ありふれた職業で世界最強〜付与魔術師、七界の覇王になる〜 作:つばめ勘九郎
脳内でアニメ『マギ』のBGM 〝L’Arabesque Sindria〟を流して書いてます。
所変わってカルロー村近くの大河。
そこには複数の松明の灯りが大河と船乗り場を照らし、村の住民が次々と大河を渡る船に乗り込んでいた。
「子供を最優先にッ!落ち着いて乗り込むんだーッ!」
「慌てず、押さないでーッ! なるべく詰めて乗ってくださいッ!」
「よぉしッ! 船を出せぇーッ! 満員になったところから順次、船を中流に出してけよぉッ!」
現在、カルロー村に突如現れた巨大な魔物から
しかし現状、避難は未だ完了しておらず、魔物が現れてからかなり時間が経っているのに完了しているのは避難民の三分のニ。
いつこの場所にサンドワームが現れるかわからない。
一刻も早く住民を大河へと避難させなくては–––––!
そう思っていた矢先に、突然船着場周辺の地面が揺れ動き、地響きが鳴った。
「ッ!?まずいッ!全員この場から離れろォォォッ!」
避難誘導をしていた一人の男が大声で叫んだ。
そして男の声が辺りに響いた途端、大地が盛り上がり、硬い岩盤を砕いて、地中から〝黒いサンドワーム〟が現れた。
この場に集まっている村の住民から悲鳴が上がる。
そんな住民達の前に立ち、サンドワームと相対する村の男達は、手に持つ武器を構えサンドワームを見上げた。
「く、来るなら来いッ!」
「俺達の家族に触れさせやしねぇッ!」
声を張り上げ、覚悟を決めた男達。
サンドワームは頭部をガパッと三つに割り、その中から伸びる幾本もの触手を動かし、密集して生えた鋭い牙を見せる。
そして大口を開いてサンドワームが、目の前にいる男達をその鋭い牙で噛み砕こうと巨体を唸られ突進した。
その時だった–––––––––。
「〝悲哀と隔絶の精霊よ、汝と汝の眷属に命ず〟〝我が魔力を糧として、我が意志に大いなる力を与えよ!〟––––––」
大河から天を衝く巨大な水柱が上がった。
「––––––〝出でよ、“ヴィネア”!〟」
どこからか聞こえる女の声。
そして水柱はまるで水竜のような形となり、迫り来るサンドワームを真正面から弾き返した。その衝撃で水竜を形成する水が飛沫を散らし、武器を構えていた男達を頭上から濡らした。男達は目の前の光景にただ茫然としている。
弾き飛ばされサンドワームが、その大口から緑色の体液をばら撒く。先の衝撃で顔が半分潰れていた。しかし、それでもまだ動けるらしく、巨体をのたうち回らせ、再度突進しようとしていた。
それに相対する水竜。だが、その水竜は突然天に昇り始める。その水竜が向かう先には、天から落下してくる黒いローブを羽織った白い仮面の者〝ヴィーネ〟がおり、彼女が手に持つ黒い布で覆われたL字の塊に水竜が纏う。
するとその黒布で覆われた物体が、巨大な水色の剣へと変貌した。水の竜を模した鍔、鍔元には水晶球があり、まるで噴水をイメージさせる造りだ。
「ハァァァァアッ!」
それをヴィーネが自身の前に突き出すと、剣先から水が吹き出し、ヴィーネとその巨大剣が一つの水の槍となった。落下する速度に、水のジェット噴射でさらに加速、そのままヴィーネはサンドワームをいとも容易く貫き、引き裂いた。
スタッと軽い足取りで地面に降り立ったヴィーネ。
戸惑う男達と、先の光景を見ていた住民達。
武器を構えていた男の一人が、突然現れ、自分達を助けてくれた仮面の存在に声をかけようとした時–––––––––
「「「「キャァァァァァァァッッ!!!!」」」」
–––––––––突然、複数の女性の悲鳴が聞こえた、空から。
慌てて男達や住民全員が上を見上げた。
そこには物凄いスピードで何も無い月夜の空から落下してくる四人の女性がいた。愛子、園部、宮崎、菅原の四人だ。
そんな彼女達は、地面に叩きつけられる前にその体が風に包まれ、ふわりと浮き上がると、先程の落下速度が嘘のようにゆっくりと地面に降り立った。それを見ていた村の住民達が「神の使徒様たちが帰ってきたッ!」「天から舞い降りてくるとは..........!?」「彼女達は女神かッ!?」と口々に歓喜の声を上げていた。
一方、そんなことを言われている愛子と園部達は、疲れた様子で息を切らしていた。
「はぁ、はぁ..........死ぬかと思った....」
