刀を持つ騎士(鬼神)   作:カンナム

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第34話 栄の国の呪われし王子

 冒険者ギルドに着いたアドムは、ギルドや冒険者の面々から熱烈な歓迎を受けていた。

 

 その騒ぎを手で断わってギルドの応接室へ向かうとルークとダッタ、そしてギルド長と受付嬢がアドムを迎え入れてくれた。

 

 肩に抱えていた灰色髪の少年を応接室のソファに下ろす。

 

「あ、アドム様……! お連れ様のおかげで、こちらの目でも確認させていただきました。ありがとうございます。あの恐ろしいダンジョンを見事に攻略されるとは」

 

 ギルド長が手をもみながらアドムに言ってくる。

 

 これにアドムは応えようと首をギルド長に向けたところで、ルークの両手で顔を掴まれて目を覗き込まれた。

 

「……おい。今、俺はギルド長に報告をーー」

 

「貴様、その眼に何を飼っている?」

 

 真剣な黒い瞳を見返してアドムはルークの手を払うと静かに言った。

 

「それも併せて報告する。少し待て」

 

 言ってからギルド長に顔を合わせた。

 

「すまない、ギルド長。奥に居たのはーー」

 

「はい、黄龍ですね。恐ろしいことです。黄龍は、龍族の中でも神と崇められる存在。そんなものがダンジョンの奥地に居るなど。攻略どころか調査隊は全滅していてもおかしくない。ヴィンテージ様がいらっしゃらなければ、どうなっていたか」

 

「……これで、犠牲者の無念は晴らせたか?」

 

 暗い顔をして言うギルド長にアドムが問いかけると彼は笑顔を返した。

 

「少なくとも、彼らは犬死にとはならなかった。貴方が、彼らを意味のあるものにしてくれたのだ……」

 

 遺留品を渡されながらギルド長は笑顔を返す。

 

 常連の冒険者たちの顔が彼の頭の中には浮かんでくる。

 

 アドムは、一つ残さず持ってきてくれたのだ。

 

 彼らが生きた証を。

 

「……アドム様、報酬をお受け取り下さい」

 

「ああ。それならクエストは4人で受けた。4等分にしてくれないか?」

 

「バーガンディのことでしたら、彼にはべつに報酬を用意しております。ですので、これは3等分ということでよろしいですかな?」

 

 そういうことであれば、と頷くアドムにギルド長は笑みを浮かべた。

 

「ありがとうございます。彼とて一端の冒険者。過剰な情けは相手への侮辱になりますよ、ヴィンテージ様」

 

「……気を付ける」

 

 受付嬢から受け取る革袋の中には大量の金貨が入っていた。

 

「3等分して、この重さか」

 

「フ、路銀どころか軽く贅沢できそうな額を手に入れたな」

 

「……ありがたく頂戴します」

 

 アドム、ルーク、ダッタが自分に手渡された袋の中身を見て確認し、頷く。

 

 ギルドを後にしながらルークはダッタに言った。

 

「少しは成長したようだな。金銭をきちんと受け取るとは」

 

「……そうですね。少し前の私ならば金銭を受け取ることを拒否し、アドム殿に恥をかかせていたことでしょう」

 

 ルークがニヤリとダッタに笑みを浮かべた後、アドムを見る。

 

「それで、お前の眼に居るのは何だ? アドム」

 

「……」

 

 そう問いかけたルークの前で、いつの間にかアドムの右腕を抱きしめる黄金の髪の美女が居た。

 

「なかなかに無礼な物言いじゃな、人間如きが。のぉ、お前様」

 

「き、貴様……! 黄龍…!!」

 

 その美女は紛れもなくルークの式神を通して視た強敵ーー黄龍の化けた姿だ。

 

 ダッタが微笑みを浮かべて黄龍ーーエルを見る。

 

「同行者ーーとなられたか『黄燐』殿」

 

「? お前の気配ーー覚えがある。まさか…!!」

 

「……」

 

 微笑みを強くしてダッタはエルを見ると、彼女は何かを察したようにアドムを見上げた。

 

