ーーーヴィンテージ屋敷
アスラの勧めを受け、ダァムは王都にあるヴィンテージ屋敷の武器庫を訪れていた。
「ーーこの武具の数々は」
あまりの数にあっけにとられ、呆然としていたダァムの背に向かって声がかけられる。
「ここにある武具は、ヴィンテージ流を修めた者に渡すため、日ごろから私が磨いているものだ」
振り返れば、壮年の男が茶色の革ジャケットに黒のシャツ、白のデニムパンツというヴィンテージの服装で立っている。
「ーーたしか、カイト殿であったか」
「如何にも。お館様から話は聞いているーーが、私は自分の手入れしている武具をどれほどの男が扱うのかを知りたいと思っている」
そう言いながらカイトは壁に掛かっている刀を一振り、鞘に納刀した状態でダァムに投げつけた。
これを左手で鞘の根本を掴み、ダァムはジッとカイトを見る。
「ヴィンテージの影の戦いを見せる。見事納めてみせよ、アドム様の影ーーダァム!!」
「ーーそれで貴方が納得するのであれば」
言いながら腰の剣帯に通すと鞘から刀身を抜き放った。
「アドム様の影となるのはタハトと思っていたが、あれは影ではなく鞘。であれば影の役は、そなたに担ってもらおう!!」
ダァムが刀を抜いたのを確認してカイトも構える。
「委細承知ーー! このダァム、身命を賭してアドム様の影となる!!」
「良い覚悟だ。行くぞ!!」
ダァムとカイトーー武器庫での激闘が始まった。
袈裟懸けを放って中央でぶつかり、火花を散らすつばぜり合いとなる。
「なるほど。アドム様の剣術そのものを複写できるとはな」
「ーー」
その優れた腕力でダァムは一気にカイトの方へ刃を押し付けるも、カイトは霞のように霧散して消えた。
「だがーー青目のアドム様だ。赤い瞳のときではない」
背後から声が聞こえ、ダァムが後ろを振り返ると静かに刀を構えるカイトが居た。
「鬼神の力を纏うアドム様をご存知か。さすがはーーヴィンテージの影」
そう告げるダァムの目の前には、螺旋状に回転しながら射貫いてくる3本の苦無の姿。
とっさに左に首を倒しながら体を横に回転させて避けるダァムの先に、カイトは回り込んでいる。
「なに!?」
「剣術では勝負にならんが、影の戦い方は剣術ではない!!」
言いながら、左手から黒い粉を散布する。
(目くらましーーか?)
咄嗟に散布された粉を袈裟懸けで斬る。
だが、カイトは斬り捨てられた粉が霧散するよりも速く、一撃を放った。
それは鞘の鯉口を火打石と同じ素材にすることで抜刀の際に火花を散らせるというものだ。
だがーーその火花を孕んだ一閃は粉に引火して連鎖的な爆発を起こした。
「なん、だと!?」
ダァムは斬撃を防ごうとして爆発に巻き込まれる。
「ーーくっ」
皮膚を焼かれ、傷を負いながらも3歩、後ろに下がるダァム。
上段から振り下ろしてくるカイトに咄嗟に刃を合わせて弾く、すると勢いそのままにカイトは回転しながら右の飛び胴回し蹴りを放ってくる。
刀で受けると甲高い金属音と刃を弾いた感触。
(足先にも刃を仕込んでいる!?)
