俺がアイツと戦えないのはどう考えてもお前らが悪い 作:魔法使い候補
今回も短いですが、面白いと思っていただければ幸いです。
オラ強え奴と戦いてえ!!
直江大和
川神学園2年F組所属
父親の教育の賜物か、要領が良く頭の回転も速い。ただ、性格は母親の若い頃を彷彿とさせるくらい好戦的。喧嘩や争い事が絶えなかったが、噂を聞き付けた川神百代に負けてからは落ち着いている。現在はリベンジ画策中。
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『強い方が戦い守るのが合理的なのは分かってるのだろう?』
『男だから、女だからという考えは――』
『――今の時代ではナンセンスな思想だ』
川神学園
校訓は"切磋琢磨"
生徒達の個性、自主性を重視する自由な校則が特徴的な学校だ。ユニークな行事や授業は勿論、"決闘"という生徒同士の勝負を行うシステムがある。
決闘では互いの合意があれば、白黒つける戦いを行ってもよいと学校側が認めている。内容も喧嘩や論戦等様々で、人数による縛りも無い。
2009年4月20日(月)
あの屈辱塗れの敗北から約二年半。
俺はあの"川神百代"が通っている川神学園に進学し、無事2年に進級することができた。
今は島津寮から学園に通っている。それなりに知り合いも増えたので、武神に関しての情報収集を行っているが、思ったように集まらない。そこらの不良達相手ならともかく、一端の武人として挑戦を受けるときはギャラリーを排除してから試合をするからだ。仮に見れた人間に話を聞けても「何をしたのか分からなかった」という答えばかり。自分で観察するのも限界があるので、不安は拭えない。
鍛練の方は順調なだけに、非常にもどかしい。
『いくら努力しても勝てない奴もいる』
あの後、知り合いになった髭面のおっさん、宇佐美先生に言われた台詞だ。確かにその可能性はある。なにせ傷を一瞬で回復させるような奴だ。生半可な攻撃じゃ気絶させることすら出来ない。少なくとも、今の俺ではルールによる制約を受ける試合では絶対に勝てない。
『あのチート技が有る限り、お前では勝てない』
だが
ルールによる制約を受けない
何でも有りの
喧嘩なら?
決着が着くまで
止める者の居ない状況を作れたら?
本当に勝てないと言えるのか?
直江大和は考える
自分には気で波動を撃つことはできない
傷を一瞬で癒すこともできない
だからといって勝てないとは決まっていないと
2009年4月20日(月)
川神学園2-F教室
「起立!礼!」
「「「おはようございます!」」」
「おはよう!着席して良し」
「出欠を確認する。各自速やかに…
出欠確認が進んでいく、私語をするバカは居ない。
「今週の伝達事項だ。水曜日に朝礼、木曜日に人間力測定」
「以上。朝のホームルームはこれまで!」
クラスの空気が弛緩し、生徒達が話し出す。
『体罰の鞭が気持ちよかった』
『宿題写させてくれ』
『今日もモモ先輩すごかったね』等々
休み時間、昼休みでできる限り多くの奴等と談笑しつつ、武神に関する情報を聞いて回ったが、大した収穫は無かった。
2009年4月20日(月) 放課後
川神学園 空き教室
放課後は、空き教室で宇佐美先生に喧嘩について師事を受ける。宇佐美代行の仕事を手伝うことで、喧嘩のノウハウを教えてもらっているか(ry
「教えることが無くなったな」
「ハァ?」
「そもそも、オジサンは誰かに喧嘩の技術を教わったわけじゃないから」
「実戦をこなすことで、自分なりの戦い方を模索しただけだから」
「……」
「心構えや、スポーツ化された格闘技じゃ使えないような技術は全部教えた」
「後は自分で戦ってみて、自分で喧嘩を極めてくれや」
「いきなりそんなこと言われても困る。只でさえ練習相手が居ないのに、ふざけんな」
「そう言われてもねえ、中年のオジサンじゃお前さんの相手はしんどいのよ」
「そこら辺にいるチンピラじゃ、練習にならないことくらい分かってるだろ」
「そこは心配するな、良さそうな相手なら目星をつけてる」
「…誰よ?」
「お前さんも聞いたことはあるだろ、歓楽街の板垣姉弟だ」
「……」
「どうした?」
「そいつらがご親切に俺と喧嘩してくれるとは限らない」
「歓楽街周辺の不良はそいつらに取り纏められている」
「対峙した状態で喧嘩を初めれば、ほぼ確実に邪魔が入る」
「襲撃をかける形で喧嘩を吹っ掛ければ乱戦になり、
「人が居ない状況を作る必要がある」
「……」
「何か策を考えないとな」
「じゃあ何か思い付いたら言ってくれ、オジサンでできることがあるなら手伝ってやるよ、一回だけな」
「ケチくせぇな」
「世の中ギブアンドテイクよ、じゃあ今日はもう帰った帰った」
2009年4月20日(月) 夜
島津寮102
(…板垣姉弟か。親不孝通りで暴れ回っているのは聞いていたけど、一対一で戦うのは難しいな)
あの一帯は柄の悪いチンピラや不良が多い、モラルや美学などあるわけない。囲んで袋叩きにしようとするだろう。それでは戦う意味が無い。
助っ人を呼んで、不良の相手を助っ人に任せる。駄目だ、助っ人の強さ次第では援軍を呼ばれたり、逃走を図られる。やはり人が居ない状況を作るのが理想的だ。
そうすると親不孝通りや歓楽街ではなく、人通りの少ない場所に誘い出すのが現実的か。こちらが喧嘩を売るのではなく、向こうに喧嘩を売らせる。
(そんな都合の良い方法があるか?)
親不孝通りのチンピラを片っ端から潰して回る?いや、一人で良い。板垣姉弟と連絡が取れる奴を一人、脅して呼び出させるか。
(……成功する確率は低いな、不確定要素がある以上
ここはやはり、あの髭に手伝ってもらい確率を少しでも上げる。手頃な奴を
板垣姉弟を一人倒せば、残りの姉弟は俺に報復しようとする可能性も出てくる。上手く利用できれば一人ずつ戦える。報復を考えなくても、倒した奴から何らかの形で残りの姉弟に接触できる可能性は生まれる。
(そうと決まれば、早速髭に手頃な奴を探してもらうか)
三日後
2009年4月23日(木)
親不孝通り
「俺好みの男を見かけただと!?」
「ええ、そこのゲーセンの向かいのビル。ほら、建設途中のヤツのとこで」
「どんな奴よ?」
「女顔で髪が肩に掛かるくらい長いんですが、ガタイが結構良かったんですよ」
「180㎝くらいですかね、全体的に黒っぽい格好だったっス」
「そーかい、丁度ムラムラしてたとこだ。ちょっと抱いてくるぜ」
「人払いしておけよ」
「ウッス!!」
大和は"甘いマスク"を使った!
板垣竜兵が襲い掛かって来た!