「流石は、お前様。まさかーーこの者を同行者に選んでおいでとは」

 

「……ダッタ、エル? お前達、知り合いなのか?」

 

「遠く遠くーー遥か遠き過去の地にて、一度目にしたことがある。そのような仲ーーかの」

 

 そう述べるエルの横でダッタも笑顔で頷く。

 

「顔見知り程度の関係ですよ、アドム殿」

 

「…龍族の神と顔見知り? ダッタ、私は貴様の正体ーーいよいよ分からなくなって来たぞ」

 

 ルークが胡散臭そうにダッタを見るもアドムは淡々と言った。

 

「ダッタの得体が知れないのは、いつものことだ。それよりもビークス伯爵の所へ行こう。今回の件も報告しておかなければ……」

 

「フム、確かにな。報告・連絡・相談は大事だ、褒めてやろう」

 

「ちょっと背が高いからって、人の頭を気安く撫でようとするな!!」

 

 手を伸ばして髪を撫でようとしてくるのを右腕でガードするアドム。

 

 本気で嫌がるアドムにルークがニヤリと笑みを浮かべるーーのを割って入るように黄燐が彼女の右手を掴んで止めた。

 

「いい加減にせぬか。人間の女子ぶぜいが、この方に気軽に触れて良いわけがあるまい」

 

「……黄燐、やめなさい。アドム殿にご迷惑が……」

 

「なんだ? 龍神だか知らんが、人間同士のやり取りに異形が割って入るな」

 

 ダッタが止めようと声を上げるも、それよりもルークが早く口を開いてエルの前に立つ。

 

 黒髪と金髪の美女は互いに睨み合い、凄まじい気をぶつけ合っていた。

 

「……何やってんだ、お前ら」

 

 アドムが呆れた声を上げるも、二人は引かない。

 

「お前様、しばらく待たれよ。妾が、この無礼者を教育してやるゆえ……」

 

「………気に入らんな。私を教育? 伝説の龍だか知らんが、私が躾けてやろう……」

 

 ルークの瞳がワインレッドに輝き、黒髪が紫色に変化し始める。

 

 これにアドムが目を見開いた。

 

「男に成る以外にも変身できたのか」

 

「……”神降ろし”にも種類がある。龍神を相手にするなら、それなりのものを用意するさ……」

 

 驚いた表情のアドムを置いてルークは笑みを浮かべて黄龍を見る。

 

 すると彼女も黄金の髪と翡翠の瞳を輝かせて言った。

 

「フン、人如きに降ろされる神などで妾が相手できると? 笑わせるなよ、小娘」

 

 言うと同時に、ルークが拳を握りしめエルは足を開いて構えを取る。

 

 二人は互いに向かって右の拳を突き出した。

 

「ーーお止めなさい」

 

 二人の拳は、ダッタの両掌の中に掴み止められている。

 

 掌から煙を上げているもダッタは表情も変わらずに二人を押さえる。

 

「……貴様、私の拳を止めるとは。やはりただの僧侶じゃないな……!!」

 

「フフ、妾を止めるか。流石はーーと言うてやろう」

 

 二人の手を放し、ダッタは静かに瞳を閉じて言った。

 

「ご無礼を。ですがーー今はアドム殿の旅路を邪魔してはなりません」

 

「……大げさな。とはいえ、助かったよ。ありがとう」

 

 アドムがダッタに礼を言いながらエルを見ると彼女は不敵な笑みで見上げてくる。

 

「……どうした、お前様。妾の美しさに眼でも焼かれたかの?」

 

「いや、というより。お前の恰好だ。先ほどから騒いでいるのもそうだが、お前の肩を出した着流しは通行人から目を向けられる要因になっている」

 

 言いながらアドムもヴィンテージの戦闘服からマリー達の一張羅へと早々に着替えた。

 

「ほう? 随分とかしこまった姿じゃ。よぅ似合っておるぞ、お前様」

 

「そいつはどうも。お前も、服を見繕うか」

 

