刀を持つ騎士(鬼神)   作:カンナム

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第22話 アルド・ヴィンテージ

 ――どうしてっ……!

 ――どうして私たちが、こんなっ……!

 

 炎がゆらめいた。見慣れた穂垣が、隙間風を容易く通すあばら屋が、あっという間に炎に覆われ、なめ尽くされていく。老若男女を問わず、つんざくような悲鳴と獣じみた叫声が人語の狭間をぬうようにとめどなく湧きあふれ、しばらくの間を置いて次第に小さくなっていく。

 

 ーーなんで?

 ーーおにいちゃん、おかあさん……

 

 槍で腹を貫かれた少女は、滅びいく村をうつろにながめ、動かぬ唇でぽつりとつぶやいた。

 村の広場。折り重なった兄と母、隣人夫婦、友人の母、村長……だれもかれもが物言わぬ骸だった。

 

「片付いたか」

「そうだな、消毒は済んだ」

 

 パジャ王国の騎士の声が冷たく響いてくる。幼いころから読み聞かせられていた、王国を守ってくれるはずの、気高い身分の騎士たちが、村人を次々に殺し、村を燃やし尽くしていく。

 

 ――騎士さまが……どう、して……?

 

 少女は吐き気を覚え、その視界はぐるんぐるんと廻っていた。

 思い出されるのは数刻前のことだ。村長をはじめとした大人数人が村長の家に集まり、今年の年貢に悩んでいた。「隠し立てても致し方あるまい。今年は寒波に見舞われ、稲がろくに育たなかった。騎士さまに誠心誠意伝えればもご理解くださり、我々が冬を越すのに必要な食糧を残してくださるはずだ。正直に言おう」村長の言葉に、村の者たちも納得して騎士一団を迎え入れた。

 それが、悪夢の始まりだった。

 

 ――……痛くない、もう力が入らない。

 ――わたし、しぬんだ……。

 

 規定量の年貢を納めなければ、王国への反逆とみなす。村に来るなり騎士団はのたまった。村長がなだめようと前に出たとき、野太い槍が引き絞った弓の如く放たれ、村長をはじめとした村人数人を貫き、穂垣を壊してあばら家の壁に突き刺さった。

 悲鳴と怒号が同時に飛び、またたく間に村人の首が宙を舞い、家屋に火矢が放たれ、村は火の海に沈んでいった。

 説得も泣き言も、謝罪すらも騎士団は聞き入れない。

 規定を満たさぬモノーー村すべての食糧をかき集めたとて規定量を満たすことは不可能だった――これすなわち、国家反逆である。この一点張りなのだ。

 

「――ん?」

 

 ふと。

 槍で貫かれた少女が咳をしたのと、騎士がふり返ったのは同時だった。

 

(けい)ら、王国の騎士か?」

 

 少女のまえに、男が立っていた。

 騎士は眉をひそめ、さきほどまで影も形もなかったはずの、フードを被った男を睨みつける。

 

「なにものだ」

「村の生き残りがまだ居たか」

「問いに答えろ。(けい)らは王国の――この国の騎士かと聞いている」

 

 フードの男と目が合った途端、騎士は短く息を呑んだ。同時に、男の周りを騎士団が囲んでいる。どう考えても騎士団優勢であるというのに、男の正面に立ってしまった騎士は金縛りで動けない。

 風貌を隠すように目深にかぶったフード。その奥から燐光を放つ赤い瞳が、正面の騎士を睨みつけているのだ。

 

「この国はいま、ジャッジに攻められ、魔族にも侵攻されていると聞いた――が、(けい)無辜(むこ)の民になにをしている?」

 

 男の放つ気迫。凍り付くような殺気に気おされ、一歩さがった正面の騎士が、周りの臨戦態勢にハッと我に返るや槍を構えた。

 

「……ただの村の生き残りにしては事情に明るいようだな」

「同じことだ。死にゆく者に口はない」

「貴様も死ぬがいい」

 

 一斉に騎士たちが吠え、槍を繰り出した瞬間、けたたましい悲鳴が重なった。

 

「……そうか」

 

 9人からなる王国騎士達は、その一瞬で血飛沫を上げ天を仰いで倒れていった。

 

「なにっ!?」

「馬鹿な!」

「す、素手の相手に……!」

 

 穂先を止められた瞬間に放った、それが彼らの最期の声だった。

 

 男は1人喉元を掴むと片手で吊るし上げてから言った。

 

「吐け。貴様らはなんのためにこの村を襲った」

 

 男の全身からは赤い太陽のようなまばゆい光が、煙のごとくにじんでいる。男は冷たい瞳のまま更に続ける。

 

「何故、無辜(むこ)の民を手にかけた? 吐け! パジャ王国の騎士!」

 

 瞬間、枯れ枝が折れるような音と共に騎士の首が折れた。

 

「なんだとぉ!」

 

 思わず掴んでいた騎士の体を地面に下ろすが既に息はない。

 

 あまりにも(もろ)い人間の身体に男は舌打ちした。

 

「ちぃっ、吐く前に死におったか。人間の身体は脆いものだな」

 

 魔族として転生した男の肉体は、彼の魂の力と相性が良過ぎるようで力加減が難しい。

 

 微かに息を感じて男ーーアルド・ヴィンテージは陽炎のような太陽の光をおさめると膝をついてフードを外し、倒れた少女に瞳を合わせた。

 

 ――……だ、れ……?

