魔族としての彼女の生き方。

※原作なんてないのとほぼ同じなので、独自設定てんこもりです。
エイプリルフールってことで。

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享楽とは

この世界は、人間と魔族が存在している世界である。

それは昔からそうで、いったいいつから人間が、魔族が存在しているのかは、もう誰にも分らないほど当たり前のこと。

 

基本的に魔族は、人間が進化した姿だと言われている。魔力を扱うことに長けた人間、とでも言うべきか。

道具などを持たずに、素の戦闘能力だけで人間と魔族を戦わせた場合は、数秒で人間が肉の塊になるだろう。それほどまでに魔力と言うものの存在は大きい。

 

故に、人間は魔族を恐れ、迫害し、追いやった。

当時は魔族に好戦的なものが少なかったのも大きな要因となり、魔族と人間の生息地は瞬く間に分かれていき、今では戦争をしている地域もある。

 

ただ、上手に人間と魔族が共存しているという国もあるらしい。

 

そんな国に行くことが出来たらどれだけ楽だろうか、と。

私、東雲絵名は思うのだ。

 

 

 


 

 

 

 

「お待たせ~、絵名」

 

人間であれば何も見えないような深い闇の中、中性的な声が私を呼ぶ。

声のした方を向けば、ピンク色の髪をした魔族、瑞希が、こちらに手を振っていた。

 

魔力に適応する形で変わっていった私たち魔族の目は、暗い闇の中でも相手とじゃんけんする程度には容易に視認することが出来る。

この他にも、睡眠時間は人間の半分以上短い3時間程度で済んだり、寿命がほぼ3倍に伸びたりと、魔力さまさまな進化を遂げている。

 

「今日は一段と遅かったわね」

 

「まぁね。ちょっと話が長引いちゃって」

 

お互い黒い服を身にまとい、持っているだけのランタンをその場に置いて木の根に座り込む。

ランタンを持っているのは、仮に人間に出会ってしまった時に、自分を人間に偽る為。魔族特有の頭に生えている、羊のような角も魔法で見えない様には出来る。

要は、無駄な争いは起こしたくはないのだ。自国が人間と対立している立場にあるがために。

 

「記憶、思い出せそう?」

 

「...ぶっちゃけ、行き詰っているのよね」

 

瑞希にそう問いかけられ、私は天を仰ぐ。

 

私には、幼いころの記憶が無い。両親の顔は思い出せないし、他に家族がいたかどうかも不明だ。

私に関する情報と言えば、幼いころに大けがを負った状態でこの魔族の国付近で倒れており、意識は朦朧としながら治癒魔法をかけている所を助けられて、今に至る。

 

身寄りのない私を優しく受け入れてくれたのは、子供が欲しいけど出来なくて諦めていたという2人の夫婦。

その2人に私を助けてくれたのが誰なのか聞いても、どうやら深くフードを被っていたようで、私を救ってくれたのが結局誰なのか、それは今でもわかっていない。

 

助けられたのも数年前の話だから、相手はもう覚えていないかもしれないが...一言だけでもお礼を言いたかったのだけど。

 

「私の予想だけど、手掛かりはきっと人間の国にあると思うのよね。だって怪我してたんだし」

 

「...だけど、外に行くのは危ないよ。絵名は魔法もへたっぴだし」

 

「うっさいわね。...わかってるわよ、そんなこと」

 

魔族は魔法を扱うことが出来る。魔力を操作して、望む現象を発生させるのだ。

そんな魔法にも、それぞれ適正というものがある。要は得意不得意だ。

何が得意で何が不得意なのか、それを調べる魔法も存在しており、この辺りで1番その魔法を上手く使う魔族に調べてもらったところ、どうやら私には全属性そこそこ使えるらしく、中でも火属性が飛びぬけて強いとの事だった。

 

すぐにでも本国に連絡を、と慌てだした魔族の男を止めてくれたのが、今目の前にいる瑞希だ。

 

