偉大なるハリー・ポッター   作:幽玄の鬼

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プリベット通りのハリー・ポッター

 ハリー・ポッターが5歳のとき。

 ハリーを後部座席に乗せ、ダーズリー家と何処かに出掛けていた。

 

 その時のこと。運悪く飲酒運転による暴走車が、バーノンの運転する車に突っ込んで来た。

 だが、ハリーの魔法の力で事なきを得て、ダーズリー家はハリーに対する認識を改めることになる。

 

 

 

 ハリー・ポッターは、黒髪をくしゃくしゃに伸ばした少年だ。額には稲妻の傷がある。丸眼鏡を掛けている。

 健康的な肌の色で、11歳にしては筋肉質だ。従弟のダドリーとボクシングジムに通う影響かもしれない。

 

「おはよう、叔母さん。今日は僕が朝ごはんを作るよ」

 

「おはよう、ハリー。今日は早起きね? 任せるわ」

 

 5歳までハリーはまるで腫れ物を扱うかのように虐待されていたが、事故のあの日を境にダーズリー家の一員として迎えていれられ、ハリーの不思議な力も肯定されるようになった。

 ペチュニア叔母さんは、珍しく早起きなハリーに微笑み、朝食を任せることにした。

 

 

 ハリーは、指をすすいーっと横に滑らせる。

 それだけで、調理器具に食材たちまでもが、まるで意思を持っている様に独りでに動き出すのだ。

 

 冷蔵庫が勝手に開き、卵とベーコンが飛び出て来る。ヨーグルトも一緒にだ。野菜も少々、ヨーグルトの後を追う。

 食パンが4切れ。宙を浮かびやって来る。飛んでいる最中に、焦げ目が付きふっくら焼き上がった。

 食器棚から、平皿4枚マグカップが4つ出て来て、空を飛びながらテーブルに配膳される。

 

 ハリーが指揮棒を振るように、指を動かすだけで、全てが勝手に動く。

 

 ハリーはキッチンに立つと、鍋と向き合った。野菜のカットは、勝手に動く包丁が担当する。

 ペチュニア仕込の繊細な味付けを再現するには、ハリーが魔法に依らず自らの手で調理する必要があった。 

 火を掛け、調味料を入れてハリーは味を調整する。

 人差し指をスープに突っ込み、そんな指をペロッと一舐め。

 

「うん、完璧!」

 

 ハリーは、よしっと頷くと、完成したスープに、指を振った。鍋ごと浮かび上がると、テーブルに向かって飛んで行った。

 

「あら? 今日は完璧なの?」

 

 完璧と頷くハリーに、ペチュニアは意地の悪い顔をする。

 

「うん。叔母さんに仕込まれた通りの味だよ」

 

「そう。なら楽しみにしてるわね」

 

 ハリーの親愛なる叔母は、息子に甘いが家事にのみ厳しい。

 ハリーの魔法を見て嬉しそうな、それでいて懐かむような複雑な表情が一変、厳格な母の顔つきになる。

 

「おお? 今日はハリーが朝ごはんを作っているのかい?」

 

 寝癖そのままのバーノン・ダーズリーはキッチンに入るなり、すぐ眼前をふらふら鍋が飛んでいる光景を見て、そう言った。

 ふくよかな体型の中年の男性で、ダーズリー家の大黒柱だ。穴あけドリル製造会社のグランニングズ社の社長をしている。

 

 彼は魔法を筆頭に普通ではないものが大っ嫌いてあったが、ハリーに家族を助けられてからファンタジーに寛容になった。ハリーが魔法を使っても、もう咎めたりなどしない。

 もっとも、愛する妻いわく魔法を外で使うと監獄に打ち込まれてしまうらしいので人前ではあまり使うなと叱っているのだが。

 とにかく、スープカップに注がれ、沸き立つ湯気の美味しそうな香りにバーノンは頬を緩ませた。

 

「おっ、ハリーの作ったごはんか!」

 ダドリー・ダーズリーはハリーの従弟。丸々っとしているが、最近ハマっているボクシングの影響で肥満体型から脱しつつある。

 ブロンドの顔と丸い顔が愛らしい。

 ダドリーは、ハリーの魔法に目をキラキラ輝かせて魅入る。

 おはようと、パパとママに告げると

 

「ハリーは魔法が使えていいなぁ。おれも魔法が使てたらな」

 

