貴族や王族が退避した部屋の前室に、騎士団は居た。
彼らに現状を報告したところ、団長と呼ばれる男は笑みを浮かべてアドムに言った。
「他国のことに手を貸していただきーーまことにありがとうございます。流石はヴィンテージ様ですね」
「……いや。邪魔をしたな、これで失礼する」
ルークは冷めた視線を騎士団と団長に向けた後、鼻を鳴らしてアドムに続く。
ダッタもまたアドムの傍らを歩いていた。
「……」
その三人の背をーー騎士団長はジッと見据えていた。
ーーーー
城を出て城下町に下りるとルークは首を鳴らしながら言った。
「フン。今回の件ーー騎士団長とやらが関わっているな。もしかすれば、あの場に居た騎士団全員かもしれん」
「なんとーー。このように豊かな民の暮らしを見るにこの国の長は為政者として素晴らしいように思えるが」
「下々の民と騎士たちとでは、評価が違う。そんなことはよくある話だが、あそこまでグルになられているとはな」
肩をすくめるルークにダッタも悲しそうな表情に変わる。
その横で、アドムは街の案内図を確認していた。
「確かーービークス卿が言っていたのは、この建屋『クリムゾン・ナイトメア(深紅の悪夢)』だな」
「……これ、高級娼館じゃないか」
「なるほど。秘め事を語らうならば娼館は良い場所かもしれませんね」
アドムが指示した案内図を見てルークが呆れた顔に、ダッタが納得した表情に変わった。
二人の会話を聞き流してアドムはアンナとマリーからもらった服に衣装を替え、腰の兼定をアイテムボックス内に収納すると言った。
「急ぐぞ、クリューエル殿下が待っているらしいからな」
「赤目の呪われた王子ーーか」
ルークが頷きながら応える。
3人は一路、色町へと繰り出した。
きらびやかな街は、常に着飾った女が路上で手招きをしている。
通りがかった男達は女たちの手招きに応じて、その場から消えていった。
「フン、色町とはどこも似たようなものだな」
「そうなのか。はじめてきたが、綺麗な場所だな」
キョロキョロと周囲を見て楽しそうなアドムにルークは呆れた表情になる。
歩きながらルークは言った。
「なあ、今回の襲撃の件。第三王子のクリューエルが関わっているとは思わないか?」
「あの場に王太子の中で唯一居なかったのは、クリューエル殿下でしたね」
ダッタも頷きながら返す。
これにアドムはジッと見返すと言った。
「根拠は、あの場に居なかったからーーか?」
「ーー呪われた赤目だ。今回の襲撃者ーーフードの連中は全員が灰色の髪に赤目の連中だった。シャロン・エスペランザも赤髪赤眼の禍憑きだしな」
「つまりーー赤目の繋がりか何かがあって、その手引をしたのがクリューエル殿下だと」
「考えられなくはないはずだ」
「そうだな。だが、ひとつ気になる事がある」
言いながらアドムは一人の娼婦の手招きを丁寧に断り、続ける。
「第3王子が犯人であった場合、何故自分を迫害した王や王妃たちを狙わないのか。昨日の生誕祭に王や王妃が誰一人参加していないのはクリューエル殿下の指図ということになる。それほどまでに根回しができるほどに城内を掌握しているならーー呪いの王子とは言われないはずだ」
「……フム」
「加えてーー王子は城内の立場が悪いから娼館に俺たちを招いている。仮にカモフラージュだとしても、王や王妃を自分の意のままに動かしているならーー誰に対する警戒なのか。騎士団は終ぞ襲撃者をあの場で捕らえようとはしなかった。第3王子は騎士団には受けがいいのか?」
「あり得んな。仮にそうなら、呪いの王子とは呼ばれない……」
ううむと唸るルークにアドムも頷いた。
目の前に高級娼館『クリムゾン・ナイトメア』がある。
「ほう、一際でかい建屋だな。これがクリムゾン・ナイトメアか」
