ありふれた職業で世界最強〜付与魔術師、七界の覇王になる〜   作:つばめ勘九郎

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つくづく思う。ハーレムって難しいんだと..........。



醜悪な魔物 VS 付与魔術師

 

「..............ねぇ、いい加減離離れなよ、二人とも」

 

「「やだ」」

 

「はぁ〜、もぉ..........」

 

 

 現在、地面に腰を下ろしている園部は友人の宮崎と菅原が抱きついていていた。

 

 そんな二人に離れるよう呼び掛ける園部だったが、返ってきた答えは「やだ」の二文字。離れるつもりはないらしい。園部が呆れ半分で溜息を吐くが、正直そこまで嫌だとは思ってはいない。ただ一向に離れる様子が無いので試しに聞いてみただけに過ぎない。

 

 

「仕方ないですよ、園部さん。お二人は本気で貴女の事を心配してたんですから」

 

「そうですよね..............二人とも、心配かけてごめんね?」

 

 

 愛子にそう言われた園部は二人を抱き返しながら謝罪した。それに対し宮崎と菅原は鼻を鳴らし、涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら「..........ゔん」と返事した。

 

 

「ヴィーネさん..........ですよね? さっきは園部さんを助けてくれて本当にありがとうございました」

 

「私からも! 助けてくれてありがとうございました」

 

「「優花(っち)を助けてくれてありがとうございましたっ!」」

 

 

 愛子、園部、宮崎、菅原がヴィーネにお礼の言葉を述べた。四人ともがヴィーネに対してしっかりと頭を下げている。尤も、宮崎と菅原の二人は未だに園部にくっついているが。

 

 

「気にしないでください。私が園部さんを助ける事が出来たのは偶々です..........それより、愛子さんは私のことをご存じだったのですね」

 

「え、あ、はい。要くんから一応聞かされていましたので..........」

 

「そうですか。愛子さん、貴女が私と此処で会ったことは他言無用でお願いします」

 

「わ、わかりました! 園部さんの命の恩人がそう望むのでしたら!」

 

「..........やはり、聞いていた通りの方なんですね

 

「はい? あの〜、 いま、何か言いましたか?」

 

 

 ヴィーネがボソボソと小声で何かを呟いたが、小声な上に仮面で声がくぐもっているため愛子には全く聞こえなかった。なので愛子が何を言ったのか聞き返してみたが、ヴィーネは「いいえ。お気になさらず」と一言呟き、愛子から顔を背けた。

 

 そっぽを向けられた事で、何か気に障っただろうか?と気を落としそうになった愛子だったが、ヴィーネは顔を背けたのでは無く、こちらに向かってくるレオニスに視線を移しただけだった。

 

 こちらに歩み寄ってくるレオニス。既に彼は[人化]しており、真っ直ぐヴィーネを睨みつけていた。

 

 そしてレオニスはヴィーネの前に立ち、彼女を見下ろながら口を開いた。

 

 

「お前がヴィーネか..............嫌なことを思い出させる仮面だ」

 

「私としても不本意なのでご容赦ください..........はじめましてレオニスさん。貴方の事は友人から聞いております」

 

 

 「友人?」とレオニスが訝しそうに呟く。だが次の瞬間にはヴィーネの言葉に納得しつつ、彼女が羽織るローブの中に隠れている存在に鋭い視線を向けた。

 

 

「どうしてお前がそこにいる、()()()()?」

 

 

 なんとヴィーネが羽織る黒ローブの中には、シンが園部達と再会する前に行方知れずとなったバウキスがいた。ヴィーネの事を未だに信じ切れていないレオニスにとって、バウキスがヴィーネと行動を共にしている姿は裏切り行為に見えたのかもしれない。

 

 レオニスの言葉には明らかに怒気が孕んでいた。それを聞いたバウキスが本当に申し訳なさそうに縮こまっている。

 

 

「彼女を責めないであげてください。彼女は進さんの事を思って私に協力してくれたんです」

 

「.......................バウキスの事も含めて、後できっちり話してもらうぞ?」

 

「はい。そのつもりです」

 

 

 そんな二人のやり取りを横で見ていた愛子は物凄く居心地が悪そうだった。そんな愛子に助け舟が入る。

 

 

「あの、レオニスさん..............要は?」

 

 

 園部がそう問いかけた。内心で「ナイスタイミングです、園部さん!」と愛子が思っているともつゆ知らず、園部は純粋に何故レオニスが此処に戻ってきたのか気になり問い掛けたのだ。

