ありふれた職業で世界最強〜付与魔術師、七界の覇王になる〜   作:つばめ勘九郎

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長らくお待たせしました。
『ありふれ覇王』の最新話、ようやく更新出来ました。

事前にお伝えした期間より長くなって申し訳ありません.............。
病気や環境の変化、仕事の都合などが重なって、思ってた以上に忙しい夏になりました。

久しぶりの投稿で正直不安ではありますが、『ありふれ覇王』再始動です。
投稿ペースは以前より落ちると思いますが、地道に書き続け、私が思い描くラストに繋がるようにして行きたいですね。



神の使徒 VS 雷の獣

 

 グリューエン大火山、その最深部でノイントと因縁の再会を果たしたシンは、戦闘の開幕の合図として初撃で神の使徒の一人を撃墜した。

 

 それを皮切りに始まったシン達一行とズィープト率いる神の使徒達の戦い。人数差で優位に立っているのは神の使徒側で、それを自ら認識しているからなのか、はたまた己の能力の高さであれば負けるはず無いとタカを括っているのか定かでは無いが、実に余裕綽々と言った態度で銀翼をはためかせる。ズィープト、ノイントの二人以外の神の使徒達はロクサーヌ、レオニス、そしてバウキスとヴィーネの三手に分かれて降下して行く。

 

 そんな神の使徒八人の動向をチラリと横目で確認したシンは目の前に滞空しているノイントとズィープトを見つめ直す。するとノイントが口を開いた。

 

 

「加勢に行かなくてよろしいのですか?」

 

「加勢? 必要ないだろ」

 

「.............なるほど。あそこにいる者達は貴方にとって使い捨て駒、という事ですか」

 

「大方、私達を倒すための時間稼ぎに使うつもりでしょうが、あの程度の数ならものの数秒で決着が着きます。先程の一撃といい、その姿といい、貴方がどれほどの力を身につけたかは知りませんが、同時に我々使徒九名を相手取りたくないと伺えます」

 

 

 何を勘違いしているのか、ノイントとズィープトはそんな事を口にした。それに対してシンは一つ鼻で笑うとクツクツと笑みを溢し、腕を組んだ。

 

 

「随分と俺達を低く見たものだな。 自分達の都合のいいように解釈するのは勝手だが、あいつらが常識の範疇に収まる存在だと本当に思うのか?」

 

異端者(イレギュラー)である貴方は例外としても、そこに居る貴方の駒が神の使徒に敵う道理などありません。それに、()()()()()()()()()()()()()風情が我々とどう戦うと言うのですか?」

 

「..............」

 

 ズィープトが口にした“人擬きの獣”と言う言葉、それが意味するのは間違いなく亜人であるロクサーヌの事だろう。彼女を侮辱する言葉を聞いたシンの肩が揺れ出し、愉快そうに笑みを溢し出した。

 

 

「フッ、くくくっ..........」

 

「何がおかしいのですか?」

 

「............ズィープトと言ったか? お前、何もわかっちゃいないな.........お前達は始めから見当違いをしている。捨て駒?見捨てられた? 馬鹿馬鹿しい。俺が他の使徒達を見逃したのはもっと単純な理由さ」

 

「では、一体なんだと?」

 

「そんなの決まってるだろ?––––––お前らじゃ、俺の仲間には勝てない。ただそれだけの理由さ」

 

「それこそ見当違いです。何を根拠に............」

 

「それと、もう一つ訂正しておこう」

 

 

 ズィープトの言葉を遮るようにシンの言葉は続く。そして組んだ腕を解き、剣先をズィープトとノイント、二人の方に向けた。

 

 

「あまり俺の女を舐めるなよ?」

 

 

 不敵な笑みを溢しながらシンがそう口にする。

 

 すると––––––––––

 

 

『GRAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』

 

 

–––––––––空間一帯を振動させる大咆哮が轟いた。

 

 何事かとズィープトとノイントがシンから視線を逸らし、その咆哮のする方を見て驚愕していた。その主が誰なのかはシンには検討がつくのだが、いざその主に視線を向けた時、シンは驚きつつも愉快そうに笑みを溢した。

 

 

「はは、まじかよ..........!」

 

 

 どうやら戦況はシンが想像していた以上に一方的だったらしい。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 場面は変わり、シンが滞空する下方。溶岩から発生する熱気が最も近く感じられる小さな岩の小島にロクサーヌは立っていた。

