仮面ライダーAP アナザーメモリ   作:ダス・ライヒ

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久しぶりの祝福の鬼。


羽原暢子は何者なのか

 この資料によれば サバト犠牲者欄の中に神崎戦太郎を追い、APの世界に来たあの仮面ライダーの変身者、羽原暢子の名があった。

 彼女の出身は方言からして沖縄県出身。高校卒業後、夢をかなえるために東京へ上京した頃にサバトに巻き込まれたようだ。

 そこで彼女は絶望してファントム「アメミット」となり、ワイズマンの意思の下、ファントムを増やすためにゲートと呼ばれるファントムとなる人々を襲い、絶望させていた。当然、沖縄に居る家族は彼女がファントムなった事など知らず、見付かることを信じて今も探している。

 

 アメミットは別の方で活動していたため、仮面ライダーウィザードに倒されず、主であるワイズマンが消えたことも知らず、今も活動を続けていたようだ。他の仮面ライダーとも交戦経験はあるようだが、自信が生み出したファントムを囮に、見事逃げ果せたようだ。

 主に絶望させるゲートの対象が悪人であったらしく、主のワイズマンが消えた後でも主の命に従い、忠実に実行していた。ミュージアムの残党である神崎は、まさにアメミットにとって格好の獲物であった。

 

 何時から狙っていたか不明だが、神崎に狙いを定めたアメミットは、彼がゴールドメモリを入手したあたりのようだ。

 神崎が仮面ライダーたちの追撃から逃れるため、異世界に逃亡すれば、アメミットもそれを追うようにアナザー・メモリの異世界転移に飛び込み、Gの世界、あるいはAPの世界というべきか、その世界へ転移した。

 

 だが、神崎が持つ幹部とスポンサーのみが所有することを許されるゴールドメモリ、アナザー・メモリの力は強力だ。本人に実力は無くとも、通常のファントムであるアメミットでは返り討ちにされる可能性が高い。

 そこで知恵を振り絞り、アメミットは神崎を絶望させ、ファントムを生み出させるために、彼が身を置いている人類守護戦線のアジトへ忍び込み、ライダーベルトを盗んだ。ライダーベルトを入手したアメミットは仮面ライダーキッカーに変身した。怪人であるファントムでありながら仮面ライダーに変身するとは、恐ろしいな。

 

 仮面ライダーに変身することが出来たアメミットは確実に神崎を絶望させるべく、神崎の狙いを止めに異世界より来た仮面ライダーキッカーと名乗り、自分の正体を隠してAPたちと接触した。その次に宿主である羽原暢子の名を名乗って信頼関係を築き、見事に仲間として受け入れられる。流石はファントムと言った所か。

 

 AP等が神崎のガイアメモリの秘密工場を見付け、そこへ総攻撃へ仕掛ければ、ゲートである神崎を絶望させるチャンスと判断し、仮面ライダーキッカーに扮するアメミットはそれに同行した。

 

 結果は仮面ライダー電王の乱入によりAPたちの勝利。

 電王の乱入が無ければ、APたちはゴールドメモリの有する神崎が変身するアナザー・ドーパントの前に敗れていた事だろう。

 それがアメミットの悲願を叶えることになろうとは、その場に居る者たちは思いもしないだろう。

 

 

 

 モモタロスが憑依している仮面ライダー電王ソードフォームの乱入によって、見事アナザー・ドーパントこと神崎戦太郎を倒すことに成功した仮面ライダーAPたちであった。

 

「そいつを、その女を俺に近付けるなァ! その女は化け物だぞ!!」

 

 変身を強制的に解除され、元の姿に戻った神崎は仮面ライダーたちに羽原暢子を近付けるなと叫ぶ。キッカーのベルトを見て盗まれた物と分かった際、神崎はあの怪人の正体、ファントムのアメミットこと暢子であると気付いたのだ。自分を狙って居って来たことも知っており、ライダーたちに倒されたことで、いつアメミットが正体を明かして襲ってくるか分からんのだ。

 

「あぁ? 何言ってんだ? あの嬢ちゃんが化け物なわけ無いだろ」

 

「この期に及んで、そんな嘘を!」

 