「……さて、どうなりますことやら」
ルークとダッタの言葉を受けてアドムは一つ、息を吐いてから言った。
「よし、行こう」
そのまま3人は、高級娼館に入っていった。
ーーーー
煌びやかなステンドグラス。
王城とは言うまいが、赤い幕や絨毯が敷かれたその場所は着飾った貴族が居る方が似合う。
ここはーーそれほどの格調を持った娼館である。
「ーーお待ちしておりましたよ、ヴィンテージ卿」
「ビークス伯爵」
入口の扉を入ってすぐに広間があり、そこに小太りの中年男ーービークスは立っていた。
ルークとダッタもアドムと同じように足を踏み入れ、内装を確認していく。
「ーーあら」
「へぇ……」
豪奢なドレスを纏った美しい女たちが、己の美を見せつけるようにアドム達を見下ろしていた。
「……フン。娼婦にしては、堂々とした連中だ」
「己の在り方に自信を持ち、誇りを持っておられるのでしょう。みなさん、よい目をしていらっしゃる」
アドムは他の者には目もくれず、ジッとビークスの背後にある扉を見ている。
「……アドム様、彼女達はお気に召しませんか?」
娼館の主のような美しい女がアドムの前に立つ。
微笑みも穏やかな物腰も、一つ一つの所作も優雅で教養がある淑女。
そのようにしか見えないが、彼女の眼は淑女ではあり得ないほどに度胸が据わっている。
「俺がここに来た理由は、一つだ。ビークス伯爵、会わせてくれ」
アドムはハッキリと眼を合わせて言うと、ビークスに顔を向けて扉を視線で指す。
これにビークスもニヤリと笑った。
「フフ、なるほど。レイナが落とせないわけだーー。なあ、レティシア」
「確かに。これは強敵ですね……」
ハッキリと理解した上でレティシアはアドムをジッと見る。
彼女の美しさは高レベルな美女たちの中でも頭一つ抜けている。
そんな彼女でも人間離れした美貌の男は一向に興味を示さないのが、いっそう彼女の興味を惹きたてる。
「クリューエル様にお会いになられるのですね?」
「ああ」
「かしこまりました」
「ーーアンタは、王族と通じているのか? それとも、この娼館はそれだけ『彼』に信頼されているのか?」
アドムの問いかけにレティシアと呼ばれた女主人はニコリと微笑みーー扉を開ける。
「その答えはーーアドム様が直接、お聞きください。私もクリューエル様の本心までは分かりませんので」
「なるほど。確かにーー言うとおりだ」
一つ頷いてアドムは開けられた扉をくぐっていく。
ルークとダッタもそれに続いて行き、中に入ると玄関の待合よりも更に大きなホール(広間)がある。
一流の踊り子や音楽家が来てコンサートを行うためのもので、広い上に壇上まである。
その壇上に飾られたグランドピアノに一人の黒髪の青年が腰かけて演奏していた。
彼はアドム達が入ってきたことも知らないように黒の皮手袋を両手に嵌めたままピアノを弾いている。
「……これが第三王子のクリューエル・シャイン・フェルディナンドか? 素晴らしい演奏だ」
「確かに。この音楽は、私の心にも沁み渡ってくる。素晴らしい……」
ルークの言葉にダッタも頷く。
それほどの演奏をしてみせる黒髪の青年に向かってアドムは静かに壇上に向かって歩いていく。
壇上に上がって彼との距離6歩程度離れたところからアドムは声をかけた。
「初にお目にかかります、アドム・ヴィンテージです。以後、見知り置きを」
青年はピアノを弾く手を止めてーーゆっくりとその紅の眼をアドムに向けた。
「……こちらこそ。はじめましてだなーーヴィンテージ卿」
ゆっくりと立ち上がり、アドムに振り返って穏やかな微笑みを浮かべる。
「このような場に来て頂けるとは思っていなかったよ。第二王妃の生誕祭にも約束通り出ていただけたようだし、噂に聞いた通りーー律儀なひとだ」
