それでは、どうぞ!
「フヘェ……」
切島は教室の自分の席で気の抜けたため息をついた。熱血漢で常に暑苦しい、もといエネルギッシュな彼のそんな様子は非常に珍しかった。
「切島コラァ!!! お前名前!! ネットニュースにヒーロー名!! のってるぞスゲェ!!」
そこへ上鳴がネットニュースを表示したスマホ画面を見せながら話しかけてきた。
『新米サイドキック、烈怒頼雄斗爆誕! 初日から市民を背負い単独敵退治!!』
そんな見出しから始まる記事には切島のインターンでの活躍が写真とともに取り上げられていた。
「……何腑抜けた顔してやがる……」
「いつも暑苦しい切島にしては珍しいな」
「上鳴、爆豪、瀬呂……。いや、なんか戦ってる時は必死で気ぃ張ってたから……ちょっとな」
「確かに写真でも状況ヤベぇってわかるけど、実際だともっとヤバいだろうなぁ」
「USJの時と違って、自分の身を守れば済むってわけじゃなくて、一般人もいただろうからな」
瀬呂も上鳴も敵の襲撃を受けたUSJ事件や林間合宿、ヒーロー事務所での職場体験や仮免試験を経験してきたが、本当の意味での『ヒーローとしての実戦』はまだ経験していない。その状況に置かれた時の重圧は想像しかできなかった。
「こんなん、それこそまだ『インターン』だろうが……! ……いつまでも腑抜けんじゃねーぞ」
「爆豪……おうよ!」
その中で勝己だけは敵連合のアジトから出久を守り脱出するという経験を経ており、切島の感じたプレッシャーを理解できた。厳しいが自分を叱咤する言葉に切島は力強く答えた。
「俺達もうかうかしてらんねえな」
「やったろうぜ!」
「お前ら……おうよ! やってやるぜ!」
「あ、でも補習組として置いて行かないで!」
「やめろ!? それ俺にも効くから!」
「は! アホ共が!」
「「爆豪てめえ!!」」
「上鳴達うるさいなあ……」
「切島ちゃんも頑張ったのね、すごいわ」
「私達はそこまで肉弾戦得意やないから、一般の人達を守りながらってすごいよね!」
「いやいや、梅雨ちゃんやお茶子ちゃんもすごいじゃん!!」
「ほらほら、名前出てるよ~!!!」
「うへぇ、そうなの!? 嬉しいなァ、本当だ……!」
「どこから撮ったのかしら?」
「すっごいねー! もうMt.レディみたいにファンついてるかもねえええ!!!」
「SNS見るともういるみたいだよ。ほら、麗日さんも蛙吹さんも」
「え!? そうなの!? ……本当だ。それにしても、デクちゃん調べるの早いね……」
「そこんところ、本当にヒーローオタクだよね緑谷」
「そういう緑谷さんももうすでにファンの方がいらっしゃいますね?」
「ケロケロ、百ちゃんにもよ」
「あら、そうですの? 取蔭さんは何も仰られませんでしたが」
「「「「「「(たぶん、流石の取蔭/取蔭さん/取蔭ちゃんもあまりにコスチュームに関する写真が多すぎたから気を遣ったんだろうなあ/でしょうね……)」」」」」」
A組の女子も麗日、蛙吹の活躍について称賛していた。クラスメイトが活躍することは自分自身、あるいはそれ以上に嬉しいことであり、また自分自身のやる気にも繋がることであった。
「仮免といえど街へ出れば同じヒーロー、素晴らしい活躍だ……!」
出久達が談笑している中でひと際大きな……A組委員長の飯田の声が教室内に響き、全員の視線がそちらに集まる。
「だが! 学業は学生の本分!! 居眠りはダメだよ!」
「おうよ飯田! 覚悟の上さ! なァ!?」
「うん!」
「私も! デクちゃんや八百万さんにサポートしてもらいながらだけど」
「なんの! 皆さんのお役に立てるなら!」
「百ちゃんも無理しすぎてはダメよ……」
「俺達もそうだけど、お前勉強やべーっつってたのに大丈夫かよー」
「先生が補習時間設けてくれるんだってよ」
「俺も行きゃーよかったなァ、両立キツそうでさァ……」
「学ぶペースはひとそれぞれですわ」
「善いことを仰る!」
「あんたは焦らないとヤバいよ、マジで」
「ガチトーンやめて!? そこは大目に見てよ耳郎!!?」
和気あいあいとした会話は担任の相澤が入室するまで続いた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
Side:Izuku
ナイトアイさんの事務所にインターンへ行き、エリちゃんに会ってから1週間ほど経った。その間にも土日にインターンでパトロールをしたけど、個性使用を伴うカップルの喧嘩(カッコいい男の人が美人な女の人にボコボコにされてた)や迷惑行為、ちょっとしたイザコザを仲裁する程度で大きな事件はなかった。
でも、その間もいろいろなことが頭の中で残っていた。オールマイトの事やミリオさん、ナイトアイさんの事……。3人が僕の事を気にかけていてくれたことが今になって理解できて、嬉しさと同時に自分の未熟さ・至らなさを実感して申し訳なく思った。