「妾のために服を用意してくれるのかぇ。お優しいことじゃな」

 

「なに、服屋で買い物をして少しでも関係を深めないといけなくてな」

 

 そう言うとアドムは貧民街へと足を延ばす。

 

 ビークス伯爵の家に行くのは後回しにしたようだった。

 

「……お前様が妾に見繕うてくれる着物か……!」

 

「フン。お前の為ーーとは思わんほうがいいがな」

 

 頬を紅く染めて喜ぶエルの横で冷めた口調のルークが言った。

 

「小娘。口の利き方から教えてやろうかの?」

 

「それはこちらのセリフだ。金色の蛇めが……」

 

 貧民街へと移動したアドム達は、ルークが思っている通りアンナとマリーの店に来ていた。

 

「お聞きしましたよ! ダンジョンを攻略されたとか!!」

 

「流石、アドム・ヴィンテージだな。私たちと別れて1日くらいじゃないのか?」

 

 アンナが黄燐の身体を採寸しながら言い、マリーがカウンターから微笑みかける。

 

 これにアドムは静かに目を閉じると応えた。

 

「少しでも犬死とされた命を救いたかった。それだけだ」

 

「……冒険者たち、か。彼らとてーーその覚悟はあったろうさ。……貴方が気にすることではないわ」

 

 マリーの言葉にアドムは瞳を少し開けて応えた。

 

「そうかもしれん。だが、俺にとって彼らは同じ穴の狢だ。俺もまた、どこかで犬死するかもしれん。そう思えば彼らの死を見過ごせなかった」

 

「……アドム」

 

 それはアドム・ヴィンテージの本質。

 

 犬死をすることを受け入れている男の横顔に、そんな男が大陸最強であることにマリーは矛盾を大きく感じる。

 

 納得と疑問。

 

 まともと異常。

 

 相反する感情が、想いがマリーの顔を切なく変える。

 

「アドムさん。貴方は、犬死なんかできませんよ。だってーー貴方には、貴方を待っている人が居るはずです。誰もいないって言うのなら、少なくとも私とマリーは貴方の無事を祈ってますよ」

 

「……ああ。そのとおりだ」

 

 エルの採寸が終わり服を見繕いながらアンナが微笑み、マリーも頷く。

 

 これにアドムは何も言えずにただ瞳を閉じる。

 

 自分だけの命だと思っていた。

 

 自分が死んだとて、その辺の路傍の石となるだけだと。

 

 だがーーしがらみは、そう簡単に自分を死なせてはくれないようだ。

 

 人と出会い、人と繋がりーーそうすることで、自分が死ねない理由が増える。

 

「……もったいない言葉だ」

 

 そういうとアドムは二人に微笑みを返した。

 

 以前のような美しい笑みではなく、それはーーどこか寂しげで儚く、諦めたような笑顔であった。

 

 新しいエルの服は、白いシャツに赤いリボン、黒いジャケットにスカートといったドレスと普段着の間といった服装であった。

 

「フフ、中々動きやすいものだ。感謝するぞ、人間の娘たちよ」

 

 これに面白くなさそうにルークは鼻を鳴らす。

 

「フン、私も服のサイズさえ合えば……」

 

「……さあ、準備は済んだようです。アドム殿」

 

 ダッタが言うとアドムも頷いた。

 

「ではーービークス伯爵の下へ行こうか」

 

 去っていくアドムの背をマリーもアンナも声をかけることができずに、そのまま見送っていた。

 

 先ほどの笑みは、あまりにも孤独でーー囚われの人のような表情だったから。

 

 簡単に声をかけてよい領域ではないと二人に思わせるには十分過ぎた。

 

「ねぇ、アンナ。あのひと……」

 

「ええ。でもーーその役目は私たちじゃないわ。私たちとは住む世界が違う人だもの」

 

「そう……。そうよね」

 

 机に突っ伏すマリーをアンナはニコリと笑って頭を撫でてから、ブルーベリージャムを使った紅茶を入れ始めるのだった。

 

ーー ビークス邸

 