「単刀直入にお聞きする。本日の生誕祭は刺客に襲われて中止となった。手引きしたのは王太子の中で唯一参加していない貴方かーーあの場に参加していない王族だと思っている」
「……ほう。だから第二王妃であるインテグラ殿には生誕祭を止めるよう申し上げたのだがな……。どうあっても自分の息子を取り上げたい、か」
ぼそりと呟いたのち、クリューエルはアドムを見据える。
「それで私が怪しいと思い、貴方は嫌疑をかけているーーということか?」
「いや。ただーー気になる事がある。貴方は、赤眼のアサシン集団について知っているか?」
「知らないな。これでよいか?」
即答するクリューエルにアドムの眼が微かに細まる。
だが、そこは言わずにアドムは続けた。
「赤い髪の女については?」
「初耳だ。それが襲撃者か?」
「ああ。灰色の髪に紅い瞳のアサシンとかいう集団と赤い髪の女が、王族の生誕祭に襲撃した犯人だ。俺が居たことで何とかなったが、重大な被害が出てしまった。貴方には同情する」
これにクリューエルは首を横に振って嘆くように言った。
「何を言うか。ヴィンテージ卿が居られたから、被害が会場だけでおさまったのでしょう。物など、いくらでも治せます」
少しだけアドムは口の端を歪めた後、続けた。
「なるほど。確かにーー被害は会場だけでした」
言いながらアドムは肩に手を当てて正装を脱ぎ捨てるとヴィンテージの戦闘服を身に纏う。
腰には剣帯が通され、剛刀兼定を帯刀していた。
「……? アドム殿?」
「クリューエル殿下、貴方は何故ーー被害が会場だけだと知っていたのです?」
「……」
アドムの声にクリューエルは口許を手で押さえる。
微かに目を見開いてクリューエルはアドムを見ている。
「フン、語るに落ちたか? 黒幕は、やはり第三王子か」
「……いや、これは」
ルークとダッタの声を聞き流しながらアドムは続ける。
「何故、貴方は王族に被害が及んでいないことを知っている? 何故、会場となった広間だけが壊されたことを知っている? 貴方は誰から、このことを聞いた?」
「……ク、ククク、クハハハハ!!」
高笑いがクリューエルから発され、アドムは静かに笑いがおさまるのを待つ。
ルークとダッタが身構える中、アドムは淡々とクリューエルの様子を窺っている。
「……なるほど。ただの剣術バカじゃないらしい。もっとも、あれだけ分かりやすく墓穴を掘ってやったんだから気付かなければどうしようかとも思ったがな」
「そちらが本性か?」
皮肉気な笑みを浮かべてクリューエルはアドムを見つめて返す。
「本性も何もない。俺はクリューエル・シャイン・フェルディナンドーーだ」
「先ほどまでの貴方も貴方の一部ーーということか」
納得いったーーと言わんばかりのアドムにクリューエルはニヤリと笑みを浮かべて右手を掲げる。
「このまま貴様の言う交渉とやらに望んでやってもいいが、生憎と俺は他人を信用しない人間でな」
「……どうすれば信用する?」
「ーー最強の剣士と手合わせを願うのは、男なら当たり前だろ?」
皮肉気な笑みを強めて言うクリューエルにアドムも静かに頷くと腰の兼定には手をかけずに、壁に立てかけられていたモップの柄を握る。
「何の真似だ?」
「心配無用ーー。加減はしないーー全力で、来い」
「フンーー」
瞬間、クリューエルの翳した右手の空間から宙に浮かぶ刀が3振り現れる。
それらが一気にアドムに向かって放たれた。
アドムはモップの柄を右手で持つと3振りの刀に向かって一閃し、同時に弾き飛ばす。
「ほう?」
アドムは一瞬で懐に踏み込み、頭上から唐竹を振り下ろす。
瞬間、木製のモップの柄は粉々に砕け散り、目を見開くアドムと笑みを浮かべるクリューエルが対峙している。
