ありふれた職業で世界最強〜付与魔術師、七界の覇王になる〜 作:つばめ勘九郎
私の拙い文章を読んでくださる方々にご報告致します。なんとお気に入り登録者数が500人に到達しました!
今まで誤字報告をしてくださった方々、気軽に感想を送ってくれた方々にも、感謝の言葉を表したいと思います。本当にありがとうございます。
これからも引き続き「ありふれた職業で世界最強〜付与魔術師、七界の覇王になる〜」を読んで頂けると幸いです。
はい。というわけで今回も毎度恒例の書き過ぎ案件です。
最近は特に酷い。明瞭で簡潔に、と心掛けておきながらこのザマ。
前回登場した“葉っぱのシン”。元ネタがわからない方は是非「七海の葉王」と調べてみてください。
シンが葉っぱ全裸で園部達と再会する二時間と少し前。
ライセン大迷宮からお空に放り投げられたシン達はブルックから少し離れた泉に向かって落下していた。その際ミレディは三人に重力魔法を掛けていたらしく、泉に着水する直前で一度落下する三人の体が急停止。しかし結局泉に落とされ、シン達はずぶ濡れになったのだった。
落ちた泉の中心からブクブクと泡が立ち、しばらくした後、三人はシンの[力魔法]で水中から飛び出し、泉の畔に着地した。
「ミレディめ、わざと泉に落しやがったな。次ライセン大迷宮に行った時、迷宮内を壊しまくってやる..........」
「ええ。その時は私も手伝います、レオニス..........」
「あ〜あ。一番敵に回したくない二人を敵に回したなぁ、ミレディの奴..........」
静かに怒りの炎を燃やすレオニスとロクサーヌ。空を飛ぶのは構わないが、泉に落とされた事にはご立腹の様子。そんな二人を横目で見ながら、シンは濡れた服を搾っていた。
その後、濡れた服を乾かすために新しい服に着替えたシン達はブルックに向かう前に長めの休憩を取ることにした。[空間掌握]で自分達が居る場所を把握したシン、どうやらここはブルックから少し離れた西南西に位置する泉のようだ。
そんな泉の畔でシン達は食事を摂る。献立はホロホロ鳥の香草焼きをパンに挟んだバケットサンド、勿論調理したのはロクサーヌ。ホロホロ鳥の肉やパンは魔人族の里で調達した物で、特にパンは〝表大陸〟の物と違い、サクサクでもっちりした食感が堪らない逸品なのである。ちなみに〝表大陸〟とは今シン達が居る大陸、仮称“トータス大陸”の事で、その対となる〝裏大陸〟は“カタルゴ大陸”を指す。ミレディとの話し合いで今後はそう呼ぶことに決まった。
食後は優雅にティータイム、勿論レオニスが大好きな焼き菓子も添えて。その後、体を綺麗にする為にリフレッシュも兼ねた水浴びをすることにした。レオニスとバウキスは木陰で荷物番をしつつ寝るらしいので、水浴びはシンとロクサーヌの二人っきりである。勿論レオニスや通りすがりの誰かにロクサーヌの裸を見られないように認識阻害はバッチリ発動している。
「水も透き通っていて、程よい水の冷たさが心地良いです!」
「....................」
「シン様?」
開放感あふれる泉の中、生まれたままの姿をしたロクサーヌが水に濡れる。見慣れた姿ではあるが、実に良い!思わずシンの目が釘付けになり、イタズラ心をくすぐられる。
そんなシンの姿を見て、頬に朱色に染めるロクサーヌ。
「〜〜〜〜///......駄目ですよシン様。外でなんて、その、恥ずかしいです..........///」
「わかってるって。認識阻害でレオニス達や他の人に見えないからって、ここでおっ始めるつもりはない」
「..........その割には随分と〝元気〟そうですが?」
「生理現象だ。ロクサーヌは見慣れてるだろ?」
「それは、そうですけど..........」
「なんだ?期待してるのか?」
「〜〜〜〜〜ッ/// か、揶揄わないでくださいっ!」
「照れてるロクサーヌも可愛いなぁ〜」
「きゃっ!もぉ〜、シン様っ!」
裸でロクサーヌに戯れ付くシン。ロクサーヌの後ろから抱きつき、お互いの肌と肌が密着する。なんだかんだ言いながらロクサーヌはシンの戯れ付きを受け入れ、嬉しそうに笑っていた。そして後ろから抱きついているシンの首に腕を回し、甘い口付けを交わす。
すると泉の奥が何やらボコボコと泡立ち、突然そこから太い水の柱が天に昇った。
何事だ!?とシンとロクサーヌがそこに視線を向けた時、その水柱は弧を描くようにシンとロクサーヌに向かって来た。
シンはすぐにロクサーヌを抱きかかえ、その場から離脱。そしてシン達が先程までイチャついていた場所に大質量の水柱が打ち付けられ、大波を発生させ大量の水飛沫を撒き散らした。
力魔法で水面スレスレに浮遊するシン。そのシンの片腕に抱かれているロクサーヌは局部を晒さないようシンに体を預けていた。
「魔物? いや、気配は無いから違うな。となると..........」
「他者からの魔法攻撃、ですかね。でも認識阻害がかかっているのに正確に私達を狙えるなんて.........」
「俺の認識阻害すら看破できる相手ってことになるな。相当な手練れだ」
「と言うことは、その..........さっきまでの私達の姿、見られてたんですかね?」
「..........その相手の記憶は俺が消す」
「..........お願いします」
見られた可能性があると思い至ったロクサーヌが恥ずかしそうに俯く。シンは誓った、相手が女ならゼパルの能力で穏便に記憶の抹消を図り、もし男なら物理的に記憶を消し去ろうと。
すると水面がボコボコと泡立ち、再び太い水柱を天に昇らせた。先程とは違い、今度は九本の水柱だ。しかもその水柱はただの水の塊から蛇のような形に成った。
シンはその水の蛇に違和感を感じ、[天眼]と[鑑識]、そして[魔力感知]を同時に発動させ、目の前の九つ首の水蛇を見た。
(なんだこの歪な魔力は? 明らかに普通の奴じゃないぞ............)
