ありふれた職業で世界最強〜付与魔術師、七界の覇王になる〜   作:つばめ勘九郎

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強引かも知れませんが、ここからは園部のターンです。




カルロー村の異変

 

 燦々と照り付ける太陽、広大な土地に広がる果樹園、小粒に実った黒い果実、生い茂った青葉。

 

 そんな中で男達の汗と筋肉が雄々しく輝く。

 

 

「さすがシン殿! 健康的で実に農夫に向いた筋肉をしていらっしゃる!」

 

「ハッハッハッ!またまた〜、何を言っておられるのですか村長殿、貴方の筋肉の方が逞しくとても農夫に向いているではありませんかっ!」

 

「フッフッフッ、わかりますかシン殿? 伊達にこの村の村長をしておりません故、我輩の筋肉はこんなにも立派に育ってくれましたよっ!ムッハッハッハッ!」

 

 

 シンと一緒に筋肉談話をかましているのは、ピカッと輝くスキンヘッドに、毛先がカールした黄金の口髭を生やす筋肉ムキムキの大男。彼の名はカルロー村の村長“アレックス・ロッシ・カルロー”である。見た目はほとんど某錬金術漫画に登場するアームス○ロング少佐であるが、残念ながらスキンヘッドの頭に金髪の髪は一房も生えていない。綺麗に磨かれた頭皮のみが太陽の光を反射している。

 

 そんなカルロー村の村長アレックスはこの場にいるもう一人の筋肉を見て「ほほぅ.....」と顎に手を添えた。

 

 

「やはりレオニス殿の筋肉も凄まじいものですな。一目見た時から我輩の筋肉が呼応しておりましたが..........いやはや。我輩以上の巨体に、洗練され、内包された肉の威圧感、感服する他ありますまい」

 

「そう言ってくれるのは素直に嬉しいところだが..........お前達、筋肉談話をしていないで早く作業に戻ってくれないか? あと服を着ろ二人共」

 

 

 アレックスの賛辞を素直に受け取りつつ、レオニスは実った葡萄を収穫する手を休めず、そう口にした。

 

 現在シンとレオニス、そしてアレックスの三人はカルロー村の名産品である葡萄の収穫をしていた。そんなレオニスの隣には上着を脱ぎ捨てた男が二人いる。シンとアレックスだ。二人は日が真上に登る頃、唐突にアレックスが農作業用の服を脱ぎ「これなら服も汚れず、汗で体も冷えませんぞ!」と言うアレックス。それを聞いたシンが「なるほど!確かにその通りですねッ!」と上着を脱ぎ捨てた。結果、二人はお互いの筋肉を褒め称える都合の良い場が完成してしまったのだ。

 

 そんな上半身裸の二人を遠くから見つめるロクサーヌと園部。

 

 

「またやってる。なんで男ってああも筋肉が好きなんですかね? ロクサーヌさん」

 

「私にも分かりかねますが、シン様の筋肉はいつ見ても良いですね」

 

「あー、すいません。聞く相手を間違えました」

 

 

 シンの上半身を見て、いつも以上に朗らかな落ち着いた笑みを浮かべるロクサーヌ。そんなロクサーヌの隣で溜息を吐く園部。しかし、なんだかんだと園部もシンの鍛え抜かれた雄々しい肉体を呆れたような眼差しで、バッチリとその目に焼き付けていた。

 

 そしてロクサーヌが三人に「休憩の時間ですよー!」と呼び掛けると、レオニスは作業する手を止め、シンとアレックスは脱ぎ捨てた上着を肩に掛け、そのままロクサーヌ達のところに向かった。

 

 何故シン達がカルロー村で農作業の手伝いをしているのか。

 

 その理由は遡ること二日の話。

 

 シン、ロクサーヌ、レオニスと愛子率いる愛ちゃん護衛隊のメンバーはカルロー村に到着し、早速村長であるアレックスと話をする場が設けられた。

 

 その際、レオニスを一目見たアレックスが唐突に着ている服を己の筋肉を膨らませて破いたのだ。愛ちゃん護衛隊のメンバー全員が「へっ?」と唖然としていた。しかし、レオニスは違った。アレックスの行為が挑発であるとすぐに悟り、レオニスも己の筋肉を膨張させ着ていた服を内側から見事に破いてみせたのだ。これはアレか!?ラピ○タで出てくる親方と空賊が殴り合うシーンの奴かッ!?と、そんなことがシンの頭の中に浮かび上がった。

 

 そんなシンの期待を裏切るように始まった二人のポージング披露。「フロントダブルバイセップス」から始まり「サイドチェスト」、次に「サイドトライセップス」そして最後に“モストマスキュラー”!胸筋をピクピクと動かすことも忘れていない二人。

 

 その後二人はお互いの筋肉を讃え、固い握手を交わした。それを見ていたロクサーヌが「一体誰が破いた服を治すんですかね〜」とラ○ュタに出てくる親方のおかみさんみたいな事を呟いたが、その表情はとても穏やかな様子ではなかった。

 