アドムの放った振り下ろしは、クリューエルの右手親指と人差し指と中指の三本で造られた剣指でーーその先から発生した小さな魔法陣によって止められーー粉々にバラされていた。
左手を突き出してクリューエルは笑う。
「フレイムーーランス!!」
炎の槍玉が5発ーー次々と放たれ、アドムに襲い掛かる。
アドムは咄嗟に右脚を空に向かって一閃し、蹴りの作った青い軌跡が宙に浮かんで炎の弾丸を全て受け止める。
「蹴りで真空刃を作り出し、空間に真空を作り出すことで炎の弾丸を止めて消したーーか」
「……」
炎の弾丸を止めた次の瞬間には空間に現れた刀がアドムを襲う。
持ち主もなく宙に浮かんで斬りつけてくる刀たちは妖怪そのものだった。
アドムは、そのうちの一つを選んで蹴り上げる。
クルクルと回転する刀の柄を自分の右手で掴み止め、周囲にあった刀を次々と斬りはらう。
「ーーソニックバレット」
同時にクリューエルに向かって横薙ぎを一閃し、斬閃から発生した光弾が放たれる。
魔法障壁を生み出して受け止めようとするクリューエルだが、弾丸はあっさりと壁をガラス細工のように貫いて身体に迫る。
当たる瞬間にはクリューエルの身体は半透明となって消えていった。
「見えてるぜーーヴィンテージ!!」
言いながらクリューエルは宙に刀を出現させてアドムと同じように柄を握ると、刀を一閃させて炎の弾丸を次々と生み出して攻撃してくる。
「喰らいなーーフレイムバレット」
娼館を燃やさないように絶妙に加減された魔法は、しかしアドムの身を焼こうと迫りくる。
一瞬で作り上げる中級以上の範囲魔法に、初級魔法の中でも極めて貫通力が高い強力なバレット系を主軸に妖精との契約で得た『ダンシングソード』のスキルも使ってくる。
正直に言って、かなりの強敵である。
(………クロード陛下に言ってやりたいな。ひとりで勝てるほど、世界の王家は弱くないーーてな)
迫りくる踊る刀と炎と雷、風に氷といった属性魔法も放ってくるのだからいよいよ、シャレにならない。
アドムは青い闘気を炎のように身に纏うと、自身の青目を開眼した。
「ヴィンテージ家は瞳の色で本気の度合いが分かるという。今、貴様の瞳が青ーーということは、まだ力を隠している訳か。気に食わんな」
「そいつは、お互い様ーーだろ?」
「ふ、いいぞ。俺の想像以上に強いーーそう、強くなくちゃつまらない」
「ーー同感だ」
言いながら二人の黒髪の男は、互いに向かって刀を振る。
同時に鍔迫り合いをしながらアドムはクリューエルの紅眼をジッと見据えている。
一気に押し込んで行こうとして、クリューエルの左右の空間に刀が5振り出現し一斉にアドムに向かって斬撃を放ってきた。
クリューエルの刀を弾いて空間に現れた5振りを同時に切り払う。
瞬間、クリューエルは前に踏み込みながら5振りの刀を出現させた状態で自身も斬撃を連撃で放ち、アドムの両手での連撃を防ぐ。
(……なるほど。剣技が足りない分は手数で勝負ーーか)
それにしてもーーとアドムは思う。
ルークに始まり、ダッタにシャロン、そして目の前のクリューエルと強敵が続いているーーと。
足元が爆発する寸前でアドムは後方へ神速で移動するーーが、そこを狙って炎、風、雷、氷の弾丸が放たれる。
「……」
アドムは両手持ちの刀を空に左下から右上へ斬り上げる。
空気をハッキリと断ち切り、真空の空間と衝撃波によって4つの弾丸は止まりーー消えた。
これにクリューエルも瞳を鋭く細めて更に魔法の練度を速める。
(貴様が反応できないほどの速度で魔法を生み出し、倒す!!)
アドムを完全に包囲するように無数の氷のつららが宙に浮かんで矛先を向けている。
その数ーー百は下らない。
(見たところ使っているのは初級や下級精霊の魔法ばかりだ。だが、これほどのーーこれほどの練度と数の魔法を使うーーだと!?)