そして、エリちゃん……。あの日以降、エリちゃんの事が僕の中でどんどん大きくなっていた。
エリちゃん……今どうしてるんだろう……。
数日後、珍しく平日にインターンへ来るようにナイトアイさんから連絡があった。でもコスチュームは必要ないって言われたけどどうしてなんだろう……。
「お!!? 緑谷ァ!! おはよ!! お前も今日行くんだ!? キグーだな!」
「切島君……。平日に呼ばれたことなくてちょっとびっくりだよ。コスチュームはいらないって言われてるけど……」
「あれー!? おはよー!! 2人も今日!?」
朝、寮を出ようとすると切島君、麗日さん、蛙す……梅雨ちゃんに声を掛けられた。平日の朝から一緒にインターンに向かうってこれまでなかったからなんか不思議な感じがする。
「うん、平日に呼ばれるのは初めてだけどね」
「お、駅まで? 送ってくよ」
「わ! じゃあお願いします」
「ヒーロー多いなー。ありがたや」
「USJ事件や神野事件で雄英が狙われてるからヒーローがこの辺りを重点的にパトロールしてくれてるんだよ」
そんな会話をしながら最寄り駅までヒーローに見守られながら歩いていくと……。
「あれ!? 皆こっち!? 切島君関西じゃ……」
「ん、ああ! 集合場所がいつもと違くてさァ……」
「私達もよ」
「コスチュームも必要ないって言われてるから打ち合わせとかミーティングなのかな?」
麗日さん、梅雨ちゃん、切島君達も同じ駅で電車に乗った。僕や麗日さんはともかく切島君は普段と全然違う場所っぽいけど、何があるんだろう?
「皆同じ駅!? 奇遇だね……! 僕はいつも使ってるけど」
「先輩と現地集合なのよ」
「案外、同じ場所だったりしてね!」
「そんな事あるのか?」
「幾つかの事務所同士でチームアップすることは結構あるよ。でも、インターン中にそういうのがあるかはちょっとわからないなあ……」
なんて話をしていたら……。
「え!? 方向も同じ……!? 」
「曲がる角も同じ……」
「これって……」
「マジでさっき言った通りに……」
皆の目的地は……僕のよく知っている場所、ナイトアイ事務所。事務所の前には見慣れたミリオさん、波動さん、天喰さんの姿が見えた。
「ミリオさん! 波動さんや天喰さんも!」
「よ! 出久ちゃん!」
「わ! 」
「…………やあ、緑谷さん」
「ビッグ3が勢揃いだなんて」
「波動先輩!」
「今日は何するんですか?」
「天喰先輩! 何か分かりますか!?」
「えっとねー! 私達もよく知らないの! ただ、通形がインターンしてるナイトアイ事務所に来るように言われたから来たの! 何するのかな!?」
「切島君……相変わらず元気があって俺には眩しすぎる……。だが、俺もファットにここへ来るよう言われたんだ……」
「まあまあ! 皆いろいろ気になってるだろうけど、いつまでもここにいても仕方ないから事務所に入ろうか!」
僕達だけじゃなくて波動さんや天喰さんも詳しくは聞いていないらしく、いろいろと気になっているみたいだけどミリオさんに促されて事務所へと入っていった。
「これは……何だ!?」
慣れ親しんだ事務所の中に入るとさっきよりすごいことになっていた。普段はナイトアイさん、バブルガールさん、センチピーダーさんにミリオさんとインターン中の今は総勢5人の少数の事務所なのに今日は大勢の……20人以上のヒーローが集まっていた。
その中には……。
「グラントリノさん!? それに相澤先生!?」
それ以外にもドラグーンヒーロー・リューキュウやBMIヒーロー・ファットガムなど僕らの見知ったヒーローもいた。
「こんなに大勢……すごい……! 一体何が……」
「リューキュウ!!」
僕達が目の前の状況に驚く中で波動さんがインターン先のリューキュウに話しかけた。
「ねえねえこれ何、何するの!? 会議って言ってたけどー知ってるけど!! 何の!?」
「すぐわかるよ。ナイトアイさん、雄英の学生さんも来たことだしそろそろ始めましょう」
「……梅雨ちゃん、これって……」
「前にリューキュウが言ってた……」
「「あのアンケン……!?」」
「あのアンケンって?」
「デクちゃんには話してなかったけど、リューキュウが言ってたの、ナイトアイ事務所からチームアップ要請があるって……」
「そうだったんだ……」
「それがまさか今日とは思わなかったけど」
「よし、人数もこれで全員なのでそろそろ会議を始めます。皆さん、2階の会議室へ上がって下さい」
麗日さん、梅雨ちゃんと話をしているとナイトアイさんがやってきたヒーローや僕達に会議室へ向かうよう促した。こう言うとアレだけど、ナイトアイ事務所って人数の割には建物の規模って大きいんだよね。やっぱりこういう会議を行うためなのかな?