 

「すまぬ。護れなんだ」

 

 頭を垂れ、反応を待つ。幼い彼女は事切れていた。

 

「……せめて安らかに眠れ」

 

 細めたアルドの瞳は、赤い燐光がやみ、紫色へと変わっている。アルドは壊れ物をあつかうように掌を少女に寄せると、開いたままの少女の瞳を閉じさせた。

 

 立ち上がり、倒れ伏した騎士たちを調べる。

 

 騎士たちは赤い面を着け、橙色の肩当てを付けた鋼の甲冑を身に付けている。

 

 誰一人腰の剣帯に差した大小の黒塗りの刀を抜くことはなく、手に持った戦斧と火矢で村人たちを殺していたのが分かった。

 

 アルドは騎士の遺体の一つから大刀を帯から鞘ごと抜き取ると左手に持つ。

 

 鯉口を切り、鞘から刀身を少しのぞかせると紫色の瞳を細めた。

 

「ん? この騎士の刀。……(はばき)に家紋が刻まれているのか…?」

 

 円に交差する二振りの刀の紋様。刀に刻まれた特徴的なそれを家紋とみてアルドは首を横に振る。

 

 木瓜図の鍔に白地に黒の柄糸を巻いた刀は実戦的な拵えだ。その完成された刀に家紋を装飾する行為がアルドには滑稽に映っていた。

 

(権力、名声。貴族どもは常にそれらを無辜の民に示し続けた。権威を持てば、示さずにはいられぬか)

 

 誰が村の襲撃を指示したのか、家紋があるなら割り出すのは容易いだろう。

 

 自分たちが絶対に力と正義を持つというある種の盲信的な自尊心。

 

 それは、どんな悪よりも残酷な行為を人間に行わせるのであった。

 

「俺が死んでから100年もの時が経ったというのに。この地は荒れ果てた土地から立派な王の国となったというのに。なぜ未だに無辜の民の犠牲が無くならないのだ……」

 

 嘆きの表情を浮かべて呟いた後、刀を鞘に納めると騎士から剣帯と小刀も抜き取って自分の身に付ける。

 

 腰に二本差すとアルドは、その重さに馴染みを感じて自嘲的な笑みを浮かべた。

 

「フン。魔族になっても、ひとのしがらみを捨てれぬか。俺も」

 

 ふと、目の前に幾何学模様を幾重にもあわせた円陣が現れた。

 其の魔方陣から、幼い少女の姿をした魔族が現れてくる。アルドは言った。

 

「この村を納める領主の街へ案内願う。ネクロ殿」

 

「……分かった。死んだ魂から聞いたから、こっち」

 

「助かる」

 

 顎を引き、アルドは静かに足を進める。

 

 100年の時は確かに土地を豊かにした。

 

 人は増えたし、道もよくなっている。

 

 それでもーーそれでも、己が守ろうとしたものは守られていない。

 

 その現状を目の当たりにして、胸中にうずまくものをアルドは飲み込んだ。

 

 ネクロに案内された近隣の街は、魔族の脚で数分もかからなかった。

 

 建屋は多く建ち、人々が往来している。ネクロはこちらを見ると、すぐ姿を消していった。

 

 アルドも心得たもので小さく顎を引き、周囲をじっくりと見渡す。

 

「繁栄したものだ。この辺り一帯はさびれた農村に過ぎなかったというのに、街ができておる。おお、ちょうどよい。そこに衛兵がおったわ」

 

 歩を進めるアルドに衛兵が目を見開いて向き直り、姿勢を正す。

 

「ーー失礼」

 

「あなたは……ヴィンテージ卿、か? 現当主のアスラ様によく似ていらっしゃる」

 

 壮年の衛兵の言葉に苦笑を返しながらアルドは言った。

 

「”ヴィンテージには親類が多い”ゆえよくは分からぬが、たしかに私はヴィンテージだ」

 

「なるほど。ーーして、私になにか御用でしょうか?」

 

「少し聞きたいことがあってな」

 

 アルドは腰に差した二振りの刀の内、小刀を帯から外して衛兵に見えるように鯉口を切って鎺に刻まれた家紋を見せた。

 

「この刀の家紋は? 家名を教えてほしい」

 

「……は?」

 

「なにかおかしなことを言うたか?」

 