 ビークス伯爵に面会し、現状を報告したアドム達。

 

「そうか。本当にありがとうございました、アドム殿。貴方がいなければーーおそらくもっと多くの犠牲者を出したことでしょう」

 

「……いや」

 

 ビークスは興奮したようにアドムに早口で告げ、冒険譚を聞こうと意気込んだが、本当の目的を思い出し話題を変える。

 

「コホン、ではーーアドム殿。数日後に行われるフェルディナンド城へと貴方を招きたい」

 

「分かった。そこで例の王太子殿下に会えば良いのだな?」

 

「ああ。だが殿下ーークリューエル様は非常に気難しいお方だ。おそらく最初は邪険にされると思うが……」

 

「……最善は尽くす。その後のことは、彼が決めることだ」

 

 言い切ったアドムにビークスは静かに頷いた。

 

 なお、ここにエルは居ない。

 

 何故ならばビークスの屋敷に訪れた際は3人だった。

 

 それがいきなり4人に増えたとなると事情を説明しなければならないので、アドムはエルに頼んで自分の右目に入ってもらっていたのだ。

 

 アドムの部屋に入った瞬間、エルは微笑みながらアドムにしか見えない聞こえない姿で宙を舞う。

 

『フフ、旦那様。なかなか良い部屋だな』

 

「……お前様から勝手に旦那様になっていないか?」

 

『それはのぉ。このような服まで貰ったのだ。当然であろ?』

 

 半分呆れたような表情になるアドムにエルは微笑みを返した。

 

『妾を自由にしたのは、旦那様じゃ。責任は取ってもらうぞ』

 

 フーとため息を吐いて、アドムはベッドに横たわった。

 

(それはそうと、あの灰色の髪の少年。ギルドに預けたは良いが、何者だったんだろうな……)

 

『さての……。確かに奇妙な小僧であった、まるで魔物のような気配じゃ。我ら神には及ばぬまでも人ではない』

 

 彼が紅眼に瞳を輝かせていたのも気になるところではあるーーが、考えたところで応えなど出ないので。

 

(寝るか……)

 

 そう思い、アドムは瞳を閉じて掛け布団をかけることもなくそのまま眠りに入っていった。

 

 意識を夢の国へ旅立たせる際に、一人のメイドが扉を開けて来たようだがアドムはそれを無視して眠る。

 

 彼女に殺意や敵意はないーーそう知っていたから。

 

ーー フェルディナンド城

 

 その一室で、第三王子であるクリューエル・シャイン・フェルディナンドは自分で摘んだ茶葉から湯を沸かして紅茶を淹れた。

 

 黒い髪は前髪の一房だけ紅くーー瞳も血のように紅い色だ。

 

 白いシャツと黒いパンツに黒のベストを着こみ、赤と黒の色が混じったジャケットを肩にかけるようにして着ている。

 

 その両手は黒い革手袋がされていた。

 

 そのまま口に含んでから訪問者であるビークス伯爵を見る。

 

「何用かと思えば、俺に王族のパーティーに出ろというのか? 父上も兄上も、俺などが出てはせっかくのパーティーが台無しだと怒り狂うぞ」

 

「……殿下に、是非とも会っていただきたい男が居るのです。その者は瞳の色を変化させーー幾百、幾千の軍勢を刀の一振りで倒すと言います」

 

「……ヴィンテージだというのか? パジャ王国の刃が、何故シャインに? 父上には報告したのか?」

 

 もっともな疑問にビークスは頷く。

 

「陛下には既に書面で報告を済ませております。後ほど面会の予定ですが、先にクリューエル殿下に聞いておいてもらいたく……」

 

「パジャ王国は今、大国ジャッジとの戦争に入っていると聞いているが。ヴィンテージの剣士を他国へ渡らせるだけの余力があるのだな」

 

「ただのヴィンテージではありません。あのアドム・ヴィンテージーーです」

 

「……!!」

 

 目を見開くクリューエルにビークスは続ける。

 