目を見開くダァムの目の前にカイトは踏み込んでいる。
「ーー!」
袈裟懸けで斬りこんでくるカイトに対し、一拍子上回る速度で左から斬り上げを放つダァム。
だが、目の前でカイトは袈裟懸けを振りかぶった姿のまま消える。
空間を刃が通り過ぎ、目を見開いたダァムの背後に真上からカイトが降ってきた。
振り返る暇もなく地面に叩きつけられ、その頬のすぐ横に刀の切っ先が突きつけられている。
「ーー分かるか? 影とは実体を掴ませぬもの」
ゆっくりと離れてカイトがダァムに立つように促す。
これにダァムも立ち上がると、カイトは続けた。
「薬、目くらまし、爪先の仕込み刃など。なんでもよい。相手に自分の攻撃を悟らせず確実に倒す。それが影」
「……」
「卑怯だと思うか?」
静かに問いかけるカイトにダァムは首を横に振る。
「ーーいや。私に何よりも必要なものだ。伝授を続けてくれ」
「良いだろう。いくぞーー見事、影の技を習得し、この屋敷で余った武器すべて持っていくがよい!!」
その日、夜が明けるまでーーカイトの試練は続いた。
すべてが終わったとき、ダァムはカイトから無数の武具を手にしていた。
刀、脇差、大太刀、槍、手裏剣、苦無、鉤爪、鎖鎌、長巻など。
武具は多岐に渡り、また数も揃っていた。
「アドム様のもとへ戻るか、ダァム」
「ーーはい」
明るい朝日を浴びてヴィンテージ屋敷の庭が照らされていく。
ダァムの姿は、ヴィンテージの赤い革ジャケットに黒のシャツ。
青いデニム、紺のマフラーという一張羅であった。
「ーー当主・アグニ様の服装とそっくりだが。まぁ、よかろう」
「かたじけない」
そう言うとダァムのジャケットは血のように紅いものに変わる。
炎のようなヴィンテージの赤ではなく、血の紅そのもの。
「大太刀を背中に背負うだけでなく、腰に大刀と脇差の二本差しとはな」
「ーーヴィンテージの影も、ヴィンテージ流も。すべては刀ありきのもの。私は、刀を持ってアドム様に仕える」
「そうか。では、ダァム」
そう言うとカイトは一振りの脇差をダァムに投げた。
長さは一般的な脇差であるが、太さーー身幅が兼定に匹敵している。
「この脇差はーー?」
「銘はないーーが、俺のコレクションの中にあったものだ。脇差としては外連味が強すぎて好かなかったが。お前に前差しを譲ったアドム様へ、新しい脇差として持って行ってくれ」
「委細承知。カイト殿ーーいや、師匠。また、お会いしましょう」
そう言うとダァムは血のような赤い光の粒となり、消えていった。
それを見送ってカイトも笑う。
「さてーー世界は、どう変わるのか。何をーー願っておいでです、アスラ様」
その問いかけは、風によって消されていった。
ーーー魔王城
その研究室で、ネクロは羅刹アバルによって斬られた四天王の一人フレイムハルトと獣人族の隊長タイガを培養液の入った巨大なカプセルの中に入れて回復させていた。
「…タイガの兄貴は、どのくらいで目を覚ましますか?」
「すぐには無理。でも、1週間後には必ず復活させる」
「ありがとうございます」
頭を下げるウルフにネクロはうなずく。
「私も助けられた。だからーー必ず成功させる。大丈夫」
言いながら、もう一人が入ったカプセルを見る。
あと少し、手当てが遅れていれば命はなかったと言われるーーアルド・ヴィンテージである。
胸も胴も深手を負っているが培養液が再生を促して傷口をふさいでいた。
「……!!」
何もできなかった。
あのアドムそっくりの羅刹に何もできずに殺されるところだった。
「あんな、あんな化け物が、なぜ人間の側に居やがる……!!」
拳を握りしめる人狼に向かって第三者が声を上げた。
「ーーこの世界の女神とやらが、新しい鬼神を生み出したんだろ? 貴様らを滅ぼすために、な」
ウルフは振り返る。
