ありふれた職業で世界最強〜付与魔術師、七界の覇王になる〜   作:つばめ勘九郎

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 未開の大陸“カタルゴ”で出会った赤獅子達。
 
 彼らとの出会いはこれからのシンの冒険にとって必然だったのかもしれないーーーーーー。




王と赤獅子

 

 未開の大陸カタルゴにやって来たロバート、シン、ロクサーヌの三名。

 

 そこに遥か太古から住まう知性を持った魔物“赤獅子”。ロバート曰く、赤獅子は今まで出会って来たどの魔物よりも強大な戦闘力を有しているらしい。魔力量は少ないが、魔法耐性が高いうえに強靭な肉体と硬い鱗、圧倒的な身体能力で狩りを行う。

 

 道中その狩りの様子を見せてもらったのだが、カタルゴに着いてすぐは確認できなかった他の魔物達は赤獅子と同様の巨体を有していた。

 

 王都にいた頃に冒険者をやっていたシンでも驚く程の巨体と規格外な能力を持つ魔物ばかり。そんな原生する魔物達をいとも容易く蹂躙する赤獅子。ハッキリ言って、赤獅子はオルクス大迷宮で遭遇したベヒモスが霞む程の強さだった。今のロクサーヌでも正直勝てるかどうか怪しいぐらいだ。

 

 そんな赤獅子達と出会ったシン達一行は現在、赤獅子達と共に彼らが生活している里へと向かっていた。

 

 

『ほんとに浮いてるーー!』

 

『シンすごいすごぉーい!』

 

『なぁなぁ。人間なのに何でシンってそんなに力があるんだぁ〜?』

 

『シンはファナリスなのか〜?戦士なのか〜?』

 

「俺はファナリスでも、戦士でもないぞ〜?それよりさっきから頭を噛んでるのは誰だ〜?」

 

『私ぃ〜!ガジガジ....』

 

「やめろクポン。お前もチックみたいに放り投げるぞ〜?」

 

『投げて投げて〜!!』

 

「何でそこで喜ぶんだよ。あーらよっとォッ!」

 

『キャ〜〜〜!!』

 

『俺も俺も!』

 

『ペールも投げて〜!』

 

 

 シンは早速、赤獅子の子供達と仲良くなっていた。

 

 シン達がここに来たのを珍しそうに見ていた赤獅子の子供達(体長五メートル強)はシンとロクサーヌに興味津々だった。だがその巨体で人間相手に(じゃ)れ付かれるとひとたまりもない。

 

 そこでシンは身体強化と[力魔法]で赤獅子の子供達の牙や爪を防御し、手始めに子供達でお手玉をして見せたのだ。やられている赤獅子の子供達はワーキャーと楽しそうな声をあげ、そんな事を続けているうちに放り投げる事を前提とした遊びが確立してしまった。赤獅子は子供でも丈夫ならしい。

 

 今シンの周りにいる子供達は五匹。シンの頭をガジガジと噛んでいたのは“クポン”。クポンの前に放り投げたのが“チック”。最後におねだりして来たのが“ペール”で、絶賛力魔法で宙に浮かせている二匹は“ミュロン”と“ムー”である。

 

 あしらっているとは言え、体長五メートル以上の魔物の子供を相手に奮闘するシンは平然としていた。その上、久しぶりに子供と遊んでいる事を実感しているのか意外と楽しそうにも見える。しかし、側から見ていたロクサーヌとロバートは段々シンの姿が赤獅子の子供達で埋め尽くされていくのを見て戦慄していた。

 

 ちなみにシンがクポン達から聞いた話によれば、赤獅子が種族としての名称で、ファナリスは戦士として認められた者に与えられる名前らしい。

 

 

「あ、あの、師匠.......シンさんが.......!」

 

「放っておけ。お前があの輪の中に入ったらひとたまりもない。あいつなら大丈夫なはずだ」

 

「で、ですが........」

 

 

 何とも微妙な表情を浮かべシンを心配しているロクサーヌ。そんなロクサーヌに対してロバートは彼女の事を考えた上で言葉を口にした。

 

 実際、ロクサーヌがあの輪の中に入ればひとたまりもないだろう。未だに子供達をポンッポンッ、ホイホイ、と放り投げているシンが異常なのだ。それも無傷で。

 

