戦に敗れた神は、一柱(ひとり)吠える。

「ーー見事だ。この我(おれ)を討った、その事実に敬意を払う。だがーー!」

 己が負けたなどとは、微塵も思っていない。

 一対一で、負けたことなどないのだから。

「異界の神々よ、軍勢よ!! あまりに、あまりに! 非力!! 我(おれ)を満たすには、汝等では足りぬ!!」

 幾百幾千の軍勢を率いた己とは違う世界から現れた神々に向かって笑う。

 己一柱(ひとり)を一対一で、まともに倒せぬ弱々しい神々。

 綺麗事を宣いながら、力で全てを解決しようとする神々。

 その器の小ささに、そんなものに敗れた己に。

 乾きも飢えも満たせなかった己をこそを。

 かつて鬼神と呼ばれた一柱は、笑いながら身体を五つに裂かれて異界へと魂を飛ばされた。

 そのまま時の狭間で消えるはずだった鬼神の魂は。

 一つの異界を統べる女神によって人の肉体を与えられ、記憶を消され女神が支配する世界に転生させられた。

 しかし、女神は鬼神の力を消せなかった。

 消したくても消せなかったのか、それとも消したくなかったのかは、女神にしか分からない。

「ーー戦いしか知らない可哀想なヒト。どうか、私の世界では愛と幸せを」

 これは、記憶を無くし剣と魔法を使う異界の地に生まれ出でた一人の剣士の物語である。
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