研究室の椅子に座っている圧倒的な力の持ち主を。
アドムやアルドと同じヴィンテージそのものの顔をした異形を。
その姿はアルドの肉体を基にネクロが生み出した複製物ーーホムンクルスと呼ばれるものである。
アルドの肉体が、どうしようもないほどに傷ついたときに予めネクロが用意したもの。
材料は人間や魔族の死体から作られた肉体でありーーその複製である。
アルドの中に居た異形ーー鬼神は、魂のないアルドの複製品を見るや否や、そちらに移ったのだ。
アルドの魂の中に鬼神・鍾鬼は眠っていたのである。
アルド本人さえ知らない異形ーー仏に5つに割かれ、女神オケアニデスに回収されて作り変えられた魂は、長きときの果てに割かれた部分すらも再生させて復活を果たしていたのだ。
人間と呼ぶには、あまりにも紛い物の肉体。
それでも、その瞳は真っ赤に染まり口元の牙は光っている。
通常の状態でーー赤目のアドムやその陰のアバルと同じ姿であるということだ。
羅刹(アバル)のように陰ではなく、実体そのものであるということだ。
魂のない紛い物であったはずのホムンクルスは、鬼神の魂が入り込んだことにより本物の鬼神の肉体へと変化していたのである。
「まぁ、そう嘆くな。弱きもの」
「なんだと……!」
「他者の力を見てうろたえ、怯え、すくむなど弱き以外に理由などあるまい?」
淡々と言われ、ウルフは思わず鼻白らむも赤目を開いた異形との力の差に黙る。
異形は整った顔を笑いながら続けた。
「我には不要の感情だが、その恐怖という感情で歪んだ弱者の顔を見るのは悪くはないぞ」
その服装は鎧武者と服を併せたようなもの。
胸元にヴィンテージの剣士たちの青い瞳のような石を嵌めた白と赤を基調とした鎧の上から黒い上着を羽織るような姿をしている。
異形は拳をメキメキと音を立てて握り、火の粉を生み出すと空から無骨で反りの深い太刀を生み出す。
それを腰の帯に差してにやりと笑う。
具足を履いた足で立ち上がるとウルフを指した。
「久方ぶりだ、少し体を動かしたい。貴様程度でも、まぁ運動にはなるだろう?」
「……化け物どもが!!」
「ククク、やはり良いものだ。弱い奴が強者に対して怯え、恐れ、それでも悪態を吐く無様さはな……!」
言うと異形ーー鬼神・鍾鬼の赤い瞳が光る。
次の瞬間には、ウルフだけが魔王城の外に居る。
「な? どういうことだ……?」
「いちいち狼狽えるな。これから死ぬかもしれんのだぞ? もっと恐れ慄け……」
そう告げると同時、鬼神は全身に赤い炎のようなオーラを身にまとうと青黒い雷を走らせる。
「アドムの赤金のオーラに、アスラの青黒いオーラと同じ色の雷を纏わせる、だと……?」
その力はーーまぎれもなくヴィンテージの根源。
アドムにもアスラにもアルドにも通じる圧倒的な力。
「我以外の強者など居らぬ。我が前に立つことさえ許さぬ。力を持つのならば餌、持たぬなら玩具。どちらにせよ、貴様らは我の糧以外の何物でもない」
ーーーー
その頃、魔物の森を駆け抜けながら鬼神・鍾鬼の復活を止めることを考えて移動していたアバルの胸の内で声がする。
ーー「羅刹よ。其の方が危惧していたとおり、鍾鬼は復活を果たしたぞ」ーー
「!? なんだと!?」
思わず立ち止まるアバル。
自分の懐あたりから黄金の雷玉が生まれて目の前に移動すると人の形に変わった。
異世界の鎧に羽織りを上から着た銀髪の美丈夫は月光のような金色の瞳でアバルを見据える。
「天帝インドラ。鍾鬼が復活した、だと!?」
「ーーうむ。魔族とやらには、仮初の肉体を生み出すのが得意なものが居るようだ」
「祖父上殿やアルドのーー魔族としての肉体を作ったやつか。くそ!!」
アルド・ヴィンテージを斃すのはアバル自身の個人的な感傷であったが、本物の厄災とも言える鍾鬼が復活したのであればそんなことを構っている暇はない。
