ストグリ世界を全力で楽しむ   作:ストグリメンバーその0

13 / 13
 いつの間にかアニメ放送当日ですね。随分と期間が空いてしまいましたが、如何お過ごしでしょうか。私はこれを投稿出来ず焦ってました。


13 白狼の巣前哨戦

「さて、どうやって行くか……」

 

 見事に日が落ち、朧月夜となった今。こんな夜に宝物殿に行くなんて割と頭おかしいが、行かなければならない。ここで、『白狼の巣』まで行く方法はいくつかある。

 

 まず、普通に走っていく。シンプルだが当たり前の方法だ。なんの面白みも無いが、ハンターなら誰でも出来るだろう方法。距離が遠いし、普通ならクライどころか誰にもに追いつけないという話は置いておく。参考までに、普通のハンターなら最低でも1時間は掛かるだろう。

 

 2つ目は空を飛ぶ。優秀な魔導師(マギ)なら空を飛ぶことができるという事もあり、この世界ではまだ現実的な手段の1つだ。それに、宝具にもこのタイプの物は存在する。

 さっきクライが使って飛んで行ったものも、宝具の一つだ。『夜天の暗翼』は、外套型のレアな飛行型宝具。ただし欠陥品である。

 

 理由は単純で、あまりにも速すぎた。大体の飛行型宝具にある『浮遊』は出来ず、まともに制御出来ないレベルの加速と速度によって生み出されるその飛行は、既に1人の命を奪っている。かの有名な『人間ミサイル』事件だ。

 名前にそぐわず凄惨な事件となり、廃棄寸前だったものを引き取ったのがクライだが、セーフ・リング(結界指)か、隕石が直撃しても無傷なほどに頑丈な身体でもないとまともに扱えないだろう。ホントに痛いよ、あれ。

 

 3つ目は転移魔法だ。この世界の魔法は大抵理論的なもので出来ていて、転移魔法は実用化レベルで確かに存在している。

 最早人間では不可能に近い魔力量と、膨大な術式をしっかりと活用できれば、誰でも転移可能である。理論上は。

 現実には、既に描かれている魔法陣を使用してもなお、トップレベルの魔導師(マギ)が複数人必要な術で、おいそれと使えるものでは無い。使用できるのはごく一部の場所のみだろう。俺だって不用意に目立ちたくないし、消耗も避けたいし、そんなもの使わない。

 

 これらを述べた上でどれで行くか。既にクライは『白狼の巣』までの道を半分以上過ぎているだろう。転移が1番楽だが、人目に付く可能性が高い。目に付いたら騒がれること間違いなしだからな。

 

 

「……走るか」

 

 

 

§

 

 

 

 『白狼の巣』は、この辺では唯一の洞窟型宝物殿だ。開けた場所に大穴が開いていて、まさに洞窟といった形。

 雑に飛び上がって空を見渡すと、少し遠くにクライが高速でこちらに向かっているのが見えた。来るのが早かったかもしれないが、尾行するなら丁度いいだろう。

 

 隠密モードに意識を切りかえ、クライを待つ。今の所、本気の隠密モード状態で誰かに気づかれたことはほぼ無い。あって数例だ。……数例のレベルが高すぎる気はしているが。

 

 隠密と言えば、クライは隠密にも弱い。弱いという表現が的確かは分からないが、あまりにも気づかない。今のクライが普通に生活するには、感知系の宝具か、パーティーメンバーの誰かは必須だろう。そうしなければ度々の襲撃は退けられないし、反撃手段がない。

 まあ、気づかないからといって襲撃の度にハテナを浮かべまくるのは勘弁して欲しいが。場違い感で笑ってしまう。

 

 そんな事を考えている内に、クライが必死な形相で飛んできた。突入の時間だ。

 

 

 

§

 

 

 

 ……やっぱりクライは凄いな。あのトンデモ速度の宝具をこんな狭い所で操作してるわ。

 

 『白狼の巣』は洞窟型の宝物殿ということもあり、内部は全体的に狭い。建築物のように直角に曲がる所もある。高速で動いてたら、壁や天井に激突し、そのまま動かなくなること請け合いだろう。

 だがクライはどうだろうか。見事に壁や天井に身体をうちつけながらも進んでいる。しかも地図通りに。まさに神業(笑)だが、なんとかボス部屋には辿り着けそうだ。

 