 

 その足元に、先程まで動いていた筈の()()使()()()()()()()()()

 

 

「..............何故?」

 

 

 同胞を殺された神の使徒の一体がそう呟いた。不意に呟かれたそれは、別に誰かに問う言葉ではなかったが、それを耳にした彼女は血に濡れた魔剣をひと払いし、口を開く。

 

 

 

「何故、ですか。それは私に動機を問うているのですか?それとも––––––どうして亜人()が使徒を斬れたかを問うているのですか?」

 

「..............」

 

「動機に関しては簡単です。襲われたからそれを返したに過ぎません。私に信仰心なんてものは欠片もありませんから。尤も、貴女が知りたいのは後者の方でしょうが」

 

 

 そう返答したロクサーヌの眼光が彼女の目の前で翼を広げ滞空する神の使徒の一体を射貫いた。まるで剣先を喉元に突きつけられたような威圧だ。

 

 その瞬間、ロクサーヌの目の前にいる神の使徒は悟った。この者は魔力を持たない非力な亜人とは違う。開幕の一撃で同胞を屠ったあの異端者(イレギュラー)と同じ、異質な存在であると。

 

 最初はすぐに済む任務だと思っていた。しかし蓋を開けてみればどうだ。同胞の一体は異端者(イレギュラー)にあっさりと焼き殺され、その次にはまた一人同胞が亜人の女に首を刎ね飛ばされた。あの異端者(イレギュラー)は兎も角、亜人など取るに足らない相手だとばかり思っていた。それこそ早々に目の前の亜人を斬り殺し、七番(ズィープト)九番(ノイント)の加勢に向かおうと考えていた。それが出来ると決まっていた筈だった。だが結果は違う。早々に斬り殺されたのは同胞。それもただの一撃でだ。

 

 

(..............あれは、異常です............)

 

 

 名も知れぬ神の使徒の一体の表情が無機質な物から緊張感を孕んだ物へと変わった。目の前の亜人を脅威であると断定したのだ。

 

 それを目にしたロクサーヌは不敵な笑みを溢した。

 

 

「目の色が変わりましたね。これは先程のようにはいかないでしょう..........ですが、私も負けるわけにはいかないので–––––––()()で行かせていただきます」

 

 

 その宣言と共にロクサーヌは自身の内側に流れる魔力を穏やかに制御し、こう口にした。

 

 

〝眷属器––––––雷獣光鎧(バララーク・ディルア)

 

 

 途端、ロクサーヌは全身と魔剣に雷光を纏わせ、音を置き去りにして小さな足場を踏み砕く。そして瞬きをする暇も無く、ロクサーヌは神の使徒との距離を詰め、手に握る魔剣が神の使徒の首へと吸い寄せられる。

 

 

()ったッ!––––––)

 

 

 神の使徒は反応出来ていない。勝機を確信したロクサーヌ。

 

 しかしロクサーヌの剣が神の使徒の首に辿り着いくであろうその瞬間、そこにある筈の手応えがまるで無かった。

 

 届いたと思われた雷光を纏う魔剣は空を切ったのだ。

 

 

(ッ!? あのタイミングで躱されたっ!?)

 

「..............〝禁域解放〟」

 

「ッ!?」

 

「貴女を葬るには、これが最適解のようです」

 

 

 ロクサーヌは背後からそんな声を耳にする。その後ロクサーヌは眷属器の力を一旦解除し、空宙で体を捻りながら新たな足場に着地。そして見上げた先には銀色の魔力を全身に纏った神の使徒が両翼を広げ佇んでいた。

 

 

(禁域解放、ですか。シン様から事前に聞いていた真の神の使徒が用いる擬似的な限界突破という物ですね。まさか私の眷属器の攻撃すら躱されてしまうとは..............)

