ここ最近喜多さんの様子が少しおかしい。バンドの練習やバイトの時よくスマホをいじるようになった。
私と違って友達の多い喜多ちゃんは友達と連絡を取るために時々スマホを使うこともあったけど、それでもバイト中は基本的にスマホを開いてなかったし、バンドの練習中だって友達との連絡は本当に大事な用事の時だけと抑えてくれてたのに、最近の喜多さんは練習を忘れてスマホを食い入るように見ていることが増えた。
「ここ最近の喜多さん、なんか様子おかしくないですか」
「だよねえ。バンドの練習もバイトもあんまり身に入ってないようだし、なんかあったのかな」
やっぱり虹夏ちゃん目線でもここ最近の喜多さんは変に見えてるのかあ。やっぱりバンド活動飽きちゃったのかなあ。私と違ってキラキラしてる喜多さんはバンドをするような人じゃないとは思うから、飽きちゃうのはしょうがないことなのかもしれないけど、折角みんなで頑張ってきた結束バンドから喜多さんがいなくなってしまったらめちゃくちゃ悲しく感じる。喜多ちゃんのあの様子をみると本当にそうなっちゃう気がしてどうしようもなく不安になってくる。
「喜多さんバンド飽きちゃったんですかね」
喜多さんのあの様子をみると本当にそうなっちゃう気がしてどうしようもなく不安になってきて、聞いても意味がないのに口にしてしまった。
「大丈夫だと思うよ、私もそれとなく聞いておくからぼっちちゃんは気にせず練習頑張って」
私がかすれるような声で言ってしまったせいで心配かけてしまったのか虹夏ちゃんも少し早口になっていた。
それから虹夏ちゃんがそれとなく何があったのか喜多さんにそれとなく聞いてくれたが、喜多さんは「秘密ですと」少し恥ずかしそうに、ちょっぴりうれしそうに言うだけで何があったのかは教えてくれなかった。教えてくれないのは
不安になったが、それでも喜多さんの様子的にいいことが起きたことは想像できたので、すこし安心することができた。
数日たってもも喜多さんの様子はおかしいままで、スマホはバイト中はさすがに我慢してくれてるけど、なんかそわそわしていて、今までしてなかったちょっとしたミスをするようになった。星歌さんはそんなこともあるよって笑って許してくれてるけど、やっぱりバンド活動飽きちゃったのかなと不安になってくる。
始終そわそわしてる喜多さんに、ちょっと変な雰囲気なバンドを何とかしようと無理やり元気を出そうとしている虹夏ちゃんに、私。幸いリョウさんだけはいつも通りって感じだけど、結束バンドで結ばれた友情がほどけていっている気がした。
喜多さんの様子が変になってから1週間ほどたったある日私は喜多さんのスマホを偶然にも覗いてしまい、ある会話を見てしまった。
「いくら気になるからって喜多ちゃんのスマホをのぞいちゃだめでしょ」
虹夏ちゃんもいちよう人のスマホを勝手に覗くのはよくないと私に注意したが、やっぱり何が書かれていたのか心なしかテンションが高いように見える。
「それで何が書かれてたの、ぼっち」
虹夏ちゃん以上にわくわくとした気持ちを抑えられてないリョウさんが目をキラキラさせながら聞いてくる。
「えっとですね、こう書かれてました」
そういって虹夏ちゃんとリョウ先輩に説明する。
「明日10時に駅前の映画館に集合かあ、どう思うリョウ」
虹夏ちゃんがリョウ先輩に話をふる。
「文面的にもこれはデートかもしれないぞ」
デートという私とは無縁すぎる言葉を聞いて私の顔が赤くなっていくのを感じる。喜多ちゃんが彼氏をデートそんなわけないと叫びたくなったが、違うとは言い切れないし、ここ最近の喜多さん様子を見るに彼氏ができたというのが答えなのでは思ってしまいそうになる自分がいた。それでも喜多さんに彼氏がいるというのは認めたくなかった。
「ただの友達と遊び約束というのはないですかね」
「確かに喜多ちゃんは友達多いからないとはいえないけどやっぱデートだと思うんだよね」
虹夏ちゃんがそう答えると、リョウさん何かを言いたそうにうずうずとしていた。それを見て虹夏ちゃんは"なんだねリョウくん"とわざとらしく話をふる。