 子供達がはしゃいでいる姿を見て、彼らの親御さん達は大満足な様子。

 

 そんなこんなで、到着した彼らの里。

 

 里と言ってもそこに彼らの家が建っているわけではなく、綺麗な水場に囲まれた大きな岩山を切り崩した崖に巣穴を掘っており、そこが彼らの寝床らしい。

 

 そして彼らの中で最も強い雄がその岩山の天辺に巣穴を作り、雌を何匹か囲っているそうだ。つまり彼ら赤獅子達をまとめる群れのボスだ。

  

 そんな群れのボスに会う為、シン達は幅の広い川を渡り、岩肌を登っていきボスのいる頂上に到着した。

 

 

「かなり登りましたね」

 

「ああ。それにしても、ここからの眺めは絶景だな」

 

「ですね......」

 

 

 シンの言う通り、岩山の頂上から眺める景色は圧感だった。燃える様な赤銅色の岩山と大地が続く地平線、所々に点在する水場やそれを囲う様に生い茂る奇天烈な植物、空はとても高く、吹き抜ける風は今までで体感したどんな風よりも清々しかった。

 

 そんな光景を目にしていた二人は自然と肩を寄せ合い、目の前の光景と風を体に覚え込ませる様に浸っていた。

 

 そして三人は群れのボスの所にやって来た。

 

 

『今回は早かったな、ロン。まだひと月も経っていないだろうに』

 

「どうしてもお前に会わせておきたい奴がいたんだ、レグルス」

 

 

 “レグルス”、それが赤獅子達をまとめる群れのボスの名前らしい。群れのボスと言うだけあって、その身に纏うオーラはまさに歴戦の王と呼ぶに相応しい貫禄があった。他の赤獅子達より一回り大きい体とそこに刻まれた無数の傷跡。威風堂々とした振る舞いはどことなくロバートに似ている様にも思えた。彼はその巨体を地面に伏せ、(くつろ)いだ状態のまま片目だけを開いてロバートに話しかけている。

 

 だがレグルスはロバートの言葉を聞き、その視線をシンに移した。

 

 

『そうか、そこにいる人間の雄が“例の異世界からやって来た男”か。我々の悲願を成就させる為の鍵となる存在........。膨大な魔力を感じる.....そこのお前、名はなんと言う?』

 

「シン、要進だ」

 

『シン.......そうか、お前が“特異点」なのだな』

 

「ッ!?あんた、特異点を知ってるのか!?」

 

『知っているとも。我ら赤獅子の中でも群れの長が“ファナリス”の名と共に代々祖先から受け継いできた唯一の言い伝え、時代の変革者を指す言葉だ』

 

「時代の、変革者.......」

 

『そうとも。我らの宿命であり悲願、“神殺し”を成す存在。それが変革者であり、特異点だ。そして我ら赤獅子はその者を王と仰ぎ、助力する』

 

 

 レグルスの言葉を聞いてシンは、ある可能性が頭に浮かんだ。もしかすると赤獅子の先祖は()()()()からやって来た存在なのではないかと。そして、[特異点]とはこの世界で由来の力では無いかもしれないと言う可能性を。

 

 この世界にやって来た時からずっと疑問であった、自身のステータスに刻まれた[特異点]。それを知っていた()()は全く居なかった。しかし、シンが持つ特異点を一番理解していたのは精霊(ジン)達で、彼らはこの世界の住人ではない。そして、特異点の事を知っている様なそぶりを見せた真の神の使徒“ノイント”。ノイントを創造したであろう偽りの神エヒトもまた、元々はこの世界の存在ではない。

 

 つまり[特異点]を知る者はこの世界由来の存在では無く、[特異点]もまた別の世界が生み出した力、或いは名称なのではないかとシンは考えた。

 

 だが確証はどこにも無い。

 

 精霊(ジン)達からこれ以上の情報は得られなかった。まるでその先を口にする事を憚る様に『今はまだ話せない』の一点張りだった。

 

 レグルスの口ぶりから察するに、彼もこれ以上の情報を持ち合わせていないのだろう。口伝にせいで情報が欠落したか、或いは意図的に伝えなかったか。

 

 どちらにしろこれ以上の情報は得られない。今考えたらところで仕方がない事なのだろう。

 

 だが、シンは最後にもう一つの疑問が浮かび上がった。

 

 

(母は確かに地球生まれの日本人だった。だが父は一体.....。俺は、本当に()()()()()なのか.......?)