 

 

 かつてシンに死を体感させた真の神の使徒の切り札。それをいざ目の前にしたロクサーヌは「やはり一筋縄ではいきませんか」と呟き、どう攻めるかを思案していた時、見上げる先に居る神の使徒が口を開いた。

 

 

「先程の貴女の攻撃。私達が知るこの世界の魔法とは少しばかり理が違うようですね。そして、それはあの異端者(イレギュラー)も同じ。その力の根源を調べるためにも、貴女を捕らえ、拷問............いえ、解剖するのも良いかもしれません」

 

「生憎ですが、そんな悪趣味な物に付き合うつもりはありません」

 

「貴女の意思など我らが主の神意の前では無意味なこと。ですが、抵抗するというのならその四肢を切り落とし、視覚と聴覚を奪い、大人しくさせましょう」

 

「もしそんな事になるなら、その前に舌を噛み切って自害します」

 

「では舌を噛んで死なれる前にその意志を砕くとしましょう––––〝劫火浪〟」

 

 

 そう神の使徒が口にすると、今度は神の使徒がロクサーヌに仕掛けた。

 

 まるで分厚く天を覆う雲の如き大規模な火炎の塊がロクサーヌに降って来る。威力は凄まじそうだが攻撃速度は大した事はない。それを難なく躱したロクサーヌは空宙に飛び上がるが、それを待っていたと言わんばかりに銀色の魔力を纏った神の使徒が大剣を振り被りながら迫った。

 

 いくら光の速さで高速移動出来るロクサーヌと言えど、足場が無ければそれを成す事は出来ない。それを狙った上で、神の使徒は火の魔法を囮に使い、ロクサーヌを足場のない空宙へと誘い上げたのだ。

 

 だが、それを分かった上でロクサーヌは空宙に回避してみせ、わざわざ神の使徒が狙って来るであろう空域に躍り出た。

 

 コンマ数秒の世界の中。ロクサーヌの瞳は高速で自身に迫る大剣を確かに捉え、魔剣を振りかぶりながらその身を丸める。そして彼女の足が––––––––

 

 

〝ダァンッ!!!!〟

 

 

–––––––()()()()()()()()

 

 交差する二人の女。神の使徒が振るった大剣は目標を見失い、その代わりにロクサーヌの魔剣が神の使徒の喉元に迫る。

 

 

「.............眷属器––––〝雷獣光鎧(バララーク・ディルア)〟」

 

「ッ!?」

 

 

 神の使徒の喉元に伸びた刃が青白く放電し、威力が上がった一刀はその首に刃を突き立てた。だがそれもまた首を断つまでには至らない。しかし、先程とは違い、カウンターとして繰り出された魔剣の刃は神の使徒が全身に纏う魔力とぶつかり弾かれたのだ。神の使徒が纏う分解の魔力とロクサーヌが魔剣に纏わせたバアルの雷撃。マイナスとプラスの作用をもたらす魔力の衝突によって、お互いに衝突した個所の魔力が一瞬だけ霧散する。

 

 それを目の当たりにした神の使徒は先程と打って変わり、驚愕の表情を見せた。纏った魔力を相殺された事も驚きだが、それ以上に狼人族の女を捉えた筈の大剣が()()()()()()()()、一瞬だけとは言え自身の首を露わにしてしまったことを。

 

 

「一体、何が..............ッ!?」

 

 

 すぐさま身を翻し、背後に過ぎて行ったロクサーヌをその目で捉えてようとする神の使徒は、何故大剣の軌道がズレたのかを理解した。

 

 神の使徒が見た物。それは過ぎ去って行った筈のロクサーヌが落下する事なく、こちらの様子を伺いながら弧を描くように()()()()()()()()姿()()()()

 

 

「固有魔法..............いえ、違いますね。技能の応用、強化された肉体、そして()()()()()()によってそれを成している、という事ですか。先程の一撃もそれによって回避したのですね」

 

 

 神の使徒が言い当てた通り、ロクサーヌは[身体強化]で脚力を増幅させ、その上に豪脚の派生技能[震脚]によって踏み込む力を跳ね上げていた。だがそれだけで空宙を走るという芸当は到底出来るはずがない。故に彼女は空を踏みつける瞬間のみ、小規模の[重力魔法]を発動させ、自身の重さによって生じる重力を逆転させたのだ。それにより本来足場のない空間を踏みしめたことで神の使徒の攻撃はタイミングを見誤った、というわけだ。

 

 ロクサーヌに神代魔法である[重力魔法]を行使する才能は無い。実際ミレディにも才能が無いという余計なお墨付きも貰っている。だが、それはあくまで現状において[重力魔法]の力を十全に行使出来るか否かの話。小規模な魔法の行使だけなら才の無い彼女でも可能性はあったのだ。そこに至るための努力をロクサーヌが密かに積み重ねてきたからこその結果なのである。しかし、いくら小規模と言っても使っているのは神代魔法。並の魔法とは比較にならないほど魔力消費が尋常では無い。魔力操作の派生である[緻密操作]や[獣戦術]の派生である[魔力消費量減少]でかなり効率が良くなったと言えど、無視出来ない消費スピードである。それも、彼女が一歩踏み込む度に魔力が削られていく。

