ありふれた職業で世界最強〜付与魔術師、七界の覇王になる〜   作:つばめ勘九郎

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第一章最終話となります。

新衣装のお披露目とロクサーヌした話の回です。




旅立ち

 

 ついに大迷宮攻略を達成し、新たな目標を掲げたシン。

 

 彼は現在、ロクサーヌの着せ替え人形と化していた。

 

 

「ろ、ロクサーヌ〜......?もういいんじゃないかぁ〜?」

 

「いいえ、ダメです!()()()()()()に似合う最高のスタイルを完成させるまでこの手は止まりません!」

 

「し、しかしだなぁ........」

 

「言い訳は無用です!七体もの精霊(ジン)を従え、王になると決めた方がただの冒険者の装いをするなんて言語道断!優雅で、何者にも犯し難く、それでいて動きやすさも兼ね備えた至高の装いに仕上げて見せます!」

 

「左様ですか〜........」

 

 

 かれこれ一時間近くされるがままのシン。

 

 ロクサーヌはあーでもない、こうでもないとかき集めた服を眺め、それをシンに着せては脱がしてを繰り返していた。

 

 

 

 ことの発端は精霊(ジン)達との話し合いを済ませた後の事だった。

 

 シンが国づくりを決意したのち、七体の精霊(ジン)達から聞きたいことを大体聞き終え、精霊(ジン)達が今後どうやってシンについていくのか問うた際、『その心配は必要ない』とバアルがいい、その青い巨体がシンの刀剣に宿ったのだ。その証拠としてバアルが宿った刀剣には八芒星の魔法陣が刀身に刻まれていた。

 

 これなら移動も楽々だな!と関心していたシンだったが、一つの金属に宿れる精霊(ジン)は一体までらしい。だが困ったことにシンが所持している金属類は残り三つ。短剣と園部と一緒に買い、のちに壊れロバートが加工しなおした腕輪と、ロバートから貰った銀のタリスマンである。無事だった物がこれだけしかなかったのだ。

 

 あと三つは精霊(ジン)が宿る金属器が必要なのだ。

 

 さて困った物だと頭を捻っていた時、精霊(ジン)達が唐突にジャンケンを始めた。え、精霊(ジン)ってジャンケン知ってるの?と目の前のシュールな光景より、まずそっちに疑問が浮かんだ。

 

 そして公平な勝負の結果、短剣にはフェニクスが、腕輪にはフォカロルが、タリスマンにはアガレスが宿ることになった。ギリギリでタリスマンを勝ち取ったアガレスは表情を全く動かしてないのに凄く嬉しそうだった。それを見て悔しそうにするゼパル、クローセル、キマリス。「こいつらめっちゃ面白いな」とロクサーヌと話していたシン。

 

 そして残った三体は元々宿っていた装飾品に戻り、それをシンが身につけることになった。

 

 てか開幕速攻で刀剣に宿ってきたバアルよ、お前抜け目ねぇな。

 

 とまぁそんなこんなで無事に精霊(ジン)の移動問題は片付いた。そう、片付いたのだが新たに問題が発生した。

 

 それは新たに身につけることになった装飾品が滅茶苦茶豪華だと言うことだ。

 

 ゼパルは赤い宝石が付いた指輪に宿った。それはまだいい。問題はクローセルとキマリスだ。

 

 クローセルが宿ったのは黄金のかなり大きめの装飾が凝った腕輪。もはや腕輪と言うより手甲である。そしてキマリスは黄金のこれまた装飾が凝った首飾りで、まるで儀式用の装飾品なのだ。

 

 これらを身につけるにしても今の格好では明らかに浮いてしまう。

 

 さらにバアルさんからありがたい豆知識。

 

 金属器が壊れた際に精霊(ジン)を移し替える金属類を身につけておくこと。普段から身につけている物で無いとダメらしい。

 

 (よう)するにもっと装飾品を増やせ、との事だ。

 

 

「際ですかー......」

 

 

 シンは遠い目をした。

 

 そして古い記憶が蘇る。

 

 ちょうどシンがアニメや漫画にハマり出した時、憧れてついバトル漫画やアニメに出てくる装飾品を集めそれを身につけていた時期があった。そう、あれは中学二年生の冬ぐらいだ。

 

 指には髑髏の指輪や、とある高校生マフィア漫画に出てくるボ○ゴレリ○グを身につけ、腰のベルトにチェーンで括り付けた匣兵器の玩具。首には某シャーマンの王様を目指す漫画の主人公が身につけている首飾りを模したグッズ。もはやわけがわからない程、装飾品の情報量が多すぎた。