後から聞いた話だと、あそこで瑞希が止めてくれなければ、私はそのまま戦争に駆り出される可能性が高かったという。

戦争するなんてまっぴらごめんだし、それを止めてくれた瑞希には感謝している。

感謝しているのだけど、止めることが出来る瑞希はいったい何者なんだろう。

 

...話がずれた。

 

火属性に強い適性を持っていると言われても、私には実感の持ちずらい話だった。

何せ、私は自分で自覚をもって魔法を行使したことなどなかったから。

その時に唯一使えた治癒魔法は、死のはざまに立たされて反応的に使いだしたおかげで、感覚として残っていて使うことが出来ただけだ。

 

そういうわけで、今は瑞希が私の魔法の先生というわけだ。

習い始めて最初に教えられたのは、確か人前で魔法を使ってはいけない、だったか。

 

「さて、じゃあ今日も水属性の魔法だね。それぞれの属性の力関係は覚えてる?」

 

「さすがに覚えてるわよ。火→風→雷→水の順番で、4すくみになってる、でしょ?」

 

「せいかーい。じゃあ、今日はこの火を消してみようか」

 

私の答えに満足そうに頷いた瑞希は、魔法の練習をするために立ち上がった私たちほどの火を、その場で生みだした。

日を追うごとに大きくなっていく火だが、周りにある自然には燃え移らないのだろうか。

 

思わずジト目で瑞希を見ると、瑞希はヘラヘラとした笑みを浮かべながら、手に持っている腰の高さほどまである木の棒、魔法の杖を振った。

 

「ボクは絵名と違って魔法の扱いが上手ですから」

 

「今に見てなさい。瑞希以上に上手になってやるんだから」

 

瑞希と同じような形をした杖を手に持ち、正面に構える。

 

習い始めた当初こそ、魔力と言うものに振り回されるだけだった私だが、今は違う。

杖を媒体として、魔力を集め、頭の中で魔方陣を描いて、放つ。魔法を放つときには詠唱をするものだ、という謎の先入観から脱出するのに少し時間がかかっただけで、今では当たり前に出来る。

 

ただ問題は、呪文を放とうと集中すると、途端に周りの音が聞こえなくなることだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今より上手になられると、困るんだけどな」

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

魔族、とはいうものの、その社会は別に魔力に頼った生活をしているわけではない。

基本的には普段の生活で魔力は必要としないし、最後に魔法を使ったのはいつ、と聞かれても首をひねって答えられない魔族もいるくらいだ。

ただ、その例外の枠に入るのが、ゴミを燃やした際に出る二酸化炭素の処理。それを、魔力を用いて浄化し、放出する。

 

「見学に来たけど、今日はやってない、か...」

 

所謂魔法道具と呼べるようなものは存在しておらず、焼却場が休みだと魔法も行使する人間が居ない事になる。

施設の扉の前までやって来たが、中から音が聞こえてこないため今日は休みだと思われる。

 

ため息を吐いて来た道を帰る。

 

のどかだ。自然は豊かだし、魔族同士の争いもない。

瑞希から聞いた話だが、人間は同じ種族で醜い争いをするのだとか。それを考えると、こちらで生きていくことが出来て幸せなのだろう。

 

死にかけの私を救ってくれた方にも、家族の代わりになってくれた2人にも、感謝しかない。

色々と常識や魔法も教えてくれている瑞希にも感謝だ。

こんな私に何が変えせるだろうか、と少し大きめの木の幹に背中から寄りかかって空を見上げていると、正面に人の気配を感じた。

 

「...え、と」

 

「何してるの?」

 

視線を下げるとそこには、紫髪が特徴の、えらく顔の整った少女が立っていた。

歳は恐らく私とそう離れていない。ただ、なんと言うか。

生き物と話している感じがしない。

 

「何、って。...別に、ただ考え事してただけ」

 

「そう」

 