「それにしても……すごい。チャートに載ってる有名ヒーローから地方のマイナーヒーローまで……」
「先生!」
「先生が何故ここに?」
「急に声をかけられてな」
僕がそんな事を考えていると麗日さん達が相澤先生に声を掛けた。まさか相澤先生やグラントリノさんもいるとは思わなかったから僕もびっくりした。でも、相澤先生も来るなら一緒に来てもよかったのでは?
「協力を頼まれたから来たんだ。ザックリとだが事情も聞いている……。言わなきゃならんこともあるしな」
「?」
相澤先生が僕の方に目線を向けた……気がする。なんでだろう?
「俺置いてけぼりなんスけど……一体何スか?」
「悪いこと考えとるかもしれんから皆で煮詰めましょのお時間や。お前らも充分関係してくるで」
この中でまだピンと来てない切島君にファットガムが端的に説明する。正直なところ僕もある程度のことはわかるけど、どうして関西を中心に活動しているファットガムに応援が要請されたかはわからなかった。
いろいろと気になることはあるけど僕らは案内された会議室へと向かった。
「本日はお集まりいただきありがとうございます。あなた方に提供していただいた情報のおかげで調査が大幅に進みました」
会議室に集まって参加者全員が席についてところでナイトアイさんが話を始めた。僕はナイトアイ事務所でのことしかわからなかったけど、こんなにも多くのヒーローが関わっていたのか……。
「今回の案件、『
「はい! えーそれでは始めてまいります。我々ナイトアイ事務所は数週間前から
ナイトアイさんの指示でバブルガールさんが概要の説明を始めた。こんな大人数での会議で説明をするのは初めてなのか緊張しているのが分かる。頑張ってバブルガールさん!
「キッカケは?」
「レザボアドッグスと名乗る強盗団の事故です。警察は事故として片付けていましたが、腑に落ちない点が多く追跡を始めました」
「私、サイドキックのセンチピーダーがナイトアイの指示の下追跡調査を進めておりました」
出席したヒーローの質問にバブルガールさんが答え、さらにセンチピーダーさんが補足で説明していく。
「~~~組織の拡大・金集めを目的に動いてるものと見ています。そして、調査開始からすぐに敵連合の1人である分倍河原仁、敵名トゥワイスとの接触。尾行を警戒され追跡は叶いませんでしたが、警察に調査を協力して頂き組織間で何らかの争いがあったことを確認」
「連合が関わる話なら……ということで俺や塚内にも声がかかったんだ」
「その塚内さんは?」
「他で目撃情報が入ってな、そっちへ行ってる」
なるほど、だからグラントリノさんがここに来てるんだ。神野事件以降もこうして敵連合を追っていてくれたんだな……。
「小娘」
「?」
不意にグラントリノさんに呼びかけられる。どうしたんだろう? 何か申し訳なさそうな顔してる……。
「まさかこうなるとは思わなんだ……。面倒なことに引き入れちまったな……」
「面倒何て思ってないです!」
そう、面倒だなんて思わない。そもそも僕達はUSJ事件で最初に襲撃されている。今はAFOが逮捕されたとはいえ敵連合はヒーロー社会の破壊を目論んでるし、死柄木自身はオールマイトを殺そうとしている。無関係でなんていられない……!
「……続けて」
「えーこのような過程があり! 『
「そこ飛ばしていいよ」
「うん!」
「
「ヒーローネットワークだよ、プロ免許を持った人だけが使えるネットサービス。全国のヒーローの活動報告が見れたり便利な『個性』のヒーローに協力を申請したりできるんだって!」
麗日さんの疑問に波動さんがスラスラと答える。僕は一応知ってたけど、HNの事はまだ学校で習ってないから仕方ないかもしれない。仮免許だけど、一部だけでも限定利用ってできないのかな?