自身の技能で認識した魔力にとてつもない違和感を覚えたシン。人でも無い、魔人でも無い、ましてや亜人でも魔物でも無い奇怪な魔力の波長。だが何処となく覚えがある。それはかつてシンが戦ったアリエルに酷似しており、自身の魔力とも似ていた。
シンが思考を巡らせていると、九つ首の水蛇が再度シン達に襲い掛かろうと迫った。だが、そこに割って入って来た赤獅子姿のレオニスが爪を振り下ろし、水蛇の九つの顔を一気に弾き飛ばした。
「悪いシン、寝坊した..........それでこの状況は一体どう言う事だ?」
「さあな。突然襲いかかって来たから、俺達もまだ状況を掴めていない」
レオニスが弾き飛ばしたはずの水蛇の首が再生してすぐにシン達に襲い掛かる。その度にレオニスがその巨体から繰り出す殴打や引っ掻き攻撃で水の塊を散らしていく。
「シン様、辺りにこの魔法を操っている人は?」
「それがさっきから探してるんだが全く反応が無いんだ。気配や魔力も全く感知できないし、[天眼]の俯瞰視野でも見当たらない。どうなってんだ..........」
シン達を襲う水の蛇を操る魔法、それを行使している相手が全く見つからず、もしかするとアリエルと同等の存在かもしれないと言う推測からシンは内心焦っていた。
しかし、それは杞憂で終わった。
唐突に水蛇達が崩れ去り、泉の水面を波立てながら跡形もなく消え去ったのだ。
歪な魔力は消え去り、元の穏やかな泉に戻った。
「なんだったんだ、今のは?..........シン、相手は見つかったか?」
「いや、駄目だ。尻尾は掴ませてもらえなかった」
「シン様、一先ず私達は服を着て武装を整えましょう。また襲われないとは限りませんし」
「..........そうだな」
「シン、俺は一応辺りを調べてくる。俺の鼻と足なら何か掴めるかもしれん」
「わかった。だがあまり遠くには行くな。何かあったらすぐに合図を出してくれ」
そう言ってシンはレオニスに[認識阻害]を施し、レオニスはすぐにその場から駆けて行った。
そしてシンとロクサーヌが泉の畔に降り立ち、荷物を置いていたところに戻るとーーーー
「「....................うそ」」
ーーーー荷物がどこにも無かった。
乾かしていた服も、さっきまで着ていた替え着も、武器も全てが消えていたのだ。
「まさか..........盗まれた?」
「ですが先程までレオニスとバウキスが荷物番をしていたはずです」
「っ、バウキスはっ?」
「..............見当たりません、ね」
バウキスも荷物と同様に姿をくらませた。非常に不味い事が起きた。現在シンとロクサーヌは素っ裸、替えの服も無ければ、身を隠せる布切れ一枚無い。
幸いシンの金属器とロクサーヌの眷属器はバウキスの異袋の中だ。バウキスが用心の為にと、異袋に収納していたのを水浴びに行く前に見ている。バウキスさえ戻ってくれば武装も服も元通りだ。
しかし、そのバウキスはどこかに行ってしまった。
木陰に隠れてレオニスとバウキスの帰還を待っていたシンとロクサーヌ。するとシンの気配感知に何かが引っかかった。
その方向に目を向けると、大きな馬車がこちらに向かって来ていた。
「しめた! どこの誰かは知らないが、あの馬車に乗ってる人に事情を説明すれば古着とかを分けて貰えるかもしれない」
「で、ですがシン様?私達は今、その......裸ですよ?」
「心配するなロクサーヌ。人は誰でも最初は裸で生まれてくる。話せばきっとわかってくれるさ!」
「ちょ、待ってください! いくらなんでもそれは無理がありますって! せめてその股間にぶら下がってる凶悪なソレを隠して下さい!もし女性があの馬車に乗っていたら、卒倒しますよッ?!」
「む、確かにそうだな。しかし隠すにしても、物が無ければ..........」
そこでシンの目に止まったのは、目の前の木から生えている大きな葉っぱだった。ちょうどシンの股間を覆い隠せるぐらいの立派な葉っぱである。
シンはそれを一枚捥ぎ取り、ペシッ!と股間に貼り付けた。
「..............待ってくださいシン様。まさか、それで行くつもりですかッ!?」
「問題無いだろ?」
「大アリですッ!
