原神 アチーブメント『軌道は放り出ず、逆巻く』獲得RTA 作:底無ノどろ沼
ちょっとした小説書こうと思って久しぶりにログインして思いだしたわけじゃないんだからね。
はい、以上言い訳です。待っていた人、本当にごめぇんねぇ(犬系) まじですいませんっした!
では、どうぞ
目覚めると知らない天井だった。
薬剤の匂いがするためどこかの病院のベッドだろうと予想する。
どうやら長く眠っていたらしく頭がボーッとする。
左手に暖かさと重さを感じ視線を向けた。
見舞い中に寝てしまったのだろう。
蒼い髪と角が見え、右手を伸ばして撫でる。
サラサラしていてさわり心地がとても良い。
「んぅぅ」
起き上がった甘雨さんと目が合う。
おはようございます、甘雨さ──
言い切る前に抱きつかれた。
襟元を掴まれ、胸を涙が濡らしていく。
どうすればいいか分からず両手が彷徨う。
「ッグス…抱き締めてください」
涙声で小さいが強いその言葉に従い、抱き締めるように腕を動かす。
しかし華奢な身体を傷つけそうで触れるかどうかの所で止めた。
襟元を掴む力が強まり、頭をさらに強く胸に擦りつけられる。
「…早く抱き締めてください」
その言葉で意を決めて抱き締める。
折れてしまいそうなほど細くて、柔らかい感触が胸の中で震えていた。
鼻をすする音だけが響く。
言わなければならないことがたくさんあるが言葉が出てこない。
すみません…
絞り出して出てきた言葉は何回も繰り返した謝罪の言葉しかなかった。
しばらくどちらも口を開かず、ギクシャクとした空気が流れる。
声をかけようにもなんと言えばいいか分からず、窓から外を見てしまう。
大切な人を悲しませないと約束したはずなのに、大切な人が今悲しんでいる。
ずっと悲しませ続けていたんだと今更気づいた。
胸の中からこちらを見上げる顔はあの日と同じ泣き顔だ。
そうだ、あの日自分が見たかったのはこの人の笑顔だ。
この人の幸せが自分の幸せなのだ。
だが不安が押し寄せてくる。
──オレは貴方を失うことがひどく恐ろしい。貴方を失えばオレは…
心の底にあった闇。
それが口からぽつりぽつりと漏れていく。
手に入れた大事なモノ全てが失われていく。
失うくらいなら全部捨ててしまいたかった。
裏切りは業障に呑まれただけじゃない、自分の意志でもあった。
貴方の幸せを願いながらも貴方との全てを捨てたかったんです。でも捨てきれなかった。
──だからせめて役に立ってから消えてしまいたかった。
甘雨さんは黙って話を聞いてくれていた。
だが最後の言葉で身体が強張るのを感じる。
「…なんでも一人で抱え込んで」
はい…
「苦しんでるのに何にも言わないで」
はい…
「無茶しないでと言っても無茶ばっかして」
すみません
「帰って来てと言っても帰って来ない」
ごめんなさい
「ずっと、ずっと言ってきたのに」
はい…
「…ずっと──会いたかった」
甘雨さんが顔を上げる。
大粒の涙を流すその瞳と目が合った。
…オレもずっと会いたかったです、甘雨さん
襟元を掴む手が離され首元に顔を埋めるように抱き締められる。
「もっと強く」
駄々をこねる子供のように言われたその言葉に素直に従う。
お互いに体温を確かめるように抱き締め合う。
すみません、もう無茶はしないので
「信じられません」
約束します
「…約束はそれだけですか?」
誰も幸せにならない選択を取り続けてきた。
だから今度こそ
──幸せにします
決別と決意を込めて宣言する。
「…約束、しましたからね」
そう言って甘雨さんは鼻は赤らみ目も腫れていたが、花が咲くような笑顔を浮かべる。
自然と涙が頬を伝う。
だが笑っていた。
そこには顔を合わせて笑い合う二人がいた。
一人の夜叉が長い遠回りをしてようやく帰る場所に帰って来た。
「──おかえりなさい、帆藻」
──ただいま、甘雨さん
二人の顔が近づいていき──
──そこに声がかかった。
「抱き合って、仲良し?」
いつの間にか額に御札の貼られた少女が不思議そうに首を傾げてこちらを見ていた。
「白先生、患者、仲良し、患者、仲良し」
そう繰り返しながら少女は部屋を出て行った。
二人は顔を赤らめて咄嗟に距離をとった。
次回、ヤンデレ(n回目の予告)
多分めっちゃ遅れる