それだけ言うと、紫髪の少女は私に興味を無くして、横を通って行った。

 

妙なやつ、と言うのが最終的な印象。

呼吸もしているようだし、血の通った肌の色をしている。ただ、あの一瞬しか喋っていないとしても、生き物と話していないような感覚。

妙なやつだ。

 

「...まぁ、いっか。もう会うことも無いだろうし」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

家に帰っている途中、街中で黒い煙が上がっているのが目に入った。

ただの白い煙ならまだしも、上がっているのは黒い煙。しかも方向は拾ってくれた家だ。それだけで私の緊張感は膨れ上がっていくようだった。

 

弾かれたように走り出し、やがて私の目に入ってきたのは、あの2人の、拾ってくれた2人の家屋が燃え盛っている光景だった。

 

「...っ!」

 

魔法を使うことを久しく忘れている、もしくは使ったことすらないほど平和な場所に生きている住民たちは、水属性の魔法を使える誰かが来るまで周りで見ているだけ。

今この場で、今すぐ何とかできるのは私しかいない。

 

瑞希に最初に教えられた言葉が一瞬チラついて、すぐに頭を振って手を正面に構える。

 

杖があれば魔法の行使はしやすいが、そこは魔力にものを言わせれば何とかなる。効率の良さが違うだけだ。

 

「全部っ、消えて!」

 

イメージするのは、大きな水の塊。それを燃えている家の上に構成してぶつける。

それで消えなければ何度も、何度も、何度も。

 

やっと火が消えたのは水の塊をぶつけること7回目の時。

体力は限界で、魔力もすっからかん。喉が切れたのか、口の中が血の味で埋まりながら肩で息をしていると、肩を優しく叩かれた。

 

「.....?」

 

「絵名、お疲れ」

 

振り返るとそこには瑞希が立っていた。

私よりも魔法の扱いに長けている瑞希が来るなら、瑞希に任せれば良かったと思う自分と、自分でも魔法で火を消すことが出来た達成感を覚えている自分。

妙な気分になっていると、それを見透かされたのか、瑞希は困ったような笑みを浮かべた。

 

「ボクは今来たところでさ、絵名が消火してくれなかったら間に合わなかったかもしれない」

 

「間に合わなかったかもって...どういう...?」

 

「絵名のご両親は無事...とは言い難いけど、生きてる。だけど、ボクが来てから消火してたら分からなかった。絵名のおかげだよ」

 

「...そっ、か。よかった...」

 

瑞希にそう言われたところで、私の足から力が抜けてその場に座り込んだ。

 

私の魔法で人を救えた。あの2人を救えた。

瑞希に及第点を貰えてない私でも、救える。あの人に救ってもらったように、私も誰かを救える。

 

今までは使えるのだから使いこなせるようになる、という1種の義務的感情で魔法を練習していたが、私は初めて、明確に魔法を使う理由を覚えた。

 

この魔法は、誰かのために。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

私が人前で魔法を使ったことにより瑞希が止められるラインを越えてしまったらしく、私は田舎から出て自国の中心へと向かう事になった。

どうやら瑞希は黙ってこの田舎へと来ていたようで、私と同時に瑞希も移動なのだとか。

 

「あーあ。だから人前で使わないようにって言ったのに...と言っても、仕方ないか」

 

「使わなかったら、あの2人が死んでたかもしれないんでしょ」

 

今は2人で馬車に乗って移動中。

少し狭い、と思わなくもないが、私1人だと不安につぶされそうになっていたこと間違いなしなので、少しの我慢である。

 

と言うより、魔法を習い始めの最初に『人前で使わないこと』と教えられていた、と言う事は、瑞希はこうなると予想していたのだろうか。

 

「ん? わかってたのかって? そりゃあまぁ、ボクは最初から絵名の魔力量には気づいてたよ。ボクはどの属性も少ししか適正がないけど、絵名は一番苦手な水属性でもボクより遥かに上だし」