「そこで諸君、うちらも明日の朝映画館前に行くのはどうだ。郁代が付き合っているのか見に行こうじゃな
いか」
虹夏ちゃんが元気よく「おー」と言い、私も合わせて小さく掛け声を入れた。虹夏ちゃんとリョウさんがわちゃわちゃと楽しそうにどんどん計画を立てていき、そんななか私はなんでこんなことになったのだろうと喜多さんのスマホを覗いてしまったことをいったのだろうと後悔していた。
「ということでぼっちちゃん明日の朝8時30にここ集合ね」
「私だけ結果を聞くというのはだめでしょうか」
映画館に張り込みとか喜多さんにばれたらどうなるのか想像するだけ怖いのでできれば行きたくないのだが…
「だめだよぼっち、みんなで行くのに意味がある」
とすぐリョウさんに否定されてしまう。それに合わせ、虹夏ちゃんに「ぼっちちゃんが一番喜多さんこと心配してたんだからやっぱり一緒に見に行こう」と言われてしまった。
「こ これは喜多ちゃんの彼氏ではないでしょうか」
虹夏ちゃんが私たちにだけ聞こえるような小さな声で実況を始める。
「喜多ちゃんに近づいていきます。おっ喜多ちゃん手を振りました。彼も振り返します。これは確定ですね」
「でもまだ、ただの友達という説もあるはずです」
私も小さな声で反論する。
「だけどぼっち聞こえるか、この会話が、確実にカップルのものだぞ」
そんな小さな希望をうき砕くようにリョウさんが顔をしかめながら言う。私も
「聞こえません、聞こえません」
というが、"待った?""待ってないよー"というカップルの待ち合わせ時、定番の文句はどんなに強く耳を抑えても聞こえてくるのであった。
少しの間会話していたが、しばらくすると喜多さんと彼氏らしき男性は仲良く手をつなぎながら、映画館へと消えていった。さっきまであれほど楽しそうにしていた虹夏さんもカップルを見るために映画館前で待ち伏せていることがすごく悲しく感じてきたようでいつのまにか元気をなくしており、
「帰ろっか」
と一言いって、それぞれの家に帰ることになった。
「ごめんなさい。本当にご迷惑おかけしました」
ライブハウス全体に喜多ちゃんの謝罪の言葉が響き渡る。
「ぼっちちゃんとか結束バンドが本当になくなるかもってめっちゃ喜多ちゃんのこと心配してたからな」
星歌さんが軽く諫めるような口調で言う。虹夏ちゃんが
「大丈夫、大丈夫。確かに不安にはなったけど。喜多ちゃんに彼氏ができたことは嬉しいよ。バイトの方も喜多ちゃんに合わせるから、これからもいっしょにバンドやってほしいな」
「はい。皆さんこれからもよろしくお願いします」
「よろしくねー」みんなで声を合わせていった。
「それよりも郁代、彼氏どう、かっこいい?写真見せて」
リョウさんが興味津々そうに喜多さんを質問攻めしていく。それに虹夏ちゃんや星歌さんまでまざっていくのであった。
ちょっと変な雰囲気だったの結束バンドもいつの間にかいつもの落ちついて過ごしやすい楽しいバンドへと戻っていた。
冷静になってから考えると喜多さんに彼氏ができちゃったのであれば、バイトも含めていろいろと時間のかかるはバンドもやめちゃうのではないかとめちゃくちゃ不安になって結束バンド解散になったらどうしようと軽く絶望しかけていたが、実際そんなことにはならなかった。私はやっぱり重く考えやすいんだなって今回のことがあって痛感した。喜多さんは初めて彼氏ができて一時的に落ち着かなくなっただけだったし、よく振り返ってみると、そこまでリョウさんと虹夏ちゃん私ほど重く受け止めてなかったのかもしれない。やっぱりそこんとこは対人関係の場数の違いなのかと思い溜息が出てしまう。だけど何より今回一番うれしかったことは、結束バンドのきずなはメンバーに彼氏が出来たぐらいじゃほどけないってことかな。
初めての二次創作の投稿です。ちょっとぼっちちゃんだけ重いかなとも書きながら感じましたが、初めてにしては頑張れたかなと思ってます。
面白ければ評価してもらえたら幸いです。