みんな凄いね。よくやるよ。始めてまともに書く俺には無理だよ。
せっかくの主人公の一人称なのにほとんど情景描写だもんなウケるわ。ウケないね。

それはそれとして、キィって写真に写るかどうかってわかる?
プリクラ撮って写るんですかっていうね話で。

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