 

 

「一人で相手をするそうだ。さっきみたいな不意打ちに備えて、“君達のそばに居ろ”と言われた」

 

「そんなッ! 要一人でなんてッ...............!」

 

「アイツなりの“けじめ”だ。君を危険な目に合わせてしまった事に対してのな」

 

「けじめって..........」

 

「「要っち.....(要くん.....)」」

 

 

 レオニスの言葉を聞いて園部、宮崎、菅原は、シンがどれだけ責任を感じているのか悟り、不安そうな面持ちになる。

 

 

「ですが、要くん一人で相手するのはいくら何でも酷な事でわっ?!」

 

「いや....................そうでもないぞ?」

 

 

 レオニスが顎で指した先に愛子や園部達が視線を向けた。

 

 そこには三体のマンティコア達に向かって普通に歩いていくシンがいた。彼の体からは虹霓の光が溢れている。

 

 レオニスにやられた傷をあっさりと再生させたマンティコア達がシンを見つけると一斉に駆け出し、シンに襲い掛かろうとする。

 

 だがマンティコア達はシンの[力魔法]によって進路を阻まれている。力魔法越しに伝わるマンティコア達の抵抗力は、ほんの数分前に体感したものより増していた。

 

 

「お前達は再生するたびに力が増していくのか?..........こういうところも、俺が最初に鑑識(見た)時点で気づいていれば、園部にあんな思いをさせずに済んだのかもしれないな..........」

 

 

 シンは己の未熟さに嫌気が差し、自虐的に語り始めた。勿論、マンティコア達からの返事を期待しての発現ではない。ただ己の愚かさを悔いる様に言葉を紡ぐ。

 

 

「お前達を侮った結果があれだった..........ただそれだけのこと..........俺が本当に怒りをぶつけるべき相手は俺自身、そんな事は重々承知している..........己の無力さと未熟さを良く知れたよ」

 

 

 シンが握り込んだ拳から、自身の血がポタポタと溢れ落ちる。沸々と込み上げて来る怒りがその拳に宿って行く。

 

 園部はヴィーネのおかげで助かった。だがもし、ヴィーネが来なかったらどうなっていた?..........考えただけで自責の念がさらに増す。 もし園部ではなく、他の誰かだったら?考え出せばキリが無い。例えば、ロクサーヌや地球に居るチビ達、レオニスや八重樫、リリアーナ、宮崎、菅原、愛子、八重樫、カトレア..........そしてハジメ。 また俺は失うのか? いいや、それだけは絶対に許さない。手に入れたモノ、この手で掴んだモノはもう二度と離さない。その為ならどんなことでもする。

  

 例えそれが、どれほど卑劣で残酷なやり方であっても。

 

 シンは握り込んでいた拳を開き、目の前にいるマンティコア達に向けて掌を向けた。

 

 

「だが、それとこれとは話が別だ–––––––––お前達は此処で、〝排除〟する」

 

 

 途端マンティコアの一体が途轍もない重圧を一身に受け、まるで紙切れをクシャクシャに丸め込んだ様に潰されると、血肉の一片たりとも残さず、()()()()()()()()に飲み込まれて行くように消えた。再生する気配は無い。

 

 残った二体のマンティコア達が小首を傾げる。

 

 

「あぁ、良かった。これで再生されたら流石に打つ手が無かったんだが..........どうやらお前達は肉体が消えれば再生出来ないみたいだな。本当に良かった..........これで心置きなく–––––––––お前達を“消し去れる”」

 

 

 シンの目。それはマンティコアを生物として見ておらず、まるで使い捨ての塵紙程度にしか見ていない至極平然とした冷たい眼差しだった。

 

 そんなシンの言動を見聞きした二体のマンティコアは、本能的に目の前の人間に恐怖を覚えた。

 

 シンが先程行ったのは、[力魔法]に魔法付与で[重力魔法]を付与した技–––––〝黒洞〟–––––。

 

 シンが自在に操る[力魔法]に[重力魔法]の一つ〝絶禍〟を付与したモノで、力魔法の威力を跳ね上げ、物体を内側へと圧縮させて行き、最後は塵一つ残さず消滅させる力魔法の強化技である。普段の[力魔法]より何倍も魔力消費が多いうえに緻密な魔力制御が要求される。しかし構築されたその魔法の威力は絶大、そのうえ射程範囲も広い。