 当然、電王とAP等が暢子の正体がファントムのアメミットであることなど知る由もない。現に初めてAP等と神崎と顔合わせをするモモタロスが憑依している電王は茶化し、AP等は自分が助かりたいがための嘘であると疑っていた。

 

「気付いてないのかお雨らは!? お前らはその女、化け物に騙されてるんだぞ! 速くその化け物を殺せ!」

 

 そんなAPたちに必死に暢子がアメミットであると訴えるが、自分の事は棚に上げており、この世界にガイアメモリをばら撒き、混乱に陥れた神崎の言葉などに誰も耳を貸すことは無かった。気が付いた暢子が起き上がり、自分に向かってきていることに、神崎は僅かに動く力を振り絞って逃げようとする。

 

「来るな! 来るな化け物!! どうして気付かねぇんだよ!? お前ら馬鹿なのか!?」

 

 自分の言うことを聞かないAP等に罵声を浴びせつつ、神崎は必死に逃げるも、誰も彼に迫る暢子を止めはしなかった。何せAPたちは暢子がファントムのアメミットであることなど知る由も無いのだ。それに暢子はこの時の為に完全に仲間に溶け込んでおり、APたちは微塵も疑ってなどいなかった。

 

「あぁぁ、止めろ! 来るな! 来るな化け物!!」

 

 逃げる神崎から暢子がゴールドメモリ用のベルトを抜き取り、それを目前で地面に叩き付け、何度も踏んで壊そうとしていた。

 

「それは流石にやり過ぎじゃ…」

 

 こちらの問いかけにも応じず、怯えて震える神崎を更に怖がらせるように何度もベルトを踏み付けて壊そうとする暢子に対し、流石のAPも不審に思って止めに向かう。

 止めようとする仮面ライダーAPに、暢子ことアメミットはゲートである神崎を確実に絶望させるべく、伸ばしたその手を振り払った。

 

 

 

「っ! 羽原さん、あんた何者だ…!?」

 

 ベルトを何度も踏み付けて壊そうとする暢子を止めようと、その肩に触れた南雲サダトこと仮面ライダーAPであったが、普通の成人女性とは思えない力で振り払われた。この力を間近で受けたAPは、直ぐに暢子が改造人間か何かの類であると分かり、何者であるかどうかを警戒しながら問う。

 

「ようやく分かったか! 速く、速く殺せ!」

 

「なんか変だな。おい、どうした?」

 

 暢子に警戒するAPに対し、神崎は速く殺せと喚く。呑気なモモタロスである電王も異常だと分かってか、三人の下へ近付く。これにアメミットはゲートである神崎を絶望させられないと判断し、遂に正体を明かした。

 

「嘘だろ…!? まさか、改造人間だったなんて…!」

 

 暢子が正体である頭がワニ、上半身がライオンで下半身がカバの合成獣のようなファントムであるアメミットになったことで、APは衝撃を受けた。ようやく気が付いたライダーマンGとヘレンも正体を露にしたアメミットの姿を見て驚き、言葉を失っている。

 

「う、うわぁぁぁっ!? 殺される! 助けてくれぇ!!」

 

 同じくその正体と言うか、本性を現したアメミットの姿を見た神崎は恐慌状態となって泣き叫び、死に物狂いで這いずり、この場から逃げようとする。無論、アメミットがゲートを逃すはずが無く、足を踏み付けられて止められる。その瞬間、神崎の顔に亀裂のようなひび割れが走り始めた。ファントムが生まれようとする兆候だ。

 

「みんな、ありがとう(にふぇーでーびる)ね。おかげでこのゲート、絶望させることが出来て、うち、ドキドキ(ちむどんどん)してるね!」

 

「一体、何がどうなってんだか…」

 

 アメミットの姿になってようやく喋ったその口調と仕草は、いつもの暢子その物であった。だからこそ不気味さが際立ってか、あの電王ですら衝撃の余り何も言えないでいた。怯える余り絶望する神崎を除いた一同が驚愕して声を失う中、アメミットは宿主と同じ性格でここまで協力してくれたことに礼を言った後、邪魔をしないように告げる。

 

「でもね、このゲートはうちが絶望させなきゃ意味ないね。だから邪魔しちゃ駄目よ、みんな」

 

