機械と流行に疎い不知火がipodとやらを買いに行くだけの話。
不知火メインと見せかけての雪風メインという感じの謎の話。
内容はタイトルの通り。
落ち度はない。
初風「今日の買い出しも大変ね……絶対二人でどうにかできる量じゃないわよ、これ」
雪風「うちの姉妹全員分、ですからねえ」
初風「大体、こんなの私達の仕事じゃないでしょうに。ああ、重い……」
雪風「間宮さんだって休日くらい休ませてあげましょうよ。どうせ当番制なんですから」
初風「はいはい。雪風はやさし……」
雪風「?」
初風「……あれ、不知火姉さんじゃない」
雪風「本当ですね。……電気屋で神妙な顔をして」
初風「面白そうね。見に行きましょう」
雪風「ええ……」
不知火「……あら、初風。雪風も」
初風「不知火姉さん、何を見ているの?」
不知火「ええ。……あいぽっど、というのを、買いに来たのですが」
初風「へー……」
初風・雪風(!?)
初風(バカな……あの姉さんが、ipodに興味を……っ!?)
雪風(艤装の解体は10秒を切るけどテレビは叩いて直そうとする姉さんが!?)
初風(戦闘知識は並外れてるのに、機械に関してはドが付くオンチな不知火姉さんが、ipod……!?)
不知火「けれど、いっぱいあって迷ってしまって。……どう違うのかしら、これ」
初風「……そ、しょうなのねえ~!」
雪風(初風! 動揺が隠せてません!)
初風(しかたないじゃない!)
不知火「……そうだ、あなたたちは知っている? もし暇なら……」
雪風「え……」
初風「あー、あー! 私は買い出しの途中だったわ! そうだ雪風、あなたのも持ってあげる!」
雪風「え、ちょっと……初風今重いって言ってませんでした?」
初風「細かいことはいいのよ。あ、雪風の手が空いたわね。不知火姉さんの用事に付き合ってあげれば!?
じゃ、あでゅー!」
雪風「ちょっ! 逆賊ー!」
不知火「…………」
雪風「……ええとぉ」
雪風(……ピンチです!)
雪風(実を言うと……雪風はあまり不知火姉さんが得意ではありません)
雪風(あまり喋らないし表情もよめないし……何を考えているのかわかりませんし)
雪風(そもそも、なぜipod? いえ、いいんですけども。行動原理が謎過ぎます……)
不知火「……ねえ、雪風」
雪風「は、はい!? べ、別に何も考えてはいないですよ!?」
不知火「? いえ。そうではなく。このあいぽっど、ボタンがないのだけど。
どうすればいいのかしら」
雪風「ええ……えっと、タッチパネルなんですよ」
不知火「たっちぱ……? ……それは、回転寿司で選ぶ画面のような?」
雪風「偏った知識な上に何故そこから出てきたのかわかりませんが、大体あってます」
不知火「……最近のおーでぃおははいてくなのね」
不知火「ねえ、雪風。これとこれだとどう違うの」
雪風「ええと、それは……容量が違うというか」
不知火「容量。……同じ大きさに見えるけど」
雪風「中に入る曲の数が違うんです。なんというか、重さというか……」
不知火「重さ……」
雪風(手に持って神妙な顔で比べてる……)
雪風「でも、今は大抵、大容量ですから、あまり気にする必要はないと思います。
見た目で選んでもいいんじゃないですか」
不知火「見た目……」
不知火「雪風、貴方ならどれが似合うと思う?」
雪風「ゆ、雪風に選ばせるんですか!?」
不知火「ええ。ちょうどいいし。貴女、詳しそうだもの」
雪風(ええ~……不知火姉さんに似合う感じ……ですか)
雪風「じゃあ、その黒くてクールなのとかどうです?」
不知火「……似合わないんじゃないかしら?」
雪風「ええ? 似合いますよ?」
不知火「?」
雪風「?」
――――――――――
不知火「それにしても、色々と種類があるのね。大きさも……」
雪風「はあ……」
不知火「あら、良い形状。感謝します」
雪風「……なんなんです?」
不知火「さすがに気分が高揚するわ」
雪風「不知火姉さん。それパクりです」
不知火「……どうしたの?」
雪風「いいえ……なんでもないです」
不知火「なんでもない、という顔ではないと思うけれど。私に言いにくいこと?」
雪風「言いにくいことというか……そのぉどうして、ipodなんて買おうと思ったのかと」
不知火「ひみつ」
雪風(ええ……)
雪風「はあ……不知火姉さん、何考えてるかわからないです……」
不知火「そう……そうかしら? 私って、そんなに分かりにくい?」
雪風「あ、いえ。悪い意味では……」
不知火「いいけれど。陽炎にも言われますし。もっと愛想よくしろと」
不知火「でないと妹達が怖がると」
不知火「……でも、そんなに怖い?」
雪風(……ゆ、雪風にどう答えろと)
不知火「――まあ、いいけれど。無意識のことなのだから、意識しようもないし」
雪風「はあ……不知火姉さんは変わりませんね」
不知火「そう? ……そうかもしれないわ。私は、何も変わらない」
不知火「――でも、貴女は変わったわね」
雪風「雪風が?」
不知火「ええ……ふっ」
不知火「…………怒るようになった」
雪風「…………」
不知火「貴女が鎮守府に来たばかりの頃は、いつも笑ってばかりだったけれど。
……本心から笑っているようには、見えなかったから。色々なことを諦めて、隠しているように見えた」