「叔母さんと叔父さんが魔法使えないんだもん、仕方がないよ。それにダドリーは僕よりパワーがあるでしょ?」

 

「へへっ、そうだけどな。ハリーには魔法があるんだから、いじめっ子たちをのしてやればいいのに」

 

「なにっ!? ハリーを虐めるやつがいるのか! 実にけしからん。学校に抗議の電話を入れねば!」

 

 ダドリーとハリーの会話に入らず、新聞を熟読していたバーノンは、辛坊たまらず声を荒らげた。ペチュニアも、同じく憤然としている。息子同然のハリーをいじめられていると聞いて怒らずにはいられない。

 

「大丈夫だよ、叔父さん。特別じゃない奴(・・・・・・・)に何言われても僕平気だよ! それに怒られない程度にやり返してるし、僕の分はダドリーがぶん殴ってくれるもん」 

 

 特別じゃない、とは魔法の力を持つゆえに悩むハリーに、ダーズリーが与えた教えである。

 ――魔法を持つハリー然り、ボクシングの才能あるダドリー然り。生まれ持って特別な存在は、総じて凡人に疎まれるのだから気にするな、と。

 魔法が使える特別なハリー・ポッターを、周りの凡俗がやっかんでくるのは僻みであるとハリーは思っている。

 いじめっ子たちの頭の上に木の枝を落としたり、木ごと倒したり。あるいは、殴っている様に見せかけて吹き飛ばしたり、やられっ放しのハリーじゃない。

 

 ハリーの言葉に、ダバーノンは満足して何度もウンウンと頷いた。

 彼も若い頃は苦労したのだ。

 

「そうだ、そうだとも。やり過ぎはいかんが、やられっ放しというのも良くない。男たるもの、やり返さんとな。 儂も若い頃は……」

 

 バーノンの一人語りを、ハリーはニコニコして聞き流す。バーノンの武勇伝は、個人的にはもう聞き飽きた。耳にタコが出来るほど聞かされれば誰だって飽きるものである。

 

「僕、スポイルに餌をやって来るね!」

 

 バチン、音が鳴るとハリーの姿は消えていた。

 

 

 ハリーは、ダーズリー叔父さんが大好きで。ペチュニア叔母さんも大好きで、ダドリーも大好きだ。

 ハリーはダーズリー家を愛し、ダーズリー家もまたハリーを愛している。

 

 ハリーはとにかく幸せだった。

 

 

――――

 

 

 プリベット通り4番地。

 そこにハリーは暮らしてた。寝ぼけて魔法が暴走しては、家族に迷惑を掛けてしまう。そう思ったハリーの意見が通って、ハリーは小部屋が与えられていた。

 本棚がたくさんあって、そこには色んなコミックや小説が置かれていた。オモチャ箱には、ダドリーとお揃いの新品なオモチャが幾つも転がっている。

 ふかふかで大きなベッドは、ハリー専用だ。

 だが、ハリー専用の聖域に今日は乱入者が。

 

「起きろハリー!」

 

 元気な声に遅れて、ハリーの腹部を衝撃が貫く。

 

「ふぐうっ!」

 

 潰れたカエルみたいな声を出してハリーは目が覚めた。何事だ、とハリーは目をゴシゴシ擦る。ハリーは朝に弱かった。

 

「朝ご飯の時間だぞ! 早く起きろ!」

 

 ダドリーの言葉に、ハリーの目は完全に覚めた。

 ハリーは眼鏡を掛けると、ダドリーと一緒に階段を駆け下りてリビングにダッシュする。

 

「今度、お腹に飛び乗ってきたら呪いを掛けるからねダドリー」

 

「ハリーが声を掛けても起きないからだ」

 

「これこれ、ご飯を食べるときは喧嘩はなしだぞ?」

 

 互いに罵り合うハリーとダドリーを諌めて、ダーズリー家は朝食を食べ初めた。

 ハリーは、テーブルの下を見ると声を掛ける。

 

「それ美味しいの? スポイルキザット」

 

「きゅいぃきゅるる!」

 

 甲高い声で鳴くのは、半分昆虫で半分トカゲに似た動物である。血を吸う生き物で、ある日瀕死の状態であるところをハリーが見つけ世話をしたら懐かれた。

 血以外には生肉を好む。

 6本の足に、ギザギザの歯が特徴的なのだが、どの図鑑にも載っていない。彼は、猫の代わりにダーズリー邸に不法侵入するネズミや鳥たちを追い払うことに貢献している。

 甘えん坊(スポイル)は、ネズミを齧り血を吸いながら、嬉しそうに尻尾を振っていた。

 ハリーは、スポイルキザットが楽しそうにネズミを食べる姿を見てにこって笑う。

 