「助けてくれ! 殺されるっ!!」

 

「何を企んでいるか知らないが、そうはさせない!」

 

「何だか知らねぇが、俺も行くぜ!!」

 

 ゲートが絶望してファントムを生み出すまで邪魔をするなというアメミットに対し、神崎の助けを呼ぶ声を聴いたAPと電王は、そのファントムの企みを全力で止めに向かう。

 

「もう! ここまで絶望させるのにとても大変(でーじやっさー)なのに!」

 

 せっかくゲートが絶望してファントムを生み出そうとしている時に、仮面ライダーたちが邪魔をしようとした為、これに激怒したアメミットは先に仕掛けたAPを召還した得物で吹き飛ばした後、石を床に投げつけ、グールと呼ばれるファントムの戦闘員担当を複数召喚して対処させた。

 グールの所有権はファントムの幹部であるフェニックスとメデューサしか無いのだが、幹部でも無い普通のファントムであるアメミットが所有しているのは、主であるワイズマンから許可を得ていたのだろう。

 

「な、なんだこいつ等は!? 邪魔すんじゃねぇ!」

 

 突如として現れたグールの集団に、APと電王、ライダーマンG、ヘレンは動揺しながらも対処する。グールは槍などで武装しているが、戦闘力は低いために吹き飛ばされていた。

 

「こいつ等、何度でも立ち上がって来る!」

 

「一体どうすれば!?」

 

「どんだけ斬れば倒れるんだ!?」

 

 しかし倒すには魔法が必須であり、それを知らないAP等は何度でも立ち上がって来るグール相手に消耗を強いられていた。魔法を持たないAP等がグールを倒せずにいる中、アメミットは既にファントムを生み出す寸前の神崎にもう一押しを行う為に近付く。

 

「止めろ…止めてくれぇ…!」

 

「さぁて、元気なファントムを産もうね! えい!」

 

 この時の神崎は全身ひび割れ状態であり、もうじきファントムが生み出されようとしていた。そんなゲートである神崎からファントムを生み出させるべく、アメミットは彼の首を掴んで身体を持ち上げる。持ち上げる際の口調はいつも明るい暢子のその物であり、より一層に狂気と恐怖感を神崎に与えた。

 

「アァァァッ!? アァァァ!!」

 

「さぁ、新しいファントムの誕生の瞬間!」

 

 仮面ライダーたちが魔法でしか倒せないグールに苦戦している間に、ゲートである神崎はアメミットに絶望させられ、遂に新しいファントムをこの世界で誕生させた。

 

 

 

「何が、何が起きてるの!?」

 

 絶望した神崎は不気味な光に包まれ、ファントムに生まれ変わろうとしていた。ファントムの存在すら知らないAP等は、グールと交戦しながらいま起きている現象に戸惑っていた。

 

シタイヒャー(やったー)! これでワイズマン様に褒めてもらえる!」

 

 ゲートである神崎を絶望させてファントムを誕生させることに成功したアメミットは、主君であるワイズマンに褒められると思い、大いに喜んでいた。

 仮面ライダーウィザードの全てを知る者なら、何も知らず、未だ活動を続けるアメミットが哀れに思うだろう。このファントムはただ主君の命に従い、ゲートを襲って絶望させ、ファントムを生み出させていることに過ぎない。仮面ライダーキッカーとなってAP等の中に潜り込んだのも、ゲートである神崎を絶望させるためで、アメミットには何の罪悪感も無かった。

 

「神崎は! 神崎は何処だ!?」

 

 数秒後、先ほど神崎が居た位置に、見知らぬ怪人が立っていた。その姿、旧約聖書や新約聖書に登場するサタンに酷似している。これこそ、アメミットに狙われたゲートである神崎が絶望し、ファントムとなった姿であった。

 

「神崎? あぁ、ここに居るファントムが神崎よ」

 

「化け物になっちまったのか!?」

 

「そ、それが神崎だって言うのか!?」

 

「そうそう! 絶望して、うちと同じファントムになったの!」

 

 APが神崎が何処であるのかと問えば、アメミットは自身の隣に立つ怪人こそが神崎であると答えた。これに一同が動揺する中、アメミットは絶望して同じファントムになったことを伝える。