 

「へぇ~...って、私水属性が一番苦手なの?」

 

「今の段階だとね。練習すれば苦手は克服できる、って聞いたけど、実際どうなんだろ」

 

どうやら瑞希には、最初から私の適正も魔力量もお見通しだったようだ。

それなら、わざわざどの属性が適正なのか、調べに行かなくても良かったのではないだろうか。

無駄にお小遣いを払った気分だ。

 

馬車に付けられている窓から外を見ると、海が見えた。

その海の上を、真っ白な鳥が1匹飛んでいる。渡り鳥、と言う奴だろうか。

 

「そういえば瑞希。人間と共存してる魔族の国って、どこにあるの?」

 

「う~ん。ボクも実際に見たわけじゃなくて教えてもらったことだからなぁ」

 

誰に教えてもらったんだっけ、と腕を組んで思い出そうとする瑞希を視界から外して、また外を見る。

もし仮にそんな国があるとして、私のあの鳥のような翼があれば。

 

今すぐにでも、こんな場所から逃げ出すのに。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

私の住んでいる国の中心部、所謂王都と呼ばれる場所まで連れてこられた私は、私や瑞希と似たようなローブを来た男女に囲まれ、あっという間にどこかの応接間まで連れてこられてしまった。

歩いている途中で瑞希は別行動になり、急に私1人に。

 

「...胃が...」

 

部屋の中には、私が逃げ出さないように見張っているやつが3人。私が部屋に入れられる前から立っていたのが1人。

魔法の練度は言わずもがな私よりも上だろうし、ここから逃げ出すことなんて逆立ちしても今の私には不可能だ。

手を前に出した瞬間この世とおさらばだろう。

 

己の行動1つでも相手の機嫌を損ねると死ぬ可能性があるという、嫌な緊張感の中胃の痛みを我慢して椅子に座っていると、扉が開いて誰かが入ってきた。

 

「こんにちは。突然こんなところに連れてきてしまってごめんなさい」

 

青がかった銀髪で手足は細い、その声も相まって儚げな印象を抱かせる少女は、私の正面の椅子に座って頭を下げた。

 

「い、いえ...理由は、なんとなく瑞希、あ、ピンク色の髪の子に聞いたので...だから、頭を上げてください」

 

「ありがとう」

 

私がここに連れてこられて、最初に話す人がこの人と言う事は、多分上の立場の人なんだろう。

予想としては、私の上司にでもなるのだろうか。気難しそうな人じゃなくてよかった、とぶっちゃけ私は安心していた。

 

その間に控えていた紫髪の人が紅茶をそれぞれの前に置いて、自分自身も銀髪の人の隣に座った。

 

うん、見たことがある。この間、すれ違った人だ。

 

「また会ったね」

 

「そ、そうですね...え、なんであそこに?」

 

「あの時は任務があったから。それと、あなたを見に」

 

「へぇ~...えっ!?」

 

王都で働いているだろう彼女があんな田舎になぜいたのか問いかけると、任務であり、その中に私の視察も含まれていると言う。どうやら瑞希のおかげで静かな時間を過ごせていたのも時間の問題だったようだ。

 

目の前の2人が紅茶を口に含んだのを見て、私も口を潤すために紅茶が入ったカップを手に取る。

知識では知っているのだが、こうして紅茶を自分の目で見るのは初めてだ。あの家にいた時に出てくるのは基本的に水だった。

 

綺麗な色をいた飲み物を口に含んで、喉を通っていく。

ぶっちゃけ味はわからなかった。是非リラックスして飲みたいものだ。

 

「じゃあまず自己紹介から。私は奏。となりはまふゆ。あなたは絵名さんだよね。昔の記憶がない」

 

「え、と...。はい、そうです」

 

「昔、通りかかった時にあなたのことを田舎の村に運んだんだけど...無事にケガも治ったみたいでよかった」

 