 終始二人の筋肉披露会に圧巻の様子だった愛子達は村長とその家族、並びに村に住む住人と挨拶を済ませた後、客人用の大きなコテージに案内された。そこが愛子達の寝泊まりする場所らしい。シン達もそのコテージで寝泊まりする事になり、ちょっとした共同生活を送る事になった。

 

 愛子達がカルロー村に滞在する予定日数は一週間。その間に愛子の天職[作農師]の技能を駆使して、葡萄畑の改善や新たな農地の開拓をするとのこと。しかし村長のアレックス曰く、最近カルロー村に強力な魔物が頻繁に出没しているらしく、元金ランクの冒険であるアレックス一人では対処し切れないでいたらしい。その為、果樹園が魔物によって荒らされ収穫量が例年以上に激減していたそうだ。

 

 そこでシンは自分達が魔物討伐を請け負うとアレックスに提案した。提案した直後にタイミング良く現れた数体の魔物をシンとロクサーヌ、レオニスの三人が瞬殺した事で、村長アレックスはシンの提案を快く受け入れた。そして魔物が出てくるまでは手持ち無沙汰なので、シン達は愛子達の農地開拓や改善作業、または葡萄の収穫などを手伝うことを決めたのだった。

 

 そこから二日が経ち、シン達は今、愛ちゃん護衛隊のメンバーや村の人達と一緒に昼休憩をとっていた。

 

 シンはその場にいる全員の様子が伺える木陰のベンチに腰掛け、昼食を取っていた。

 

 その昼食の献立はベーコン(塩漬けの燻製肉)、レタス(モドキ)、トマト(モドキ)、チーズ(モドキ)を挟んだパンである。地球で言うところの“BLTCサンド”のようなサンドウィッチで、シンはそれを黙々と食べていた。

 

 するとアレックスがシンのところにやってきた。いつもなら快活に笑って歩み寄ってくる彼が、重々しい雰囲気を纏っていた。

 

 

「どうしましたかアレックス殿?」

 

「フム。実はシン殿に、一つ頼みたいことがあるのです。ここでは少し話しにくいので、後ほど我輩の自宅に来てくださいませぬか?」

 

「....................ロクサーヌとレオニスを随伴させても?」

 

「構いませぬ。むしろ御三方にこそ聞いてほしい。愛子殿にも同席していただく予定ですので」

 

「分かりました。では後ほど伺います」

 

 

 シンがそう答えるとアレックスは無言で一礼し、その場を離れて行った。

 

 

(俺だけじゃなくロクサーヌとレオニスも、か。考えられるとすれば、やっぱり魔物に関しての事だろうな。アレックス殿の態度から察するに、人死が出たか..........)

 

 

 シンが簡単に推察していると、園部が葡萄ジュースが入った水差しを持ってシンのところにやって来た。

 

 

「はい要。もう葡萄ジュース残り少ないから全部飲んじゃって」

 

「ん?おぉ、サンキューな」

 

 

 園部が持っていた水差しの中身はどうやら残り一杯分の葡萄ジュースしか残っていなかったらしく、最後の一杯をシンの元にある木のマグカップに注ぎに来たらしい。それを察したシンは園部に礼を言い、マグカップを差し出して、そこに園部がジュースの最後の一滴まで注いでくれた。

 

 

「園部はもう食ったのか?」

 

「まだよ。私とロクサーヌさん、さっきまで村の人達に配膳してたから。ちなみにロクサーヌさん、いま村の女の人と喋ってるわよ?一緒に食べなくて良かったの?」

 

「構わないさ。ロクサーヌにはもっと大勢の人と関わり合って欲しいからな。自分を受け入れてくれる世界はちゃんとあるんだって事、あいつの目で知って欲しいんだ」

 

 

 カルロー村の住人は気さくな者達ばかりだ。最初は亜人ということで、どう接したらいいか分からず戸惑っていたカルローの村人達。しかし、ロクサーヌが村のために魔物を討伐したり、畑仕事をこなす姿を見て村人達は彼女を信頼し、今ではすっかり村に溶け込んでいる。ここでの出会いはロクサーヌにとって、今後待ち受けているであろう排他的な種族差別、言い方を変えるなら世界の現実と向き合うために必要な勇気を築けるとシンは考えていた。

 

 

「ふーん..........意外と考えてるんだ」

 

「意外とってなんだよ.............それより園部、お前まだ食ってないんだろ? ちょうど良いから俺のところに配膳された奴食ってくれよ。流石に俺一人じゃ食い切れん」

 

 

 シンのところに配膳されたサンドウィッチは全部で三十個。そこからシンが胃袋に収めたのは九個。まだ二十一個も残っていた。レオニスの分も含めた数用意されたのだが、当のレオニスは村の女性に囲まれて楽しく?食事をしている。端的に言ってハーレム状態だ。どうやらレオニスのルックスと極限まで引き締まった筋肉、そして巨体が村の女性達を虜にしたらしく、シン以上の人気を博していた。玉井なんかは「くそぉッ、俺も筋肉さえあれば..........!」などと嘆いていると、アレックスが「君もマッチョにならないか?」と玉井に囁き、筋肉談義に花を咲かせていた。服を脱いで。

 

 そんな三者三様の光景を見ていたシンと園部。すると園部がシンが腰掛けている木陰のベンチに腰を降ろし、サンドウィッチを一つ掴んだ。

 