 

 

 一体、自分は何者なのか。

 

 疑問が疑問を呼ぶ。

 

 だが、さっきも言った様に今考えても仕方がない話だ。

 

 自分が何者かなど大迷宮を攻略し、精霊(ジン)達を従えたあの時から決まっている。

 

 シンはレグルスの前に歩み寄り、魔力を解放し覇気を解き放った。

 

 虹霓の光が辺り一帯を優しく照らし、見る者全てを魅了した。

 

 

「レグルス、お前が俺を王と呼ぶなら是非とも俺の夢のために力を貸してくれ」

 

『夢......。それは神殺しのことか?』

 

「少し違う。俺の夢は世界を変える事、そしてその先駆けとなる国を創る事だ。人間や魔人族に亜人族、そして魔物すら巻き込んだ世界初の国の創設。神殺しはあくまでそのついで。偽りの神エヒトは俺の夢の前では邪魔でしかないからな」

 

『多種族だけで無く魔物も?それはあまりに荒唐無稽な話ではないのか?』

 

「そうとも言えないぜレグルス。何せ、俺はすでにそれを揃えているからな」

 

 

 シンが後ろに視線を向ける。それに倣ってレグルスも視線をシンの後方へと向けた。

 

 そこには“亜人族”のロクサーヌと“魔人族”のロバートが立っていた。ロクサーヌはシンの視線を受け硬い決意を宿した瞳をしており、ロバートはシンの視線を受け鼻で笑いながらも満更ではない様子だった。

 

 そしてシンの懐にいた雪蛇の“魔物”バウキスも空気を読んでその顔を出した。

 

 それらを見てレグルスは納得した様子で口角を上げた。

 

 

『なるほど。お前の言う通り、すでに揃っている様だな.....』

 

「ああ。だからレグルス!俺の夢のため、お前達赤獅子の悲願のためにも、俺に協力してくれ。俺はお前達の力も必要だ。俺と一緒に世界を変えようじゃないか!」

 

『ッ........!?』

 

 

 シンの言葉を聞いた瞬間、レグルスは衝撃を受けた様な感覚を覚え、長年渇き切っていた心を熱く滾らせた。

 

 

(なんだ、この胸の高鳴りは......!それにこの魔力......!これが、これこそが王の器たる証明なのか!?)

 

 

 レグルスは今までの長い生で感じ事がない存在感と魔力の奔流に圧倒され、シンという眩しい光を前に唖然としていた。

 

 

(嗚呼......きっと、これこそが我らの先祖が待ちに待った瞬間なのだ.......!私もこの男について行きたくなる!そして、シンが目指す未来を共に見てみたい......!)

 

 

 この瞬間、レグルスは真の意味で彼を王と認めた。

 

 それを示す様にレグルスは体を起こし、しっかりと両眼で彼を見据え、頭を下げた。その姿を見た周りの赤獅子達もレグルスと同じ思いだったのだろう。彼らもまたレグルスに倣って同じ様な態勢を取った。

 

 

『我ら赤獅子一族及び“ファナリス”はこの瞬間よりお前を主と認め、ここに忠誠を誓う』

 

 

 一斉に赤獅子達がシンに向かって平伏したため、ロバートは驚いていた。ロクサーヌはどこか誇らしげな表情を浮かべシンを見つめており、その瞳がうっとりとしていた。

 

 一方のシンは仰々しく平伏された為か、戸惑いながら覇気を解いた。

 

 

「おいおい、そんな畏まった態度はしなくていいんだぞ?俺を敬ってくれるのは嬉しいが、俺とお前達は同志であり“友”なんだからもっと気軽に接してくれ。俺はそういう奴だからな」

 

『そうか。我らは“友”、か.........。ならばそうしよう。我らが友シンよ』

 

「ああ、そうしてくれ!」

 

 

 シンは顔を上げたレグルスに笑って見せた。

 

 

『フッ。ロバートの言う通り、お前は不思議な男だ.........ロバートよ、この後はどうするのだ?いつもの様に()()()()の元へと行くのか?』

 

「ああ、そのつもりだ」

 

『そうか。ならば私も行こう。シンとはもう少し話したいからな、私がお前達を背中に乗せて送ってやろう』

 

「ッ!?」

 

