真剣 野分VS不知火 一本勝負   作:遠野静

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不知火「……この距離でそんなことをすれば、貴女自身も巻き込まれるでしょうに」

 

野分「いや、多段式の信管ですから、上手くすれば、逃げられるかなって……」

 

不知火「…………はあ。仕方ありませんね」

 

不知火は機銃を下すと、両手を上にあげた。

 

不知火「降参、です」

 

野分「――え?」

 

不知火「ここまで来て、まだ一手残してくるとは思いませんでした。

 ……直感頼りの不知火では完敗といったところでしょうか」

 

野分「で、では……!?」

 

不知火「――陽炎型駆逐艦15番艦、野分」

 

不知火「貴女の改装を許可します。提督に連絡の後、工廟に向かうこと」

 

野分「……あ、ありがとうございます!」

 

不知火「いいえ……こちらこそ、ありがとう」

 

不知火「これまで陽炎型の妹達で私の演習を超えた人、いなかったから。これでやっと、陽炎に怒られずに済むわ」

 

不知火「おめでとう。あなたが、不知火を超えた陽炎型駆逐艦、第一号です」

 

野分「は、はあ……、まあ。そうでしょうね」

 

不知火「陽炎型に限らなければ、不知火と個人演習という名の肉弾戦をして勝利した駆逐艦は何人かいるけど。性能差、錬度差によるものだから」

 

 

不知火「……あなたみたいに、あの極地でなお、策で不知火を討ったのは、あなたが初めてです。それを、誇りなさい」

 

野分「ちょっと、汚い勝ち方かなとも思うのですが」

 

不知火「戦に汚いもなにもありませんよ。……特に、不知火達駆逐艦は、自分よりよほど巨大で、強大な怪物を相手にするのです」

 

不知火「貴女のような艦も、いた方が良いでしょう」

 

野分「そうだと、嬉しいですけど……」

 

不知火「……それは、誰かを守れる力になると思います。

 大切な人を、守る力をあなたはもう得ているはず」

 

野分「…………っ!」

 

不知火「艤装性能はどうしようもない。錬度は後から付いてくるもの」

 

不知火「……けれど、あなたは自分の持てる力を全て使い、不知火から勝利をもぎ取った。それが事実で、全てです」

 

不知火「まだ、なにかありますか?」

 

野分「ですが、私はまだ……たっ!?」

 

不知火「そういう、自信が無いみたいな顔はやめてください」

 

不知火「これ以上、不知火に自分が負けた理由を説明させるつもりですか?案外、意地悪なんですね、野分は……」

 

野分「す、すいませ……そんなつもりではっ!」

 

不知火「冗談ですよ……ふふ。そうね」

 

不知火「お祝いに、なにか……ご飯でもおごってあげます」

 

野分「はい。……ありがとうございましたっ」

 

不知火「どういたしまして」

 

 

END.

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