 

 マンティコア達は本能的にシンから逃れようと、シンに背中を向けて一体は山道の方へ、もう一体は岩壁の方へと駆け出した。

 

 

「逃すわけないだろ?」

 

 

 山道の方へと駆け出したマンティコアの背に向けて、シンは片腕を伸ばし、掌を握り込んだ。すると山道に逃げ込もうとしたマンティコアの動きが止まり、先程消滅したマンティコアと同様に消え去った。  

  

 それを見ていた最後のマンティコアは必死な形相で岩壁を駆け上がろうとしている。しかし、途端に上方向からの重圧によって地面に叩きつけられた。それでもこの場から逃げようと立ち上がるマンティコアだが、今度は前方向からの重圧によって岩壁に縫い付けられた。

 

 そしてシンはそのマンティコアの前にやってきた。

 

 

()()()()()()、お前達はこの世界にとって癌そのもの。放置は出来ない.............さらばだ」

 

 

 そう言ってシンは目の前のマンティコアに掌を向けると、今度はそのマンティコアの肉体を爆散させた。飛び散るマンティコアの血肉。しかしその血肉は灰塵の様に風化していき、完全に消滅した。

 

 今シンが行ったのは〝黒洞〟では無く、新たに編み出した[力魔法]の強化技–––––〝壊変〟–––––。

 

 〝黒洞〟とは異なり、[力魔法]に付与したのは[変成魔法]。アリエルが持つ三叉槍ダインスレイヴと同じ[変成魔法]の〝滅禍〟、つまり肉体を塵芥の様に崩壊させる魔法が施されたモノで、その効果によって全身を掴まされたマンティコアの肉体は、一部も余す事なく全てを塵へと変えられたのであった。

 

 更地に静寂が訪れる。

 

 シンは一度深呼吸をし、長く息を吐き捨てた。

 

 するとシンが纏っていた虹霓の光が消え、彼がフラつき始める。それを見た園部達が「要っ!」と彼の名を呼ぶ。そしてシンが倒れそうになった時、レオニスがシンの元に駆けつけ、彼の肩を掴み支えた。

 

 

「まったく、無茶しやがって。けじめとは言え、もっと自分の体を労われ」

 

「へへっ、悪い..........」

 

 

 油断無くマンティコアと相対するためとは言え、無理矢理[限界突破]の制限時間を引き延ばした反動は大きかった。そのうえ初めて使う[力魔法]の強化技〝黒洞〟と〝壊変〟で魔力をゴッソリ持っていかれ、精神的にも負担が大きかった。あまり多様する気にはなれない。

  

 シンはレオニスに支えられ、愛子や園部達の元に戻ってきた。

 

 そして園部の方に重い足取りでやって来たシンは少し目線を外して、園部に話しかけた。

 

 

「園部、体に違和感とか無いか?」

 

「うん、平気。 それよりあんたの方が心配なんだけど..........」

 

「大丈夫だ。少し体がダルいだけで、どこも悪くはない.......................それより園部、その〜、前、隠してくれないか? さっきは気にならなかったが、流石に今は..........」

 

「えっ?」

 

 

 シンの言葉を聞き、園部は思い出した。魔物の尾で胸を貫かれた際、服も一緒に破け、胸元を隠す布面積が圧倒的に足りない事を。

 

 

「〜〜〜〜〜〜〜ッ!?!?!?」

 

 

 途端園部の顔が真っ赤に染まり、元々着ていた丈の短いパーカー付きジャケットでガバッ!と胸元を慌てて隠した。だが逆にその行為が胸を寄せ、より一層胸の谷間を強調していた。隠そうとして隠せていないのは、スタイルが良い事を表しているのかも知れない。一応言っておくが、破れていたとは言え、それでも大事なところは隠れていたのでシンや他のメンバーにも見えていない。ただ少し以前の露出度が割増された程度。

 

 それでも乙女の柔肌が晒されていたのは事実であるため、園部はシンを睨み、口を開いた。

 

 

「み、見たんだよね..........?」

 

「..............はい、見ました。すいません」

 

 シンは素直に認め、頭を下げた。そんな彼を見て園部は何か言いたそうに口を開いたが、自分を助けようと奮闘していた彼を責める事は出来ず、開いた口から出たのは盛大な溜息だった。

 

 

「はぁ〜〜〜〜............いいわよ、許してあげる。 あんな状況で見るなって言うのは違うだろうし............だから、助けてくれてありがと」

 