「おお!赤獅子の背に乗れるのか!実はずっと乗ってみたいなぁ〜って思ってたんだよ!」

 

「シンさん、はしゃぎすぎですよ?」

 

「ロクサーヌは乗ってみたくないのか?」

 

「ぅ〜〜.....それは確かに、私も少しは乗ってみたいなぁとは思ってましたが......」

 

「ならいいじゃないか!頼むぜ、レグルス!」

 

『フッ。ああ、任せておけ』

 

 

 赤獅子の背中に乗れるという事で大興奮のシン。それを嗜めるロクサーヌもなんだかんだで楽しそうにしていた。そしてそんな二人の姿を見て笑みを溢すレグルス。

 

 何気ない会話の様に聞こえるが、ロバートは心底驚いていた。

 

 

(あのレグルスに、ここまでさせるのか.......!?)

 

 

 レグルスは赤獅子の中でも最強と呼ばれる“ファナリス”一番の戦士であり、群れの長だ。そんな彼にだって誇りがあり、ましてや出会ったばかりの他種族を背中に乗せるなんて事は絶対にしない。その根拠はロバートが彼の背に一度も乗せてもらった事がないためであり、レグルスが今までで背中に乗せた()()()()()を知っているからだ。

 

 そんな思い出やレグルスの誇りを知っているからこそ、ロバートは驚き、それと同時にシンへの期待をより一層際立たせた。

 

 

(シン.......やはりお前は(アイツ)と同じなのだな。俺達が果たせなかった夢の続きを、シンが描こうとしているーーーーーーならば俺は、最後に.........!)

 

 

 ロバートは決意を固め、最後の大仕事を果たすべく歩き出した。

 

 

「師匠、どこに行くのですか?」

 

「俺は戻る」

 

「「ええ〜〜!!」」

 

「ここから先はレグルスに任せておけば大丈夫だ。()()()の事もよく知っているうえに、事情も把握している」

 

「いやいや.......そもそも戻って何するんですか!?」

 

「まだ作りかけのアーティファクトの仕上げをする。()()()()()()()()()だろうからな。お前達が旅をするためにも必要な事だ」

 

「で、ですが........」

 

「レグルス、後は頼むぞ?()()には俺からすでに伝えてある」

 

『.........わかった』

 

 

 そう言うとロバートはさっさと来た道を戻って行く。シンの懐にいたバウキスが顔を出してロバートを追いかけようとしたが、ロバートはそれを制し、シンのそばにいる様に告げた。

 

 

(どうしても行くのか、ロバート?)

 

(ああ、これが俺の()()らしいからな。やる事はすでにやり終えてる。頼むぞ、レグルス......!)

 

(...........わかった。お前はお前がなすべき事を全力で果たせ!)

 

(フッ、言われずともそうするさ.........)

 

 

 ロバートとレグルスは他の者に聞かれない様に[念話]で会話をし、別れを告げた。

 

 立ち去って行くロバートを背中を見つめるシンとロクサーヌ。カタルゴからの帰り方はすでにロバートから聞いているので、問題なく隠れ家に帰還できるので大丈夫だろう。

 

 ロクサーヌは溜息を吐き、若干ロバートの性格に呆れつつも微笑んで見送った。シンは少し嫌な予感を感じたが、いつも通りの様子なロバートだったため特にその事を気に留めず、苦笑しながら遠ざかって行くロバートの背中を見守った。

 

 シンの懐に戻って来たバウキスはそれ以降外に出てこなかった。

 

 

『さて、では向かうとするか』

 

「そういえば聞いていませんでしたが、今から向かう場所というのは一体........?」

 

「そういえばそうだな。レグルスの背中に乗れるって事で頭が一杯だったが、どこに行くんだレグルス?」

 

『うむ。今から向かう場所はここから西南の方角にある魔人族の里だ』

 

「魔人族!?」

 

「魔人族がこのカタルゴに住んでるんですか!?」

 

『ああ。こことは違い、一面自然に囲まれた場所であの者達はひっそりと暮らしている。お前達が知っている魔人族とは違い、戦争を良しとしない穏健派だそうだ』

 

「そんな魔人族もいたんですね.........」

 

「言われてみればそうだな。戦争を良しとするのが過激派なら、それに反対する勢力も存在する。つまり穏健派が居るのは当然か.......」

 