「時間はないーーが、其の方がそのまま挑んだところで鍾鬼には勝てぬ。良くて引き分け、最悪は其の方が食われることだ」
「天帝。ここで俺を止めたところで、奴は魔族どもを食らって力を増すぞ」
「分かっておる」
そう言いながら天帝は懐から鈴を取り出すと、顔の横に上げて鳴らした。
瞬間、アバルの立っている場所が夢と現の狭間の荒野へと移動する。
「この際だ。鍾鬼を退けるためにも、其の方には『真の羅刹』に成ってもらおう」
「いいのか? 天部を率いる長が、御仏の天敵とも言える羅刹を育てて?」
「ほかに手があれば、それでも良いが。人の心を持ち鬼の道を往く羅刹よ、今は其の方に賭けてみよう」
言いながら天帝は右手をかざし、ヴァジュラの雷槍を顕現させて掴む。
これにアバルも腰の大刀を抜き放って霞に構えた。
「この空間に居る限り現実世界で時は進まぬ。行くぞ、余を納得させてみせよ! アバル!!」
「フン、こんな形でテメェを斬れる機会が来るとはな。インドラぁあああ!!!」
金色の月光が輝き、太陽のごとき炎が燃え上がってぶつかった。
すべては鬼神・鍾鬼を打倒するため。
互いの武器が、互いの中央で押し合っている。
「……人間の作った武器が、神通力の塊である金剛槍を止める、か。見事なものだ」
「フン。祖父上ーーアブラ・ヴィンテージが鍛え上げた刀だ。人の我の兼定にも遅れは取らぬ」
言いながら、突きと斬撃を打ち合って離れる。
「不思議だ。随分と正当な戦い方をしている。今の其の方は、あの時とは強さの質が違うようだ」
「……」
「もっとも、其の方には勝ってもらわねば困るがな。余は、この世界で実体化できぬ故ーー」
「なんだと?」
「異界とは、それほどまでに来るものを拒むのだ。精神だけを飛ばすことはできても、実体までは顕現できぬ。釈迦如来ほどの神通力であれば可能やもしれぬがな」
「ーーなるほど。だから、こんな精神世界で俺を試してやがるのか。インドラ」
茶化すような言葉にも肩をすくめるだけでインドラは続ける。
「ーー本来であれば、余が鍾鬼を討てばよい。だがーーそうもいかぬ。まこと、世の理とは面倒よ」
「羅刹の俺ならば、天部の長の代わりになるーーと? 随分と高く見てくれるのだな?」
「以前であれば、其の方には頼まなんだ。だがーー今の其の方ならば、良いだろう。それに鍾鬼を野放しにはできぬからな」
「ーー天帝。貴様のことは大嫌いだが、その意見には同意する」
これに天帝は微笑みを浮かべた後、表情を消して身にまとう光を強める。
アバルはニヤリと笑みを強めて赤黒いオーラを激しく燃やした。
「ゆくぞ、羅刹ーーアバル」
「来やがれ、天帝ーーインドラ!!」
月光のような金色と、太陽の黒点のような赤黒いオーラが、時の止まった世界で再び激突した。
ーーーー
時は戻り、魔王城から離れた丘で。
「ふざけんなぁああああああ!!」
紫色の闘気を身にまとい、ウルフはどうしようもない力の差を悟りながら、死の恐怖に打ち勝つように鬼神に向かって走った。
なけなしの勇気で鬼神に向かって殴りかかるウルフだが、首の後ろ辺りに衝撃を感じ、気づけば宙ぶらりんになっていた。
「が、ぁああ?」
目にも映らない速度で背後に回られ、圧倒的な力で片手で首を掴まれて吊り上げられている。
「おっと? しっかりしてくれ。力の差は明白だろう? 我を楽しませずに簡単に死んでくれるな」
聞こえてくる声は、それだけで震える。
あまりにも容易く、この存在は自分を殺せるという絶対の理解。
「それともーーその差すら分からんか? 犬畜生の頭ならば本能で察すると思うたがな」
「うるせぇ、俺はーー俺は!!」
締まる首。
鬼神は力などまったく入れていないが、ウルフにとっては絞首されているのと変わらない。