「なんでだろう..........要くんと再会してから、こういうの増えた気がする..........」
「ふぅーーー.....愛ちゃん先生、大丈夫ですか..........?」
「あぅ〜〜〜..........目が回ってぇ.....」
宮崎と菅原は胸に手を当て、早まる心音を抑えようとし、ちょっとした愚痴を漏らしていた。園部は一旦心を落ち着かせ、愛子に声を掛けるが、当の愛子はグルグルと目を回している。
するとそんな彼女達に村の男達が声をかけて来た。
「戻られたのですね、みなさん!..........愛子殿?」
「ハッ!すいません、気が動転して、つい.............」
「いえ、それは構いませんが..........あちらの方は?」
愛子に話しかけた村の男が、黒いローブを羽織った白仮面に視線を向ける。
「援軍です。彼女がここを守ってくれている間に、私達は住民の避難を急ぎましょう!」
「ッ!..........わかりました」
愛子の言葉を聞き、男は頷いた。
すると彼の隣にいるもう一人の村の男が口を開き切望した。
「それでしたら、あの方を村長のところに向かわせてくれませんかッ?!今も村長や村の男達が魔物と必死に戦っております! 私達のことはお気になさらず、どうか..........ッ!」
「大丈夫です!そちらにもすでに頼もしい援軍が向かっていますっ!」
男の切羽詰まった表情に対し、愛子は自信に満ちた表情で言い切った。
そんな愛子の傍で一人、村の向こう側に数秒だけ視線を向ける園部。彼女はシンと別れる直前、彼に渡された白い羽織で大胆に破けた胸元を隠すように羽織の両端を胸元で結んでいた。
(要、頼むわよ..........)
羽織の結び目に手を添えた園部は、シンが手繰り寄せる結果を確信し、力強い瞳で今自分がするべき事に目を向けるのだった。
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一方、ヴィーネ達が避難する住民達の元に合流する数分前の葡萄畑では、筋肉ムキムキの男達がその肉体を活かし奮闘していた。
「「「「「ふんぬゥオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!」」」」」
「グゥゥゥッ..........! お前達ィッ! いつもの馬鹿力はどうしたァッ! その暑苦しい筋肉は飾りなのかァッ?!」
「「「「「ヌゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!!!!!!」」」」」
「踏ん張ってくださいッ! 二人が駆けつけるまでッ!!」
「ぬぅぅぅっぅぅぅぅッ!!!」
筋骨隆々の男達が極太の鎖を力一杯に引っ張っていた。そんな彼等を鼓舞する神殿騎士デビッドもまた、村の男達と共に鎖を引っ張っている。もう一人の神殿騎士クリスも玉井と共に鎖を力一杯鎖を引いていた。
彼等が引っ張る極太の鎖、その先に繋がれているのは三体の〝黒いサンドワーム〟で、地中に潜ろうとするサンドワームを必死で食い止めていた。
カルロー村の葡萄畑に出現したのは十体の〝黒いサンドワーム〟。奴らが出現して早々に葡萄畑の半分が壊滅し、これ以上被害が拡大するのを抑えるためにアレックスが用意したのが極太で丈夫な鎖だった。それをアレックスが三体のサンドワームに巻き付け、デビッドや玉井達、そして村の力自慢達が引っ張っているのだ。
一方ロクサーヌとアレックスは残りのサンドワームを相手取っていた。
「ロクサーヌ殿ォッ!」
「ハイッ!」
アレックスがバレーボールのレシーブのような姿勢を取ると、そこに両手剣を肩に担いだロクサーヌが駆け込む。そしてロクサーヌがアレックスが下に構えた両手に足を乗せると–––––––
「おりゃアッ!!」
––––––力一杯に両腕を振り上げた。
その反動を活かしてロクサーヌが物凄いスピードで上空へと躍り出た。
「ハアアアアッ!!」
気合が乗ったロクサーヌの掛け声がサンドワームの頭上で響き渡り、彼女はサンドワームの脳天に両手剣を突き立てた。途端、サンドワームが悶え苦しみ、巨体をのたうち回らせる。
そのタイミングでサンドワームの脳天に突き立てた両手剣が折れ、苦々しい表情を浮かべるロクサーヌだったが、すぐにその場から離脱。
