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不知火「――――」
野分「――は?」
無傷で立つ不知火の背後で、再び水飛沫が上がる。
それを見たとき、野分の思考は完全に停止した。
必中の一撃を回避された――いや、それはいい。
当然この必中は野分の一撃が狙った通りに飛んだ場合だ。野分が外しては意味がない。
それに、発動中であれば回避手段もないわけではない。
多少の無理をすれば――回避前にこちらの意図に気づき、強引に旋回したとかであれば、相手の心理が一枚上手だったというだけのこと。
けれど今のはそうではなかった。
不知火は確実に罠にはまっていた。
彼女の初撃の回避地点は、野分が推理した通りの場所に着地をしたのだ。
そして、野分の一撃もまた、これまでの砲撃の中で至高の一撃だった。
当たる前から、直撃確定だと信じるほどに。
――なのに。
その
不知火は、
その不条理を、野分の思考は理解できない。
不知火「……難しい顔をしていますね。今の一撃は確かによかった。不知火も、避けきれないかなと思った程度です」
野分「避ける、避けないの問題ではないはずだ! 不知火姉さんは確かに、あの時私の罠にはまって――!」
不知火「ハマりましたね。完全に虚も突かれた。私の回避先を読んだ上での完璧なタイミングでの砲撃。見事です」
野分(ありえない……)
ありえない、と野分は心の中で何度も呟く。
野分(――そこまで、必中にハマって尚、そんなことが出来るのは……まさか)
野分「まさか、不知火姉さん……撃ちだされた後の弾丸を目で追える――」
野分「いや、それを見てから、判断が出来る……っ!?」
不知火「……む、正解です。さすがは野分」
褒められても、野分には一切喜ぶつもりにはなれなかった。
長距離から落ちてくる砲弾を見るならばまだ分かる。
こちらの砲撃タイミングと射線を図って回避するのも、艦娘であれば可能だろう。
だが――至近距離から飛んでくる弾丸を、リアルタイムで目で追いながら、回避するなんて芸当は、もはや人間の反射神経では決して出来ない挙動だ。
もちろん、彼女達は艦娘ではあるが――
それでも尚、そこに至っている艦娘が何人いるというのだろうか。
不知火「質問は以上ですか? では――訓練を再開しましょうか」
野分「――――っ!」
野分「ふざけた……姉だっ!」