ここで衝撃の事実判明。

どうやら、私の事を救ってくれたのはこの奏さんのようだ。

 

思ってもみない再会...私は奏さんの事を覚えていないから出会いに、私は頭を下げた。

 

「あの時は、奏さんのおかげで助かりました。もしかしたら私はあの時に死んでしまっていてもおかしくなかった」

 

「そこまで感謝されること...いや、受け取るよ。どういたしまして」

 

ひとまず感謝の言葉は伝えられた。だが、この人への恩返しはどうしたものだろうか。

 

私が他人よりも優れている所と言えば、魔法が得意な事。ただ、王都にいる人間だ。私よりも魔法が得意な可能性の方が高い。

 

どうしようか、と悩んでいると、唐突に奏の雰囲気が変わった。

それまで緩んでいた空気が、急に張り詰めたものに変わったことで、私の喉は急速に乾いていく。

 

「単刀直入に言います。絵名さんをここに呼んだのは、私たちのチームに入ってほしいから」

 

「ちー、む?」

 

「うん。この国が人間と戦争しているのは知ってると思うんだけど、中でも私たちは斥候を担う予定になってる。そこに、絵名さんも入ってほしい」

 

斥候。要するに、本隊より先に出て、相手や地形の状況を探る少数の部隊。先に何があるかわからないから斥候を出すのであって、斥候からしてみれば未知へと飛び出さなければならない。

斥候が飛び出して戦闘を始めることは少ないだろうが、見つかれば戦いからは逃れられないだろう。

 

私にそんなこと、出来るとは思えない。

辞退しよう、と口を開きかけて、思いとどまる。

 

奏さんに恩を返すチャンスなのではないだろうか。

奏さんが私をあの田舎に預けてくれなければ、今この場には絵名という存在は無かったかもしれない。

 

数分悩んだ私は、最終的に、その首を縦に振った。

 

「...! ありがとう、絵名さん。...あ、じゃあもう仲間だから、お互い敬語なしで行こうか」

 

「...ええ」

 

私の返答に花が咲くように笑う奏に、可愛いと思ってしまった。

こんな少女が、人間を殺さなければならない状況になった時に、すんなり殺せるのだろうか。

 

「あ、あと瑞希も同じ隊だから」

 

「ええぇ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

奏の部隊に入ってからの毎日は、国の領地から出ることはなくひたすらに訓練、訓練、訓練だった。

 

瑞希の教え方が大分手加減してくれていたのだな、とわかるほどに厳しい訓練を毎日行ってきた私は、たった1ヶ月で自分でも驚くほどに成長していた。

 

魔力の流れがよくわかる。どう扱えばいいのかが本能的に理解できるのだ。

今作られているという、私専用の杖も完成すれば一体どうなってしまうのだろうか。

 

「なーんて。私レベルのなんてそこら辺にいるのよね...」

 

斥候であるからこそ、かなりのレベルを要求されているものの、私を教えてくれている先生役の人はしきりに『この程度ここにいる奴ならだれにでも出来る』と言う。

まぁ、ここは王都なのだし、それは事実なんだろう。

 

まぁ、自信がなくなっていくのだけど。

 

そんな日々を過ごしているうちに、ついに奏の部隊に任務が与えられた。

 

まともに連携なんてものは取ったことがないので、敵地での訓練もかねた任務、という感じの内容。

私たちの部隊に与えられた作戦を立てる部屋で、奏が黒板に紙を張り付けて今回の任務の詳細を説明していた。

 

「今回は国の領地から出てすぐ、と言うほど近くは無いけど、そこまで遠くない場所を探索するのが任務。だけど、まだ未探索地域だから、気を抜かないように。このエリアにはそこまで凶暴な生き物もいないはずだから、無駄な殺生はしなくてすむと思う」

 

「それは気が楽でいいや。多少の動物ならスルーすればいいだけだもんね」

 

