兵士「姫様、勇者を捕らえました。」
姫「御苦労様、そのまま抑えておいて。」
勇者「.....。」
姫「さて勇者様、貴方をこの度連れてきた理由はお分かりでしょうか?」
勇者「...姫様、その事は御断りしましたよね?」
姫「...王族の申し出を蹴るなど不敬罪なのですが、許しましょう。ですが受け入れた方が身のためですよ?」
勇者「そうでしょうが...できません。」
姫「...何故、受け入れてくれないのですか。私はこんなに愛しているのに。」
勇者「姫様....。」
勇者「もう6000回程の求婚話を断ってるんですからもう諦めてくださいよ。」
姫「貴方もいい加減折れなさいよ。」
勇者「だから俺には嫁が居るって言ってるでしょうに。」
姫「絵物語の少女は嫁には入りません。」
勇者「俺の心の中で生き、癒してくれる存在だ。」
姫「せめても現実の女性とも交流を持ってください。」
勇者「ちゃんと現実の女性とは交流ありますよ。顔を合わしたら挨拶してるし、仕事や世間話とかの日常会話してるじゃないですか。」
姫「社交辞令というものを知ってますか?私が言いたいのはもっと女性と距離を詰めるべきです。私の言いたいことは分かりますよね?」
勇者「だから俺には
姫「だから絵物語の存在ではなく私と距離を詰めて下さい!」
姫「はぁ、それですと貴方は独り身のまま生涯終えるおつもりですか。」
勇者「えっ、それ姫様が言っちゃいます?」
姫「ぶっ殺しますよ?」
勇者「そもそもの話、俺には貴女様の事が眼中に無いと言ってるでしょうに。」
姫「...私が魔王に拐われて孤独な日々を救ってくれた貴方に、私は全てを捧げても側にいたいと、今でも想ってるのですよ?」
勇者「いや、そうは言っても....」
勇者「当時、俺が召喚されたのが28で姫様が8歳は完全にアウトでしょ。」
姫「異なる世界と法律上セーフです。」
姫「その後だって、貴方に就職先紹介したり、純粋な婚約を申し込んだではありませんか!」
勇者「いや、其処は本当に感謝してますよ。元の世界に帰れないから無職だったし。教員経験はあったから学園への推薦は本当に有り難かったです。」
勇者「学生になってまでアタックする必要あるんですか?」
姫「教師と学生の禁断の恋は定番よ?」
勇者「それさっきの話題のまんまじゃないですか。」
勇者「それに学園の他の女子生徒からのアタックも多くて捌くの大変だったんですからね。しかも殆どが貴族ですから。」
姫「それは国家の名を借りてるから大丈夫でしたでしょ?」
勇者「あぁ、でも他国の留学生は流石に困惑したぞ。」
姫「?という事はどの様に御断りしたのですか?」
勇者「あぁ....。」
勇者「俺には(心の中に)嫁がいるって伝えたら諦めてくれた。」
姫「....当時の私に対して周りの呆れた眼差しを向けられた理由がよく分かったわ。」
姫「私はもう大人です!恋に盲目な少女から純粋な恋する乙女に成長したのですよ!」
勇者「30歳の乙女...。」
姫「今此処で絞め殺しますよ?」
姫「大体ですね、何故聖剣が失われて尚、不老の力が継続してるのですか。」
勇者「それに関しては俺は知りませんよ。剣を抜いた時に呪いでも掛けられたんじゃないですか?」
姫「だとしても剣が折れてしまったなら呪術の部類は解けてしまう筈ですが、剣を抜いた際に何か問いかけられませんでした?」
勇者「いやいや、流石に気付きます.....。」
姫「.....何故いきなり黙るのですか。」
勇者「そういや、剣を抜く際に言ってたわ。」
姫「.....なんと?」
勇者「.....『一本、抜いとく?』って。」
姫「.....私が言うのも難ですが、怪しいと思わなかったんですか?」
勇者「早く元の世界に帰ってアニメ観たくて。」
姫「昔の私が居たらガッカリしてたでしょう。」
姫「...疑問に思いましたが自称嫁の少女を布教してるようですがどんな企みで?」
勇者「否定的な人が多いので、彼女がどんなに天使な存在か知らしめる為の示しを語ってるだけです。」
姫「....まぁそれは良いでしょう。ですが」
姫「人の国教を覆す程の特殊な宗教を許した覚えはありませんよ?」