痛みで悶え苦しむサンドワームが大口を開き、狂ったようにアレックスに向かって猛進して来る。
「これでも喰らうがいいッ!––––〝錬成ッ!〟」
アレックスが拳を地面に突き立てた。すると彼の手に装着されたガントレットが光を放ち、地面から土の槍が現れ、サンドワームは口内から土の槍で突き刺された。そこでようやくサンドワームは力尽き、重い巨体が地面に倒れた。
これで七体目。二人が相手していたサンドワームは全て倒された。
重く息を吐いたアレックスが立ち上がろうとすると彼の足がフラついた。それを見たロクサーヌが心配そうに彼の元へと駆け寄った。
「大丈夫ですかッ、アレックスさん!」
「問題ありませぬ、ロクサーヌ殿。少し魔力を使い過ぎただけです。しかし、やっと七体目のサンドワームが倒れましたな..........現役の頃ならもっと動けたのですが、ここまで時間をかけてしまうとは」
「無理もありません。このサンドワームの強さは異常です。まず間違いなく、
ロクサーヌの言う通り、今回二人が相手した〝黒いサンドワーム〟は通常のサンドワームよりも強さの桁が違った。黒い皮膚は頑丈でロクサーヌ程の卓越した剣技が無ければ斬ることが出来ず、斬れたとしても先程ロクサーヌが突き刺した両手剣ようにすぐ駄目になってしまう。実際、ロクサーヌが使っていた剣は全部折れてしまった。おまけに並の魔法攻撃も簡単に弾かれる。冒険者ランクで例えるなら〝ランク黒〟以上、それが複数体となれば金ランクまで一気に跳ね上がる相手だ。
それ程の魔物が一体ならまだしも、複数体も現れるのは明らかに異常。何者かが裏で糸を引いているのは簡単に推察できる。
「フム..........とするとやはり今回の件、サンドワームが村に襲撃してきたのも..........」
「はい。おそらく、
魔王軍、つまり魔人族が関与しているとロクサーヌは答えた。アレックスも薄々そんな気はしていたらしく、ロクサーヌの言葉に同意する。
ここ最近カルロー村に強力な魔物が出没していたのは、おそらく魔人族の差金。山に棲む魔物達が住処を追われ、カルロー村に降りて来たのだろう。その要因は“人面の魔物”と“黒いサンドワーム”のどちらか、或いはその両方。そして狙いはおそらく、カルロー村にある広大な農地。葡萄の他にも数多くの農作物を王都や周辺地域に排出しているこの村が、戦争が本格化した際、邪魔になると踏んだのだろう。
尤も、“人面の魔物”と魔人族は関係無く、ロクサーヌが敢えて“魔王軍”と言った理由なども、アレックスが知る術は無かった。
「それよりも先ずは、残りの三体を始末しましょう。行けますか、アレックスさん?」
「お気遣い無く。我輩の筋肉はこれしきの事で根を上げたりは致しませぬ!」
上半身裸のアレックスが両手のガントレットを打ち合わせながら答えた。それを見たロクサーヌは「わかりました」と力強く頷き、アレックスが用意していたもう一本の両手剣を手に取ると、二人はデビッド、玉井、村の男達が抑えている三体のサンドワームの元に駆け出した。
その時だった–––––––。
「––––––まさかッ!?」
「まだ居たのかッ!?」
途端、二人が立っていた地面が砕かれ、地中から〝黒いサンドワーム〟が現れた。すぐにその場から飛び退いていた二人は無事だが、それだけでは無かった。
二人から少し離れた、村の男達のところにも二体の〝黒いサンドワーム〟が現れ、その場にいた全員が吹き飛ばされている。鎖から解放された三体のうち一体が地中に潜った。
「いけないッ!」
「待たれよッ、ロクサーヌ殿ッ!!」
ロクサーヌが地中に潜ったサンドワームを追おうとするが、アレックスが彼女を止めようと声を掛けた。
地鳴りがまだ続いていたからだ。
アレックスの声と同時に四体目の〝黒いサンドワーム〟が出現し、そのサンドワームは長い巨体を鞭のようにしならせ、ロクサーヌを横から叩き潰そうとする。
それを頭上へと跳躍し回避したロクサーヌ。しかし、さらに五体目の〝黒いサンドワーム〟がそれを見越していたかのように地中から勢い良く出現し、ロクサーヌ目掛けて大きな口を開いて伸びて来た。
苦々しい表情を浮かべたロクサーヌ。彼女は手に持つ両手剣でそのサンドワームを弾き、なんとか回避した。
一方アレックスは新たに出現した一体目のサンドワームの体当たりで吹き飛ばされて、その苦痛で顔を歪ませた。