「あ、いえ……。失礼ながら、ヴィンテージ家の方がなにゆえご自分の家紋をご存じないのですか?」

 

「ーーなに? この家紋が、息子(アブラ)が騎士になった証だというのか……」

 

 愕然とした表情で家紋を見るアルドだが、衛兵はそれに気付けずに続ける。

 

「おお、先代王の剣のアブラ様か。しかし、まだお若いあなたがアブラ様を呼び捨てなどと! ヴィンテージの教養に関わりますぞ……」

 

 諫める衛兵にアルドは、街の広場に建てられた看板を指差した。

 

 それは農で収穫したものを期日までに規定量、取り立てるという触書だ。

 

 従わないのであれば、王の剣の裁きが下るという。

 

 しかし、農業は常に一定の収穫を得られるわけではない。

 

 天気や土地の都合で、収穫が増えることもあれば減ることもある。

 

 この地の領主が定める規定量はあまりに辛く、幾つかの村は規定量を満たせていなかった。

 

 アルドは農民の出身であったが故に、如何にそれが貴族の傲慢であるかを理解していた。

 

「そこの触書。……そなたらはそれを町民に見せびらかしにきたということか?」

 

「ええ。王の剣、アスラ様の勅命でございますからね。町民や農民たちには同情はしますが、それでもこうして取り立てなければ我々が食いっぱぐれてしまいます。まあ、いつも汚れ役を進んで引き受けてくれているヴィンテージ様がいらっしゃるから、我々はこのような触書を出すだけで済むのですがね」

 

「戯言を……!!」

 

「は? お、ぉ? ヴィンテージ殿?」

 

 衛兵を見ずにアルドは歩を進める。

 

 街に用はないとばかりに門を出て街道を征く。

 

 確かに村同士の争いは終わったのだろう。

 

 隣の領地を奪い合い、血で血を洗う日々はなくなった。

 

 だがーー代わりに、領土を支配する貴族が領民から命ともいえる農作物を強奪し、足りなければ見せしめとして殺し尽すのだ。

 

 それを行ったのが、自分の息子の代であることがアルドの逆鱗に触れていた。

 

「俺の剣術で……! 俺の名で、よくも無辜の民を! ごみのように斬り捨てたな……!!」

 

 初代ヴィンテージの剣士が鬼気を纏って歩き始める。

 

 太陽の如き赤の瞳へと変化し、全身からオーラを吹き上げる。

 

 肩当てが付いた白い革のジャケットに黒のシャツ、青いジーンズといった出で立ちへと変化した。

 

「……アルド。ヴィンテージ領に行くの?」

 

「如何にも」

 

「ん。分かった」

 

 街道に現れる魔物すら、アルドの怒りに道を譲っていた。

 

 その圧倒的なまでの気の量は正しくーー最強と謳われた伝説の剣士であった。

 

ーーヴィンテージ領・アブラの屋敷。

 

 夕刻を過ぎ、今日もジャッジの尖兵は手痛い打撃を受けて敗走した。

 

 砦の建てられた位置といい、配置された兵士達といい、指揮する指揮官といい余りにもヴィンテージは戦上手であったのだ。

 

「アブラ様、こちらの戦闘は相当優位に立っております」

 

 黒髪に赤いジャケットを着た剣士は自分の親であるアルド・ヴィンテージの兄弟の血筋のものたち。

 

 ヴィンテージ分家のものだった。

 

「そうか、ロラン。助かる。その調子でジャッジの尖兵どもを蹴散らしておいてくれ」

 

「かしこまりました。それと先ほど尖兵殿から降伏の旗が上がりましたので併せて報告しておきます」

 

「撤退したのであれば深追いをする必要はない。その旨も伝えておくように」

 

「かしこまりました」

 

 音もなく立ち上がり、ロラン・ヴィンテージは配置に戻っていった。

 

 一部の隙も無いその所作にアブラの側近であるクマのような大男ーーギランはニヤリと笑った・

 

「さすがはヴィンテージ師範代ですな。砦を作り、戦略を練れば、ロラン殿の右に出る者はおりますまい」

 

「そうだな。私もよき親類に恵まれた、ということか。普段はおちゃらけておるが、あやつも大したものだ」

 

 心から同意したアブラの表情にギランとメイド長のサーニャもニコリと笑みを返す。

 

 和やかな空気は、そこまでであった。

 

 静かに表情をそのままにしてアブラは散歩にでも行くような気安さで続けた。

 

「ーーして、客人。いつまでそこに隠れておるつもりかな? 私は部屋に招いた覚えはないが……」

 

 ギランとサーニャの二人が思わず目を見開くが、アブラは笑っている。

 

「私の側近である二人の眼を欺くとは、中々の手練れのようだな」

 

 月明かりが差し込むと、床に人型の影が止まっていた。

 

 それはロランが立っていた場所だ。

 

 主が場を去ったというのに、影はその場に縫われたようにとどまっていた。

 