 

 それを身につけ自室で遊んでいた時、施設のおばちゃんが部屋に入ってきて、数秒の沈黙。速攻で装飾品を外し、思考をフル回転させて言い訳をした懐かしくもあり........いや、思い出すだけで地面を転げ回りたくなる恥ずかしい記憶だ。

 

 そんな時期がシンにもあったんです。

 

 そしてそんな記憶が今蘇り、早速心が挫けそうになった元患者さん。

 

 しぶしぶバアルの言う通り装飾品を身につけることにしたシンは、元々フェニクス、フォカロル、アガレスが宿っていた装飾品の銀の髪留め、金の耳飾り、銀の首飾りを身につけることにした。バアルが宿っていた金のランプはロバートの家にでも飾ってもらおうと考えた。

 

 そんなシンの姿(ジャラジャラした格好)を見てロクサーヌが立ち上がった。

 

 ロクサーヌはこの邸宅にある衣服をかき集め、金銀の装飾を身につけていてもおかしくない格好の選抜をしだしたのだ。

 

 そして話は冒頭に戻る。

 

 

「ふぅ〜、これならバッチリですね!」

 

「ま、まあ、これならいい、かな......?」

 

 

 結局、さらに一時間はかかったシンの着せ替えコーディネート。

 

 ロクサーヌが厳選の末に選んだのは、真っ白な衣服だった。

 

 真っ白な羽織に、襟が立った白のベスト、そして着物に少し似ている一枚布を全身に覆った様な白い衣装。しかしズボンは袴の様にゆったりしている。所々に金の細工が施されており、両側の肩横にある金の留め具が羽織とその下の衣装と繋がっている。着心地も悪くなく、生地の厚みも厚すぎず、薄すぎない程良さ。全力で動いても関節の動きも阻害されない快適感。

 

 ロクサーヌの根気が成せるコーディネートだった。

 

 

「凄くお似合いです、シンさん!」

 

「そ、そうか?まあ、なんだ....ありがとなロクサーヌ」

 

「どういたしまして。それでシンさん、今後はどうなさるおつもりなんですか?」

 

「そうだな.....もう少しこの場所に(とど)まろうとおもってる。見たところ書庫もあるみたいだし、情報は集めれるだけ集めたい。それにせっかく手に入れた変成魔法をある程度は使いこなせる様になりたいし、この体で出来ることも把握しておきたい」

 

「ですが食料などはどうしますか?先の戦闘でほとんどが駄目になってますが?」

 

 

 ロクサーヌの言う通りで、あと何日かは大迷宮を潜っていられたはずの食料は全て白い要との戦闘で駄目になっている。あれだけ「壊す!壊す!」と言っていた白い要だから、壊せる物は手当たり次第壊している。ロバートが与えてくれた荷物箱やその中身も全て。もちらんシンが背負っていた荷物箱も同様だ。あれが最後の試練でなかったら確実に詰んでいただろう。

 

 そして食料問題だが、それはあっさり解決しそうだ。

 

 

「それならさっき、ロクサーヌが服をかき集めてた時に台所に結構な量の食料が備蓄されてるのを見つけたぞ?」

 

「そうなんですか!?」

 

「ああ。見た感じ食えそうだったから多分食料問題は大丈夫だと思う。あれだけの量を誰が持ってきたのはわからないが、まああるに越したことはない。遠慮なく使わせてもらおう」

 

「そうですね。なら今日は私が腕によりをかけてシンさんにご馳走を作ります!」

 

「できればロクサーヌのシチューがいいなぁ〜」

 

「シチューですか......調味料が揃ってないと難しいですが、シンさんがそこまでおっしゃるなら頑張ってみます!」

 

「おう!楽しみにしてるよ」

 

「では私も着替えたあと、台所に向かいますので」

 

「ああ、わかった」

 

 

 そう言ったあと、ロクサーヌは部屋を出て行った。

 

 部屋に残ったシンは一人、思考を巡らせた。

 

 何故、あれほどの食材が腐らずに残っているのか。食材が保管されていた場所は明らかにこの迷宮内の作りとは違う、金属製の物だった。それに付与されている魔法の構築にシンは覚えがあった。ロクサーヌが使っていた荷物箱。壊されたあの箱には食材が保管されていた金属物と同様の魔法が組み込まれていたのだ。

 

 つまり、食材を置いて行ったのはロバート。

 