「園部..........」

 

「私からもお礼言わせて。 あの時、優花っちが刺されて、私達なにも出来なかったけど、要っちは必死で手当してくれてた。きっとそのおかげで優花っちを救えたんだと思う。 だからありがとう、要っち!」

 

「私達の大事な親友を助けてくれて本当にありがとう、要くん!」

 

「お前ら..........」

 

 

 園部がシンにお礼を言ったのを皮切りに、宮崎と菅原もシンに感謝の言葉を述べた。宮崎の言う通り、もしあの時、シンが[自然治癒力上昇]を園部に付与し続けていなかったら、園部の命はとっくに尽きていただろう。それこそヴィーネが駆け付ける前に命を落としていたかもしれない。

 

 だからこそ三人はシンに礼の言葉を述べた。宮崎と菅原は目尻にまだ涙が残っている。

 

 そんな三人を見たシンは腰を下ろし、園部達三人と同じ視線に並び、少し困ったように笑みを浮かべ、口を開いた。

 

 

「その礼は素直に受け取っておく。俺も園部が助かって本当に良かったと思ってるからな。––––––––––––ただ」

 

 

 シンがそう言うと、宮崎と菅原の目尻に浮かんでいた涙の粒が何か温かいモノによって掬い取られた。それはシンの僅かばかりの心尽くし。[力魔法]で二人の涙を拭ったのだ。

 

 

「二人ともひどい顔してるぞ? あとで濡れタオルかなんかで顔を拭いとけよ?」

 

 

 こんな時でもナチュラルにイケメンムーブをかますシン。本人的には軽いジョークのつもりらしいが、された側はたまったものじゃない。宮崎と菅原の顔が少し赤くなった。

 

 

(あ、あれ? 今私、顔赤くなってる..........?)

 

(なんか、要くんの顔、まともに見れないかも..........)

 

「ん? どうしたお前ら?」

 

「要..........あんた、いつもそんな事やってるの?」

 

「えっ? まずかったか?」

 

 

 宮崎と菅原が心の内でそんな事を一人考えていた。宮崎と菅原が何も反応を示さないので不思議そうにしていたシンだったが、園部は呆れた様子でシンを半眼で見ていた。どうやらマジで気づいていないらしい。親友の二人が顔を赤くしてる様子に園部は少し複雑な気持ちになり、あとでロクサーヌに報告しようと決意した。ちなみに、園部は覚えていないらしいが、応急処置とはいえ彼女がシンとキスしていたのをバッチリ見ていた宮崎と菅原が、その事をロクサーヌにしっかり報告し一悶着起こるのだが、それはまだ先の話。

 

 

「話は済みましたか?」

 

 

 シンが園部達との会話がひと段落ついた頃合いに、ヴィーネが話しかけてきた。そんな彼女を見たシンは、重い腰を持ち上げ、レオニスの肩も借りつつ立ち上がった。

 

 

「気になることは幾つかあるが、その前に..........園部を助けてくれて礼を言う。本当にありがとう」

 

「感謝など不要です。私は、私がなすべき事をしたまでですから.................それよりも要進さん、貴方は私に聞きたい事があるんじゃないですか?」

 

「ああ、もちろんだ。 だがその前に..........バウキスっ!」

 

 

 シンがバウキスの名を呼んだ。するとヴィーネの黒いローブの中に隠れていたバウキスがビクッ!と反応し、ビクビクと怯えながら顔を出した。まるでいつ雷が落ちても良いように身構えている子供のようである。

 

 そんなバウキスが顔を出したのを見て、シンは安心した様子で息を吐き、破顔した。

 

 

「戻ってこいバウキス。お前の力が必要だ」

 

「(っ!!..........)」

 

 

 シンの言葉を聞いたバウキスは嬉しそうに舌をチョロチョロと出し、シンの首元に飛びついた。いつもならすぐにシンの懐に隠れるバウキスだが、今回は様子が違うらしく、嬉々としてシンの首元に絡みつき、その顔をシンの頬に擦り寄せた。

 

 そんなバウキスをシンは微笑みながら撫でる。

 

 

「よっぽど寂しかたみたいだな、よしよし」

 

「良いのかシン? コイツはお前に黙って俺達の元から離れたんだぞ? それに大事な金属器も..........」

 

「レオニス、許してやれって。バウキスはバウキスで俺達の事を思って行動したんだ。そうだろ?」

 