「おいおいロクサーヌ、俺の天職を忘れたのか? 俺は付与魔術師、股間に葉っぱ一枚付与する程度朝飯前さ!」
原理は簡単、単純にシンの[力魔法]で抑えているだけである。勿論後ろから見えないように、股間に[認識阻害]を集中させチラ見えしないように対策もしてある。なら[認識阻害]だけで良いのでは?と思うかもしれないが、その場合股間にモザイクがかかったみたいになるので、現状葉っぱこそが最善だと判断した。
「それじゃあロクサーヌはそこに居てくれ。心配しなくてもきっと何とかなる!」
そう言って、シンは股間に葉っぱを貼り付け、まるで馬車に乗っている騎士風の人達を迎え入れるように両手を広げて近づいて行く。
最初に肝心なのは挨拶だ。その際、相手の警戒心を解きほぐす爽やかな微笑みも忘れてはならない。そうカトレアに教わった。
なのでシンは馬車に乗っている騎士達に微笑みながらこう話しかけた。
「やあ君達、今日はいい天気だね」
「「.............................(へ、変態だーーッ!?!?)」」
馬車の手綱を引いて居る騎士風の格好をした男二人は、目の前に現れた変態を見て絶句していた。内心見たまんまの光景を叫びながら。
シンはあっという間に男達に囲まれ、剣を向けられた。その光景を影から見守っていたロクサーヌが見て、深い溜息を吐く。
その後シンは馬車に乗っていた愛子達と感動的?な再会を果たすも、愛子には「服を着て下さいッ!」と悲鳴にも似た怒声を浴びせられた。それでも何とか事情を説明する事ができ、シンとロクサーヌは目的の衣類を手に入れる事が出来たのだった。
....................
..............................
........................................
シンとロクサーヌ、それと農地開拓組のメンバーは、泉の畔に居る。
シンは今、園部から渡されたボロボロのブレザーとズボンを着ている。成長したシンの体付きではワイシャツが着れなかったので、ブレザーのみを素肌の上から羽織り、少し丈の長さが物足りないズボンを履いている。
一方ロクサーヌは、園部から渡された女性服を一度は着たのだが、サイズが合わなかった。特に胸が!結局シンが着れなかったワイシャツを借り、シャツの裾を前側で結び、ヘソ丸出しで着た。下にフリーサイズのロングスカートを着用している。
そんなシン達と愛子達は向き合う様に、丸太に腰掛けていた。
「はぁ〜〜〜。チェイスさん達が慌てていたので何事かと思いましたが、まさか要くんだったは」
「俺も最初先生が馬車から出て来た時は驚いたよ。けどまあ、元気そうで何よりです」
「それはこちらのセリフです..............要くん、君が生きててくれて本当に良かったです。それと、あの時君を守れなかった事、心から謝罪します」
愛子がシンに向かって深々と頭を下げた。愛子が言っているのはシンが王都を追放された時の事だ。あの時愛子は王都にいなかった。その事を悔やんでの謝罪なのだろう。
そんな畑山愛子という教師の姿を見て、シンは少し困ったように微笑んだ。
「頭を上げて下さい。先生は先生で頑張ってたんですから、貴女に責任を押し付ける気はありません。それにあの追放が無ければ、〝今の俺〟は居なかった..........ですから気にしないで下さい」
「要くん..........」
「先生は、生きてた生徒を困らせたいですか?」
余裕のあるイタズラっぽい微笑みを愛子に向けてシンがそう問いかける。そんな彼の表情についドキッとするも、愛子はハッキリと答えた。
「いいえ、私も君を困らせたくはありません」
「ならこの話はここまでにしましょう。せっかくの再会に暗い雰囲気は似合わないですからね」
「要くん、変わりましたね。何と言いますか、大人の余裕?みたいなものが感じられます」
「そうですか? まあ色々ありましたからね」
そう言ってシンは一瞬遠い目をしたのち、愛子達に軽く微笑んだ。その時シンと園部の視線が合い、園部は顔を少し赤くして顔を背けた。その様子を見ていたロクサーヌが一人考え込んでいる。
「それで要くん。一体君の身に何が起こったのですか? 髪の色もそうですが、その体の傷は一体..........」
以前と明らかに違う要の姿に愛子が問いかける。髪の色もそうだが、愛子や園部達が一番気になっているのは要の体に大小様々な形で刻まれた無数の傷跡である。特に胸と腹に痛々しく残っている傷跡が、愛子達の心を痛ませた。
「それを説明する前に紹介したい人がいる」
そう言ってシンが手を差し出したのは、シンの隣にいる亜人の女性だった。愛子達も、一体どこの誰なのか気になっていた相手だ。特に園部は先程からシンの隣に居る彼女のことが気になって仕方なかった。
「彼女の名前は“ロクサーヌ”、俺の旅仲間であり、剣であり、恋人だ」