「グハッ!!」
「アレックスさんッ!!」
地面に着地したロクサーヌがアレックスの名を叫び、彼の元へと駆け出す。その間、六体目、七体目の〝黒いサンドワーム〟が地面を穿ち、ロクサーヌに迫るがそれを回避し続けた彼女は無事にアレックスの元に辿り着き、一度態勢を立て直すため彼に肩を貸して後退した。
「お怪我はありませんかッ!」
「ぐっ..........面目ありませぬ。軽く意識が飛びかけましたが、今は大丈夫です。怪我もそれ程大したことありませぬが––––––––これは少々、まずいですな..........」
「ですね.............(先の回避で早速剣の刃が欠けましたか..........私の剣技もまだまだですね..........しかし、この現状を打開するにはどうすればッ..........私の装備さえ揃っていれば..........!)」
アレックスの言葉に同意したロクサーヌは焦燥感で苛まれ、頬に汗が走った。
新たに出現した七体の黒いサンドワーム。それに加え、まだ倒せていなかった三体、そのうちの一体は地中に潜り姿を現さない。おそらく避難している住民の元に向かったのだろう。デビッド達のところには四体の黒いサンドワームがおり、鎖も断ち切られ、もう足止めも出来なくなっていた。
そしてロクサーヌとアレックスの前には五体の黒いサンドワーム。ロクサーヌは一切ダメージを負っていないがアレックスはかなり疲弊している。それにロクサーヌ自身が無事でも、使用出来る剣は手に持つ両手剣と合わせて残り二本。
現状この場にいるのは九体。ほとんど振り出しに戻ったも同然の現状は、ハッキリ言って最悪の状況下であった。
そこでロクサーヌは決断した。
「アレックスさんはあちらの加勢に行ってください。こちらの五体は私がなんとかしてみせます」
「何を言いますかロクサーヌ殿ッ! 残りの剣は貴女が持つそれと合わせてあと二振りのみ、貴女お一人では手に余りますぞッ!」
「心配には及びません。いざとなれば拳で、それが駄目なら中から食い破るってみせます」
「なんとッ..........!」
ロクサーヌは本気だ。彼女の力強い瞳がそれを物語っている。自分よりも若い彼女が勇猛な戦士の如き気骨を見せる姿に、アレックスは感嘆の言葉を漏らした。
そして彼女の強い意志を目の当たりにしたアレックスの闘志に火が着く。
「なればこそ..........貴女お一人をここに残すわけには参りませぬ。二人で掛かれば目の前の五体などすぐに片付きましょう、その後で向こうの四体を倒せば良いのです.........それに、村の男達があれしきの事で根を上げる程、私の鍛え方は柔ではありませんぞ?」
「信頼されているのですね」
「当然です。消えた一体も村の者なら必ずなんとかしてくれます! ですから我々は目の前の相手に集中しましょうッ!」
「そうですね..........わかりましたッ!」
アレックスは拳を、ロクサーヌは刃が欠けた両手剣を構えた。
そして目の前に居る五体の黒いサンドワーム達が体を反らし、その反動で利用して二人に飛び付こうとする。
その時だった––––––––––
〝ズドオオオオオオオオオオオオオッ!!〟
–––––––突然アレックスとロクサーヌ、二人の前に何かが
それを目にした黒いサンドワーム達は飛び付くのを辞めた。本能的に目の前に落ちて来た存在が、ヤバいと察知したのだ。
土煙が舞い上がり、その全貌はわからない。
だが、ロクサーヌの嗅覚と[気配感知]はそれがなんなのかを正確に捉えた時、舞い上がった土煙が晴れ、それを露わにした。
「いくら俺が頑丈だからって、流石に投げるのはどうかと思うんだが..........」
「レオニス殿ッ!?」
空から落ちて来たのはレオニスだった。彼が何やら愚痴を溢しているが、アレックスは驚きのあまり咄嗟に出た声が少し裏返っている。
一方ロクサーヌはもう一つ感じ取った気配の主。この世界で彼女が最も信頼し、尊敬し、愛している男の気配を察知し、先程まで苦々しい表情ばかり浮かべていた顔に明るさが戻った。
「アレックスさん。私達の勝利が確定しました」
「ん?それはどう言う..........」
ロクサーヌはそう言いながら頭上を見上げる。それに釣られてアレックスも彼女が見つめる視線の先に目を向けた。
