野分(今日は……。なぜか不知火姉さんに呼びだされて、演習をすることとなりました)
不知火「……ちゃんと模擬弾ですね。よし」
野分「あの。不知火姉さん。先に聞いておきたいことがあるのですが」
不知火「なんでしょうか」
野分「演習は私と不知火姉さんの二人だけ……。ですか? あまりやらない形式だと思うのですが……」
不知火「そうね。艦隊戦は基本的に複数で行うもの。
仲間との連携、戦略的判断、視野の広さ、などが求められる。
けれど、そうした戦略は、遂行する人員に『確実に目の前の相手に攻撃を当てられる実力』があってこそのもの。
わかりますか?」
野分「……いいたいことは分かります。作戦が正しくとも、それを遂行する個々人の錬度が低ければ、結局は失敗に終わると……ああ」
不知火「はい。戦略的判断が正しくとも、全員が攻撃を外せば、何の意味もない」
不知火「特に、我々は駆逐艦。砲撃を潜り抜けて敵の懐に飛び込むことが役目です」
不知火「あるいは、潜り抜けてきた敵駆逐艦の排除も仕事ですが……。それもやはり距離は酷く近い」
不知火「そういう意味では、我々はもっとも危険な任務に就いているわ」
不知火「当然そうした状況では、全体を見た戦略的判断よりも、目の前の敵と1対1で戦う極地戦闘の意味合いがより強くなっていく。……だから」
野分「……わかりました。あくまでも私自体の錬度。戦略ではなく戦術的な、砲撃・回避の技量を見る。ということですね」
不知火「そういうことです。……戦略や連携については陽炎の方が得意なのですが。
申し訳ありません。不知火は、目の前の敵を殲滅する方が得意ですので」
不知火「あなたに教えられることも、このくらいしかなくて」
野分「……いいえ、助かります。艦隊戦が仲間と共に戦うもの……とはいえ、『私自身が弱くてもいい』というわけではない」
野分「指導していただけるというなら、願ったりかなったりです」
不知火「そう。そうね。その方が、貴女も舞風を助けることもできるでしょうしね?」
野分「そ、それは今は関係ないでしょう……。それにしても、どうして急に?」
不知火「ふむ野分。演習の前に一つ聞いておきたいことがあります。
あなたは、この演習がどんな意図を持って行われるか知っていますか?」
野分「いえ。……不知火姉さんも教えてくれなかったじゃないですか」
不知火「まあ、そうですね。先入観はない方が良いと思ったので」
不知火「貴女の錬度も高くなりました。
そこで、恐らく次の会議の後、貴女の改装許可が下りるでしょう」
野分「本当ですか!?」
不知火「はい。貴女の艤装も改装されます。……けれどその前に。
私達、陽炎型姉妹の改装錬度が、後期になるにつれて、高くなっていることは知っていますね?」
野分「? ええ、まあ……理由は知らないのですが」
不知火「その理由、実は我々のせいなのです」
野分「はい……?」
不知火「改装錬度が一定に達した後期陽炎型に関しては、陽炎、不知火、黒潮、初風、雪風、天津風、時津風のうち1名と演習を行い、一本を取ったものには改装許可を与える」
野分「……!?」
野分(ちょっと待ってください。ただでさえ高錬度……かつ、改装済みの姉さんたちを倒せと……!?)
不知火「そんなに驚かなくてもいいでしょうに。……もちろん、陽炎や黒潮はしっかり手加減をします。
これはあくまで改装錬度に達したかどうかを見極めるためですから。まさか本気で倒せなんていいません――不知火以外は」
野分「なんだ……え? 今、最後――」