「彼ならばーー彼ならば、貴方様の眼の呪いを解いてくれるやもしれません。殿下、どうかーー彼とお会いし、その声に耳を傾けてください」

 

「……アドム殿か。俺と年のころはほとんど変わらないというのにーー既に大陸最強と言われている。そんな方と会えるなど、今回を逃せばなかろうな」

 

「殿下……」

 

「分かったよ。会うさーー。ただし、パーティー会場ではなく俺の指定する場所で会ってくれないか?」

 

 その言葉にビークスは首を傾げながら問いかける。

 

「はてーーどこでしょう?」

 

「俺の行きつけのーー娼館だ」

 

 事もなげに言い放った第三王子にビークスは目を白黒させていた。

 

ーーアドムの部屋

 

 ビークス邸のメイドーーレイナは水を入れ替えようと扉をノックしてから中に入る。

 

「失礼いたします。ヴィンテージ様」

 

 綺麗な礼をしながらベッドを見ると、アドムは仰向けで眠っている。

 

 机の上に水を置き、古くなった水差しを取り下げようとしてレイナはアドムをジッと見ている。

 

「……ヴィンテージ様、このままではお風邪をひいてしまいますよ」

 

 囁くように言いながらレイナはベッドに近寄っていく。

 

 まるで密に誘われる虫のように。

 

 そして目の前にアドムの寝顔を見る。

 

 あまりにも美しいーー神の造形と言われても信じてしまいそうな美貌を。

 

「ああ、ヴィンテージ様。どうかーー卑しい私に、お情けを……」

 

 呼吸音を聞いて、いよいよレイナは彼に近づき触れようとしてーー。

 

「妾の旦那様は、美しいじゃろ?」

 

「……!?」

 

 耳元で囁かれ、思わずアドムから飛び退く。

 

 するとそこに黄金の髪を腰まで伸ばした翡翠の瞳の妙齢の美女が居た。

 

 腰は折れるように細いのに胸も尻も、男好きしそうなボリュームがある。

 

「すまぬな。其の方が普通の人間の娘であることは分かっておるが、そこで寝ておられる方は妾の伴侶となったお方でな。余計な手垢を付けてほしくないのじゃ。分かるな?」

 

 椅子に座り、美しくも長い脚を組んで頬杖をついてこちらを見る顔は、その美貌と相まって完全にこちらを支配下においている。

 

「水を替えてくれたのであれば、それで良い。そのまま何もせずに去るがよい」

 

「……」

 

「その方は、人間とは釣り合わぬ。それくらいは感じるじゃろ?」

 

 そう言われてレイナは相手の美貌と自分の身体を見比べて頬を紅くすると、唇を噛んで何も言わずに部屋から出て行った。

 

 その様を見送ってからエルはアドムの傍らに腰を下ろして微笑む。

 

「まったくーー無防備な旦那様じゃ」

 

 少し、呆れたようなーーけれど、とても嬉しそうな表情でエルはアドムの額にかかる髪を撫でていた。

 

ーーーー

 夢でも現でもない世界。

 

「……」

 

 辺り一面は地面と空以外に何もなくーー地平線が無限に広がっている。

 

 アドムは、この世界へ自分を喚んだ存在を見据えていた。

 

 そのものは美しい白の象にまたがり、異国の鎧の上から貴人の服を羽織ると言う出で立ちをしている。

 

 白銀の髪を結いあげ、月光のような金色の瞳をした美しくも逞しい男。

 

「ーー久しいな」

 

 言いながら貴人は象の上から降りて地面に両足をつけるとジッとアドムを見つめてきた。

 

 口元には微笑を浮かべているが、目からは何の感情も読み取れない。

 

「……! お前、いやーー貴様は!?」

 

 貴人の言葉にアドムは目を見開く。

 

 その瞳は自然と赤眼になり、口元は狂気の笑みを象っていた。

 

「あの時の続きだーー。今度は、邪魔は入らん。其の方の力、余に存分に見せるが良いーー!!」

 

 言いながら右手に黄金の雷を作り出して一振りの金に輝く槍を生み出した。

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