「「「「こ、恋人........ッ!?」」」」
愛子、宮崎、菅原、玉井の四人がその言葉に強く驚き、園部は声も出さず、ただその瞳を大きく目を見開いていた。
「ご紹介に預かりました、シン様の剣であり〝正妻〟の“ロクサーヌ”と申します。以後お見知り置きを」
「「ちょっと要っち!(要くん!)どういう事よッ!!」」
宮崎と菅原が怒気を孕ませた声でシンを問い詰めようと迫った。かなりご立腹の様子である。
「いや、どういう事って言われても、そのままの意味だが?」
「だからなんでこの人と恋人になったのかちゃんと説明してッ!」
「そうだよ要くん!要くんにはそれを説明する義務があるよ!」
「ま、まあ、説明するのは別に手間ではないけどーーーー」
そこからシンは愛子達に語った。何があってロクサーヌとの出会ったのか、どうしても恋人になったのかを。そしてその話の中に、何故シンの体に大きな傷跡が刻まれているのかも説明した。しかし大迷宮やエヒトに関する事は伏せたままで。
「つまり要っちは命の恩人であるロクサーヌさんに惚れちゃったと」
「ああ」
「それで二人で旅を続けるうちに恋人になったと」
「まあ、端的に言えばそんなところだな。納得してくれたか?」
「いいや、納得しかねるな!」
シンと宮崎、菅原の会話に割り込んできたのは神殿騎士のデビッドだった。彼はシンの横に座っているロクサーヌをひと睨みし、言葉を続ける。
「薄汚い亜人如きが人間の恋人だと?我々神殿騎士の前でよくそんな事が言えたものだな、貴様。神に選ばれもしない下等種族が人間と同じ立場に立つなど烏滸がましいことこの上ない!」
聖教教会は魔力を持たない亜人を神に選ばれなかった下等種族だと決めつけ、差別している。その結果亜人を奴隷にするという行為が生まれ、表大陸において亜人族の人権は無いに等しいのだ。
「話の腰を折らないでくれるか?俺はアンタに聞いたつもりは無い。気に入らないからと言って突っ込まないでくれるか?」
「そういう訳にはいかない!聞けば貴様、王都から追放された召喚者らしいな?なるほど道理だな。貴様のような亜人を恋人だと吹聴する痴人は追放されて当然だ。我等の神もさぞ嘆いた事だろう。召喚した使徒達の中に蝿が混じっていた事をな!」
「デビッドさん!言い過ぎですよ!」
デビッドの物言いに愛子が声を上げた。園部達も明らかな不満の態度を示している。
「いいや愛子、この愚か者にはここでキチンと言い聞かせなければならん!自分がどれだけ異端であるのかを!過ちを正すのは愛子も本意だろう」
「.............言うに事欠いて “過ちを正す” 、だと? 知らないとは言え滑稽な事だ」
「貴様ァッ..........そこに直れ!貴様の性根、ここで私が文字通り叩き直してやるッ!」
デビッドが腰の剣を抜き、シンに切先を向けた。だがシンはそんなデビッドに一瞥し、すぐに視線を戻した。それが余計にデビッドを不快にさせたらしく、彼はシンを掴み上げようと手を伸ばした。
しかし、その腕はロクサーヌの手に掴まれ止められた。
「下等な獣風情が私に触れるなッ!」
デビッドが剣をロクサーヌに振り下ろした。それを見て愛子達が必死な形相でやめるよう呼び掛けるが、デビッドは止まらない。その場にいる全員がもうダメだと目を逸らす中、シンはただ一人「やりすぎるなよ?」と小さく呟き、それに対しロクサーヌが「はい」と短く応えた。
振り下ろされたデビッドの剣をロクサーヌは奪い取り、その剣の柄頭でデビッドを軽く小突いた。鳩尾に柄頭が刺さり、その痛みでデビッドは思わず跪く。
一瞬の出来事で何が起こったのかわからない様子の愛子達。そんな中でも、自分達の隊長が亜人にやられたとすぐに気づいた他の騎士達が腰の剣に手を携え、ロクサーヌを取り囲んだ。
「ちょっとした警告です。貴方達に危害を加えるつもりはありませんよ?ただ、私達の〝王〟に対し、この方が無礼を働こうとしたので、少しお灸を据えたまでのことです」
「王..........?その王と言うのは、そこにいる彼のことですか?」
「ええ、その通りです。シン様はのちにこの世界で大王となる御人、そしてこの世界のかーーー」
「ーーーロクサーヌ。それ以上は言わない方がいい」
「..........はい。すいませんシン様」
チェイスの問い掛けに対し、ロクサーヌが答える。さらにロクサーヌが言葉を続けようとした時、シンがそれを遮った。シンの意思に逆らう気が無いロクサーヌはそれ以上は何も口にしなかった。
神殿騎士の前で〝神を殺す〟などと言ってしまえば、争いの火種になりかねない。それを考慮してシンはロクサーヌの言葉を遮った。ロクサーヌもそれにすぐ気づき、自身の心がいかに荒立っていたのかを思い知り、反省していた。
そんな彼女を見て、「やれやれ」と微笑みながらシンは立ち上がり、ロクサーヌの肩を抱き寄せて口を開いた。