 

「なんで神崎が化け物になる!?」

 

「なんでって? ゲートが絶望したらファントムになる。みんな指輪の魔法使いなら、知ってるはずでしょ? あぁ、この世界じゃ指輪の魔法使いじゃないんやね。ごめんなさい(ワッサイビーン)

 

 グールを弾き飛ばした後、APは神崎がファントムになると言う理由を問えば、アメミットはゲートが絶望したらファントムになると答えた。だが、アメミットはAP等が同じ仮面ライダーでも、指輪の魔法使いでは無い事を初めて理解し、ゲートが絶望してファントムになるのは知らなくて当然と思って宿主の方言で謝罪した。

 

「さぁ、この調子でゲート見付けて絶望させて、ファントムをどんどん(バンナイ)増やしてワイズマン様に喜んでもらおうね! えーと…」

 

 配下のグールと戦っている相手に謝罪したアメミットは、初めて誕生した影響か、それとも身体の変異に驚いているかつて神崎であったファントムの肩を叩き、この世界でゲートを見付け次第に絶望させ、これからもファントムを増やしていこうとその肩を叩いた。名前の方は知らなかったらしく、何と呼んでいいか分からずに首を傾げる。

 

「クソっ、ガイアメモリの次はこれか! これ以上、好き勝手にさせるか!」

 

 魔法以外では倒せないグールに業を煮やしてか、APは邪魔なグールを弾き飛ばし、召喚者であるアメミットの方へと向かった。この世界でガイアメモリを持ち込んで混乱させた神崎に続き、ゲートを見付けて絶望させ、ファントムを増やして混乱させようと企むアメミットに怒りを燃やしたのだ。そんなAPに既に人ではなく、ファントムであるアメミットは共感せず、ただ邪魔な敵としてその拳を振るう。

 

邪魔(かしまさよー)! もうこの世界でファントムはうち一人しか居ないのに!」

 

「うわっ!? この力、上位クラスの改造人間以上だ!」

 

 アメミットの攻撃を受けたAPは、ファントムの力を身を以て知った。アメミットの力は仮面ライダーキッカーよりもパワーがあり、上位クラスの改造人間ほどであった。かつて神崎であるファントム、サタンと名付けようか。そのサタンは全く動かず、ただアメミットとAPが交戦しているのを眺めているだけだ。

 

「よし、力はあっても戦闘経験は浅い! 押し切る!」

 

 だが、戦闘経験はAPの方があり、アメミットは経験の差で押されていた。そんなアメミットは先ほど動かないでいるサタンの方まで下がり、一緒に戦ってくれないかと頼む。

 

「あぁ、もうサタンでいいや! サタン、うちと一緒に戦って!」

 

 経験の差でAPに押されているアメミットは、向かってくる相手に警戒しつつ、新たなファントムであるサタンに頼むが、当の本人は何も答えない。

 

「ねぇ! 速く戦わんと、あんたも…」

 

 何も答えず、ただ立っているだけのサタンに苛立ったアメミットは怒鳴り付けたが、自分の腹部に違和感を覚えた。その違和感を感じ、思わず視線を下へ向ければ、サタンの腕が自分の腹を貫いていることに気付いた。あのアメミットを倒そうとしていたAPも、驚きの余り足を止めてしまうくらいだ。

 

「な、何をした!?」

 

そんな(アキサミヨー)…!」

 

 APが驚きの声を上げる中、サタンはアメミットの腹を貫いていた右腕を引き抜き、腕に纏わり付いていた血を振り払った。




オレ、沖縄出身じゃないから方言がキツイわ。

アメミット
サバトに巻き込まれた羽原暢子が絶望し、ファントムとなった姿。
主であるワイズマンに命じられたのか、仮面ライダーウィザードが居る別の方面で活動していた模様。
主に狙うゲートは悪人であり、制裁を行って絶望させる。正義のファントムと思われがちだが、対象を絶望させるために敵対者を利用するので、アメミットもまた他のファントムと同様に質が悪い。無論、同胞を襲わない。

えぇ、神崎が絶望して生み出したサタンは、藁の楯の清丸が絶望してファントムになった感じです。
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