 

「……ぶつかった幻影が死んだんだが」

 

 

 ふらっふらになりつつあるクライの移動先にたまたまいた狼の騎士の幻影が巻き込まれて死んだ。一応『進化』して適正レベル上がってるはずなのだが。

 

 

 

§ § §

 

 

 

 時は少し遡り、何とか無事に『白狼の巣』に辿り着いたティノ一行。無事とは言いつつ、進化した幻影との戦闘、『始まりの足跡』というクランの世界、救助対象、宝具の魔力切れ……悪化していく状況にティノ以外の面々は、精神的に消耗していた。

 

 

「……ここの幻影は、いつからこんな化け物になったのよ?」

 

「さっきのは剣だったが、こっちは弓や火器も持ってる。あいつだけじゃないのかよ」

 

「……マナ・マテリアルの過剰供給でもあったか? この辺りで何があった?」

 

 

 『白狼の巣』の入口。洞穴型という事もあり、下へと続く大きな穴のあるその場所には、まるで衛兵のように警戒を行っているシルバームーンと思われる幻影が居た。

 

 グレッグが発した『進化』とは、ハンター達の間で恐れられる現象である。

 元々宝物殿と幻影は、世界に満ちるマナ・マテリアルが一定以上の濃度になったときに生み出される。そして、それらはマナ・マテリアルの濃度が高まった時、より多くのマナ・マテリアルを取り込み、一段上の存在となる。

 だが、この現象はそう簡単に起きるものでは無い。

 

 マナ・マテリアルは普段、世界を縦横無尽に奔る地脈に沿って循環する形で動いている。それ故に一つの場所で濃度が上がることはあまり無く、地脈の変動や環境の変化など、外的要因が無ければ『進化』は起こりえないとされていた。

 仮に何らかの要因が発生したとして、高い国力を宝物殿によって得ている帝国ぜプルディアが気づかないとは考えにくい。もしそのような兆候があれば、ハンター達に知らせが届くだろう。

 

 どちらにせよ、なんの情報も無く、しかし、幻影は間違いなく『進化』している。まずは目の前の敵を倒さねばならない。

 

 ティノが息を整え、非我の戦力を分析する。結果として、まずは敵を無視して宝物殿に入り、有利な環境を作ることを決めた。そして、警戒班と思われるこの五体を倒す。

 その理由は、この幻影の『進化』にある。元々存在していたレッドムーンに対して、その大きさは二回り以上大きく、四足歩行ではなく、二足歩行。

 ここの宝物殿の大きさを考えると、今の幻影は宝物殿に対して明らかに大きすぎる。どんなに強靭な肉体を持とうとも、それを十全に動かせなければ意味が失われる。

 環境の有利を取った後、これらを殲滅する。無視して奥へ進むことこそ可能であるが、挟み撃ちに会う可能性がある。それを防ぐのであれば、まずここにいる五体の幻影を倒すしかない。

 

 

「取り敢えず、方針はーー」

 

 

 ティノはこれらを伝えた後、バランスの悪いこのパーティでどう実行するかを思考する。有効な遠距離攻撃の手段がない以上、牽制すら難しい。

 ティノが取れる手段が減っていくことを実感する中、ギルベルトが立ち上がるそぶりを見せる。

 

 

「しょうがないな、俺が切り込む。弓と銃さえ先制で倒せば後はなんとかなるだろ」

 

「……は? 馬鹿?」

 

「魔力がなくたって、煉獄剣は普通の剣よりも強い。大丈夫だ。こういうのは、慣れてる」

 

「そういえばお前、ワンマンパーティだったって言っていたか」

 

 

 この状況下において、平時と変わらないギルベルトの言動は、このような状況に慣れていることを示唆していた。明らかな実力差と戦力差が見えている中であってもそれが出来てしまうのは、今、この瞬間においては間違いなく大きくプラスに働くだろう。このパーティでなければ、だが。

 

 

「勝手なことしないで。死にたいなら別だけど、臨時のものとはいえ、私にはこのパーティのリーダーとして全員を生きて帰す義務がある」

 

「……はぁ?」

 

 ティノの発言に、ギルベルトがどことなく驚いた声を出す。このパーティは寄せ集めであることを考えれば、ギルベルトの反応はあながち間違いではない。

 縁もゆかりも無い上に、ギルベルトはあれだけやらかしている。本人からすれば、盾にされるのは織り込み済みと言っても過言では無かった。

 