「悪いが君達も控えてもらえないか? 彼女の言う通り、先に手を出そうとしたのは其方だ。此方はあくまで自衛をしたまで。だが、亜人だからと言ってこれ以上俺の大切な女性を貶めるようなら、相応の報いを受けて貰う」
「報い、ですか..........貴方にそれが出来るほどの力があると?我々とて騎士の端くれ、いくら貴方が神の使徒であろうと勇者様程ではないでしょう?」
「.............はぁ〜」
シンが溜息を吐き、二本の指先をクイッと上に折り曲げた。
途端、チェイスの体が浮き上がり、地上からおよそ二十メートルの高さで停止した。唐突に襲われた浮遊感でチェイスがパニックを起こす。そんな様子を見ていたデビッドや他の近衞騎士、並びに愛子達は何が起こっているのか理解し切れずにいた。
そしてシンの指先のタクトが下に振るわれた。と同時に空宙にいたチェイスの体が急降下し、誰もがチェイスが地面に衝突すると目を逸らした。しかしチェイスの体は地面とギリギリの位置で落下が停止し、死を覚悟したチェイスの心拍数が上がり呼吸は荒れていた。
無事に地上に降り立つことが出来たチェイスは、膝を震わせ、その場にへたり込む。
「ハァ、ハァ、ハァ..........い、今のは..........」
「これで少しは俺の言葉の信憑性が増したかな?」
「か、要くん。今のは一体..........」
「俺が会得した魔法です。簡単に言えば物を浮かせられる魔法、ってところかな」
愛子の問いにシンが簡潔に答える。それを聞いた玉井が「す、すげぇ.....」と素直な感想を述べ、園部達も目の前で起きた事象に唖然としていた。そしてチェイスや他の護衛達はそれ以上何も言ってこなくなった。
すると泉の畔一帯に強風が吹き込み、愛子達が気づいた時には見知らぬ赤毛の大男がシンの隣に立っていた。
「シン、この者達が先程襲ってきた相手か?」
「あー違う違う。ここに居るのは俺と同郷の奴ら。そこにいる騎士達はその護衛。ついさっきバッタリ再会してな」
「ほお、そうか..........ところでシン、お前いつもの服はどうした?ロクサーヌもそうだが、金属器も纏っていないじゃないか」
「いや、実はなーーーー」
シンはレオニスに事の顛末を説明した。荷物が消えた事、バウキスが居なくなった事、葉っぱを股間に付けた事、そしてその果てで愛子達と再会した事を。するとレオニスはシンに頭を下げた。
「..........すまないシン。俺がしっかりと見張っていれば.....」
「お前のせいじゃないさ。金属器とかロクサーヌの剣はバウキスが持ってるだろうから心配いらないし、盗まれたとしても取り返せば良いだけだからな。まあなんとかなるって」
「あの〜、要くん。そちらの方は?」
「ん?ああ、そうだったな。レオニス、この人は俺が元いた世界で教師をしていた先生で、愛ちゃん先生だ」
「ほお先生か。するとアレか? お前で言うところのカトレアと同じ立場の者か」
「う〜〜〜ん..........まっ、大体合ってる」
「シン様、違うなら違うとちゃんと言った方がいいですよ?」
また知らない単語が出てきたと思った愛子達。先程からシン達は〝金属器〟やら〝カトレア〟〝バウキス〟などと愛子達には聞き慣れない単語が飛び交っており、話に全くついて行けていなかった。
「初めまして、愛ちゃん先生殿。俺の名は“レオニス”、王の盾であり、友だ。今後ともよろしく頼む」
「は、はい。こちらこそ」
そう言ってレオニスと愛子は握手を交わした。身長差がありすぎるため、レオニスが中腰になって片手を伸ばしていた。まるで大人と幼女みたいな構図である。
愛子と挨拶を交わした後、レオニスは園部達にも自己紹介をし、全員と握手を交わした。全員初めて見る大男におっかなびっくりしつつも、ちゃんと対応している。
「ところで要くん。先程から気になっていたのですが、〝王〟とは一体どういう事ですか?その言葉と要くんは一体どういった関係があるのです?」
「言葉通りの意味ですよ先生。俺がこいつらにとっての王であり、主人という事です」
「まさかとは思いますが..........この二人は要くんの、その、奴隷..........なんですか?」
「「ーーーッ!!」」
奴隷と思われた事に思うところがあったのだろう。ロクサーヌとレオニスが、その問いを投げかけた愛子を睨んだ。二人の威圧に思わず息を呑む愛子。それを察したシンが「コラコラ」と二人に威圧しない様に促した。勿論愛子も本気でそう思ったわけでは無い。あくまで念のための確認。しかし、それでも王の臣下として誇りを持っている二人からすれば、そう思われるのは侮辱以外の何者でもなかった。
「先生。確認のためとは言え、その発言は控えてください。二人は俺にとって大事な仲間です。二人の誇りを傷付ける様な事はやめて頂けると助かります」
「す、すいません!!軽率な発言でしたっ!お二人も、不快な思いをさせてしまい申し訳ありませんっ!」