『ロバートはその穏健派達のために、たまにここに来ては制作した魔道具を提供しに来ていた』

 

「ああ!だから師匠はたまにいなくなってたんですね!」

 

「で、その里長はなんて言う人なんだ?レグルス」

 

『カマルだ、カマル・ダストール』

 

 

 カマル・ダストール。それが穏健派を束ねる魔人族の里長らしい。

 

 そんな彼とこれから会いに行く二人は、レグルスの背に飛び乗り、レグルスはその巨体を起こした。

 

 

『私はシン達を里に連れて行く。私が留守の間は残っている戦士達でここの守りを頼むぞ』

 

『親父!!』

 

 

 いざ魔人族の里へ行こうとした時、レグルスに向かって声をかけた赤獅子がいた。

 

 その赤獅子は、シンがカタルゴについた時に見かけた赤い立髪を顔の前に垂らした奴だった。目はよく見えないが、立派な体付きをしており、どことなくレグルスに似ている様にも見えた。

 

 

『息子か、なんだ?』

 

『お、俺も.....!俺もついて行ってもいいか?』

 

『..........構わん。ちょうどもう一人は欲しいと思っていたところだ。それに()()()()()()お前がついて来ても問題ないだろう。だが、遅れる様ならそのまま置いて行く。それでも構わないな?』

 

『あ、ああ!!』

 

「レグルス殿、彼は?」

 

『あれは私の息子“レオニス”だ』

 

「へぇ〜、息子か!お前と同じでいい名前じゃないか!」

 

『だが彼奴(あやつ)()()()()()()。頑なに戦士の儀式をサボり、フラフラと何処かに行くわ、ファナリスの名も受け継ごうとしないのだ.........身内として恥ずかしい思いだ.....』

 

「あはは.....苦労してるんですね......」

 

「ザボリ魔ねぇ.......まぁ、里に向かう仲間なんだ。短い道中かもしれないが、よろしくなレオニス!」

 

『ああ!よろしく頼む!』

 

『では行くぞ!』

 

「「おお!(はい!)」」

 

 

 そうして走り出したレグルスと、それについて行くレオニス。

 

 流石は赤獅子最強の男というだけあって、レグルスの走る速度は尋常ではなかった。背中に乗っている二人にかかる風圧は暴力的だった。しかし、そんな風圧もシンにかかればなんのその。力魔法によって向かってくる風を全て逸らしていた。

 

 レグルスの話だと、このまま行けば数時間で魔人族達が住まう里に到着する様だ。

 

 こうして始まった二人と二匹の短い旅。

 

 シンとロクサーヌはレグルスの背中の上から見える景色を堪能しつつ、赤銅色の大地を駆け抜けて行った。

 

 





補足


『新しい登場人物』


「レグルス」
・正式名称は[レグルス・ファナリス]。赤獅子達のまとめ役にして、歴戦の戦士。サラサラで長い赤髪を持ち、身体中に古傷を刻んでいる。赤獅子達の中でも一回り大きな体をしており、複数の雌を囲っている。息子の名前は“レオニス”で、いつまでも戦士にならない彼が悩みの種。大昔に“赤竜”と戦った事があるらしい。


「レオニス」
・レグルスの息子。レオニスとは違い、巻き気味な髪質をしている赤獅子。体つきは普通の赤獅子と同じだが、どことなくレオニスに似た雰囲気を持っている。戦士になりファナリスの名を継ぐ事を頑なに拒んでいる自由奔放は赤獅子。


「赤獅子の子供達」
・クポン......赤獅子の女の子。イタズラ好きで気に入った相手を噛む癖がある。
 チック.......赤獅子の男の子。一番最初にシンに放り投げられた子供。
 ペール........赤獅子の男の子。珍しい物に興味津々な好奇心旺盛な子供。
 ミュロン.......赤獅子の女の子。将来は立派な戦士になる事。
 ムー.......赤獅子の男の子。ミュロンの兄。他の赤獅子の女の子と仲が良い。


「カマル・ダストール」
・穏健派の魔人族を束ねる里長。(web版原作アフターストーリーに登場したキャラです。気になる方は“ありふれたアフターストーリーⅤトータス旅行記”をご覧ください)



「赤獅子達の棲家」
・イメージはアメリカの観光地“アンテロープ・キャニオンです。ぜひググって見てください。


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