「影が……月光にさらされたまま消えずにいるだと? さきほどのロラン殿の影から分離したように」

 

「ヴィンテージ流影術ーー影渡り。久方ぶりに見ましたが変わらずーーお見事です」

 

 淡々と告げるアブラの前に影から一人の人物が現れた。

 

 その姿は、アブラにとって懐かしい誰よりも憧れた若き日の父の姿ーーアルドであった。

 

「ずいぶん老いぼれたな、かわいかったお前がそのような年老いた姿になるとは。時の流れとは早いものだ。そう思わぬか、せがれよ」

 

「父上……!」

 

 生前の剣士の出で立ちで現れた父にアブラは懐かしくも悲しい笑みを浮かべていた。

 

「お労しい。死してなお、魔族のような下郎に利用されるなど……!」

 

「下郎か……フッ、俺はそうは思っていない」

 

「なんと? 父上とは思えませぬな。無辜の民を犠牲にする魔族を、お認めになると?」

 

 瞳を鋭く細め、黒に近い青の瞳に闘志を宿し始めるアブラ。

 

 対峙するアルドの瞳は、かつての青ではなく魔の一族の証である紫の色を宿している。

 

「この体はしがらみがない。ひとの世の(えにし)、善と悪、立場、そのようなものが一切ない。いまの俺はただひとりの剣士として、国もなにも関係なしに強者と剣を交えることができる。せがれよ、お前を迎えにきた」

 

「迎え?」

 

「このような小さき辺境の領主などやっておらず、俺とともに魔を統べる王とならぬか」

 

 若き父の言葉にアブラは悲哀の表情になった。

 

「父上」

 

「俺は生前ーー富も名声も要らなかった。そもそも権威などに興味はなかった。ただただ他者より優れたこの剣の腕で、評価されてきたにすぎぬ。だが、この国の惨状を見て考えを変えたのだ……」

 

 己の掌を握り、何かをすくいとろうとする所作をした後に拳を握った。

 

「このような乱世が未だ続くならば、俺が終わらせてやるーーとな」

 

「乱世はもう終わっております。父上、私は父上から受け継いだ意思と、教わった剣にて民を護らんとし、この国に身命を捧げたのです」

 

 父が何をもって言うのかは分からない。

 

 だが、父の時代とは変わったのだとアブラは告げる。

 

 それが魔族となっても変わらぬ父の逆鱗に触れているとは露ほども知らなかった。

 

「その結果がヴィンテージを増長させ、いまの王族以外をすべて排除するという独善的手法によって得たものでもか?」

 

 記憶に懐かしい雄々しくも温かな父の顔が、怒りに染まっているのをアブラは申し訳なく頭を下げる。

 

「私のせがれーーアスラが父上の名を貶めていることは知っております。無辜の民のために剣を振るう。それが我らヴィンテージの剣、私は母よりそしてなにより父上、あなたの背でそれを学んできた。だが私は、せがれにそれを示せなんだ」

 

「その自責の念がお前をーーこのような地に縛り付けるか、アブラ」

 

「老いぼれた私の出番はもうないのです。父上」

 

 力なく声を上げる年老いた息子を若々しく生まれ変わった父親は見つめる。

 

 父の瞳は黒に近い青の瞳だった。

 

 しかし、今は紫色に変わっている。

 

 暗黒魔界の王と同じーー紫暗の瞳だ。

 

 アブラは、かつての父ではないことを悟るに充分だと思っていた。

 

「あなたも私も! もはや、この国でできることなどないのです。私たちの後はアドムが、アグニが、そしてタハトが。若者達がヴィンテージを継いでくれるでしょう。あやつらは正しく私の、そして父上の意思を継いでおります」

 

「だから貴様の役割はなくなったというのだな? アブラ。この軟弱者が!」

 

 穏やかな父は、一度怒れば手が付けられない程に激しい。

 

 その記憶を思い、アブラは懐かしさと寂しさを覚えながら魔族となった父を見る。

 

「父上……!」

 

「無辜の民のために剣を振るうーーそのために強くあれ。俺は貴様にそう言(ゆ)うたな、アブラ」

 

 怒るアルド(父親)をアブラ(息子)は真っ直ぐに見つめ返す。

 

「だがこれはなんだ? 貴様のせがれは、どれだけ無辜の民を陥れる…? このちっぽけな国のために、どれだけ多くの無力な民を虐げる? ヴィンテージの名を、剣を使って無辜の民を犠牲にする? それを黙って見過ごすならば、貴様も同罪よ!!」

 

 アルドの紫暗の瞳は、太陽の如き赤に染まり全身から炎のように激しいオーラを吹き立たせる。

 

「なによりーー子の暴走を、親である貴様が止めれんでどうする!? それでなお"自分にはできることがない"だと? 腑抜けたことを! 構えろ!!」

 