勇者「俺は悪くない、と言いたい。」
姫「貴方がその少女の石像を作ってるようなのですが、それが貴族、城下に出回ってるようなのですが。」
勇者「世の中には観賞用、実用用、布教用が一つのグッズには必要なのですよ。」
姫「....実用用って何に使うんですか。」
勇者「そりゃ観賞用は飾る為、布教用は他人に知らせる為だとすると自分用ですよ。」
姫「だから何に使うんですか?!」
勇者「えっ、そりゃ」
勇者「愛でるため。」
姫「好きな人なだけに、気持ち悪さを感じるこれは何て言うんでしょうか?」
勇者「よく言われた。」
姫「貴方が出した、そのメルちゃんという存在が描かれた本を読ませて頂きました。確かに可愛らしい少女の様ですが、こんな都合の良い存在が世の中にいるのですか?」
勇者「いるんじゃないですか?万に一人位は。そもそも人に理想を押し付けるモノじゃなくて、理想は理想のまま歩むモノですし、好きな存在は受け入れるものですから。」
姫「ん?それではそういう存在は居ないという事になりませんか?」
勇者「例え那由多の彼方だろう居ると俺は信じている。」
姫「そもそも人に布教して、その人が『自分の嫁だ』って言い出したら貴方はどうしますか?」
勇者「.....メルちゃんは俺のお嫁さんだし。」
姫「それにお話の中にお相手がいらしたら」
勇者「やめろ!それ以上は危険な橋だ!」
姫「....駄目じゃないですか。」
姫「全くこのような偶像を好むなど、英雄章のような物でしょうし、このような存在に憧れを抱くのは仕方がないのは分かりますが、どれだけなんですか貴方の元の世界は。はぁ。」
勇者「メルちゃんは俺の嫁だし、メルちゃんは俺の嫁だし....。」
姫「......前からお訊きしたかったのですが、貴方は」
姫「本当にこういう方が好みで?」
勇者「あっ、キャラ合わせて好かれようなんて虚しいだけなので止めといた方がいいですよ?」
姫「ガッデム!」
勇者「それにもう歳を」
姫「其処になおりなさい、私が斬殺します。」
姫「大体ですね!50にもなる30代若作りおじ様が絵物語の、ましてや永遠の17歳少女を想い焦がれてるのがおかしいのですよ!!そっちに想いを寄せるなら私にも分けてもいいのではなくて!?」
勇者「おじ様言うな!まだ手前のおっさんだ!!しかも饅頭のようにホイホイとちぎって分けられるかバカ姫!!」
姫「ばっ!?馬鹿なのは貴方でしょうに!人の恋心を袖にして!本当は誰かを娶る事が怖いんでありませんか?この◯無し男!」
勇者「お前...姫だからって言っちゃいけないことがあるだろうが!柱の影を観やがれ!爺がお見合いの書物の山を抱えて泣いてるだろうが!早く
姫「ならば貴方が受け入れれば済む話なのです!野望丸出しの貴族等に体を許したくありません!」
勇者「この強情っぱりめ...。いい加減諦めろよ!俺は姫様の事は姪っ子のように思ってるんだからな。御相手探しなら手伝うから諦めてくれ!」
姫「なら
勇者「おいぃぃ!完全にセーフのようなアウトをぶちかましてきたぞ!?」
姫「姪と叔父が婚姻を結ぶのはこの世界では問題ありません。向こうの世界では禁断物でしょ?燃えます。」
勇者「どっか持ってくるんだそんな知識は!? 」
姫「ヤらせなさい!そうすれば万事解決です!」
勇者「汚ねぇ言葉使うんじゃねぇ!解決じゃなく強行による逃避だろうが!? 」
勇者、姫「はぁはぁはぁはぁ...。」
兵士「あの...。」
勇者、姫「何だ!/何!」
兵士「....そろそろ執務が滞ります。なので...。」
姫「....良いわ、今日は帰らして。また後日相談しましょう。」
勇者「もう諦めろよ。じゃあな。」
姫「....はぁ、何とかならないものかしら。」
兵士「....姫様、例の物が..。」
姫「!そう完成したのね...。」
兵士「はい、下の者達には既に準備は整っております。」
姫「そう...ニヤリ。」
[勇者自宅]
勇者「くぅ...かぁ...くぅ...かぁ。」
ギィー...
?「.....」
勇者「.....くぅ....かぁ...。」
?「.....。」
スタ...スタ...ギシィー...