 シン達がここに来ることを見越していたわけでは無い。ロバートにその猶予は無かった。なら、あの食材はロバートが(あらかじ)め用意していた物で、その理由はここに滞在する事が多かったからか、或いはこの場所をいざという時の()()()()と想定していたか。そのどちらかだろうとシンは結論付けた。

 

 ここを出た後、ロバートに聞きたい事が出来たと自身の胸の内に留めたシン。

 

 その後、シンは邸宅内の探索をした。しかし、めぼしい情報収集源はやはり書庫にしかないと再度認識しロクサーヌに自分は書庫にいるから、と伝えた。

 

 ロクサーヌはすでに台所で調理を開始しており、着替えも済ませていた。彼女の装いは白のワンピース姿で一枚布造りの簡易的な部屋着みたいな物だったが、ロクサーヌのスタイルの良さをより一層強調させていた。その上、どこから見つけたのかピンクのエプロンまで身につけている。久しぶりの料理を楽しそうにしているロクサーヌ、見たところ献立はシンご希望のシチューだろう。ウキウキ気分で彼女が体を揺らす度、それに釣られてお胸が揺れる。そんな彼女を見て思わず生唾を飲み下したシンは一旦心を落ち着かせ、書庫で本を読み漁ることに、台所を後にした。

 

 書庫でしばらく本を読み漁っていたシンは、久しぶりの読書でつい時間を忘れて没頭していた。

 

 料理が出来たことを知らせに来たロクサーヌは、そんなシンの姿を見て思わず呆けてしまう。だが、ロクサーヌが来たことに気づいたシンが彼女に微笑んで見せた時、完全にロクサーヌのハートはシンの微笑みで撃ち抜かれた。「ずるいです、シンさん.......」と口元を隠し、細々と口にしたロクサーヌ。何故ロクサーヌが照れているのかわかっていない様子のシンだったが、それでも彼女に対する愛おしさを感じ、軽く口付けをした後、二人は食事をしに書庫を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、久しぶりにロクサーヌお手製のシチューを口にしたシンは、あまりの美味さに思わず涙をぽろぽろ溢し、鍋いっぱいに作られたシチューを残さず平らげた。

 

 

「久しぶりのまともな食事、それもロクサーヌが作ったシチュー.....これだけでも大迷宮攻略した甲斐があったと思ってしまうなぁ」

 

「ふふ、大袈裟ですよシンさん。でも、美味しそうに食べてくれる姿を見るとやっぱり嬉しいです」

 

「実際ロクサーヌの料理は美味い。俺の胃袋はもうロクサーヌに掴まれてるな..........さてと、腹も満たされた事だし風呂にでも入るか!」

 

「庭園に露天風呂があるんですよね?」

 

「ああ、氷で出来た露天風呂だ。浴槽は広いし、外観や景色も綺麗なところだったよ。久しぶりに体を洗いたかったから願っても無い代物だな.............その、なんだ......一緒に入らないか、ロクサーヌ.....?」

 

「ッ!?.......よ、よろしいのですか.....?」

 

「いいに決まってるだろ。正直、もう我慢の限界だ......いいよな?」

 

 

 なんの我慢?と聞くのは無粋だろう。

 

 ロクサーヌはシンの意図を察し、赤面した顔でコクリと小さく頷いた。そんなロクサーヌを見てシンは彼女の手を引き、そのまま庭園の氷の露天風呂に直行した。

 

 庭園にある純氷で作られた広い円形の浴槽。どういう原理か定かでは無いが、常に適温が保たれたお湯が張られており、そのお湯が湧き出る竜の頭を模した氷の蛇口から綺麗なお湯が注がれている。

 

 そんな浴槽に入れば、眼前に広がる神秘的な氷の竜の彫像や地面に張り巡った水の上にかかる氷の橋、まるで橋が架けられた孤島の様に水面に浮かぶ茶会が開そうな西洋風あずまや。

 

 開放感のある造りが凝った浴槽に、それに見合うだけの庭園の風景。それら一つ一つを取っても一級の芸術品と言って差し支えない程だった。

 

 そんな芸術的空間の中で、シンは開放的に衣服を全て脱ぎ去り湯船に使っていた。

 

 シンの鍛え抜かれた肉体とそこに刻まれた歴戦の古傷が露わにされた中、彼は期待を胸にその時を待っていた。

 

 

「し、失礼します........」   

 

「お、おう.......」

 

 

 一糸纏わぬロクサーヌがシンの隣に入浴した。

 