「(ふるふる..........)」←首を縦に振るバウキス

 

「だとよ」

 

「..........はぁ〜。お前がそれで良いなら構わないが......ヴィーネ、本当に説明してくれるんだよな?」

 

「ええ。元よりそのつもりです」 

 

 

 ヴィーネに最後の確認をしたレオニスはそれ以上は何も問い詰めなかった。一方いきなりシンの首に巻き付いた白い蛇を見た愛子や園部達は、最初はシンに不安そうな目を向けていたが、白蛇と仲良さそうに振る舞う彼を見て「もう何がなんだが..........」とボヤいていた。

 

 

「ヴィーネ、悪いが説明は村でしてくれるか? ロクサーヌも交えて話を聞きたい。もちろん俺とレオニス、それとロクサーヌだけで聞く」

 

「構いませんよ」

 

「あ、あのっ!」

 

 

 シンとレオニス、そしてヴィーネの三人で話が進んでいく中、愛子が三人に声を掛けた。

 

 

「私も皆さんの話し合いに加えていただけませんか? 今回の件と要くんから聞かされた話を踏まえて、私もヴィーネさんの話を聞きたいです!」

 

「う〜ん................二人はどう思う?」

 

「俺はお前の判断に従うつもりだが、彼女には一度話しているのだから問題無いと思うぞ?」

 

「私も、彼女の同席は問題無いと思います」

 

「..........先生の事も知ってたのか?」

 

「ええ。と言ってもあまり多くの事は知りませんよ?」

 

「........................そうか。ヴィーネに問題が無いのなら俺は構わない..........というわけだ先生。貴女にも同席してもらいます」

 

「わかりましたっ!」

 

 

 三人の許可がおり、愛子も話し合いに参加する事が決まった。

 

 そんな愛子を見ていた園部達は自分達も、その話し合いに混ざりたいという気持ちが顔に出ていた。しかし、園部達がその話し合いに混ざりたいとシン達にお願いしても、それは叶わないだろう。そのことを園部、宮崎、菅原の三人はなんとなく理解していた。自分達とシン達の立つ世界がかけ離れている様に見えたから。

 

 しかし、そんな彼女達の背中を押す鶴の一声がこの場に舞い込んだ。

 

 

「彼女達は同席させなくて良いのですか?」

 

「「「っ!!」」」

 

 

 その声の主はヴィーネだった。愛子が提案するならまだしも、まさかヴィーネがそれを持ちかけるとは思っていなかった園部、宮崎、菅原は驚いていた。

 

 シンは「ふむ」と鼻を鳴らし、眉間にシワを寄せながら悩んでいる。ヴィーネがそんな事を口にするとは思っていなかったので、彼女の真意を掴もうとしていた。

 

 すると今度は愛子が、ヴィーネの言葉に同調するようにシンに話しかけた。

 

 

「私からもお願いします要くん!園部さん達にも貴方がやろうとしている事を知る権利があるはずです!要くんが()()()()()()()事は、いずれクラスメイト全員が知るんですから––––––」

 

()()()()()()()..........? どういうこと要、あんた、元の世界に帰る方法を探してるんじゃないの?」

 

「––––––あっ..........!」

 

 

 愛子の言葉に一番早く反応したのは園部だった。愛子は自分が口を滑らさてしまったことに気づき、慌てて口を抑えたがもう遅い。体に響く鈍痛で顔を歪ませながら立ち上がり、シンに歩み寄ろうとしている園部。そんな彼女を宮崎と菅原が支え、二人も園部と同じ思いらしく、シンに縋るような面持ちをしていた。

 

 そんな園部達の視線を受け、シンは諦めたように溜息を吐き、愛子に向けて少〜し責める気持ちで視線を移した。

 

 

「やってくれたなぁ、先生。これじゃあどうあっても、話さない限り園部達が納得しないじゃないか..........」

 

「すいません..........」

 

「..............こうなることを見越して言ったのか、お前は?」

 

「はて、なんのことでしょう?」

 

 

 白々しくとぼけるヴィーネ。狙ってやったのか、それとも天然なのか..........いや、どう考えても前者だろう。しかし、この的確なタイミングで爆弾を投げ込んでくる手腕、シンはなんとなくクラスメイトの白崎香織を思い浮かべた。まあ彼女の場合は、ド天然からの爆弾投下だったが..........。

 

 そんな事を思い出していたシンは、園部達に視線を向けた。彼女達三人は真っ直ぐシンの視線を受け止め、見つめ返している。

 