 腰からヴィンテージの騎士より奪った刀を抜いてアルドは吹き上がるオーラをそのままに、アブラに告げる。

 

「その老いぼれた体と! 騎士などという階級を得て甘く腐った、その魂を斬り捨ててくれる!!」

 

 右手一本で持たれた刀の切っ先が真っ直ぐにアブラの胸に向けられる。

 

 それだけで周囲の空間がたわんだように感じる。

 

「お待ちください! アルド様!!」

 

 あまりの鬼気にギランがアブラの前に出て庇う。

 

「ギラン、よいのだ」

 

「なりません、アブラ様! 魔族として生まれ変わった今のアルド様は全盛期そのもの。今の歳老いたお体では!!」

 

 本気で止めようとするギランの横をすり抜けて笑みを返すとアブラは腰の刀を抜き放った。

 

「父上。……お手向かえいたしますぞ」

 

 同時に地面を蹴り、姿が消える二人のヴィンテージ。

 

 片方は赤い鬼気を、片方は青い闘気を全身から漲らせてぶつかり合う。

 

 常人には姿を捕らえることすら不可能の神速で動きながら、斬閃が宙を幾十、幾百と描く。

 

 それらは互いの中央で光の波紋を描きながらぶつかり、火花を散らしては消える。

 

 アブラの左横薙ぎ、強烈な斬閃を鼻先で見切り頭上から唐竹を振り下ろすアルド。

 

 舞を舞うかのように身を反転させてアブラも唐竹割りを半身で避ける。

 

 懐に入り、アブラは柄頭でアルドの顎を打ち貫こうと下から狙いすまして突っ込む。

 

 乾いた音と共に二人を中心にして衝撃波が爆発する。

 

 アルドの左手がアブラの柄頭を掴み止めていた。

 

「……父上!!」

 

「知っているはずだ。”鬼眼”を開放した俺は、見ると同時に反応できる。目に映っている以上、俺に止められるは必定と知れ」

 

 柄頭を突き放すような動きで離すとアブラが後方に後退するのは同時。

 

 目の前にアルドは居る。

 

 アブラが地面に足を着こうと準備する前にアルドは目の前で刀を振りかぶっている。

 

 右手一本で唐竹を頭上から振り下ろすアルドに対抗して刀を両手持ちで頭上に水平に構えて受けようとするアブラ。

 

 強烈な金属同士のぶつかり合う衝撃音と同時、赤い血がアブラの眼に映る。

 

「……なに?」

 

 腹を右から左に斬り裂かれていた。

 

 それを認識してしばらくすると強烈な脱力と熱を感じる腹部。

 

 血と同時に自分から一気に力が抜けていくのが認識できた。

 

 板間に自分の血溜まりが広がっていき、そこに片膝をつく。

 

 戦いの中で、そのような無様を晒す。

 

「アブラ様!!」「旦那さま!!」

 

「サーニャ、ギラン、さがれ!!」

 

 悲痛な叫びを上げる己の影達を、どこか遠くで認識するアブラ。

 

(痛みを消せ、まだ動くのであれば敵を倒すまで)

 

 自身の死を認識して尚、アブラは刀を握る拳を強くした。

 

 幸いにして斬撃は内蔵には紙一重で達していない。

                                                            

 浅くはないからこその出血量であるが、それがどうしたとアブラは血だまりを両足で踏みつけて構える。

                                                            

「さがりませぬ!!」

 

「我らもまた、アブラ様の影!!」

 

 メイド服を脱ぎ捨てて黒衣を身に纏い、小柄を両手から抜いて構えるサーニャ。

 

 執事服を脱ぎ捨てて背中に背負った2メートルを越える大太刀を抜き放つギラン。

 

 その二人を背中越しに見据えてアルドはアブラに目を向ける。

 

「……なるほど。良い影法師だ、せがれ」

 

 息を整える。

 

 ヴィンテージ流体術ーー武神息吹(ゴッドブレス)は、自分の体内を気が循環して負傷した傷口と、その出血を押さえる。

 

 失われた血と体力は戻らないが、それでも十分だ。

 

「父上に褒められるとは、恐悦至極の極みにございますな」

 

 青い闘気を身に纏うアブラの左右に白い覇気を纏った二人の影が付き従う。

 

 それを赤い鬼気を纏ったアルドが笑みを浮かべて霞に構えた。

 

「ーーアルド・ヴィンテージ。参る!!」

 

「アブラ・ヴィンテージと影2つーー。受けて立つ!!」

 

 瞬間、サーニャが室内のありとあらゆる空間に細い鋼線を張り詰める。

 

「我が名はサーニャ。旦那さまに拾われた御恩を、今返す所存ーー!!」

 

 アルドを取り囲むようにーー蜘蛛の巣が如く無数の鋼線が張られており、それは刃金となるほどに薄く研がれている。

 

 闇夜の空間と相まって認識することすら困難であった。

 