 ロクサーヌは自分の大事なところを両手で恥ずかしそうに隠し、骨身に染みるお湯加減を感じて「ぁんっ」と艶めかしい声を上げた。隣でそんな声を聞いたシンが元気になった。

 

 この大迷宮攻略でお互いに疲労が溜まっていたのだろう。その発散にこのお湯加減は端的に言って最高だった。

 

 何より、こうして愛しい相手と一緒にまったり浸かる湯船が二人の幸福感をより高めた。

 

 そしてシンは隣にいるロクサーヌの肩を抱き、自分の方に引き寄せた。

 

 

「ロクサーヌ、お前がいたおかげで俺はここまで来れた。色々あったが心の底からお前の存在に感謝してる.........愛してる、ロクサーヌ」

 

「私もシンさんに感謝しています。貴方と出会えた事、貴方と戦えた事、それにこれからも貴方の隣で歩める事を心から嬉しく思います.......私も愛しています」

 

「ロクサーヌ......」

 

「シンさん.........んっ....ぁはぁ、ちゅ....はむ、んっ......」

 

 

 程よく暖かい湯船に浸かりながら、情熱的な口付けを交わす二人。お互いの肌が密着し合い、まるで湯船の熱でお互いの体が溶け合う様な錯覚を覚える。軽く触れる様な口付けから、唇を(ついば)む様な甘噛みの接吻、お互いの唾液を絡め合う様な舌同士のディープなキスなど、愛しい相手にその唇と舌で愛情表現をしていた。

 

 一頻りお互いの唇を堪能した二人。

 

 ロクサーヌはシンの鎖骨辺りに頭を預け、そんなロクサーヌの頭にシンは自身の頬を当て、目の前の景色を眺めていた。

 

 

「凄く綺麗ですね......」

 

「ああ。こんな風景は滅多に拝める物じゃないが、俺の国が出来た暁にはこういう開放的な浴場を作るのもありだな」

 

「いいですね!完成した際にはまたこうして一緒に入りましょう」

 

「もちろんだ......」

 

 

 シンの体に寄り添うロクサーヌと、そんな彼女を抱き寄せながら口にするシン。

 

 その後、じっくり湯船を堪能した二人は風呂から上がり、体から滴る水滴を適度に拭き取り、体にタオルを巻き付けた。そんなロクサーヌの姿を見たシンはもはや我慢の限界だったらしく、ロクサーヌをお姫様抱っこで寝室に強制連行し、彼女から許可を貰って一晩中愛し合った。のちにロクサーヌは頬を赤らめながらこう語る、「あれは竜です。勇者が強大な敵に立ち向かう気持ちが今ならわかります.....」と、そして勇者には強力な仲間が必要なのだと口にしたそうだ。

 

 

 

 ...........

 

 .....................

 

 ..............................

 

 

 

 二人が情熱的な契りを交わしてから数十日が経過した。

 

 その間に二人は様々なことに着手した。

 

 書庫にある本で知識を蓄え情報共有をしたり、戦闘訓練をしたり、愛を確かめ合ったり、獲得した技能や魔法の実験をしたり、愛を確かめ合ったり、新しい技能や魔法の獲得に挑戦してみたり、愛を確かめ合ったりなどをしていた。決して遊んでばかりではなかった事だけは保証しよう。ただ、ちょっとばかし所構わず情事に励んでいた事には反省している二人であった。

 

 そんな事がありつつも、二人はこの数十日間でかなりの成長を遂げていた。

 

 シンは白い要が自分の体を乗っ取っていた際、手当たり次第獲得していた技能を把握する事やそれを使いこなす事にも励みつつ、精霊(ジン)の宿る金属器を使いこなす事に勤しんでいた。だが金属器を扱うにはまだまだ修練が足りないらしく、今一番まともに扱える精霊(ジン)の力はバアルとフェニクスだけである。しかし、その代わりと言うにはあれだが、力魔法の扱いはかなり上達し、神代魔法の一つ変成魔法はシンと相性が良かった。付与魔術師としての力量もかなり成長していた。

 

 一方のロクサーヌはその速さと剣技に、より一層の磨きをかけていた。ロクサーヌが元々持っていた愛剣は破壊されてしまったが、この氷雪洞窟最奥の邸宅には様々な武具が保管されていた。それらを使い自己鍛錬をしたり、時にはシンと試合をしたり、大小様々な剣を扱える様に特訓をしていた。[豪脚]の派生技能を幾つか習得し、彼女のスピードはより洗練させている。その速さはまさに雷速。それこそシンが瞬光を使わなければ反応するのが難しい程に成長をしていた。