 そんな彼女達を見て、シンは眉を下げて笑みを浮かべた。

 

 

「わかった、園部達にも話を聞いてもらう。だが先生、神殿騎士達には絶対に聞かせられない..........口を滑られるなんて、(もっ)ての(ほか)ですよ?」

 

「気をつけますっ! もう二度としませんっ!」

 

 

 シンが割とガチな感じで警告したため、愛子はビシッ!と軍人の敬礼みたいなポーズをとって宣誓した。その言動と、シンとの身長差も相まって、どっちが先生なのかわからないなぁ〜と思った園部達。

 

 

「宜しい。まあ先生のことはちゃんと信頼してますから、誰にどう情報を開示するかは先生に任せます」

 

「はいっ! 私はやれば出来る子ですから、任せてくださいっ! フンスッ!」

 

(本当に大丈夫かな..........)

 

 

 やる気は十分な愛子、そんな愛子を見たシンは若干不安になった。やる気に満ちてる時ほど割と空回りする事がある愛子。まあ、愛子の人間性を知っているシンが彼女を信頼しているのは事実であるし、空回りするところが生徒の受けが良い理由の一つなのだが..........。

 

 そんな事をシンが考えていた時–––––––––

 

 

 〝ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ〟

 

 

––––––––突然地面が揺れ始めた。

 

 震源地が近いのか、その揺れの強さはかなりのものだ。

 

 シン、レオニス、ヴィーネはその揺れで体勢を崩すことは無かったが、愛子や園部、宮崎、菅原は思わず倒れそうになっていた。だが倒れそうになった愛子はヴィーネが支え、園部達は三人で支え合っていた。

 

 揺れがまだ続いている。

 

 するとレオニスが地面に耳を当て、震源地とその原因を探ろうとしていた。

 

 

「これは..........やはり地震じゃないな。巨大な魔物が地面を掘り進んでいる..........それも複数体。 震源地は..........カルロー村か」

 

「「「「ッ!?」」」」

 

 

 レオニスの言葉に愛子や園部達が目を見開いて反応し、愛子が口を開いた。

 

 

「もしかして、またさっきの魔物が..........?!」

 

「いえ、それは無いと思います。“マンティコア”は先程、要進さんが倒されたもので全てです」

 

「何故そう言い切れる?」

 

「私が他の“マンティコア”を倒したからです。貴方方とここで出会したのは、取り逃した()()()()()を追っていたためですから」

 

 

 シンの問いに対してヴィーネは確信を持ってそう答えた。そんな彼女の言葉を聞いて「やはりか..........」とシンは呟き、ハッ!とした様子で園部の体を[鑑識]で調べるため、彼女に視線を向けた。不意に視線を向けられた園部は不思議そうにシンを見返している。

 

 するとシンは園部に近寄り、彼女の左手を手に取り、もう片方の掌で園部の額に添えた。いきなりそんな事をされて戸惑う園部。

 

 

「ちょ、ちょっ! 何してるのよ、要ッ!」

 

「良いから黙ってろ」

 

「ッ〜〜〜〜〜............」

 

 

 真剣なシンの声と眼差しに思わず園部は黙り込み、彼にされるがままとなった。その顔はやっぱり赤い。隣に居る宮崎と菅原が何やらニヤニヤして見ている。

 

 シンは入念に園部の体の状態を調べている。[鑑識][気配感知][魔力感知][天眼]など、自身が持ち得ている全ての手段で園部の状態をチェックしていた。その限りでは、どこも問題は無さそうだ。一応シンが触れている園部の手と額から[術式解体]もかけておく。

 

 するとヴィーネが一つ咳払いをした。

 

 

「ゴホンッ............園部さんは大丈夫です。奴らに()()を植え付けられる前でしたので」

 

「.............その様だな」

 

 

 シンは安堵の息を吐き、ようやく園部の額から手を離した。だが、左手を離さない。いや、離せなかった。園部がシンの手を掴んでいたからだ。

 

 

「園部..........?」

 

「えっ........? あっ!違うのっ!これは、そのっ..............」

 

 

 園部が素早く自分の左手を引っ込めた。適当な言い訳を探そうとする園部。そんな彼女を不思議そうに見つめていたシンだったが、つい先程()()()()()()()()()()()()()()()を想起し、気まずくなってしまった。

 