 

「私そんなに食べられないから、要もちゃんと食べてよね?」

 

「ああ、ちゃんと残さず食い切るよ。食べ残したりなんかしたらお前に怒られるからな」

 

「わかってるなら良いのよ」

 

 

 ベンチに腰掛けている二人は黙々とサンドウィッチを口にする。二人の間には山盛りに乗ったサンドウィッチのお皿があり、その分だけ距離が開いていた。しかしその距離は手を伸ばせばすぐにお互いの頬に触れられる程度のもの。それほど近い距離だというのに、園部にはシンがとても遠い存在に思えた。

 

 すると二人がいる場所に葡萄の香りが乗った心地良い軟風が吹いた。シンと園部の髪が揺らされ、園部は靡く髪を抑えようと手を耳元に持って来た時、何気無く、横にいるシンに視線を向けた。以前と違う彼の長く若干の癖を帯びた青紫の髪が靡いていた。その様子はまるでシンが風を纏っているように見え、そんな彼を見た園部の心はザワつき、思わず視線を外す。しかし今度は外した視線の先で、友人である宮崎と菅原が、何やらこちらを見てニヤニヤしていたので、さらに園部の心がザワついた。

 

 園部がそんな一人相撲をしていると、シンが口を開いた。

 

 

「そういえば園部、俺が王都を追放された時、〝話したいことがある〟って言ってたよな? 次会った時に話すって言ってたけど、結局何が伝えたいんだ?」

 

「むぐっ!?..........ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ!」

 

「おいおい大丈夫かぁ!? どんだけ慌ててんだよ。ホラ、これ飲め」

 

「ゴホッ、ゴホッ..........あ、ありがとう..........」

 

 

 突然()()()()()を振られた園部がサンドウィッチを喉に詰まらせ、咳き込んだ。それを見たシンが自分のマグカップを差し出した。それを受け取った園部は葡萄ジュースを飲み、なんとか落ち着きを取り戻す。そこで園部は自分の飲み物を持って来ていなかった事を思い出し、「何やってんのよ、私..........」と軽く自責する。

 

 

「落ち着いたか?」

 

「う、うん。ありがとう..........」

 

「それで園部。話の続きなんだが、あの時俺に話そうとしてた事ってなんだよ?」

 

「....................まだ内緒」

 

「え? いやいや、お前あの時言ってただろ? “次会ったら話す” ってさ」

 

「その後に私、“もっと強くなってから”って言ったでしょ? だからまだよ..........それにアンタ言ってたじゃない。“のんびり待つ” って。だから気長に待ってなさいよ」

 

「ここに来てお預けかよ。一体いつまで待ってればいいだ?」

 

「そんなの.............」

 

 

 〝要にフラれる覚悟が決まってからよ〟..........それを口に出す事ができなかった園部は、僅かに表情を歪ませ、俯いてしまった。

 

 告白したところで、自分の気持ちを受け入れてくれるとは限らない。園部とて、それは理解していたつもりだった。だが、シンの生存を信じ、彼を見つける事にしか意識が向いていなかったため、そっちの覚悟が十全に出来ていなかったのだ。

 

 そしていざシンと再会してみると、彼にはロクサーヌという最愛の女性がいた。ここ数日ロクサーヌに対するシンの態度を見て分かったが、彼がどれほど心の底からロクサーヌを愛し、彼女と強い絆で結ばれているのか園部には十分理解出来た。帝国の皇女についても、皇女の熱意には敬意を払っている様だが、その皇女を本気で側室に迎え入れようとは思っていないらしい。まあ煮え切らない態度を取っている事には多少腹が立つけど。

 

 そんなこともあって、園部は“あの時”話そうと思っていた事が口に出せないでいた。

 

 不意に途絶えた会話。するとシンが口を開いた。

 

 

「まっ、のんびり待つと言ったのは確かだからな。園部を困らせるつもりも無いから、気長に待ってるよ..........けど、流石に長過ぎると強引に訊き出しちまうかもしれないから、早めに頼むわ」

 

「どんな脅し文句よ、それ。アンタは黙って待ってればいいのよ!」

 

「酷い言われようだなぁ。だがまぁ、そっちの方が園部らしいわ」

 

「私らしいって何よ、まったく」

 

 

 その何気ないやり取りのお陰で、園部はいつもの勝気な態度に戻った。

 

 すると今度は逆に園部が気になっていた事をシンに問い掛けた。

 

 

「ところでアンタ、なんで生きてたこと知らせなかったのよ? それに“自分が生きてた事を皆んなに知らせるな”って.........」  

 

「....................先生から聞いてるだろ?俺が今、()()()()()()()()()()を探ってるって。 色々あって知らせる暇がなかったんだよ」

 

「それは、確かに愛ちゃんから聞いてるけど..........でも、それなら手紙で知らせれば良いじゃない! そっちの方が早いんだし」

 

「手紙だと他の奴の目に触れる可能性があるだろ? もしかしたら、イシュタル辺りが俺を連れ戻そうとするかも知れない。俺と言う戦力を戦争の道具にするために」

 

「それは..........確かにアンタの力を知ったら、そうなるかも知れないけど....................」

 