愛子がペコペコと頭を下げた。それを見たロクサーヌとレオニスは彼女が本気でそう思ってはいないのだと分かり、その謝罪を受け入れ、睨んでしまった事を謝罪した。すると愛子が「いえいえっ!こちらこそ本当にすみませんでした!」とまたペコペコ頭を下げる。その一連のやり取りもあってか、二人は愛子がどういう人物なのかを察し、信頼できる相手だと認識したのだった。
「それで要くん、貴方は一体何をしようとしてるのですか?」
「あ〜、うん、その説明はまた後程。ここだと他の者の目もありますから....................それより先生。先生達はこの後どこに向かうのですか?」
「え? 私達はこの後、ここから西南西に向かった先にあるカルロー村に向かいますが..........?」
「ふむ.............. 。先生、そこに俺達もついて行っても構いませんか?」
「へ? も、もちろんかまいませんよ?」
急遽予定を変更したシン。そんなシンにロクサーヌとレオニスが問いかけた。
「宜しいのですかシン様?グリューエン大火山に向かうために一度ブルックに向かわれるはずでは?」
「そうだぞシン!スイーツ巡りはどうなるっ!」
「レオニス、貴方って人は....................」
ロクサーヌがレオニスの言葉に呆れていた。
「元々はそのつもりだったが事情が変わった。バウキスが居ないんじゃロクに進めないだろ?それにあいつの異袋の中にはお金やステータスプレート、それに金属器やロクサーヌの剣もある。残念だが今回のブルックでのスイーツ巡りは諦めてくれ、レオニス」
「楽しみにしてたのに....................」
レオニスが肩を落とした。よっぽどスイーツ巡りが楽しみだったらしい。レオニスには悪いが今回のスイーツ巡りは延期である。
「ですが、何故愛子さんについて行くのです?何かあるのですか?」
「うーん..........なんとなくだが、先生が向かう先で何かある気がするんだよ。それに、そこに行けばバウキスとも会える気がする。まっ、根拠なんてこれっぽっちも無いけどな!」
「「..................はぁ〜」」
最後の方は
要するにいつもの勘である。直感任せの行き当たりばったりな自分達の王。そんな向こう水なシンを彼の夢のために支えて行くと決めている二人。
なら答えは決まっている。
「まっ、お前がそう言うならついて行くさ」
「ええ。私達の王は貴方だけなんですから、ちゃんと導いてくださいよ?」
「フッ、ああ。大船に乗ったつもりでいろ!」
シンが自身の胸をドンッと叩いて自信満々に応えた。
「それに、せっかく先生達と再会出来たのにすぐ別れるのは少し寂しいだろ?あと、制服を見つけてくれたお礼もしたいしさ」
そう言ってシンは園部に視線を送った。すると園部もシンの事を見ていたらしく、不意に二人の視線が重なるも、すぐに園部がプイッと視線を逸らした。そんな園部を見たシンは「相変わらずだなぁ〜」と肩をすかして苦笑。シンの態度と園部の様子を伺ったロクサーヌはじっくりと二人を観察している。特に園部の方を重点的に。一体彼女は何を考えているのやら..........
そんなこんなで愛子達、農地開拓・改善グループの馬車に同乗することになったシン達。
愛子達が乗ってきた馬車は大型の部類だったが、流石に二メートル強のレオニスと、百八十センチ強のシンが乗ると重さが増し、馬車を引く馬にも影響が出る。そこでシンは馬車を引く馬達に[身体強化]を付与し、馬力を上げさせたのだが、その際、詠唱も陣も使用していないシンを不思議に思った宮崎や菅原が色々と質問して来たので修行の賜物だと答えておいた。嘘ではない。
ちなみに馬車の荷台内での並びはこんな感じである。
馬車の前側
ーーーーーーーーーーーーー
| シン 愛子 優花 |
| レオニス ロクサーヌ |
| 玉井 宮崎 |
| 清水 菅原 |
|( 荷物置き場 ) |
ーーーーーーーーーーーーー
馬車の後ろ側
ちなみにデビッドも含めた護衛の騎士達は全員外で、御者席に四人がぎゅうぎゅう詰めになっている。
「そういえば園部、制服見つけてくれてありがとな。おかげで助かった」
「べ、別に、見つけたのは玉井だから、礼を言うなら玉井に言いなよ」
「そうだったのか..........まあ、それでもお前はロクサーヌに服を貸してくれただろ?だからありがとうな、すごく助かったよ。玉井もサンキューな」
シンがそう言うと、「どういたしまして」と園部は素っ気なく返事をした。玉井はお返しに、後でシンに魔法で空を飛んでみたいとお願いして来たので、シンはそれを快諾した。
「てかさ要、さっきロクサーヌさんが言ってけど〝正妻〟ってどういう事だよ?」
「........................」
予想外な質問をぶち込んで来た玉井。チッ、余計な事を思い出しやがって。しかし、玉井が撒いた種火はどんどん大きくなって行く。