 そんなシンを見た宮崎と菅原は「ああ〜〜〜..........」と今度こそシンが勘付いたことに気づいた。

 

 するとレオニスが先程のヴィーネ以上に咳払いをして話を戻そうとする。

 

 

「ゲッホンッ!!............シン、そういうのは後にしてくれ。今はカルロー村に向かうのが先決では無いのか?」

 

「あ、ああ! そうだな、悪かった。 園部もいきなり触っちまって悪かった」

 

「べ、別に良いわよ..........何か気になる事があったんでしょ? やましい気持ちがある様子じゃなかったし..........」

 

 

 何がいいのでしょうか?とは誰も訊かない。その代わり宮崎と菅原のニヤニヤ具合がさらに増していた。園部は自分の髪の毛先をくるくると指でいじりながら、シンにそう答えたのだった。

 

 

「えーと..........カルロー村に巨大な魔物の影ありって話だったな、それも複数体」

 

「ああ、それもかなりの大きさだ。村長やロクサーヌだけでは手が回らないかもしれない」

 

「わかった。––––––––バウキス、俺の金属器や服、それとロクサーヌの魔剣はちゃんと持ってるな?」

 

「(ふるふる..........)」←首を縦に振るバウキス

 

「良し」

 

「要くん、どうするの?」

 

 

 シンの言葉を聞き、菅原はシンが何をするのか率直に質問した。

 

 

「山を飛び降りて、一気に魔物を掃討する。ヴィーネは先生と園部達と一緒に住民の避難を手伝ってくれ」

 

「わかりました」

 

「バウキス、俺の()()()を出してくれ」

 

 

 シンがそう言うと、バウキスはシンの両腕に呑み込み、“異袋”から金属器をシンに装着させた。そして吐き出した首飾りをシンの首に掛けた。

 

 ようやく、シンの元に〝七つの金属器〟が揃った。いかなりシンが豪華な装飾に身を包んだ事で愛子や園部達がポカンとしていた。だが、それらを纏うシンの姿はどこか様になって見える。

 

 そしてバウキスはロクサーヌの“魔剣アンサラ”を吐き出し、それをレオニスが受け取った。

 

 すると園部がある事に気づいた。

 

 

「あんた、その腕輪..........」

 

「ああ、やっぱ気づいたか? あの時園部と一緒に冒険者ギルドで買った首飾りさ。一度壊れたから“ある人”に加工し直してもらってよ。今じゃこの通り、銀の腕輪さ」

 

 

 シンが右腕に身につけている銀の腕輪、それがかつて王都の冒険者ギルドで彼が購入した首飾りだと気づいた園部。

 

 

「お前も着けてくれてるんだな、その指輪」

 

 

 シンの視線の先には、園部がいつも身につけている指輪があった。それはシンが身につけている銀の腕輪と、同じタイミングで彼が冒険者ギルドで購入し、園部にプレゼントした物だった。その指輪を園部は左手の小指に嵌めている。

 

 

「..........覚えてたんだ」

 

「まあな。–––––––––さて、思い出話に花を咲かせるのは全部片付いてからにしよう。じゃないと、またヴィーネやレオニスにドヤされるからな」

 

 

 肩をすくめ、微笑みながらシンがそう口にした。そしてシンは右腕に装着した銀の腕輪に魔力を通すと、虹霓の光が銀の腕輪〝フォカロルの金属器〟から溢れ出して行く。

 

 [限界突破]を使用してから、それ程時間は経過していない。そのため体力も十分に回復し切っておらず、倦怠感や疲労感が未だ残っていた。しかし、魔力は十分回復していた。ミレディ・ライセン大迷宮攻略後に気づいた事だが、シンの[英傑試練]は新たに[高速魔力回復]を獲得していた。付与魔法の派生技能[魔力回復効率上昇]とその[高速魔力回復]、二つの効果が合わさった事でシンの魔力回復速度は途轍もない速さとなっている。魔力さえどうにかなれば、体の疲労感など些細なこと。

 

 これなら()()を使用することも十分可能である。

 

 シンは銀の腕輪を顔の前に掲げ、詠唱を始めた。

 

 

「––––––〝支配と服従の精霊 “フォカロル”、汝と汝の眷属に命ず〟––––〝我が身に宿れ、我が身に纏え、我が身を大いなる魔神と化せ〟––––––」

 

 

 腕輪から溢れていた虹霓の魔力は吹き荒れる()()へと変わった。

 