 

 園部が疑問に思う通り、シンは自身が生きている事をクラスメイト達に知らせなかった。その上、園部達愛ちゃん護衛隊のメンバー全員に口止めもしていた。もちろん神殿騎士の二人や近衞騎士の二人にも、半ば脅す様な形で。

 

 何故そんな事をしたのか。

 

 理由は単純。少しでもエヒトに自分達がやろうとしている事を悟らせないためだ。

 

 王宮にいるクラスメイト達に自分が生きていたと伝えれば、当然聖教教会が動く。もしくは真の神の使徒であるノイントがなんらかの対処をすると踏んだ。いずれ知られるとは言え、神と繋がっている教会にはなるべく知られたくなかったシン。ノイントとは早々に決着を着けるつもりではあるが、それは今じゃない。せめて転移系の神代魔法を獲得し、いざという時にクラスメイト達をカタルゴへ避難させられる様にしていなければ、園部達クラスメイトを神との対決に巻き込んでしまうとシンは考えたのだ。だから自身の生存を伝えなかった。

 

 その事はカルロー村に到着した日の夜に愛子にだけ伝えた。自分に何があったのか、そして自分が今何をやろうとしているのか全て。この世界の神や世界事情について、その神を殺す事、大迷宮を攻略している事、国を造ろうとしている事、そして愛子や園部達、異世界組の全員を逃がし、自分は一人この世界に残ると言う事も。勿論、愛子はシンがやろうとしている事に反対した。大事な生徒に危ない橋を渡らせられない! と。だからと言って、他の生徒達がその戦いに巻き込まれるのは看過できないし、この世界の人達を放って置く事も見過ごせない。シンと一緒に戦うと言っても足手纏いになるだけ。結局、大を生かすために小を切り捨てるしか選択肢は無かった。愛子は歯痒い気持ちで一杯だったが、最終的にシンがやろうとしている事を肯定した。

 

 その後、愛子とシンから園部、宮崎、菅原、玉井、清水、そして護衛のデビッド達に事情説明がされた。この世界の神についてと、シンがこの世界に残り国を起こそうとしている事は省いて。愛ちゃん護衛隊に聞かせられたのは、シンが元の世界に帰る手段を探っていると言うことだけ。ノイントに襲われた事も、盗賊に襲われたのだと偽った。そして口止めもした。口外する事も、手紙で王宮や教会に伝える事も。特に神殿騎士達には、イシュタルやその他教会関係者には絶対口外しない様、口を酸っぱくして言い聞かせた。それに反抗したデビッド達だったが、シンの脅しと愛子の嘆願によって渋々頷いたのであった。

 

 そして園部は要が何か隠している事をなんとなく察していた。それを問い詰める意味も込めて彼女はシンに問い掛けたが、彼から返って来た答えは説明された時のものとほとんど同じ内容だった。

 

 納得のいっていない様子の園部。そんな彼女を見てシンはやれやれ、といわんばかりに軽く微笑んだ。

 

 

「機会があれば、そのうちあいつらのところに顔を出すさ。それにお前達の様子から察するに、ハジメはまだ見つかってないんだろ? 八重樫や白崎に大見栄を切った手前、俺がオルクス大迷宮にいないんじゃ格好がつかないからな」

 

「....................要はさ、南雲が生きてると思う?」

 

「フッ。何言ってんだ、園部?あいつは生きてるに決まってるだろ?」

 

「..........なんで、そんな自信満々に言い切れるのよ」

 

「なんでって、そりゃあアレだ..............勘だ」

 

「勘って..........もっと具体的な理由とか言えないの?」

 

「んなもん無くてもわかるんだよ、俺には。あいつは生きてる、確実にな。俺の直感はそうそう外れないから心配すんな!それに俺が鍛えてやったハジメが、易々と死ぬわけないだろ? 俺が生きてんだから鍛え方は間違って無いはず!そう思わないか?」

 

「..........もしかして、それが具体的な理由?どんな理屈よ、まったく..............けど、そうね。あんたが生きてるぐらいなんだから、南雲が生きてても全然おかしくないわ」

 

「だろ?..........じゃあ園部、俺はちょっとアレックス殿と話があるから、最後の一個は任せた」

 

「ちょっ、流石に私一人じゃ丸々一個は食べきれないわよ。せめて半分持って行きなさいよね」

 

 

 そう言って園部が皿に残っていた最後のサンドウィッチを掴み、それを半分に割ってシンに手渡そうとした。するとシンは「んあ?しょうがねぇなぁ........パクっ」と、そのまま口で受け取った。その行動が予想外だったらしく、園部が「んなッ!?」と狼狽した声を漏らす。シンの唇に自分の指が少し触れた事で、園部の顔が少し赤くなった。

 

 シンは口で受け取ったサンドウィッチの半分をモグモグと口を動かした後、すぐに飲み下した。

 

 

「な、何やってんのよアンタっ! 行儀悪すぎでしょっ!」

 

「ん?手で掴んで口に運ぶより、こっちの方が直接口に入れられるから効率的だろ?」

 

「そういう事言ってんじゃないわよっ!」

 