 

「見捨てたりはしない。私は今回、マスターにリーダーとしての行動を期待されている。貴方達を一人も欠くことなく生きて帰ることはいわば、最低条件」

 

 

 もちろん、リーダーというものは綺麗事では早々成り立たない。非情な判断を下さなければならない場面はあるだろう。だが、今回はそうでは無い。

 クライ・アンドリヒという人物は、そのような事をしない。仲間を見捨てるなど以ての外だ。それこそが、彼の流儀にして、『始まりの足跡』の絶対の掟。

 なればこそ、そのような判断を下すことも、そんな結果になってしまうことも許されない。

 

 

「身軽な私とルーダが先に出て相手を引きつける。遠距離武器の回避の訓練は受けている……その隙に、グレッグとギルベルトが後ろから後衛組を強襲する。近づけば火器や矢は、怖くない」

 

 

 その言葉を皮切りに、戦いの幕は切って落とされた。目的の地まで、まだ遠い。




 アニメが楽しみで待ちきれませんが、原作12巻&コミック10巻発売にWeb版コード編完結と色々盛りだくさんでお腹いっぱいです。

 アニメもWeb版も各種書籍も間違いなく面白いのでまだ知らない人は(そんな人ここにはいないと思いますが……)是非触れてみて下さい。というか読んでください見てください。

原作通りの別キャラ視点って

  • 別にいらない
  • いる
  • 閲覧用
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

嘆きの亡霊は引退させない(作者:型破 優位)(原作:嘆きの亡霊は引退したい)

 ストグリにクライの本当の強さを理解している幼馴染を追加しただけのお話。▼ web版準拠、適宜アニメ入ります。▼ 基本的にオリ主視点と三人称視点で話が進みます。▼※過去に一度全く同じタイトルで投稿しておりましたが、矛盾点等が多かったため再投稿いたします。


総合評価:2280/評価:8.59/連載:11話/更新日時:2026年07月28日(火) 21:00 小説情報

魔法科世界の術式蒐集者(作者:パラレル・ゲーマー)(原作:魔法科高校の劣等生)

魔法が技術として体系化された世界――『魔法科高校の劣等生』の世界に転生した主人公・水瀬悠。▼彼が持つ固有魔法は《万象術式目録/アカシック・ライブラリ》。▼一度でも発動を直接観測した魔法式を完全複写し、精神領域内の目録へ永久保存するチート能力。▼しかも、魔法式を登録するたびにサイオン量、干渉力、演算速度、並列処理能力まで成長していく。▼強い。どう考えても強い。…


総合評価:7958/評価:8.28/連載:14話/更新日時:2026年06月02日(火) 19:37 小説情報

うちの脳内コンピューターが俺を勝たせようとしてくる(作者:インスタント脳味噌汁大好き)(原作:りゅうおうのおしごと!)

転生したら頭の中の居候が色々と助言してくるので大丈夫かと思いながら将棋を指し続ける人のお話


総合評価:96419/評価:9.17/完結:168話/更新日時:2020年08月19日(水) 18:00 小説情報

飲まなきゃやってられんわ、こんな教室。(作者:薔薇尻浩作)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

酒カスのアラフォー駄目人間のオッサンが『よう実』世界でモブに憑依する話(なお憑依したモブはAPP19の男の娘とする)。▼不定期更新です。詳しくは活動報告参照。▼※注意事項▼・本作品では犯罪行為を行う、または推奨する描写がありますが決して真似しないで下さい。▼・未成年の飲酒、喫煙は犯罪行為です。真似しないで下さい。▼・酒の密造は年齢に関係なく犯罪行為です。決し…


総合評価:23905/評価:8.7/連載:34話/更新日時:2026年05月08日(金) 07:25 小説情報

TS転生したら小鳥遊ホシノだったので青春を………Q.誰?お前?A.エーテリアスです(作者:如月トッポ)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

ある日、少年だった人物は見知らぬところで目を覚ました、▼よく見てみるとなんとブルアカの小鳥遊ホシノに転生していた!?▼けれど、転生先はブルアカでは無いようで……▼色々ちぐはぐすぎるこの主人公はこの終末世界でどう生きるのか………


総合評価:2887/評価:7.97/連載:11話/更新日時:2026年07月26日(日) 23:48 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>