瑞希が本心から油断しているわけではないだろうけど、ぶっちゃけ私は安心している。

まだ訓練でしか戦ったことのない私が、いきなり実戦か、と思っていたところだったのだ。

 

「油断してると足をすくわれるよ」

 

「わーかってるってば。ボクたちは実戦は既に経験済みだけど、絵名は初めてだからね。サポートは万全にしていこうと思ってるよ」

 

「まぁ、そこまで気を張る必要もないと思うけど...用心しておくに越したことはないからね」

 

3人の話を聞いている限りだと、どうやら私を慣れさせるのが目的らしい。

すぐにでも実戦を経験させて荒療治、よりも用心深くて助かった。

 

出発は明日。道具などはそこまで準備するものはないので、後は私の心の準備だけだ。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

結論から言ってしまえば、私たち4人の始めての任務は大成功に終わった。

 

比較的領地から近い場所に、資源不足で悩まされていた金属の鉱山が見つかったのだ。

最初はなんか光っている黒い石があるな、なんて思って拾い上げたのだけど、それを見たまふゆが珍しく目を丸くしてこちらを見ていたのを覚えている。

 

ただ、4人で喜んでいたのも束の間。表彰までされてしまった私たち4人は、簡単なくだらない任務で遊ばせていられないということで、すぐにでも実戦に投入されることが決まった。

 

資源を見つける力と戦う力は、イコールではない気がするのだけれど。

 

出発まではかなりの時間があった。今の戦況は膠着状態にあるのだという。それを打破するべく、私たち4人が動くのだ。

それまで、いろんな魔法を覚えたり、4人で街中で遊んだり。これまでの人生と比べても1番楽しいと言えるような時間を、私は過ごしていた。

 

だからなのか、気分はこれから死にに行く人の気分だった。

 

「絵名、緊張してる?」

 

いよいよ出発日の朝。今から移動して、向こうにつく頃には1日後の夜になっているだろう、という時間調整がされたスケジュールによって、私はまだ肌寒い中集合場所へとやってきていた。

 

そこには既に瑞希が待機しており、まだまふゆと奏の姿は見えない。

 

「まぁ、ね。まだ実戦なんて1回も経験してないし」

 

「それはまぁ、慣れるよ」

 

その慣れの中には、相手を殺すことも含まれているのだろう。

慣れたくないな、とも思うし、早く慣れないと3人の負担になってしまう、とも思う。

はぁ、とため息を吐きだした。

 

「みんな、お待たせ」

 

しばらく瑞希と一緒に空を見上げていると、奏とまふゆが一緒に歩いてきた。

 

この2人はいつも一緒なのだが、もしかして付き合っているのだろうか。

 

「お2人さんは今日もお熱いですなぁ~」

 

「瑞希、やめて」

 

「え~?」

 

「ま、まぁまぁ...別に私は怒ってないし...」

 

随分とゆるい空気だ。

もしかしたら、私の憂鬱な気持ちを察して、瑞希が明るくふるまってくれているのかもしれない。

瑞希は相手の顔色を読むのが得意だ。それはこの数週間で理解した。

 

「...何とかなるわよね」

 

いよいよ、出発だ。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、手筈通りに」

 

「うん」

 

「おっけー」

 

「...うん」

 

予定ポイントへと到着した私たちは、立てた作戦通りに行動を開始する。

 

斥候は、進んで戦闘をする必要が無い。むしろしない方が良い。

相手に悟られずに相手の情報を得るのが大事なのだ。

 

まずはこの中で1番身体能力が優れているまふゆと、次点の瑞希が入り込む。罠があった時に対応できるのがこの2人だからだ。

安全を確保しながら、2人には進むことを最優先に行ってもらい、情報収集は奏と私が行う。

 

まずは私たちの間で通信が可能となる魔法、『ナイトコード』で、罠の位置やお互いの状況を共有する。

主に私たちが活動するのは夜だし、繋がっているから、という理由でこの魔法名を奏が名付けた。

ちなみにこの魔法を創ったのはまふゆだ。魔法を新しく創るという無理を、欲しいからで作るのは天才としか言いようがないだろう。

 

