真剣 野分VS不知火 一本勝負   作:遠野静

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――――――――――

 

不知火「――――」

 

野分「――は?」

 

 

 無傷で立つ不知火の背後で、再び水飛沫が上がる。

 

 

 それを見たとき、野分の思考は完全に停止した。

 必中の一撃を回避された――いや、それはいい。

 

 

 当然この必中は野分の一撃が狙った通りに飛んだ場合だ。野分が外しては意味がない。

 それに、発動中であれば回避手段もないわけではない。

 多少の無理をすれば――回避前にこちらの意図に気づき、強引に旋回したとかであれば、相手の心理が一枚上手だったというだけのこと。

 けれど今のはそうではなかった。

 不知火は確実に罠にはまっていた。

 彼女の初撃の回避地点は、野分が推理した通りの場所に着地をしたのだ。

 そして、野分の一撃もまた、これまでの砲撃の中で至高の一撃だった。

 当たる前から、直撃確定だと信じるほどに。

 

 

 ――なのに。

 その必中の一撃(・・・・・)を、

 不知火は、まるで当たり前のように(・・・・・・・・・・・)普通に少し顔を逸らして回避したのだ(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 その不条理を、野分の思考は理解できない。

 

 

不知火「……難しい顔をしていますね。今の一撃は確かによかった。不知火も、避けきれないかなと思った程度です」

 

野分「避ける、避けないの問題ではないはずだ! 不知火姉さんは確かに、あの時私の罠にはまって――!」

 

不知火「ハマりましたね。完全に虚も突かれた。私の回避先を読んだ上での完璧なタイミングでの砲撃。見事です」

 

野分(ありえない……)

 

 

 ありえない、と野分は心の中で何度も呟く。

 

 

野分(――そこまで、必中にハマって尚、そんなことが出来るのは……まさか)

 

 

野分「まさか、不知火姉さん……撃ちだされた後の弾丸を目で追える――」

 

野分「いや、それを見てから、判断が出来る……っ!?」

 

 

不知火「……む、正解です。さすがは野分」

 

 褒められても、野分には一切喜ぶつもりにはなれなかった。

 

 長距離から落ちてくる砲弾を見るならばまだ分かる。

 

 こちらの砲撃タイミングと射線を図って回避するのも、艦娘であれば可能だろう。

 

 だが――至近距離から飛んでくる弾丸を、リアルタイムで目で追いながら、回避するなんて芸当は、もはや人間の反射神経では決して出来ない挙動だ。

 

 もちろん、彼女達は艦娘ではあるが――

 それでも尚、そこに至っている艦娘が何人いるというのだろうか。

 

 

不知火「質問は以上ですか? では――訓練を再開しましょうか」

 

野分「――――っ!」

 

野分「ふざけた……姉だっ!」

 

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