 烈風がバウキスとシンの体を包み隠し、次の瞬間、シンがその強風のベールを右腕で切り払い、腕を組んだ姿勢で現れた。

 

 しかし、その姿は先程までの冒険者風の装いでも無く、ましてや姿形も違うものだった。

 

 シンの長い髪は赤黒い紫、どちらかと言うと桑の身色に近い色に染り、長髪の中腹から毛先に掛けてまるで鷲の羽根のような物を纏っている。それは髪だけでは無く、腕や足の先端など、随所に漆黒の羽根が纏われていた。さらにシンが着ていた服は何処から消え去り、代わりに赤い腰布と羽衣、金の装飾のみを身につけている。晒された逞しい上半身、手足には髪色と同じ色をした特徴的な模様が刻まれており、シンの額に縦に割れた第三の目、そして二本の小さな角が生やしており、今の彼の姿を表すなら、〝黒い風神〟或いは〝夜空の浮かぶ怪鳥〟と言った姿だ。

 

 その姿こそ〝魔装フォカロル〟。バウキスの姿が見えないのは、魔装の内側に取り込まれたからである。バウキスが()()()にそうしたらしい。いつの間にそんな事が出来るようになったのか..........

 

 一方、今のシンの姿を見た愛子、園部、宮崎、菅原の四人は「えぇぇ〜〜〜ッ!?!?」と声を張り上げ、驚愕した。

 

 

「「「「要(っち・くん)が変身したぁッ?!?!」」」」

 

「フッ、これも後で説明する。さあ、村に急ぐぞ」

 

 

 シンはトンッと軽くジャンプすると一気に空に飛び上がった。そして彼の両掌に刻まれた八芒星が輝き、リュックを背負ったレオニス、ヴィーネ、さらに愛子や園部達を風で浮き上がらせ、シンと同じ空域に上昇させられた。

 

 それを見届けたシンは物凄いスピードで夜天を翔け抜ける。レオニス達もその後に続くように飛翔し、烈風と化した。

 

 七つの風が夜闇を切り裂き、目的地に向かって行く。

 

 




今回はマンティコアVS要進、力魔法の強化、魔装フォカロルの披露でした。ていうか、ロクサーヌの正ヒロイン補正が強すぎて、まともに他のヒロイン候補とイチャイチャさせずらい..........。登場してないのに、存在感発揮するとかキャラ立ちすぎでは? ロクサーヌという女性が、いかに男性の夢を詰め込んだ存在か改めて理解しました。ごめんねロクサーヌ、ちゃんと君もシンとイチャイチャさせますから..........


補足


『登場した魔物』

「マンティコア」
・何故遺体から現れたのか..........? ヴィーネが追っていたのは一体のみ。では残りの二体は一体..........? 


『登場した魔法』


「力魔法〝黒洞〟」
・神代魔法の一つ[重力魔法]を付与した[力魔法]。力魔法による圧力と重力魔法による引力で、外と内の両方から相手を圧殺する。対象の存在を一欠片も残さず黒点に収束させる。今回は黒点が一箇所のみだってが、熟達すれば力魔法で触れた箇所から黒点が多数発生し、物体を引き千切りながら圧力と引力で黒点に収束させる。魔力の燃費は力魔法の数倍、射程範囲はシンを中心に直径二十メートル。付与された重力魔法は〝絶禍〟


「力魔法〝壊変〟」
・神代魔法の一つ「変成魔法」を付与した「力魔法」。力魔法による圧力と操作性、そこに変成魔法による肉体崩壊の力を合わせた魔法。その魔法に触れられた対象の肉体は灰塵となって崩壊する。魔力燃費は力魔法の数倍、射程範囲はシンを中心として直径十メートル。付与された変成魔法は〝滅禍〟

 
「変成魔法〝滅禍〟」
・シンの〝壊変〟や、アリエルの〝三叉槍ダインスレイヴ〟に付与されている[変成魔法]の一つ。生物の肉体を灰塵に帰す魔法。魔法は今作オリジナルです。


『登場した金属器』


【フォカロル】
・シンの右腕に装着された銀の腕輪に宿る精霊。風を操るジン。全身魔装時は腕と足に漆黒の羽根を生やし、髪が桑の身色に変色し毛先も鷲の羽根のように変化する。上半身裸で、赤い腰布と羽衣、そして金の首飾りを纏う。上半身には特徴的な模様が刻まれた、額には二本の角とその間には縦に割れた第三の目がある。

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