 

 そして二人は今邸宅の外にある氷の神殿風建造物、つまりシン達がこの氷雪洞窟の最奥にやってきて最初に見た場所へと戻ってきていた。

 

 

「ようやくですね」

 

「ああ。ようやく俺達の冒険を始められる.....!」

 

 

 最初にこの場所に訪れた時とは装いが違う二人。

 

 シンはロクサーヌが見立てた金細工が施された白い衣装に身を包み、七つの金属器を身につけている。他にも金の耳飾りや銀の首飾りを身に纏い、長い髪を纏める銀の髪留めをつけている。髪留めで纏めきれなかったシンの長く少し癖のある襟足の髪は首元から体の前に垂れ下がっている。

 

 その姿は威風堂々とした佇まいで、まさに一国の王と思わせる姿だ。

 

 一方ロクサーヌもここに来た時とは衣服が違う。

 

 以前着ていた緑色のベストやピッチリしたレギンスパンツはボロボロになり、今は邸宅で見繕った服装を身に纏っている。

 

 襟のついた白色のノースリーブに、濃紺のベリーショートパンツ、黒のサイハイブーツ姿。首元には今のシンの髪色によく似たスカーフを巻いている。そして何より目を引くのが、がっつり丸見えなロクサーヌのヘソと中途半端に締めたノースリーブから稀に見える下乳である。ロクサーヌ曰く、『大事なところは絶対に見えないので大丈夫です!』との事だが、違う、そうじゃない。

 

 ロクサーヌの引き締まった魅力的なウエストに、暴力的な胸部が生み出す健康的な下乳。それもロクサーヌという超絶美人がこんな格好をしていたら、すれ違う男全員が四度見ぐらいはするだろう。

 

 似合ってはいるが心配になったシン。

 

 だがシンから似合っていると言われ、余程嬉しかったのかロクサーヌはとびっきりの笑顔を浮かべた。そんなロクサーヌの表情を見ては、もはや何も言えなかったシン。ちなみに、つい褒められた事で調子に乗ったロクサーヌがその格好でシンを誘惑した結果、見事に返り討ちに遭い、シンに美味しくいただかれたそうだ。

 

 とまぁ、そんなこんなで二人は新たな装いと決意を胸に神殿の床に刻まれた魔法陣に立った。

 

 すると攻略の証として手に入れた水滴型のペンダントが反応し、魔法陣が発光し出した。

 

 そして、眼前にある神殿の下の地面に張り巡らされた水が凍り出しそれが巨大な卵形の氷解に形成された。

 

 それがビキビキッ!と音を立て氷の卵が割れた後、中から出てきたのは氷で出来た竜だった。その竜は長い首を二人の前に差し出し、背中に乗るよう指示する態度を示した。

 

 

「ははは!これはまた、粋な事を考えたものだ!」

 

「私、竜の背に乗るなんて初めてです.....!」

 

「俺もだよ。開幕の合図に最高の演出だよ、まったく」

 

 

 これからの冒険により一層期待で胸が膨らむ二人。しかし、この先待ち受けている他の大迷宮でなんとも言えない気持ちに塗り変わって行く二人なのだが、それはまだ先の話。

 

 二人を背に乗せた氷竜はその翼をバサッ!と大きく広げはためかせると、上へと飛翔した。

 

 そして天井とぶつかる寸前、天井の氷が溶け出し、円形の通り道が出来上がり、その通り道を止まる事なく氷竜が抜けていく。

 

 円形の通り道を抜け外に出たが、氷竜はさらに上昇し、分厚い雪原の雲も飛び越えた。

 

 その先で二人が見たのは、分厚い雲の世界を照らす朝焼けの眩しい光景だった。思わず二人は歓喜の声を漏らす。のぼり始めている太陽の暖かさが二人の体を優しく温め、照らし出す。

 

 そんな景色を見せてくれた氷竜は雲海の上を飛翔し、太陽の方角から見て北西に向かって飛んでいた。

 

 

「シンさん、このままだと師匠の家から遠ざかってしまいます!」

 

「ああ、少し名残惜しいがこの氷竜とはここでお別れだな。行くぞ、ロクサーヌ!」

 

「はい!」

 

 

 二人は手を繋ぎ、氷竜の背から飛び降りた。

 

 しかし、そのまま落下する事はなかった。シンの力魔法によって二人は雲海の上でシンの虹霓の魔力光に包まれ、その場で停滞していた。

 