するとそこには、“月の光を一身に受ける赤い衣を纏った黒い天人”が腕を組んで空に佇んでいた。
「あれは一体..........」
「あの方は私達の王、シン様です」
「....................なっ! あれがシン殿ですとぉッ!?」
ロクサーヌの言葉にアレックスが驚愕し、思わず声を張り上げ聞き返した。そんな彼に対してロクサーヌは自信たっぷりに頷いて見せる。
するとレオニスがロクサーヌに何か投げ渡した。
「これは、私の剣ッ! まさかバウキスがッ?」
「ああ、色々あったが一先ず合流は出来た。それとアレックス殿、避難する住民の方にも強力な援軍が向かった。そっちに向かった魔物は心配しなくて良い」
「なんとッ!それは嬉しい知らせですなッ!」
「そしてロクサーヌ、シンからの伝言だ。『暴れろ』だとよ」
「ッ!! わかりました..........アレックスさん、あちらの四体は私に任せて頂けませんか?」
「ロクサーヌ殿?」
「シン様の期待に応えたいので、あちらのサンドワームは譲って頂きたいのです」
そう言ってロクサーヌがレオニスから渡された剣を鞘から抜くと、彼女の体から青白い電流がバチバチと帯電し始めた。それを見たアレックスは、“彼女がまだ本当の意味で本気ではなかった”のだと理解し、「頼みます」と答えた。
その途端、ロクサーヌは先程以上の速度で地面を蹴り込み、向こう側にいる四体の黒いサンドワームに向かってる駆け出した。
「さて、アレックス殿。まだ動けるか?」
「..........フッ、我輩を舐めてもらっては困りますな、レオニス殿。不甲斐無い姿を晒してしまいましたが、依然我輩の筋肉は健在! まだまだパトスは
ムンッ!とアレックスがその筋肉美をレオニスに見せつけるように胸を張る。するとレオニスがアレックスに張り合うように筋肉を膨張させ着ている服を内側から破ってみせた。胸筋をピクピクさせて。あーあ、まーたロクサーヌに怒られるよ、あいつ..........。
そしてアレックスもレオニスに負けじと己の筋肉に喝を入れ、膨張させてみせた胸筋をピクピクと動かした。
そんな二人に向かって二体のサンドワームが突撃してくる。それを見たアレックスの目がキラリと光り、彼とレオニスは拳を腰に構え、向かって来たサンドワームに全力のパンチをお見舞いした。
「勇気百倍ッ! 筋肉千倍ィィッ!!」
アレックスがそんな事を叫びながら拳を振り抜くと、彼に殴られたサンドワームの頭部が潰れていた。何かの詠唱なのだろうか? レオニスもアレックスと同様にもう一体のサンドワームの頭部をペシャンコに潰していた。
そんな彼らを見ていたシンは、「大丈夫そうだな、うん」と呟いき、戦場を見下ろしていた。
すると、そんな彼に向かって二体のサンドワームが口を開いて噛み付こうとした。しかし次の瞬間、シンの両掌に刻まれた八芒星が輝き、二体のサンドワームはシンが発生させた風の斬撃によって滅多斬りにされ呆気なく倒された。魔法の耐性が上がっている黒いサンドワームでもフォカロルの風を防ぐことは不可能。
そしてシンは[天眼][気配感知][魔力感知]で先程からずっと探していた相手をついに見つけた。
「レオニスとロクサーヌが居る以上、出番は無いだろうし......... なら俺は、コイツらを差し向けた相手に挨拶でもしに行くしようか.......( ロクサーヌ、レオニス、ここは任せたぞ?)」
(ハイッ!お任せくださいッ!)
(ああ、任された)
シンがロクサーヌとレオニスに念話を飛ばすと、二人は強い意志で応えた。
それを聞いたシンは風を纏い、カルロー村の葡萄畑から少し離れた森に向かって飛んで行った。
「勇気百倍、筋肉千倍」実に良い言葉ですね。
補足
『登場キャラ』
「アレックス・カルロー」
・天職は[芸術家]で、戦闘時には愛用のガントレットを両手に着用して戦う。ガントレットに刻まれた魔法陣には[錬成]と[土属性魔法]が付与されており、対象を拳で殴ることで錬成と土魔法が発動し、鉱物を形状変化させ矢や弾丸のように尖った石や巨大な壁などを作れる。
『登場した魔道具』
「アレックスのガントレット」
・[錬成]と[土魔法]が付与された代物。[芸術家]の天職を持っているアレックスだからこそ使える魔道具。高レベルの[錬成]を可能とし、高位の土魔法も使える掘り出し物。