「あっ、そうだよっ!うちもそれ聞こうと思ってたんだよ!ナイス玉井!」
「要くんどういう事なのかな?もしかしてロクサーヌさんの他にも誰か恋人がいるの?」
宮崎と菅原が火に薪を配てきた。やはりこういう話題は女子にとっては大好物なのだろうか?なんとなくシンは園部を見ると、彼女は真っ直ぐシンを睨んでいた。どうやら園部も気になるらしい。
そしてそれに一番食いついたのは愛子だった。
「二股なんて先生は絶対許しませんよっ! ハッ!まさか要くん、王様っていうのはそういう事ですかっ!? 合法的に二股をするために、免罪符としてそう名乗ってるのですかっ!?」
「違います先生、落ち着いてください。そして俺の話を聞いてください」
「相手は一体誰ですか! ハッ!まさか....................レオニスさん?」
「はいストップ〜、先生それ以上の発言は完全な誤解でしか無いので控えましょうかー。 俺にそんな趣味はありませんし、そもそもレオニスには奥さんが居ますから」
「じゃあ一体誰なんですかッ!」
「いや、そもそも他に恋人なんていませんよ?」
「じゃあなんでロクサーヌさんは〝正妻〟なんて言ったの?」
「そうだそうだー!白状しろー、要っちー!」
食い下がる愛子。さらに菅原と宮崎が横から煽り、園部の視線はより一層キツくなるばかり。ていうか、なんであの時ロクサーヌはわざわざ〝正妻〟なんて言葉を使ったんだ?考えが纏まらず、つい[並列思考]を使ってしまいそうになる。こんな事で技能を使いたく無い!
ということでシンは諦めたように息を吐き、ロクサーヌにアイコンタクトを送る。シンの意図を汲み取ったロクサーヌが口を開いた。
「相手はヘルシャー帝国の第一皇女“トレイシー・D・ヘルシャー”です」
「「「「え?..........えぇーーーーーーッ!!!!」」」」
愛子、玉井、宮崎、菅原の四人は、一瞬理解が追いつかず思考停止した後、すぐに叫喚に似た奇声を上げた。
まあ無理もないだろう。何せ帝国の皇女様なのだから。いやほんと、そんな誰もが驚く立場の人が、なーんであんな堂々と惚れた腫れたと口に出来るのか。やっぱり可笑しいのだろう。
「と言いましても、まだ婚約も成立していない一方的な口約束なんですけどね」
「いっ、一方的!?..............か、要くん、貴方という人は〜ッ...........!」
「誤解が無いように言っておくが、俺から迫ってないからな?トレイシーが俺に迫って来たんだからな?」
「そんな事あるわけ無いじゃないですかっ!相手は帝国の皇女様なんですよっ?! 皇女様から告白するだなんて、そんなの漫画の中だけの話ですッ!」
おい、トレイシー。言われてるぞ?
「シン様の言う通り、求婚を迫ったのはトレイシーからですよ?彼女曰く、『一目惚れですわぁっ!』だそうです」
「まじかよ..........なんで要ばっかりモテてんだよ。顔か?やっぱり顔なのか..........?」
ロクサーヌの補足を聞いて、玉井があからさまに嫉妬していた。横にいる清水はずっと黙って聞いているが、視線はシンを捉え、その眼差しからは嫉妬の念が感じ取れた。そして時折ロクサーヌにいやらしい視線を送っている清水。後で清水に釘を刺しておこうと決めたシンだった。
すると先程から刺々しい視線を向けていた園部がシンに問いかけて来た。
「要はどう思ってるのよ。その、皇女様のプロポーズについて」
「う〜〜ん..........正直嬉しいとは思う。俺の事が好きだって真っ直ぐに好意を示してくれる相手だ、普通に悪い気はしないな」
「ロクサーヌさんの前で良くそんな素直に言えるわね」
「一応言っておくが、トレイシーを側室に迎え入れることを提案したのはロクサーヌだからな?」
「「そうなの!?」」
シンの言葉を聞いて宮崎と菅原が意外そうな声で反応した。一方の園部はシンの発言を訝しみ、その是非を問うため横にいるロクサーヌに視線を向けたが、彼女はシンの言葉に誇らしげに頷いていた。どうやら本当の事らしい。
「..........その、ロクサーヌさんは要の恋人なんですよね? どうしてそんな提案をしたんですか?」
園部の問いにロクサーヌは、彼女にニッコリと笑って答えた。
「シン様を支えるためです。将来有望な人材を早く囲って置きたいというのもありますが、何よりトレイシーはシン様に対して真っ直ぐに自身の感情を示しました。それに諦める気は無いと、私からシン様を奪うつもりで挑み続けるとも言ってましたねーーーーですから提案しました。あれほど優秀で、シン様を真っ直ぐ慕える方を手放すのは勿体無いですから」
「それで良いんですか、ロクサーヌさんは?恋人なら、その..........好きな相手が他の女にデレデレするところとか、見たくは無いんじゃ..........」