勇者「.....姫様、寝込みに遅いに来るのは何度目...!?」
メル「こんばんは...お兄さん。」
勇者「ま、待て...何で...夢か!?」
メル「夢かもね、でも私はこうやってお兄さんに会いに来たよ。ずっとお兄さんが思ってくれてたからかな?」
勇者「...待て、待て。君がメルちゃんなら自分の好きな食べ物を教えて欲しい。」
メル「....?私の好きな物?苺ソースがたっぷりかかったフルーツパフェ!」
勇者「.....確かにそうだね。」
メル「お兄さん、私の事信じてなかったね。せっかくお兄さんの為に来たのに。」
勇者「何をしてくれるの?」
メル「ダメ、お兄さんに教えない。」
勇者「逆に知りたくなるよ。教えて欲しいよ。」
メル「....もう、じゃ目を閉じて。」
勇者「閉じなきゃいけないものなの?」
メル「いいから...目を閉じて。」
勇者「.....ほら閉じたよ。」
メル「じゃあ目を閉じててね。」
勇者「.....。」
メル「(後少し....)」
勇者「.....。」
メル「(もう間近...!)」
勇者「はい唇ちょい待ち姫様。」
メル(姫)「!!?何で!?」
勇者「あからさま過ぎ、メルちゃんのキャラじゃないからサキュバスだと思いましたよ。それにボロ出すの早っ。」
メル(姫)「しまった!?」
勇者「それに声そのまま。姿を見事化けたみたいですけど穴だらけでしたね。」
メル(姫)「あぁぁぁぁぁぁぁ.....。」
勇者「...でトランス系のポーションを開発した、と。完全に大問題案件じゃないですか。」
メル(姫)「だって、もうこの手しかないじゃないですか。どんな手を使っても断れているなら汚い手を使ってでも貴方を物にするしか。」
勇者「.....ふぅ、なぁ姫様。」
メル(姫)「....なんですか。」
勇者「そんな怒られる前の子供みたいな顔しないで下さい。まぁ怒りますけど。」
メル(姫)「勿体振らず言いなさい。」
勇者「....昼間言った歳の差の話ありましたよね。」
メル(姫)「.....えぇ。」
勇者「本当は貴女の事をとても魅力的に思っていたんです。こんな可愛い女の子が嫁さんになるなんて超嬉しいって思っていたんです。」
メル(姫)「....今頃誉めても遅すぎです。」
勇者「ええ、異世界なのだからこっちの法律は必要ない。なら王族の末席も、その責任も、全て抱え込んでやる。って傲慢に思う時もありました。けれど、不安が膨れ上がるんです。」
メル(姫)「....。」
勇者「貴女と結婚して、仕事して、子供を作って、そして、俺が元の世界に帰ってしまうかもしれないか、と。」
メル(姫)「...え?」
勇者「もし、元の世界に帰ってしまう事になってしまったら、貴女達を残してしまう。それが1番怖かった。貴女を、悲しませてしまうことが、1番辛い。」
メル(姫)「....。」
勇者「だったら、遠くで見守れる所で日々が過ぎるのを待ってて、好きなアニメキャラを思い浮かべて、そして、貴女に興味を持ってないと自分に言い聞かせて。」
メル(姫)「....はぁ、女々しい言い訳ですね。」
勇者「.....すいません。」
メル(姫)「....ふっ。」
...ポンッ!
姫「良いでしょう、年月を掛けすぎた言い分。許しましょう。」
勇者「姫様?」
姫「元々貴方は元の世界に帰って良い筈の存在です。此方が一方的に連れてきた。誘拐したも同然なのですから、非があるのは此方ですよ。」
勇者「...もう50ですよ?」
姫「そうね、遅すぎたわ。お互いにね。」
勇者「俺は、この世界に居て良いですか?」
姫「当たり前よ、その為に居場所を与えたのだから。それに私が居場所になるわ。」
勇者「.....俺がもし、帰ってしまったら?」
姫「追い掛けます。貴方の近くに居たいの。そもそも許さないわ。貴方は絶対に帰しません。」
勇者「.....こりゃ困ったな、惚れる位に男らしいよ。正直、俺は情けなくなる。」
姫「なら甘えて下さいな。私は貴方に助けられた時に心の底から惚れてるのよ。20年頑張って伝えてるんですから、それくらい戴きませんと割に合いませんわ。」
勇者「そうだな、20年近く待たしちゃったからな。ごめんな、姫様。」
姫「.....私は謝罪が欲しいのではありません。嬉しくありませんわ。」
勇者「.....うん、有難う、姫。」
姫「......それだけですか?」
勇者「欲張りだな、お姫様は。」
姫「欲を張らないで貴方を想い続けられませんわ。」
勇者「そうか...。」
月明かりに男は手を伸ばし、彼を慕う者の頬に触れながら顔を近づける。女は直に感じる体温に心を寄せて近づく彼を待つ。薄暗い中でもお互いの顔を確認しながら、ゆっくり、刻々と通り過ぎていくかのようにお互いの唇が見つめ合うように触れようと...。
勇者「....ちょい待ち。」
姫「......何ですか急に。」
勇者「いや、この状態で無粋だって事は理解してるけど、トランス系のポーションって禁薬だよな。」
姫「..........本当に無粋ですね。ええ無粋ですとも、ええ。」
勇者「.....其処んところ、どうなんですか。姫様?」
姫「..........ど、どうなんでしょうねホント。お、ほほほほほほ。」
勇者「........御預けですね。」
姫「!!そんな御無体な!?」
勇者「薬なんですから、体に影響あったらどうするんですか。」
姫「それなら問題ありませんわ。信頼する開発部隊による検証の基、副作用はありません!」
勇者「なら大丈夫ですね、ってなりませんよ。」
姫「何故ですか!?」
勇者「トランスによる身分詐称があるから禁薬になってるんだろうが!?」
姫「貴方の好きな女子になるのがいけない事ですか!?」
勇者「......姫様、貴女はオタクという物を馬鹿にしました。説教が必要ですね。」
姫「ひっ...何がいけないのですの?」
勇者「アイドルyes崇拝noタッチ。推しに手を出すなんてガチ恋勢として赦しては置けないんですよ。貴方に伝授しましょう。」
姫「....嫁と言ってませんでしたか?」
勇者「本当の理解をしてもらう為、講義させて戴きます!!」
姫「もう意味が分かりませんわああああああああ!!」
ゆるーーーく終わりでアンサーです。