「あ、郵便だ」

 

 ハリーは指をパチンと鳴らす。

 手紙が、ダースで飛んで来た。

 バーノン宛やら、ダドリー宛やら。たくさんだ。そんな、中一枚の封筒が目についた。

 

  サレー州

  リトル・ウイジング 

プリベット通り4番地、二階小部屋

 ハリー・ポッター様

 

 黄色みが買った羊皮紙の封筒で、切手は貼っていない。

 誰からだろうと思って裏返してみると、紋章入りの紫色の蝋で封印してあった。真ん中に大きくHと描かれ、文字を獅子、鷲、穴熊、蛇が取り囲んでいる。

 

「あれ? 僕宛に手紙だ。誰からだろ?」

 

 宛名が書いてなかったので、ハリーは開けてみることにした。

 ハリーは手紙の内容をつらつらと読み上げる。

 

「ホグワーツ、魔法魔術学校に入学を許可されましたことを? ホグワーツ魔法魔術学校だって? 叔父さん叔母さん。パパとママが通ってた学校だよね?」

 

「なんと! やっと来たか! まったく、ハリーは優れた魔法が使えるのに、学校とやらは手紙を寄越すのが遅いな」

 

 バーノンは鼻歌を歌いそうなまでにルンルンだ。ハリーの魔法を認めた日から、ホグワーツ入学許可証が来ることを楽しみに待っていたのだ。学校で訓練する前から、これほどまでに魔法を使いこなすハリーなら、オグワーツ(・・・・・)で天辺になれるに違いない。バーノンはとにかく上機嫌だ。

 

「貴方の様な特別な子が行く魔法使いの学校よ。私の妹も通っていたわ。あなたのパパも」

 

 ペチュニアも嬉しそうだった。眦に涙を浮かべて。死別した妹のことを思い浮かべているのかもしれない。

 そんな叔父と叔母の様子を尻目に、ハリーは夢中で手紙を読み進めた。

『ホグワーツ魔法魔術学校

校長アルバス・ダンブルドア

 マーリン勲章勲一等 大魔法使い 上級大魔法使い 魔法戦士隊長 国際魔法使い連盟会員』

  

 どうやら魔法使いの世界には、勲章やら連盟やらが存在するそうだ。新学期は9月1日に始まる。7月31日に必着のふくろう便を待つまで読むとハリーは質問をする。

 

「ふくろう便を待つって! ふくろう便ってなんのことだろう」

 

「魔法使いたちの郵便手段らしいぞ、ハリーや。なんでも魔法使いの間ではふくろうで手紙のやり取りをするらしい」

 

「普通よりも時間がかかるけど、直接手紙を届けてくれるのよ。切手もいらないわ」

 

「だが困ったぞ。うちには手紙を届けれそうな鳥なんぞおらん。その辺のペットショップで買ったふくろうが手紙を届けれるとは到底思えん」

 バーノンの懸念は最もで、ペチュニアは助け舟を出す。

「リリーの時はホグワーツの先生が来たのだけど。ハリー。教材リストのほかに、手紙はない?」

 

 

 ハリーは、封筒の中を漁る。

 小さなメモが入ってた。中身を確認すると。

「リストのほかに? えーっと、あった! ホグワーツの職員が来るんだって、明後日に。返事はその時聞かせてって」

 

「なるほど。……ペチュニアや。別に、魔法使いをけなそうなんぞ思っていないが、その、なんだ。魔法使いは普通(・・)の恰好ができるのかい? 昔見かけたときは、いかにも魔法使いって恰好だたんだが? 普通の人間しかおらんここに来れば、目立つだろう?」

 バーノンは、小さい声で懸念を口にする。

 

「ポッター家は一応、普通の恰好をしていたような気がしたわ。けれど、魔法が使える代わりにファッションセンスがイカれてる連中ですもの。玄関に直接来るのかもしれないわ、ハリーみたいに」

 

「直接来るなら良いのだが、いやマナー的には最低だが。とにかく、最悪、ご近所を言い含めなければな。とばっちりでハリーが迷惑こうむるのはかなわん」

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