「まぁそうプリプリするなよって。カップにまだジュース残ってるから、それも飲んで落ち着けって。 あー、あとお前が作ったサンドウィッチ、美味かったぜ。んじゃ、また後でな」

 

 

 そう言ってシンは事も無げにその場から立ち去っていった。しかもさり気なく、園部がサンドウィッチを作った事をあっさり見抜いてだ。園部が作った料理を何度も口にして来たシンだからこそ気づけたのだろう。

 

 最後の最後で特大の爆弾を置いて行ったシンに、園部は悔しさと嬉しさを混ぜ込んだ様な複雑な表情を浮かべる。

 

 そして彼女は、彼が残して行った飲みかけのマグカップに口をつけるのだった。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ー

 

 

 

 昼休憩で昼食を食べ終えた後、シンはロクサーヌ、レオニスと共にアレックス宅に訪れた。するとそこにはアレックスの他に、村の男が数名と見知った顔の冒険者が一人、そして愛子と神殿騎士のデビッドとクリスが、すでに家のリビングに集まっていた。

 

 

「待たせたみたいで申し訳ない、アレックス殿」

 

「構いませぬ。御三方も来て頂いた事で、早速ですが話の本題に移りたいと思います。ではパーカー殿」

 

「..............はい」

 

 

 アレックスに呼ばれ、パーカーと名前を呼ばれた青年が暗い面持ちで一歩前に出た。彼はカルロー村に訪れていた三人組高ランク冒険者の一人で、シン達がカルロー村に到着した後にこの村に訪れて来たらしい。シンも数回顔を合わせているし、魔物討伐の際には簡単な連携も取った間柄だ。たしか、彼らのパーティは早朝この村を経ったはずだが..........

 

 すると彼はどこか怯えた様子で話始めた。

 

 

「わ、私達のパーティは今朝方この村を出立し、山向こうにある村を目指していました..........で、ですがその途中...........見た事もない悍ましい魔物と出会したのです..........ぅぅっ」

 

 

 語り出した冒険者の青年パーカーは頭を抱えながら酷く怯えていた。確か彼とそのパーティメンバーの冒険者ランクは銀、最高ランクの金から数えてニ番目に高いランクである。未更新ではあるが今のシンよりランクは高い。

 

 そんな彼らのパーティが手に負えない魔物。パーカーの顔色がより一層悪くなる。

 

 

「して、その魔物はどんな特徴だったのだ?」

 

「ぅっ、ぅっ........................きょ、巨大な、()()()()().....」

 

「「「っ!?」」」

 

 

 神殿騎士デビッドの問いに、パーカーはシン達にとって聞き捨てならない言葉を口にした。

 

 

(シン様、その魔物おそらくは..........)

 

(ああ。十中八九、〝マンティコア〟だろうな)

 

(どうするシン。村長達に伝えるか?)

 

 

 シン達三人は自分達以外の相手に悟られないよう、シンとロクサーヌの[念話]を通して内談し始めた。そしてレオニスは、情報を開示するかどうかシンに問う。

 

 

(いや、今は話さないでおこう。表大陸でマンティコアが確認されたのは史実上魔国のみ、他種族の間では周知の事じゃない。そんな情報を下手に神殿騎士の前で晒し、あらぬ疑いをかけられでもしたら、今後こちらの動きが制限されるかもしれないしな)

 

((わかりました)(わかった))

 

 

 アレックス達には悪いが、今はまだ話せない。それにロバートから聞いた情報と異なり、違う魔物である可能性もある。本格的に情報の開示を検討するのはその後だ。

 

 

「人面の魔物? 村長は見たことあるか?」

 

「我輩にはございませんな。 此処ら一帯では見かけませんし、そもそもそんな魔物が居たなど初耳です」

 

「未登録の魔物か。これは教会本部に報告するべきだろうな。それでパーカー、君の仲間はどうした?」

 

「ぅっ..........ぅぅぅっ!」

 

「そこから先は我輩が話しましょう。すまんがお前達、パーカー殿を客室で休ませてやってくれ」

 

 

 デビッドの問いにもう答えることが出来なかったパーカー。そんな彼を見かねてアレックスは、村の男達にパーカーを客室に連れて行くよう促した。

 

 

「申し訳ありませぬデビッド殿。先程までは彼も落ち着いていたのですが..........」

 

「いや、こちらこそ私の配慮が足りなかったようだ。彼には申し訳ない事をした..............話を戻そうか、村長殿」

 

「はい。彼らのパーティは一人が死亡、もう一人は逃走中にはぐれたそうです」

 

「銀ランクの冒険者パーティがほぼ壊滅か。つまり、我々を此処に呼んだのは..........」

 

「ええ。ご推察通り、パーカー殿の仲間の捜索。それとその魔物の討伐、或いは調査であります」

 

「その捜索と討伐に抜擢されたのが、俺達ってわけだな」

 

「その通りでございます、シン殿」

 

 

 デビッドとアレックスの会話にシンが割って入り、アレックスの考えを言い当てた。そのシンの言葉にアレックスは真剣な面持ちで頷き、この場にいる者達の視線がシン達に注がれる。それを受けてシンは「わかった」と短く返事し、了承の旨を伝えた。

 