 その細い鋼線を軽業師のように足場にしながら巨体を難なく飛び回らせて近づいてくる大男。

 

「我が名はギラン。アブラ様の敵とあらば、先代のヴィンテージ様と言えどーー討つ!!」

 

 大太刀を袈裟懸けに放ってくるのを、アルドはその場から剣を振って弾き返す。

 

 子どもと大人ほどの体格差ーー武器の重さを感じさせないほどに軽々と弾かれた斬撃にギランは目を見開く。

 

 力と技ーーその二つを持って完全に上回っていると理解する。

 

「だがーー退けん!!」

 

「勢いは良し。また、その剛刀と身のこなしは、素晴らしい」

 

 大太刀を振り回すギランを片手で受け、流し、抑え込むアルド。

 

(う、動かん。何という力だ……)

 

 その背後からサーニャが神速で踏み込みながら爪先に仕込んだ小柄で上段回し蹴りを放って斬りつける。

 

 瞬間、アルドが大太刀を押さえていた刀を右手一本で振り返りながら一閃。

 

 互いの一撃は相殺。

 

 左右の手にした小柄で手刀のように突きを放つサーニャ。

 

 左と右が、ほぼ同時にアルドの眉間に届くが刀を正眼に構えたアルドは微かに刀身を動かして斬撃を弾いた。

 

 二つの影が交差し、擦れ違いざまに一閃。

 

(殺(と)られた!)

 

 サーニャが、そう認識する刹那にアブラの斬撃がアルドの眼前に迫る。

 

 アルドは放っていた胴薙ぎを引っ込めて後方へ下がる。

 

 彼の髪が空間に張られている鋼線に触れて切られ、落ちていく。

 

「な、なんという剣士だ……。斬るつもりで放っていた斬閃を”途中で”止めた」

 

「私の鋼線を、一目で見切っているというの……」

 

 歴戦をくぐり抜けて来た二人の影でも、今のアルドの動きは人外であるとハッキリ分かる。

 

 同時にーー手を抜かれていることも。

 

 この中で唯一、本気で剣を振ったのはアブラにのみである。

 

「……分かったであろう。これがーー父・アルドだ」

 

 アブラは、どこか誇らしげな語りで口許に笑みを浮かべると続けた。

 

「私と命を共にする。その心意気は嬉しい。だがーーお前達は若い。ここで死ぬべきではないし、死んでほしくもないとだけ言っておく」

 

 それは最終通告だ。

 

 これ以降は、アブラは意識を戦いにのみ集中させる。

 

 ヴィンテージ領、ジャッジと魔族、家族であるサーニャとギラン、アドムとタハト。

 

 それらすら遠く意識の彼方へとやる。

 

 己の寿命は、安静にしておかなければ後ーー数十分。

 

 そんな短い時間でしか、この最強の男と打ち合えないのだから。

 

「勝手をお許しください、アブラ様」

 

「私たちは、旦那さまの命と共に!!」

 

 変わらない返答にどこかーーあきらめと嬉しさを讃えてアブラは言った。

 

「ならば、ワシと共に死ね! 征(ゆ)くぞ、アルドォオオオオオオ!!!」

 

 最期の気を放ちながらアブラは、アルドに向かって駆けていった。

 

ーーーー

 

 パジャ王国・ヴィクトリア城。

 

 謁見の間でアドムは、クロード王の付き人から銀細工のバッジをジャケットの襟に付けられる。

 

 バッジは精巧なデザインであり、刀に龍がまとわりつくデザインはパジャの国章であった。

 

 アグニが息を呑みながら呟く。

 

「これが、パジャ王国特使の証か」

 

 満足そうに笑みを浮かべてクロードが応えた。

 

「そうだ。その証こそがアドム(お前)の身分を証明し、このクロードが特使として派遣したという証である。それを見せればパジャと交流関係にある隣国の関所を渡ることができる」

 

 改めて双子の兄弟はクロード王を見上げた。

 

「アドム、いまいちどお前に言っておく。我が国は現在、大国ジャッジの侵略を受けつつある。とはいえヴィンテージ流がある我らならば、大国と言えどジャッジひとつ大した問題ではない。だが、周辺諸国までパジャを攻めてくるとなると話は別だ。周りの連中には、この戦に手を出さぬよう釘を刺す。それが最低ラインだ」

 

 王の言葉にアドムも黙って頷く。

 

「協力できる気配があるならば交渉する、ということですね」

 

「そうだ。ジャッジは大国ゆえ敵も多い。そいつらをうまくこちらに取り込めれば言うことはないがーー」

 

「分かりました。このアドム、全力を賭します」

 

「期待しているぞ」

 

 一礼し、去っていくアドム達の背を頼もし気に見据えてクロードはニヤリと笑った。

 

「ーーよろしかったのですか、陛下。特使などと」

 

 玉座の間から完全に姿を消したあと、側近が声をかけてくる。

 