 

 なのでロクサーヌは出来る限り大股で宙を走り、隙あらば最大出力の眷属器の力で間合いを詰め、一撃で勝負を決めようと画策していた。

 

そんなロクサーヌを観察しながら神の使徒は大剣を構え直す。

 

 

「種が分かれば造作も無いこと。次はそれも考慮し、攻めるのみです」

 

 

するとロクサーヌは懐から投げナイフを数本取り出し、それを神の使徒に向けて走りながら投擲した。それも眷属器の力で強化されたナイフをだ。雷光を纏い、貫通力が増したナイフは光の速さとまでは行かなくとも、高速で飛来し、神の使徒を食い殺さんとする勢いである。だがーーーーーーー

 

 

「児戯ですね」

 

 

ーーーーーーー神の使徒は表情一つ変えず、飛来するナイフを切り払う。

 

青白い雷光の魔力を纏っていたが、そこに込められた魔力は微々たるもの。先程のように神の使徒が大剣に纏わせた魔力を霧散させる事は出来ない。事実、神の使徒はそれを分かっていた上で大剣を用いてナイフを切り払い、案の定大剣に纏わせている分解の魔力は小揺るぎもしなかった。

 

それでもロクサーヌは間髪入れずにナイフを投擲する。

 

 

(無駄なことを。大方こちらの隙を伺っているのでしょうが........ならば、あちらから懐に潜り込んで貰いましょう)

 

 

神の使徒はわざと隙を与えるように投擲されたナイフを大きなモーションで切り払う。

 

刹那、それを見逃さなかったロクサーヌは体を方向転換し、片足と魔剣にのみ眷属器の力を発動させ、一瞬にして神の使徒との距離を詰める。ロクサーヌの雷光を纏った片足が空間を踏み締めた瞬間には雷鳴が鳴り響き、その音が神の使徒の耳に届いたときには既にロクサーヌが神の使徒に刃を振るっていた。

 

だが、それは罠。

 

神の使徒の懐に入ったロクサーヌに対し、神の使徒は片翼をロクサーヌに向け分解砲を放っていた。ロクサーヌの魔剣が届くより先に、凶悪な銀の魔力の塊がロクサーヌに直撃する。

 

そう神の使徒は確信した。

 

だがーーーーーーー

 

 

「やはり、そう来ましたか」

 

「ッ!?」

 

 

ーーーーーーーロクサーヌが笑みを浮かべていた。

 

分解の砲撃がロクサーヌに当たる直前、銀の魔力が彼女の目と鼻の先に来る刹那、魔剣は振り下ろされた。()()()()()()()()()()()

 

途端、分解の力が込められた銀の砲撃が勝手に軌道を変え、ロクサーヌの顔の横スレスレを駆け抜けていく。

 

「何が........ッ!?」

 

 

神の使徒の表情が今まで以上に驚愕した様相に塗り替えられ、理解に苦しむ声を漏らす。だが自身の体のバランスが突然悪くなり、そのうえ視界の端に映ってい片翼の感覚が無い事に気づき、ようやく理解した。

 

 

(斬られたッ!?)

 

 

片翼を両断された事によって、神の使徒はバランスを崩し、その結果、分解砲は起動が逸れたのだ。いや、逸らされたと言うべきだろう。ロクサーヌの斬撃によって。

 

魔剣アンサラに付与されている神代魔法の一つ、空間魔法による斬撃の転移。それをロクサーヌは分解の砲撃が当たる直前で神の使徒の片翼に向けて放ったのだ。今のロクサーヌが斬撃を転移させられる距離は五メートル。射程ギリギリでそれを放てば魔力枯渇によって戦況が不利になりかねない。だが懐に入ればその限りではない。至近距離ならば斬撃の転移距離によって消費する魔力はかなり節約出来る。さらに言えば転移させる場所を強く認識出来ていれば壁や鎧など関係無く、その先にある敵本体を斬る事も出来る。例えそれが神の使徒がその身に纏わせる分解の魔力による鎧であっても.....。