「ちょっといいか?」
不意に浅黒い肌の男性ヒーローが手を挙げる。確か……錠前ヒーロー『ロックロック』、個性は生物以外の物体をその場に固定できる『施錠』だったはず。どうしたんだろ?
「雄英生とは言えガキがこの場にいるのは……インターンだとしてもどうなんだ? 本題の『企み』に辿り着く頃にゃ日が暮れてるぜ」
ロックロックが僕達がいることに不満を口にした。言い方にちょっとムッとしたけど、彼の言うこともわかる。ヒーロー養成の最高峰ではあるけれど、まだ一介の学生をこういう会議に同席させることに疑問や不満を持つのは当然だ。ましてや、対象が雄英を襲撃した敵連合と接触している。全員仮免許を持っていると言ってもなにかあれば批判が起きかねない。
「ぬかせ! この二人はスーパー重要参考にやぞ!」
「俺……達?」
「ノリがキツイ……」
うわ!? ビックリした!? 天喰さんと切島君を指してファットガムがロックロックに声を荒らげる。言われた二人も困惑してる。そもそも切島君はここに呼ばれた理由も知らなかったみたいだしね……。
「とりあえず初対面の方も多い思いますんで! ファットガムです、よろしくね!」
「「丸くてカワイイ」」
「お! アメやろーな!」
麗日さんと梅雨ちゃんがファットガムのマスコット的可愛さに気付いたみたい。でも割と武闘派だから結構ギャップがあるんだよね。
「
「昔はゴリゴリにそういうんブッ潰しとりました!」
確かにファットガムは関西地方で主に薬物関連の組織犯罪をメインに活動していた。そこから
……なんだろう……。この違和感、気味の悪さは……。
「そんで先日の
「『個性』を壊す……!?」
ファットガムの言葉に会議室全体がざわつく……! 『個性』を壊す……つまり個性由来の能力が発揮できなくなる……。これは個性使用が前提となっている職業、特にヒーローに大きく影響する事態だ! そんなことが起こっていたなんて……。
「え……!? 環大丈夫なんだろ!?」
「ああ……寝たら回復していたよ。見てくれ、この立派な牛の蹄」
「朝食は牛丼かな?」
「回復すんなら安心だな。致命傷にはならねえ」
天喰さんの返答にロックロックも他のヒーローも安堵の声を漏らす。ずっと使えなくなるならマズイけど回復するならたぶん問題ない。
でも……さっき感じた気味の悪さがだんだん大きくなってくる……。これは一体……。
「いえ……その辺りはイレイザーヘッドから」
「俺の『抹消』とはちょっと違うみたいですね。俺は『個性』を攻撃しているわけじゃないので」
ナイトアイさんから話を振られて相澤先生……イレイザーヘッドが自身の『個性』についての説明を始めた。ネットや雑誌の記事、ヒーロー図鑑等でイレイザーヘッドの個性を調べたことあるけど、こんなに詳細に本人から聞く機会はないから貴重かも!
「俺はあくまで個性因子を一時停止させるだけでダメージを与えることは出来ない」
「環が撃たれた直後病院で診てもらったんやが、その個性因子が傷ついとったんや。幸い今は自然治癒で元通りやけど」
さっき言われてたみたいに回復はするし、すぐ命に関わるわけじゃないけどこれからもそうとは限らない。そもそも個性因子が傷つくなんて遺伝子の病気以外で聞いたことがない。どんな仕組みなんだろう……?