不知火「笑ってばかりで……心に踏み込ませない貴女が、笑ったり、怒ったり。
困ったり、気取ったり。……最近はせわしなく表情が変わるようになったわ」
不知火「きっといいことね」
雪風「…………あんまり褒められてる気がしません」
不知火「ほら、そういう拗ねた顔も」
雪風「うぐう……」
不知火「多分、妹達が増えたからかしらね、あなたが変わったのは」
雪風「……仕方ないじゃないですか」
雪風「雪風はお姉ちゃんなんですから。こんなでも、お姉ちゃんなんですから」
雪風「妹のことを心配したり、怒ったり……。その、まああとはええと……」
雪風「……とにかくそういうの、するの当たり前なんです」
雪風「だからこれは仕方がないんです」
不知火「……それって姉のことは心配してないってこと?」
雪風「ああああいえ! そういうわけでは!」
不知火「冗談よ」
雪風「むう……」
不知火「でも。少しだけ、妹達に嫉妬はします」
雪風「嫉妬、ですか……」
不知火「貴女が妹達に感じていることを……不知火も、陽炎も黒潮も。初風だって。
貴女に感じていることは、わかってほしいわ」
雪風「……………………」
雪風(――それは。嫉妬なんてものではなくて)
雪風(でも――)
不知火「だから、貴女をどうにかできるわけじゃないのだけれどね。……雪風?」
雪風(……でも)
雪風「……わかって、ますよ」
雪風(わかってます。わかってますよ。気にしてくれていることも。
見ていてくれていることも全部)
雪風(私を――心配してくれていることも)
雪風「でも、雪風は……」
――雪風は、そんな風に思われるような良い妹じゃないのに。
不知火「――ねえ、雪風」
雪風「…………?」
不知火「このパーツ、何処の部品だと思う?」
雪風「ちょっ! 何を壊してるんですか!? 店頭の商品を!?」
不知火「壊したんじゃないわ。壊れたのよ。勝手に」
雪風「壊す人は皆そういうんです! み、見せてください!」
不知火「大丈夫? 動くかしら。叩いた方がいいんじゃ……」
雪風「不知火姉さんのバカ力で叩いたら完全にご臨終されます! 黙っててください」
不知火「はい」
雪風「びっくりした……。店頭用の電源が外れただけなんですね……」
不知火「大げさね」
雪風「大体姉さんが悪いんだから、反省してください」
不知火「……引っ張れば取れるような電源にしているのが悪いのよ。不知火に落ち度は」
雪風「あります」
不知火「…………」
不知火「とりあえず、これを買ってくるわね」
雪風「あ、はい」
不知火「雪風。今日はありがとう。おかげで、助かったわ」
雪風「…………」
雪風(ほんと……もう、なんなんですか)
――――――――――
不知火「今日はありがとう。おかげで助かったわ」
雪風「いえ~……」
雪風(つ、疲れました……)
不知火「じゃあ、はい」
雪風「はい?」
不知火「受けとって」
雪風「これ、今さっきかったipodじゃないですか。何故、雪風に?」
不知火「……? 何故って、元々貴女への贈り物のつもりだったから」
雪風「はえ!?」
不知火「貴女、今日が何日か覚えている?」
雪風「ええと……3月24日ですけど、それが」
不知火「そう。貴女の……『雪風』の進水日ね」
雪風「あ」
不知火「人間は、こういうのを誕生日プレゼントと呼ぶらしいわ」
雪風「……雪風は人じゃありませんよ。艦娘です。艦です」
不知火「娘でしょう?」
雪風「……雪風が生まれた日なんて、祝われてもいいのでしょうか」
不知火「どうして?」
雪風「だって、雪風は……」
雪風「やっぱり、もらえません……」
不知火「気に入らなかった?」
雪風「そうじゃないんです。ただ雪風には……資格がありませんから」
不知火「資格、ねえ」
不知火「貴女がこう、何を色々考えているかわからないけれど」
不知火「そんなに複雑に考えることはないわ。これはただの自己満足。
不知火の大事で少し心配な妹を、お祝いしようというだけの」
不知火「貴女が、妹達を想う気持ちと変わらない」
雪風「でも……」
不知火「それとも、貴女は妹達が生まれた日を、祝福出来ない?」
雪風「ぐぬ……そ、その言い方は卑怯じゃありませんか……」
不知火「じゃあ、貰ってくれる?」
雪風「…………」
雪風(結局貰ってしまいました……)
不知火「雪風」
雪風「なんですか……」
不知火「似合うわよ」
雪風「………………………あ~ううう」
不知火「それじゃあ、また鎮守府で」
雪風「……はい、『また』」
――――――――――
雪風「ただいまです……」
初風「あら、遅かった……いえ、早かったのかしら? どしたの?」
雪風「今日って雪風の進水日らしいですよ」
初風「あっ」
雪風「…………」
初風「……ももちろん覚えてたわよ? はっぴーばーすでーゆっきー!」
雪風「うざっ」
初風「……で、曲って何を入れたの? ていうか雪風ってどんな曲が好きなの?」
雪風「ええ……初風には教えませんよ」
初風「まだ拗ねてるの? いいじゃない。プレイリスト見せないよ。そらっ!」
雪風「ちょっやめ……」
初風「……………全部Cocco」
雪風「…………」
初風「……あー」
END.