 すると困惑した表情を浮かべていた愛子が口を開いた。

 

 

「待ってください! それほど危険な魔物の討伐に要君達だけを行かせるなんて、せめて討伐隊を組むか、他の冒険者に協力者をお願いするとか..........!」

 

「先生、時間をかければかけるほど状況は悪化するのみです。もしパーカーさんの仲間が今この瞬間にも生死を彷徨っているとしたらすぐにでも助けに行くべきだ。最短で山を駆け登り、探索能力を持ち、銀ランク以上の実力者が必要というのならば、()()()()が一番適任です」

 

「それは..........確かに、そうかもしれませんが..............」

 

 

 シンの言う通り、人命救助は時間との勝負。それに“戦闘力や山を登り降りする体力面、そして探索に優れた者を”という条件になると、それを満たせるのはシン達だけであった。実に合理的な人選。愛子はそれ以上何も言えなかった。

 

 そんな愛子を他所にシンはアレックスに問いかけた。

 

 

「だがもし、その魔物が俺達とすれ違う形でこの村を襲いに来たらどうするのです? そもそもその魔物が一体だけとは限らないでしょう。 パーカー()のあの様子から察するにランク金以上の強さはありそうですよ?」

 

「ええ、問題はそこですな。我輩も元は金ランクの冒険者でしたが今は現役を引退した身。最悪我輩達の手に余る相手かもしれませぬ」

 

「私達神殿騎士や玉井達の力を足してもか?」

 

「神の使徒様方の力は重々承知しておりますが、相手がランク金相当かそれ以上となると話は別ですな。相手より劣っている分だけこちらが疲弊しますし、そもそも戦力が圧倒的に足りませぬ」

 

「くっ..........!歯痒いものだな..........」

 

 

 デビッドは自身の無力さを痛感し、悔しそうに歯噛みした。

 

 アレックスの言う通り戦力が足りない現状、高ランク相当の相手に中途半端な戦力では無益に被害を被るだけ。シンやロクサーヌ、レオニスの様な高次元に特出した何かが無ければ、その差を打開する事は出来ない。アレックスは元金ランクの冒険者。彼ならそれも可能にしたかも知れないが、現役から退いた今では厳しいだろう。むしろ彼を失えば一気に状況が悪化する。

 

 そこでアレックスはある提案をした。

 

 

「そこでシン殿、貴方のパーティメンバーであるロクサーヌ殿、もしくはレオニス殿のどなたかをこの村に留めていただけませぬか?」

 

「ふむ。確かに村の足りない戦力を補うならそれが一番妥当だな」

 

「では私が残りましょう」

 

 

 するとロクサーヌがいの一番に声を上げた。

 

 

「いいのか、ロクサーヌ?」

 

「はい、迅速な人命救助が求められるのでしたらレオニスの耳が必要でしょうし。それに村で何か起こり、シン様を呼び戻す事になった際には私の鼻が役に立ちますから」

 

 

 ロクサーヌの言う通り、僅かな物音でも拾う事が出来るレオニスは行方不明者の捜索に欠かせない存在だ。それに狼人族であるロクサーヌの嗅覚であれば匂いを辿って捜索に出たシン達を追跡する事も出来るし、彼女の足ならそう時間もかけずに捜索に出たシン達に追いつく事も可能だ。

 

 本当はロクサーヌの鼻にも頼りたいところだが、後々の事を考えるならそれが一番妥当な人選であった。

 

 

「わかった。ならお前に任せる、頼んだぞ、ロクサーヌ」

 

「はい。お任せください!」

 

 

 シンの言葉を聞き、ロクサーヌは真っ直ぐにシンを見つめ、力強く頷いた。

 

 

「そうなると捜索に行くメンバーが二人だけになってしまうが、どうする?」

 

「では私が同行しますっ!」

 

 

 デビッドのもっともな疑問に、食い気味に発言したのは愛子だった。

 

 

「なっ!何を言っているのだ愛子!」

 

「私の天職は非戦闘職ですので、この村の戦力にはなり得ません。なら要くんの探索メンバーに加わるのが一番かと」

 

「それなら尚のこと愛子を行かせられるわけないだろ! 捜索中、その魔物が現れたらどうする! 危険な目に遭うかも知れないのだぞ!」

 

「そこは心配無いでしょう。シン様の力なら愛子さんを守りながら戦うことなど造作もありませんしね」

 

 

 シンに同行しようとする愛子を止めようとするデビッド。だがロクサーヌが心配する必要は無いと割り込んで発言し、それを聞いたデビッドは若干眉を顰めた。

 

 

「ッ..........! なら私も同行しよう!」

 

「いいえ、デビッドさん。貴方はこの村が必要としている戦力なのですから私のことは気にせず、もしもの時に備えてこの村に残ってください。神殿騎士である貴方が居れば村の人達も安心出来ると思いますから。それに私なら大丈夫です!こう見えて私、山登りには自信があるんですよ!」

 

「愛子..............。わかった、君の期待に応えるとしよう!」

 

 

 デビッドはあっさりと愛子の言い分を受け入れた。もう少し食い下がってくると思ったが、どうやら愛子の真剣な顔つきに魅了されてしまったらしい。ちょろすぎだろ神殿騎士。

 

 

「要くん、かまいませんよね?」

 

「..............ふっ。どうせ俺が何か言ってもあれこれ理由をつけてついて来るんでしょ?かまいませんよ、貴方を守ることぐらい造作も無いです」

 

「では探索のメンバーは要殿、レオニス殿、愛子殿の御三方でよろしいですかな?」

 

「いえ。どうせでしたらあと一人..........三人、愛子さんに同行させて欲しい人達がいます」

 

 

 愛子の同行を許可したシン。そして編成された探索メンバーを改めて確認するアレックスだったが、そこにロクサーヌが人員の追加を要求した。

 

 そしてロクサーヌが口にした人物の名前は....................