「その撃ち込まれたモノの解析は?」
「それが環の身体は他に異常なし! ただただ『個性』だけが攻撃された! 撃った連中もダンマリ! 銃はバラバラ!!弾も撃ったっキリしか所持していなかった! ただ……」
そこで言葉を切り、ニカっと笑って切島君の方を向いた。
「切島君が身を挺して弾いたおかげで中身の入った一発が手に入ったっちゅーわけや!!」
「………………俺っスか!! びっくりした!! 急に来た!! (ムズかしくてよくわかんねえ)」
「切島君お手柄や」
「カッコイイわ」
「硬化だよね! 知ってるー! うってつけだね!」
「そしてその中身を調べた結果、ムッチャ気色悪いモンが出てきた……」
ファットガムの表情に嫌悪感が滲んでいる。一体何が……。
「人の血ィや細胞が入っとった」
ドクン……
「えええ……!?」
「別世界の話のよう……」
「…………!」
人の……血……細胞……? 道具や武器に個性が付与されたり、個性由来の物質が使用されたりすることはある。でも……人の血や細胞が使われることなんて……。麗日さんや梅雨ちゃん、ミリオさんも顔にも嫌悪感が現れている。
「つまり……その効果は人由来……『個性』ってこと? 『個性』による『個性』破壊……」
「うーん……さっきから話が見えてこないんだが、それがどうやって八斎會につながる?」
リューキュウも『個性』由来の攻撃であることを示唆している。
でも、僕の感じる
「~~~でようやっと末端に辿り着くんや。八斎會がブツ捌いとった証拠はないけど、その中間売買組織の一つと八斎會は交流があった」
「それだけ!?」
「先日リューキュウ達が退治した敵グループ同士の抗争。片方のグループの元締めがその交流のあった中間売買組織だった」
「巨大化した1人は効果の持続の短い粗悪品を打っていたそうよ」
「最近多発している組織的犯行の多くが……八斎會につなげようと思えばつながるのか」
「ちょっとまだわからんな…。どうも八斎會をどうにかクロにしたくてこじつけてるような。もっとこうバシッとつながらんかね」
ファットガムの説明からヒーロー達もいろいろ意見を交わしているが、決定打に欠けると思ってるみたいだ。確かに状況証拠だけが積み重なっているみたいで直接的な証拠はない。
「若頭治崎の『個性』は『オーバーホール』。対象の分解・修復が可能という力です。分解…一度『壊し』『治す』個性、そして『個性』を『破壊』する弾」
ドクンッ!!
ナイトアイさんの言葉に心臓が激しく鼓動する。同時に……初めてエリちゃんに会った時のことを思い出す。病院で着るようなガウン、包帯だらけの両腕や両脚、怯えた表情、そして……僕を掴んだ時の力の強さ……。
彼女は……エリちゃんは救けを求めた! それなのに……!
「治崎には娘がいる……出生届もなく詳細は不明ですが……。この2人が遭遇した時は手脚に夥しく包帯が巻かれていた」
「まさか……そんな悍ましいこと……」
「超人社会だ。やろうと思えば誰もが何だってできちまう」
「何? 何の話ッスか……!?」
「…………」
続くナイトアイさんの言葉にリューキュウやグラントリノは意味を理解し、その悍ましさに表情を歪める。切島君はまだその意味が理解できていないけど異様な雰囲気を感じ取っている様子で、天喰さんはリューキュウ達と同じように理解しているようだった。
「やっぱガキはいらねーんじゃねーの? わかれよな……。 つまり、『娘の身体を銃弾にして捌いてんじゃね?』って事だ」
「「「!?」」」
ロックロックがぶっきらぼうだが、はっきりと治崎がエリちゃんにやっていたであろうことを口にした。そのことでようやく麗日さん、梅雨ちゃん、切島君の事の深刻さを認識したようだった。
「実際に売買しているかはわかりません。現段階では性能としてあまりに半端です。ただ……仮にそれが試作段階にるとして、プレゼンの為にサンプルを仲間集めにつかっていたとしたら……確たる証はありません。しかし、全国に渡る仲間集め、資金集め。もしも弾の完成系が『個性』を完全に破壊するものだとしたら……? 悪事のアイデアがいくつでも湧いてくる」
ナイトアイさんが努めて冷静な口ぶりで話す。そのことでより今回の事案の恐ろしさ、闇の深さが強調されている。
「想像しただけで腹ワタ煮えくり返る!! 今すぐガサ入れじゃ!!」
「こいつらが子ども保護してりゃ一発解決だったんじゃなーの!?」
怒りに燃えるファットガムが先走りそうになるが、ロックロックがそれに冷水を浴びせるかのように当然の疑問を口にする。確かに僕達があの場で保護できていればエリちゃんは今頃……!
「全て私の責任だ。2人を責めないで頂きたい。知らなかった事とはいえ……2人ともその娘を救けようと行動したのです。今この場で一番悔しいのはこの2人です」
ナイトアイさんが僕とミリオさんを庇ってくれるが、それじゃあダメなんだ!
何が……最高のヒーローだ……!!
「「今度こそ必ずエリちゃんを……!! 保護する!!」」
「それが私達の目的になります」
絶対に救けるんだ!!!
というわけで第69話でした! いやあ、さすがに間が空きすぎましたね、季節が一つ過ぎちゃってますw ともあれ、突入前の準備会その2ですね。原作でも個性のある超人社会の暗部がわかる話でした。今作ではデクちゃんが初めからナイトアイ事務所と近い関係で端々にちょっとした違いが出ていると思います。ここから死穢八斎會編はクライマックスに近づいていきますので、描写が大変になってきますが頑張りたいと思います。
リアルもちょっとずつ状況が変わってなかなか時間が取れませんが、今後もマイペースで進めていくので、応援の程よろしくお願い致します♪