 子どもの頃から目付け役としている男だ。

 

 クロードが城内で信用する一人である。

 

「あいつが私を裏切らないことはよく分かっている。あいつはそういう男じゃない。それよりも、この国から最強の剣士がいなくなるのだ。その穴はでかいぞ」

 

 自信たっぷりに告げるクロードにため息を一つ吐いてから応える。

 

「アドム・ヴィンテージの代わりならば、アグニ・ヴィンテージがいるではありませんか」

 

「……フッ。ああ、たしかにな。つい先日までアスラの人形のような男だったのに、どういう風の吹き回しかアドムに匹敵する気配を感じた。正に瓜二つだ」

 

 その言葉にこめられたのは嫉妬だ。

 

 自分と同じく届くはずの無いものへの憧れが、鍛える理由であったはずなのに。

 

 今のアグニは、アドムのその先を見ている。

 

 アドムと同じものを見据えているように見えたーー気に食わない。

 

 自分だけ、置いていかれるのか。

 

 そのような感情がアグニを見たときに生まれたからこそ、国の一大事であってもアドムに挑みたかったのだ。

 

「どちらにせよヴィンテージ家次期当主ならばアドムのように放浪の旅はできん。王国最強の剣士が諸国を漫遊できる自由があるからこそアドムの力は偉大なのだ。ひとつところに留まるのならば、最強と言えど大したことはない」

 

「なるほど。最強の剣士が国内に留まることなく自由に放浪することができるのがパジャ王国の強みだと。であれば確かにアグニ・ヴィンテージではアドム・ヴィンテージの代わりにはなれませんな」

 

 我が意を得たりと頷くクロードに付き人はため息をつく。

 

 ヴィンテージ家というのは、厄介極まりない。

 

 力を持つのもそうだが、何よりも敵を作り過ぎる。

 

 クロード王が護身のために学んだヴィンテージ流は、過度な力を与えているし暗殺に怯えることはなくなった。

 

 だからこそーー危険な流派だと付き人は思っている。

 

 赤い天蓋を割って一人の男が玉座の間に現れる。

 

 黒髪をオールバックにして、白い革ジャケットに黒のシャツ、白いパンツを着た壮年の男だった。

 

「……アグニがアドムの代わりにはなれない? 当然のことだ」

 

 付き人の言葉に対する返答だと気付いた時には、男ーーアスラ・ヴィンテージはクロード王の前に立ち礼を一つすると面を上げて真っ直ぐにクロード王を見つめてくる。

 

 アドムやアグニと同じ顔をしている。

 

 その瞳も同じ色だ。

 

 だがーーアドムのそれは、深すぎて底知れぬほどに透き通った蒼であったが、アスラの瞳の蒼は濁りすぎて底がまったく見えない。

 

「戻ってきたか、アスラ」

 

「……どうやら、アレはもう帰ったようですね」

 

「ああ。特使の位と国章を与えた」

 

「ほう……」

 

 さして興味の無い返事を返すアスラにクロードはニヤリと笑った。

 

「これで貴様らヴィンテージでも、アドムを縛ることはできなくなったということだ」

 

「ヤツが王国を離れるのならば、私も願ったり叶ったりですがね」

 

「……何?」

 

 本当に興味なさげなアスラに思わず目を見開くクロード。

 

 アスラは淡々とジャケットの内側から書面を取り出した。

 

「都市ラセンに潜り込ませていた影からの報告です」

 

「……? これは?」

 

「ハルバロス・グリムスリー卿は、最近になって我が子飼いの鍛冶師どもから刀を数十振り買い込んでおりましてな。無論、ヴィンテージ家としても子飼いの鍛冶師が取引先を増やすことは良いことなのですが」

 

 ラセン周辺の村が焼かれていること。

 

 ラセンの広場に建てられた触書の内容を見てクロードは目を細める。

 

「なるほど。確かに血も涙もないアスラ・ヴィンテージならば、やりかねない話だな」

 

 嘲笑と共にクロードは目を細めてアスラを見る。

 

「年貢の”規定量”以外はな」

 

「……なんと。こんな量を年貢の規定量とするなどバカげている。これでは村民たちに遠回しに死ねと言っているも同じだ。領民の口減らしにヴィンテージ家とアスラ殿を利用しようとしておるのか?」

 

「やれやれ、こうもアスラの思い描いた通りに動かれては、なぁ……」

 

 参ったと言わんばかりに頭を叩くクロードに、静かにアスラは嗤った。

 

「ではパジャ王国とクロード陛下の繁栄のために。このアスラ・ヴィンテージ、今一度剣を振るいましょうぞ」

 

 その血は、多くの犠牲の果てに王国を確固たる地位を与えるものだと確信しているからこそ、付き人は恐ろしさに震えていた。

 

 この男は、この男だけはーー只の剣士ではないのだ。

 

「報告します!」

 