 

 だからこそ、ロクサーヌは待った。

 

 神の使徒が自分を誘い込む瞬間を。そしてロクサーヌの狙い通り、神の使徒はロクサーヌを罠に嵌めようとした結果、その目論見は大きく崩されたのだった。

 

そして、それを知り得ない神の使徒は内心焦っていた。

 

斬られた?いつ?どこで?そもそもどうやって分解の魔力を潜り抜けた?!?と神の使徒は思考を巡らせる。だがそんなことを考えるよりも先に、今も自身の首を狙っているであろうあの異質な狼人族をどうにかしなければならない。

 

そんな切羽詰まった思いで神の使徒はより一層自身に魔力の鎧を纏わせ、迎撃態勢を整えようとする。

 

だが、一瞬でも今のロクサーヌから気を逸らせば、致命的なミスとなり、その瞬間....いや光の刹那で勝負は決まる。

 

神の使徒はその視界の端に青白い光を見た後、力無く落ちていく。

 

 首より下の体を残して。

 

 痛みも無く、まるで元々そういう仕様であったかのように、首から滑り落ちていく頭部。

 

 

(............ばけ、もの............)

 

 

 落ちゆく神の使徒の首。僅かに残っている意識は最後にロクサーヌの姿を見てそんな感想を抱く。だが次の瞬間にはその意識も途絶え、途端に宙に残っていた神の使徒の体も首と同様に溶岩の海へと落ちて行った。

 

 溶岩の海に落ちて行った神の使徒を見届け、復活する素振りもないのを確認したロクサーヌ。

 

 すると彼女は盛大に息を吐き捨て、片膝を岩肌に着く。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ..............かなり、ギリギリ...........でしたね.............」

 

 

 その顔の額には汗が吹き出しており、顔色も悪い。呼吸も荒く、いつに無くロクサーヌには余裕が無かった。どうやら魔力の使い過ぎと、眷属器を限界ギリギリまで使用した結果の弊害による症状で、肉体は悲鳴を上げていた。

 

 特に足が痺れて力が入らない。先の一戦で一番酷使した箇所が眷属器のデメリットを見せていた。

 

 今回ロクサーヌが神の使徒に勝つ事が出来た最大の要因は、剣士であったか否か。神の使徒は確かに強敵だった。魔力量、攻撃威力、持続性、耐久性は神の使徒に軍配が上がる。だが剣士にとって重要な読み合いという要素ではロクサーヌが神の使徒より一枚上手(うわて)だった。だからこそロクサーヌはそこに賭け、その一瞬に繋げるべく全力を注いだ。

 

 結果その賭けにロクサーヌは勝利した。だがもし神の使徒がロクサーヌのことを最初から侮っていなければ勝敗は分からなかったかもしれない。

 

 しかし結果はロクサーヌの勝利。それは揺るぎない物である。

 

 壁を一つ越える事が出来たことに喜びたいところではあるが..............。

 

 

「はぁ、はぁ.............敵はまだ居ます。こんな状態では足手纏いになりかねませんが、バウキスとヴィーネの加勢に行かなくては.............」

 

 

 そんな事を考えながら、震える膝に力を入れようとするロクサーヌ。

 

 だがその必要はないらしい。

 

 

『GRAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッ!!!』

 

 

 聞き慣れた咆哮が、迷宮内に轟く。

 

 その方向に視線を向けたロクサーヌは安心したように笑みを溢し、全身に込めていた力を抜いた。

 

 

「どうやら、その必要はないみたいですね............。これは、私もうかうかしていられません。もっと力を付けなければ」

 

 

 ロクサーヌが見た光景。

 

 それは天変地異でも見ているような、圧倒的な蹂躙劇だった。

 

 そんな光景を目にしたロクサーヌは、()()に負けないようさらに強くなる事を決意するのだった。

 

 





久しぶりの投稿で三ヶ月以上前の自分がどうやって書いていたのか思い出そうと必死の今日この頃。
読んでくださる皆さんにもっと楽しんで頂けるよう、自分なりの表現方法を模索して行きたいと思います。

というわけで、今回は激闘!ロクサーヌvs神の使徒の回でした。少し盛り上がりに欠ける話だったかもしれませんが、ロクサーヌはこれからの子ですから長い目で見守っていてください。あと作者のことも.....。
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