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ー

 

 

 

 

「えー、というわけで、皆さんにも探索チームに加わってもらう事になりました。早速ですがこれから山入りしますので、よろしくお願いします!宮崎さん、菅原さん、園部さん」

 

「「「...................」」」

 

「あ、あれっ!?皆さんっ!?」

 

「まあその反応は無理もないだろう。半ば強引にロクサーヌが要求を通したのだしな」

 

「........................」

 

 

 ロクサーヌが要求した三名、それは宮崎と菅原、そして園部だった。彼女達に事の顛末を説明した愛子だったが、まるで鳩が豆鉄砲を食った様な表情で無反応な園部達。それを見て愛子が戸惑っていると、レオニスが園部達の気持ちを(おもんばか)った意見を述べる。一方でシンは頭を抱えていた。

 

 

(たまに強引なんだよなぁ、ロクサーヌって.............)

 

 

 村長宅に集まり探索チームのメンバーがシン、レオニス、愛子の三人に決まった時、ロクサーヌは堂々と園部達の名を口にし、彼女達を探索チームに加える事を勧めた。

 

 ロクサーヌ曰く、ーーーー

 

『自分が抜ける以上、捜索の目は多いに越したことありません。それに愛子さん一人を探索チームに同行させる事を優花さんが許すはず無いでしょう。必ず着いて行くと言うはずです。なら優花さん達にも協力していただき、愛子さんの護衛として参加させましょう』

 

ーーーーとのことだ。

 

 “ なら玉井や清水でもいいのでは? ”と聞いたシンだったが、「女の勘は山の中でも働きます」とのこと。何それッ!?女性の勘ってすげぇ便利だなぁッ!?(←お前が言う?)

 

 なんて思いつつ、何故あえて園部達なのか疑問しか残らなかったが、シンは未だ読み切れていないロクサーヌの意図を信じる事にしたシン。しかし、ロクサーヌの言動に何処となく既視感を覚え、「他意は無いんだよな?」とシンが彼女に問うと「.........ふふ」と微笑みで返された。あとでしっかり問い詰めようと決意するシンだった..........

 

 結局ロクサーヌの要求をアレックスは受け入れた。愛子は最初気が進まない様子だったが最後はロクサーヌの「貴女を心配する生徒の気持ちも受け入れてください」という言葉で頷いた。

 

 二人の許可も下り、早速出発する事にしたシン達捜索チームは園部達に事情説明をしたのだった。

 

 そして現在、計六名の捜索チームは山の入り口付近に居た。

 

 

「事情は分かりましたけど..........私達、本当に役に立つんですか?」

 

「戦うのも正直..........その、怖いですし..........」

 

「足手纏いになるんじゃ..........」

 

 

 園部、宮崎、菅原がもっともな疑問と不安を口にする。無理もないだろう。ただの人命救助ならまだ構わないが、そこにランク金相当の魔物が関わってくるとなれば、不安を抱くのは当然のこと。

 

 そんな彼女達を見てシンは気持ちを切り替え発言した。

 

 

「心配するな、お前達はあくまで先生の護衛役。戦闘になれば俺とレオニスの二人で対象するし、必ず守ってやる。だから、お前達は目視で何か手掛かりになりそうな物とかを見つけて欲しい。急で悪いが、頼めるか?」

 

 

 シンが真剣な表情で園部達を見つめる。そんな彼の強い眼差しを見た彼女達は、一度三人で目配せをし、そして頷いた。

 

「..............わかった。出来る限り力になれるよう頑張るわ」

 

「まあ、要っちとレオニスさんが居るからって愛ちゃん先生を放ってはおけないもんね」

 

「うん。要くん、私達のことちゃんと守ってね?」

 

「ああ、任せろ。それじゃあすぐに出発する。が、その前にーーーー」

 

 

 シンがひとつ指を鳴らし、[認識阻害]を発動させた。これによってシン達六名以外は自分達の事を認識出来なくさせた。愛子や園部達はシンが何をしたのか分からず疑問符を浮かべている。

 

 

「俺達は今、周囲の存在から認識されなくなっている。簡単に言えば見えなくなってるって事だ」

 

「そんな魔法も使えるようになってたんだ..........」

 

「なんか、女子のお風呂とか覗くのに使えそうな魔法だね」

 

「あんた、まさかそんな目的の為にその魔法を覚えたんじゃ.......」

 

「んなわけないだろ?そもそもそんな発想も無かったわ。宮崎が中身おっさんなだけだろ?」

 