 その時、衛兵の一人が玉座の間に駆け込んできた。

 

「なんだ、騒々しい」

 

 付き人が声をかけるもただならぬ気配を感じて、玉座の間の入口を見つめる。

 

 アスラもゆっくりと歩を進めた。

 

「実はヴィンテージ領がーー! アブラ様が討たれたと!!」

 

 衛兵の言葉に顔を上げてアスラが目を軽く見開いた。

 

「……なんだと?」

 

「アスラ……」

 

 アスラをして想定の範囲外のことである。

 

「愚かな篤志家(とくしか)とはいえ、剣の腕は立つあの父を(たお)せるものがヴィンテージ以外に存在するというのか。いったい、何者だ。まさか魔族如きではあるまい?」

 

「老いたとはいえあのアブラ様を討ちとれるというのですか。いったい何者が?」

 

 アスラと付き人の疑問に応えるように迫られた衛兵は入口を見た。

 

「それについてはアブラ様の従者と名乗る女が面会を求めております」

 

「うむ、通せ」

 

 クロードが間髪入れずに応えると片腕を押さえ、黒衣からのぞく足を引きずりながら紫色の髪をした美女が血の気を失った青い顔で現れた。

 

 あまりの怪我にクロードも付き人も目を見開いている。

 

 ここまで来れること自体、奇跡だった。

 

「お前は……たしかサーニャ、だったか」

 

「お久しぶりでございます。アスラさま。クロード陛下」

 

 口から血の糸をこぼしながら、声をなんとかして絞り出す。

 

「見苦しい出で立ちであることをお許しください」

 

 一礼するサーニャを置いてクロードが衛兵たちに向かって叫んだ。

 

「おい。従者、なにをしている。一刻も早く治療を……っ!!」

 

 その言葉を遮るようにアスラがサーニャの眼前に立ち、顔を見下した。

 

「アスラ……?」

 

「コレは、もう助かりません」

 

 アスラは何の感慨もなく、淡々と事実を告げて膝をおり、サーニャと目線を合わす。

 

「貴様も影ならば己の役割を果たしたいだろう」

 

「ーーお情けをありがとうございます」

 

 そう答えたことを確認してアスラは立ち上がり、クロードからサーニャが見えるよう左足を退く。

 

「アブラ様を殺したのは、初代ヴィンテージ卿。魔族の手によって生まれ変わったアルド様です」

 

「……ほう。そうか」

 

 玉座の間がざわつく。

 

「初代ヴィンテージだと?」

 

「バカな、何を世迷言を!!」

 

 だが周りの騒ぎなど完全に無視してサーニャは続ける。

 

「それだけでなく、初代殿はアブラ様の亡骸を魔界へ持ち帰りました。お父上様のご遺体を持ち帰られず、申し訳ございません。アスラ様」

 

「よい。愚かな父だったが剣に生き、剣に死ねたのならば本望だろう」

 

 何も感情を映さない声で、表情でアスラは腰の剛刀兼㝎を抜くとサーニャの眼前に晒す。

 

「サーニャ、礼だ。この一太刀を親父の居る地獄へ持っていけ」

 

 その言葉に従者たちが騒ぎ出した。

 

「アスラ!」

 

「謁見の間を血で穢すというのか!」

 

「野蛮な!」

 

 口々に批判する者たちにアスラは冷徹な嘲笑を返した。

 

「ご安心くだされ。文官殿。いま済みましたゆえ」

 

 剛刀を音もなく鞘に納めると同時、サーニャの首と胴が離れて落ちる。

 

 瞬間、血のじゅうたんが広がった。

 

「ひぃいいいいい!」

 

「く、首を、首を落としおった……!」

 

 目の前で行われた蛮行に、流石の文官たちも何も言えなくなる。

 

 次にあのギロチンの刃のように無慈悲な斬閃を振るわれるのは、自分かもしれないのだから。

 

 騒ぎを黙らせたアスラは、淡々とクロード王に頭を下げた。

 

「陛下、お目汚し申し訳ございません」

 

「あいも変わらず鬼のような男だな、アスラ」

 

 まったくの無慈悲、躊躇もない。

 

 ここまで生きてきたことに対する称賛が、あの無慈悲な一閃だというのなら余りにもサーニャと呼ばれた影が哀れだとクロードは思った。

 

「鬼にもなりましょうや。でなければ、王の剣などとてもとても」

 

 嘲笑めいた笑みを浮かべた後、アスラは冷たい無表情に戻ると淡々と言った。

 

「ーー片付けろ」

 

「ははっ」

 

 衛兵たちが死体を袋に詰めて物のように運んでいく。

 

 その様を見送ることなく、父を破ったと言う魔族の報告にアスラは自然と冷たい狂気を含んだ笑みを浮かべていた。

 

「フン、魔族め。存外やるではないか……」

 

 動乱の世が、やってくる。

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