主人公キャラに敗北した俺、別世界にて結婚します   作:蓮太郎

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第11話

 とても気分が悪い。

 

「ね、ねえ大丈夫かい?とても顔色が悪いけど」

 

「大丈夫…………思ったよりしんどかっただけだ」

 

「ジェットコースターがダメだったかな?確かに刺激が強いし大丈夫と思っても乗って酔う人もいるから」

 

 申し訳ないが物理じゃなくて心因性なんだよ。

 

「よし、じゃあ次はアレにしよう!メリーゴーランドだ!ゆっくりと回るから酔うことはないはずだ!」

 

 必死に別のアトラクションを進めてくるアンデルセンに言われるがままにメリーゴーランドに乗る事にした。

 

 ファンシーな見た目。処女ならぬ童貞を求めたユニコーンが乗り物となったメリーゴーランドだ。

 

 とりあえず乗る。ちょっと恥ずかしいが、俺が知る世界の女の子が好きそうなほわわんとした曲が流れて動き出したため降りることは許されない。

 

 クルクルと回り、ユニコーンが揺れる。それに連動するように俺も上下に動いている。

 

 クルクルと回るということはメリーゴーランドの周りで待っているアンデルセンがこちらに手を振ってくる。

 

 一応、俺も小さく手を振り返した。

 

 だが、その瞬間に俺の背中に悪寒が走る。

 

 フラッシュバックというもの。俺が殺した『子供』が脳裏に浮かぶ。

 

 仕方ないことだった。

 

 殺さなければ災害が起こる。その子を生贄にしなければ他の人間が数えきれないほど死ぬ。そう告げられたらどうするのか?

 

『それを何度も見せつけられた後に選択肢があるものだろうか』

 

 もしも『あの子』が生きていたなら。もしも『仲が良さそうな夫婦』の片割れが生きていたら。もしも『あの幸せそうなカップル』が生きていたら。

 

 もしも、もし、もしも、もし、もし、もしも、もしももしももしも、もし、もし、もしももしもしももしもしももしもししももしももしももしもしもしももしもしももしもしももしもししももしももしももしもしももももももももももももも

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、俺が殺した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………………………………………

 

 …………気分が悪い。吐きそうになる。

 

 背中に何かが這いずる気がする。

 

 恨み言が聞こえる、気がする。

 

 幻聴なのは分かっている。何が聞こえたかは誰にも伝えることはできない。

 

 これは俺の罪だ。隠していることだ。踏み躙ったことだ。

 

 あの世界に置いていったはずの思い出が、この世界に蘇る。

 

「だっ、大丈夫かい!?また酔ったのかい!?メデック!今すぐ彼に酔い覚ましを!」

 

 メリーゴーランドが止まった。気づけば時間が来たようだった。

 

 違う、俺がユニコーンにもたれかかってぐったりしてるんだ。

 

 白衣を来た女性が慌て俺に近寄って、何かよくわからない光を浴びせてくる。おそらく『異能』だろう。

 

 少し気分が良くなったが、完全に回復したとは言えなかった。やはり精神の負担からくる苦しみにはあまり効果が無いんだろう。

 

「なにか悪いことでも思い出しちゃったかい?謝るよ、無理に勧めたのが祟ったんだろう」

 

「これくらい休んで水を飲めば何とかなる。ちょっとあそこへ行ってくる」

 

「待って?」

 

 少しフラフラとしながら公共のトイレに向かおうとしたら引き留められた。

 

「休憩スペースならあっちにあるよ?飲み物だって私の権限でなんでも用意するし?何故よりによってトイレ?」

 

「だって…………落ち着くじゃん?」

 

「何を言ってるの?」

 

『異能』のおかげで豊かな表現を心掛けていたはずのアンデルセンから音が消えた。遊園地で流れるBGMと喧騒しか耳に入ってこない。男装している彼女の表情がスンッと無くなった。

 

 いや、精神が本当につらくなった時はトイレに駆け込んで座り込み、キリキリする胃を押さえてグッと前のめりになる、少ししたらトイレから出て蛇口をひねって水道水を飲む。

 

 それで少しだけ精神が落ち着く。

 

「そもそも男子用トイレは外にないからね?」

 

 …………忘れていた。この世界、男が貴重なんだった。

 

 ひとまず男性用トイレに案内された。一個一個が個室で防音、何故か妨害電波という中にカメラを仕込んで外から遠隔で見られないようにするような対策をしている、らしい。

 

『異能』の中で遠くのものを見る千里眼のようなものがあるらしい。それ故に妨害する人材は重用されるのだとか。

 

 便座に座ってゆっくりと息を吐く。

 

 とても、つらい。

 

 遊びたいという気持ちはあった。だが、過去の思い出がそれを許してくれない。辛いという気持ちだけ湧いてきて心の中が荒んでいく。

 

 そうして10分くらい居ただろうか?ようやく落ち着いて手洗いのための蛇口を捻り顔を洗う。遊びに来たとはいえ、アンデルセンも本気で自分をプレゼンしようとしてるんだ。表面上でも楽しんでいる雰囲気を出さなければ申し訳ない。

 

 トイレに行く前の悲しそうな子犬みたいな顔されたら期待に応えなきゃいけなくなるだろう!

 

 頑張れ俺、負けるな俺、過去の呪いを今だけでも振り切れ!

 

 ガチャリ、とトイレのドアを開けた。

 

「「あ」」

 

 隣の扉もちょうど開き、出てきた男性と目があった。

 

「「どうも…………」」

 

 そしてお互い一礼。

 

 気まずい空気が流れた。

 




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