「...絵名、私の後についてきて」

 

「うん」

 

何かあればすぐにでも対応できるように。かといって近すぎないような、大体1.5mほど離れて、奏についていく。

慎重に、ゆっくり進む中で聞こえてくるまふゆと瑞希の報告内容は、罠も張り巡らされているわけではないらしい。

 

「もしかしたら、出来たばかりの中継基地なのかも。...ここで叩けば、みんなが楽に戦況を...」

 

まふゆと瑞希の報告を受け取り、足を止めて考え込む奏。

私の気分としては足を止めたくないのだけど、前を進む奏が止まっているので、私の足も止まらざるを得ない。

 

やることのない私はとりあえず、周りを見渡してみる。

右を見ても木。左を見ても木。行ってしまえば森の中だった。木の幹を見ても生き物がいるようには見えないので、この辺りはそういった生き物が少ないのかもしれない。

 

そう思って奏の方へと視線をずらした瞬間、奏に襲い掛かる人間が目に入った。

 

弾かれるように動いた私の体は、手は、奏を突き飛ばすことに成功した。

しかし、喜びも束の間、私の右腕、肘から先は切られて無くなってしまった。

 

「う、ぐ、ああああぁぁぁぁああぁぁぁああああ!!!」

 

燃えるような痛みで叫ぶままに、私は剣をふるってきた人間に残っている左手を突き出した。

手のひらから生み出されて発射された光の小さな粒は、寸分の狂いもなく人間の口の中に入り込み、頭を爆発四散させた。

 

腕が痛い。人を殺した。奏は大丈夫だろうか。頭も痛い。暗い。

 

こんな事になったのはどうして?

________あの人間が襲ってきたからだ。

 

じゃあどうにかしなきゃ。

________他にもいる。

 

じゃあ殺さなきゃ。

________切られた腕は繋げよう。

 

さぁ、誰かを守るために(自分の為に)誰かを殺そう(誰かを生かそう)

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

次に私が私を取り戻したのは、全部終わったあとだった。

 

前線基地として急造されたものは全て焼き尽くされており、恐らく人間だったものは黒焦げになって辺りに散りばめられている。

 

記憶が飛んでる訳じゃない。感覚もあった。

己の手に武器を持って命を奪った訳じゃないが、自分で放った炎で、人間の肉が焼ける匂いが嫌に鼻にこびり付いている。

 

気持ち悪い。視界が回る。まるでこの世界自体が揺れているかのようだ。

 

「絵名っ!」

 

焦点の合わない視界を後ろに回すと、そこには3人がいた。

 

見たところ3人とも怪我は無い。よかった、私がしたことは無駄じゃなかった。

 

「...あぁ、みんな。ごめん、ちょっと気分が乗っちゃって」

 

「...絵名、それは」

 

「大丈夫。今後は抑えるようにするから」

 

気分が乗ったなんて嘘だ。乗るどころか落ちる一方。何も考えたくないほどに。

相手はほとんど私たちと同じ見た目だったじゃないか。使う言語も同じだった。

ほんの少し、些細な違いがあるだけで、ほとんど同じ。

 

私が火をぶつける直前、彼らは何を叫んでいた?

自分たちの国に残してきた誰かの名前を口にしてはいなかったか?

 

それでも、自分を嘘で塗り固めなければ私が私で無くなってしまう。

この感情に慣れることは多分、一生ない。

私がいつか、報いを受けるまで。

 

「それじゃあ、帰ろっか」

 

死が私と世界を分かつまで、この嘘は、呪いは、一生続く。

 

 




エイプリルフールだから何書いてもいいと思って。
騎士パロ...って言われるもの何でしょうけど、騎士は出てこなかったのでタグに入れてません。


続きは考えてません。

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