朦朧とする意識の中ーー思い出すのは、人間からも亜人からも魔族からも蔑まれた己の記憶。
幼いころから、親らしいものなど居なかった絶望の世界。
「俺は、ウルフだ!! 畜生なんかになってたまるか!! てめえの玩具になんぞ、俺はならねぇ!!!」
そう叫んで肺に残された空気をすべて吐き出してーー気を失っていく。
力もなくなり、鋭い牙の間から舌がだらしなく下がり、涎が溢れるように流れて地面につたう。
「つまらんな。もう死ぬか……」
そう言うと鬼神は機械的に虫を見るように無感情な瞳でウルフを見据えて地面に捨てる。
ごほごほっと咳をするウルフの左腕を右手の人差し指と親指でつまむと枯れ枝を手折るように千切った。
「ぐわぁああああああ!!!」
千切れた腕に鬼神は牙をむき出しにして食らいつき、瞬く間に平らげていった。
「うるさいぞ、肉」
もう片方の腕に食らいついて骨を噛み砕きながら、淡々と告げると鬼神はウルフの頭を掴んで地面にたたきつける。
(……すまねえ、タイガの兄貴。ネクロ様)
それが彼の最期の意識だった。
それだけでウルフは何も言わなくなった。
そのまま首を引きちぎり、食らう。
ほどなくして、ウルフであったものは全て鬼神の腹の中に収まっていた。
「フンーーなるほど。これが、この世界の記憶か。アルドとかいう人間の記憶では魔族のことも世界のことも分からなかったが」
首を傾けて鳴らしながら、鬼神・鍾鬼は嗤った。
「アドム・ヴィンテージ。そいつが、この世界で生まれた最強を冠する鬼神かーー? 面白い」
鍾鬼の前に巨大なゴーレムが地面から生えてくる。
そちらを見れば、肩に緑髪の幼女が座っていた。
「ウルフ君をーー殺した?」
「ーー? 何の話をしている?」
「ーーあなた、ウルフ君を殺した」
そうつぶやきながら、ネクロはゴーレムに巨大な岩の剣を持たせる。
「やめておけ。貴様のような貧相な体では、我の腹は満たぬ」
「ーーっ!!」
涙を目ににじませ、怒りの表情になったネクロにあわせるようにゴーレムの剣に緑色の炎がまとわり、強烈な斬撃が放たれる。
袈裟懸けを地面に放ち、鍾鬼の立っていた場所はクレーターになる。
背中に衝撃が走り、腹に違和感を覚えてネクロは自分の腹を見ると抜き身の刀が覗いていた。
「ーーえ」
「我の忠告を無視した罰だ。とはいえ、肉体を我に差し出した礼だ。楽に死なせてやろうーー」
囁くように邪悪な笑みを浮かべて鍾鬼は言った。
(ーーごめんね、ウルフ君。お姉ちゃん。私ーー最期まで役立たずだーー)
涙を流すことさえ、その時間さえ許されない。
刀身から赤い炎が生まれるとネクロの体は一瞬で燃え上がり、黒い灰となって空に散っていった。
「火葬の手間を省いてやったぞ、礼は要らん」
そう告げる鍾鬼の背後に魔王ゼロスと夢魔のヴィオレッタが立っている。
「……」
「魔王様、お願いです。ここは私にーー! 妹の、仇を!!」
「ーーごめんね、ヴィオレッタ。僕が浅はかだった。こんな化け物を。アルドに似ているからと復活を見逃してしまったーー。この僕が責任をとるよ」
言いながら魔王は城の中の壁に飾られているサーベルを右手に移動させて柄を掴む。
「女神オケアニデスを討つ前にーーまず貴様を殺すよ。鬼神・鍾鬼」
これに鍾鬼はニヤリと笑みを強めた。
「一番のご馳走は最後まで取っておきたかったがーーま、挑まれては仕方あるまい」
言いながら両手を胸の青色の宝石の前にかざすと超巨大な大太刀を抜き放った。
それは刃渡りだけで三メートルはある凄まじい巨刀。
「せいぜい足掻くがよい。愚かで汚らしい魔族どもーー! 今日が貴様らの命日だ!!」
赤い炎のようなオーラは激しく燃え上がり、青黒い稲妻を走らせ、霞に構える。
それを見据えて魔王ゼロスも紫色のオーラを全身から吹き上げて漆黒の雷を放って迎え撃った。