「確かに、淫ら矢鱈と愛想を振り撒くのは良く無いと私も思います..........ですが、それを補って尚余りあるほどの愛情をシン様は私に向けてくれます。嫉妬なんてする暇も無いくらいに。ですから私はなんの不満も抱いていません」
「「へぇ〜〜..........」」
ニッコリと微笑みながら、そう言い切ったロクサーヌ。それを見た宮崎と菅原が、ニヤニヤとした表情でシンに含みのある視線を向けてくる。シンの体がむず痒さを覚えた。
「それにシン様はいずれこの世界で〝王〟となる御方。そんなシン様を愛し、共に〝覇道〟を歩む女傑は多いに越した事ありませんーーーー尤も、正妻の座を譲るつもりはありませんが」
ロクサーヌは曇り一つ無い瞳でそう答えた。“愛されている”と、実感しているからこそ生まれる余裕と自信。彼女が綴った言葉の節々にそれが込められていた。
それを聞いた女性陣は、ロクサーヌがどれほどシンを愛し、彼を想い、彼と信頼を築いているのか認識した。端的に言って、女としての格の違いを見せつけられた気がした。
するとロクサーヌが園部の耳元に口を近付け、何かを呟き始めた。一体何を話してるのか?男性陣は不思議そうな顔になる。他の女性陣もロクサーヌが園部に何を話しているのか気になったらしく、二人に不思議そうな視線を向けていると、ロクサーヌがそんな彼女達を小さく手招く。それを受けて宮崎、菅原、愛子の三人がロクサーヌの元に集結。女性だけの密談が始まった。
そんな彼女達をシンは訝しそうに眺めていると、ロクサーヌが口元をシンから見えないように隠した。唇を読まれないようにするためだ。ロクサーヌに抜かりは無いらしい。
ロクサーヌが四人の女性に耳打ちし出し、園部達は小さく相槌を打った後、途端にその顔を真っ赤に染めた。愛子の目がぐるぐると回り出し、宮崎と菅原は「まじか〜」と言葉を漏らす。園部は耳まで真っ赤にして顔を下に俯かせた後、シンを一瞥、彼と目が合い落ち着かない様子で悶え出すと、深めに膝を抱えて座り直し、その膝に顔を埋めた。
話し終えたらしいロクサーヌは、シンにニッコリと微笑みながら淑やかな仕草で座り直した。愛子達もロクサーヌに倣って居住まいを正すが、彼女達は妙な視線をシンに向けている。それにどこか落ち着かない様子だ。園部は未だ膝を抱え込んだまま視線を上げる様子は無い。
「何を話した.........?」
「いえ、シン様の事を少しでも理解して貰えるように補足しただけです」
「..........その割には、妙な視線が俺に向いているのだが?」
「ふふ、可愛いですね」
「答えになってないぞ?」
一体ロクサーヌは何を話したのか..........。
すると園部が真っ赤になった顔を僅かに上げ、口を開いた。
「....................要の変態」
「おいこら、ロクサーヌッ!園部達に何話したっ!?」
「ふふ..........内緒です」
笑顔を崩さないロクサーヌが少しイタズラっぽく答えた。ちくしょうっ、可愛いじゃねぇか..........! ロクサーヌに甘いシンは彼女の笑顔に絆されてたのだった。
それから数時間。
シン達と農地開拓・改善組のメンバーは馬車に揺られながら色々な事を語り合い、カルロー村に着くまでの時間を潰した。途中で何度か休憩を挟み、そのタイミングで玉井の要望通りシンが[力魔法]を使って空を飛ばせたりし、玉井が楽しそうにしているのを見て宮崎や菅原もシンに自分達もとお願いし、結局愛子も含めた異世界組の全員で空を飛んだ。園部は「私は別にいいわよ」と遠慮していたが、シンが手を差し出して誘った事で渋々みんなに付き合う事にした。
出発の時間になり、全員が馬車に向かって行く際にシンは清水の横に寄ってーーーー
「ロクサーヌは俺の女だからな?」
ーーーーと、そう呟いた。
シンの言葉を聞いて以降、清水は次の村に着くまで一切口を開かず、不貞寝した。
そして漸く馬車はカルロー村に到着し、一面に広がった葡萄畑にシンや園部達が感嘆の声を漏らす。
ただ一人の生徒を除いて。
次にシン達が向かったのは今作オリジナルの舞台「カルロー村」です。
今回は謎の相手の水魔法、バウキスの失踪、王様の葉っぱ事件、馬車の中での語らいとなりました。
このカルロー村編が終わった後は、第三章開幕の予定となっています。
補足
『畑山愛子護衛の騎士達』
「デビッド」
・愛子ラブな金髪の神殿騎士。愛子のことになると暴走しがちになる。
「チェイス」
・愛子ラブなもう一人の神殿騎士。デビッドとよりは話がわかる。
「クリス」
・近衞騎士
「ジェイド」
・近衞騎士
『登場したアイテム』
「要進の制服」
・ノイント戦の時に紛失していた思い出の制服。ブレザー、白のワイシャツ、ズボンの一式。巡り巡って玉井がブルックの露店で見つけた。かなりボロボロに傷んでいるが、着れない程ではない。しかし今のシンでは若干小さく感じる。白のワイシャツはロクサーヌが着用しているが大胆におへそを出している。