「なっ!?要っち酷くないっ!?」

 

 

 シンが軽く認識阻害の説明をすると、菅原が感嘆の声を漏らすが、宮崎が誤解を招く発言をした。それに反応した園部がシンに問い詰めるが、シンはすぐ否定し、不用意な誤解を招いた宮崎に仕返しをした。

 

 

「それで要くん、何故そのような魔法を今?」

 

「これから起こる事を周りに知られないためです..........先生、園部、宮崎、菅原、今から見る事は絶対に他言無用だ。ーーーー良いな?」

 

 

 シンの言葉に頷いた四人。

 

 それを確認したシンはレオニスに「頼む」と短く言葉をかけ、レオニスは頷いた。

 

 するとレオニスの体から眩しい光が溢れ出し、その光は園部達の視界を覆った。あまりの眩しさに目を閉じ、手で光を遮ろうとしていた四人。そしてようやく光が収まったことを感じた園部達は閉じていた瞼を開け、視界に映った光景に目を見開いた。

 

 そこに居たのは巨大な獣。

 

 硬い鱗に覆われ、長い尻尾を持ち、鋭い牙と爪、そして赤く鮮やかな立髪をした巨獣ーーー赤獅子だった。

 

 

「か、かか要くんッ!?.............それは一体..........!?」

 

「さっきお前達が話してたレオニスだ。普段は[人化]って言う俺が付与した魔法の効果で人の姿をしてるが、元はこの姿だ。()()()()では絶対に見られない最強の魔物“赤獅子”、それがレオニスの正体だ」

 

「れ、レオニスさんッ!?!?」

 

「レオニスさんが、まさか魔物だったなんて..............!?」

 

「しかも、最強の魔物って..........」

 

「ちょっと待ってよ要!あんたさっきこの大陸って..........その言い方じゃまるで、()()()()があるみたいな言い方じゃない!」

 

「それについては道中に話してやる。それより急ぐぞ。全員、レオニスの背中に乗れ」

 

 

 愛子の疑問にシンは答えた。それを聞いた愛子、宮崎、菅原が思い思いの言葉を口にする一方、園部はシンの〝大陸〟という言葉に反応を示した。

 

 だが今は時間が惜しいので、レオニスのこと、カタルゴ大陸のことは後ほど説明することにし、レオニスの背中に乗るようシンは促した。

 

 突然現れた巨大な魔物に困惑する園部達は、“背中に乗る”という行為に戸惑っていた。

 

 なのでシンが一気に[力魔法]で彼女達の体を浮かせ、レオニスの背に乗せると、園部達はいきなり自分の体が浮いたことに驚き、「きゃっ!」と女の子らしい声が上がった。その中で園部は突然の浮遊感に驚きつつも、目の前のシンにスカートの中が見えないように素早く押さえた。

 

 言えない、実はちょっと見えたとか..............

 

 

 彼女達を雑に浮かせてしまったことを反省しつつ、シンもレオニスの背に飛び乗った。

 

 

「それじゃあレオニス、頼む」

 

「任せろ」

 

「お前達、ちゃんと掴まってろよ!」

 

 

 シンの掛け声を聞いた愛子や園部達が「ガシッ!」とシンの体にしがみつく。かなり必死な様子で。

 

 そしてレオニスが持ち前の健脚で山道を駆け出した。

 

 赤獅子バス、出発進行ー!




筋肉と園部とマンティコアの回でした。ロクサーヌが残った意味はストーリー的にあります。


補足


『登場人物』


「アレックス・カルロー」
・筋肉ムキムキのスキンヘッドで毛先がカールした黄金の髭を生やしたカルロー村の村長。元金ランクの冒険者で妻と娘の三人で仲良く暮らしている。筋肉に対するこだわりが強く、レオニスとシンの筋肉を高く評価している。カルロー村出身であり、葡萄作りと筋トレに情熱を注いでいる。年子の姉が一人おり、その姉は現在ブルックの冒険者ギルドで働いているらしく、彼の親友も現在ブルックで冒険者向きの店を営んでいるそうだ。姉の名は「キャサリン」、親友の名は「クリスタベル」
(イメージは“鋼の錬金術師”に登場するアレックス・ルイ・アームストロング少佐です)


「パーカー」
・ブルックにやってきた冒険者パーティの一人で、銀ランクの青年。冒険者界隈でもかなり名の通った実力者だが、人面の魔物を見て以降、冒険者を引退することを決め、カルロー村で暮らすようになる。


『登場した舞台』


「カルロー村」
・王国、帝国、公国と共に有名な“カルローワイン”の原産地。村民の数はそれほど多くはなく、村民の住宅が一箇所に密集している。村の男達はみな一様に良い体をしており、村長であるアレックスが鍛えたことでそうなった。広大な葡萄畑を有しており、その畑の周りには魔道具で魔物を寄せ付けないようにしている。しかし近年魔人族の動きが活発になったせいか、日に日に強力な魔物が来るようになっていた。しかし、アレックスや村の男達でも十分対処出来る相手だったため、冒険者に依頼を出すことが無かったらしい。
葡萄以外にも家畜や野菜などの農業が盛んである。
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