ルークがハッキリと目を見開いて震える。
(確かに、コイツは脅威かも知れん。王族の中でも、コイツ程の才能を持つ者など現れまい……)
そしてルークは、アドムを見る。
(だがーー、それでもコイツが負けるところが想像できん)
戦いの高揚感がルークに肉食獣のような笑みを浮かばせる。
強い相手、優れた敵、素晴らしい技術のぶつかり合い。
それらすべてがーー武芸者としての自分を熱く熱く滾らせるのだ。
「終わりだーーアドム・ヴィンテージィイイイイ!!」
その高揚感に当てられて、皮肉気な笑みを浮かべていた王子は必死の形相で熱く叫ぶ。
自身の勝利を引き寄せるために。
無数の氷の弾丸が全包囲からアドムに放たれる。
「斬りはらう……」
青い斬閃が一筋走りーーアドムを中心に円を描くと青白い炎が燃え上がって爆発した。
衝撃波は無数の斬撃と共に氷の弾丸を瞬く間に粉々にしてみせーー無力化する。
これにルークが安堵の笑みを浮かべるもダッタが叫んだ。
「ーーまだだ! アドム!!」
「そのとおりーー俺の本命は、コイツだ!!」
言いながらクリューエルは右手に光を携えている。
アドムの周りに浮かぶ氷であった無数の粒ーーそれを確認して笑う。
「防げるものなら、防いでみろ。破れるものなら破ってみろ……! これが俺の切り札ーーアストラルレイ!!」
それは星々の輝きを散りばめたもの。
簡易的な魔法であり光を放つだけのもの。
だがーー光はガラスのような氷の破片にーー幕に収束され、強力な光球となってアドムを包んで爆発した。
クリューエルは賭けている、己の全てを込めたこの一撃を。
目の前の男が斬り裂くことに。
(コイツが本当にーー本当にアドム・ヴィンテージならば。大陸最強の刃ならばーーこの一撃さえも超えてくるはずだ!!)
でなければ娼館は消し飛びーー下手をすれば色町そのものがなくなってしまう。
だがーーだからこそ、加減はしていない。
アドム・ヴィンテージならばーー必ず破るはずだという確信が、クリューエルをしてあった。
「ウォオオオオオオッ!!!」
瞬間、光が爆発する寸前で異形の咆哮がクリューエルの耳に届き、青い斬撃が世界に誕生する。
まるで絵画に線を一本描いたように、ハッキリと青い斬撃がクリューエルの光を。
爆発をーー衝撃波を斬り裂いた。
その向こうから現れたのは、太陽のように赤い炎を身に纏った赤い瞳のアドムであった。
「……これが、ヴィンテージ」
その姿と力にクリューエルは心から、震えていた。
アドムの放った一撃に彼の手に持っていた妖精が創り出した刀は粉々に砕け散っていった。
「さすがに見事だな、アドム・ヴィンテージ」
「アンタもな、クリューエル・シャイン・フェルディナンド」
互いに向かって赤い瞳の青年は微笑み合った。
「貴様になら、この国の未来を託せるかもしれん」
そう言うとクリューエルは口を開いた。
「女神の呪いと、この紅い瞳について。貴様には話さねばなるまい」
アドムは頷き、鬼神力をおさめるとクリューエルの背を見据えた。
「レティシア。すまないが、彼らに酒と食い物を見繕ってくれ。代は俺が持つ」
「はい」
花の咲くような笑顔でレティシアが応え、離れる。
アドムとルーク、ダッタが横に並んで座ると対面にクリューエルとビークスが座った。
「これから話すことは他言無用だ、アドム」
「分かっている……」
これにビークスがアドムに何かを言おうとしてクリューエルが止めた。
「俺はアドムだから許している。俺の全てを打ち破った男だからな」
これにビークスは何も言わずに頷いた。
「女神の呪い、か?」
「ああ。元々、この大陸の神はオケアニデスと呼ばれる女神じゃない。今は魔族にされてしまった先住人達と、赤い目をした神人が居たんだ」
その言葉にアドムとルークは目を見開いて固まった。