 

「ありがとなぁ〜!氷の竜!」

 

「いい景色を見せてくれてありがとうございま〜す!」

 

 

 二人はここまで連れて来てくれた氷竜に手を振り、感謝の言葉を伝えた。

 

 それに応えるかの様に氷竜は咆哮を上げると、バサッ!と翼をはためかせ、雲海の下へと潜っていった。その際、二人に対して最後の祝福を送るかの様に、氷竜が通った道に残った細氷が朝焼けで照らされ、キラキラと輝き、綺麗な道となっていた。

 

 本当に粋な事をするなぁ、と思ったシン。

 

 大迷宮内での試練の内容は少し嫌らしかったが、それでも芸術的な面では最高の物を見せてもらった。

 

 ヴァンドゥル・シュネー。氷雪洞窟最奥の邸宅で知った解放者の一人で、あの大迷宮の創設者。

 

 

「あんたに敬意を表するよ、ヴァンドゥル・シュネー......」

 

「行きましょうシンさん。師匠に攻略の報告をしませんと」

 

「そうだな......行くぞロクサーヌ!手を離すなよ?」

 

「はい、絶対に離しません!シンさんこそ、勢い余って手を振り解かないでくださいね?」

 

「何言ってんだロクサーヌ。俺がお前の手を離すわけないだろ?........さあ、行くぞロクサーヌ!ロバートさんに聞きたいことや、報告しないといけない事がたくさんあるんだからな!」

 

「はい!」

 

 

 そうして二人はロバートが待つシュネー雪原の山脈地帯にある隠れ家へと飛んで行った。

 

 彼らが通った雲海上の空には、虹霓の光が尾を引いて残っており、まるで二人がこの先辿るであろう道の軌跡の様に見えた。

 

 

 






補足


『要進が所持する金属器』

【刀剣】
・メルドから貰った刀剣に〝バアル〟が宿っている。

【短剣】
・リリアーナからの贈り物である短剣に〝フェニクス〟が宿っている。

【銀のタリスマン】
・ロバートから貰ったタリスマンに〝アガレス〟が宿っている。

【銀の腕輪】
・園部優花に贈り物をした際、一緒に購入した首飾りを加工し直した物。シンの右手首にある銀の腕輪に〝フォカロル〟が宿っている。

【赤い宝石の指輪】
・新たに身につけた指輪。シンの右手中指に嵌められており〝ゼパル〟が宿っている。(シンドバッドの金属器と大体同じ)

【金の腕輪】
・新たに身につけた腕輪。腕輪と言うより、腕の防具の様に大きく装飾が凝らされた手甲の様な銀の腕輪。左手首に身につけており〝クローセル〟が宿っている。(シンドバッドの金属器と大体同じ)

【金の首飾り】
・三つの赤い宝石が付いた金の首飾り。楕円形の黄金が連なった様な首飾りで〝キマリス〟が宿っている。(シンドバッドが身につけている金の首飾りと大体同じ感じ)



『シンが新しく身につけた予備の装飾品&衣装』

「金の耳飾り」
・金の細い円柱状の棒を円形に丸めた一対の耳飾り。(シンドバッドが身につけている物と大体同じ物)

「銀の首飾り」
・金の首飾りより断然サイズが大きい銀の首飾り。大きめの青い宝石が埋め込まれ、三日月型の金板やボールチェーンなどが付けられている代物。(シンドバッドが身につけている物と大体同じ)

「銀の髪留め」
・筒型の銀の髪留めで、緑色の小さな宝石が埋め込まれ、幾何学的模様が刻まれた物。これでシンは長い髪を束ねている。(オリジナル)

「シンの新しい服装」
・全身白で統一された服装。所々に金の装飾が施されている。
(原作マギの単行本第29巻の表紙に描かれているシンドバッドの服装と大体同じ。ズボンは白の袴っぽい物に変えてます)



『ロクサーヌの新しい服装』

「ロクサーヌの新衣装」
・黒のカチューシャはそのまま。襟が付いた白のノースリーブに、青寄りの濃い青紫色のスカーフ、濃紺のベリーショートパンツ、黒のサイハイブーツを着ている。(ゴッドイーター2のアリサの服装に近いものをイメージしています。流石にスカートは違うかなと思ったのでショートパンツに変更しました)





次回から第二章開幕です。
新キャラ続々登場。シンの隣にはやっぱり赤い髪が必要だなと思います。

ヒロインとのR18シーンの短編作品はありorなし

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