もしもルイズの召喚したのがサイトじゃなくて〇〇だったら?です。
「ど、どうしよう……」
ルイズは頭を抱えて、ひたすら悩む。
始まりは使い魔召喚。
魔法学園の進級試験である使い魔召喚に成功したのだが、その使い魔に問題があった。
その使い魔はマントを付けていたために貴族だとされ、異国の貴族を使い魔にしていいものかどうか? と、ひと悶着あった。
しかし彼は意外にも、スンナリと使い魔の立場を受け入れてくれる。
ルイズは最初、マントこそしてても本当は貴族じゃないから貴族に逆らえなくて従ってるのでは? などと思ったのだが、彼は空を飛んだので間違いなく貴族だと思えた。
魔法が使えるのは貴族の特権だ。
そしてその日の夜、彼の情報を知るための会話がこれである。
「改めて自己紹介するわね、私の名前はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール……まぁ、ルイズでいいわ」
「そうか、俺の名前はミスター・ブウだ。ブウでいいぞ」
「えーと、あなた、ブウは貴族……メイジ、なのよね?」
「貴族? ……てのはわからないけどチャンピオンの弟子で、毎回天下一武道会で優勝してチャンピオンへの挑戦権を手に入れて惜しくも敗れる俺のことを、いつからか人は名人とか呼ぶようになってたな」
「メイジン? メイジの訛りかしら? えーと、出身地はどこかしら? 近隣国ならちゃんと連絡しないと、だし」
「俺の出身地……生まれた場所はもう覚えてないけど、今は地球のサタンシティのサタンの家に一緒に住んでるぞ」
「チキュウ? サタンシティ? 知らない土地だわ……東方の向こう側かしら。ごめんなさい、連絡手段がないかも知れない」
「ん、まぁ気にするな。たぶん帰ろうと思えば帰れると思うしな。自力で無理だとしても気を高めて悟空に見つけてもらえば瞬間移動で帰れるだろ」
「えーと、知ってるかもしれないけれど使い魔に求められる仕事は感覚の共有、危険な場所での素材収集、主の護衛……なんだけど」
「感覚の共有、てのは出来てないっぽいな。危険な場所はどこでも行けると思うし、どんなものか教えてくれれば楽勝だろう。護衛ってのは任せろ。俺は強いからな」
「そうなんだ。ていうか、強いって軽々言うわね。すごい自信だわ。どのくらい強いのかしら?」
「うん、わかりやすく言えば星を壊すくらいは余裕だな」
「星って……空の星? 何言ってんだか。届くわけないじゃない」
「できるぞ、そりゃ」
「つ、つ、つ……月、月、月……月が、がががが……あ、ぁぁ」
「な? この星には月が二個あるみたいだし一個くらい壊しても良いだろ」
「お、おっふぅ」
そこでルイズは気を失ってしまった。
気を失うくらいだし、直前の記憶も全部なくなるくらいだったら良かったのに、バッチリ覚えている自分の頭脳が恨めしい。
だからルイズは頭を抱え、悩む。
「な、何てことかしら……月を消しちゃった……どうしよう、どうしよう、どうしよう」
「お、ルイズ起きたか。昨日は突然寝たからびっくりしたぞ」
「うひぃっ!」
突然声をかけられ驚くルイズ。
それも当然。急に声をかけられるというのはそれだけでも驚くが、その相手が月をも破壊できるモンスターとなればその驚きは何倍にもなる。
「あわわわ」
「何をビビってるんだ? そんな事より朝飯とかいいのか? ご飯食べないと人間は力出せないだろ」
「ご、ご飯なんかどうでもいいわよ! あ、あ、あんた! つ、月を壊しちゃって……どうするつもりなのよ!」
「ちゃんとあの後直したから文句言うなよ」
「はぁー!?」
何でもない事のようにいうブウに対し、ルイズはもはや驚くしかなかった。
そして思う。
こいつは絶対メイジじゃない。そんな範疇に入るレベルとは思えない、と。
それから少しの時間、放心していたルイズは朝食の時間を逃してしまうが、ブウは人間に認識できないスピードで食堂の料理を平らげたのはどうでもいいことだろう。
使い魔召喚の翌日の最初の授業。
ルイズは色々思うところはあるが、ブウの実力はなるべく表沙汰にしないほうがいい、と思うようになっていたので、教師が「個性的な使い魔ですね」なんていう、ある意味挑発とも取れる言葉を言っても曖昧な笑顔でやり過ごし、低脳な同級生がヤジを飛ばしてもなるべく無視をして、ブウが怒らないように、動かないように努めた。
しかし……
「それでは皆さんにも錬金を……いえ、せっかく異国のメイジの方がいるのですから、ミスタ・ブウの錬金を見せてもらってよろしいですか?」
土属性の授業、基本とも言える錬金の実習において、教師がブウにやってみないかと勧めてきた。
ルイズ自身は、例え自分がやってみないかと言われ、その際に周りから挑発されても我慢するつもりはあった。自分の使い魔が月を壊して直して、なんてやらかす規格外な存在である以上、その使い魔を従える自分は気軽に感情を爆発させて考えなしの行動をしてはならない、と思ったからだ。
だけど、ブウに言われたのなら、どうするのかはブウ個人の意思を尊重せねばなるまい。
ブウは使い魔だが、貴族でありメイジと思われている以上、周りから見てルイズはブウの意思を尊重しているように見せなければ自分の品性が疑われるのだし。
しかし、ここは止めなければならないのだろうか? と、思う。
だってブウが錬金をやって、もし出来なかったら? 出来たとしてもその精度が低く、生徒たちがブウを侮辱するような言葉を吐いたら? どうなるだろうか。
ブウの堪忍袋の尾がどれほど強靭なものかすら分かっていないのだが、もし少し前のルイズのように、かんしゃく玉のような性格だったら、月をも壊す力を横に向けて発射しかねない。
どんなに怒り狂おうと、ルイズにできるのは魔法の失敗による爆発だけで、恐るるに足らないし、仮にスクエアメイジだったとしてもせいぜい被害の規模が数百人レベルで止まってしまうが、ブウの怒りは小さく見積もっても国が滅ぶ。
そんな危険を考えるとブウに錬金をやらせるのは……ルイズが悩みに悩む。
「錬金? よくわからんがその石ころを金に変えりゃいいのか?」
「ゴールド……まぁ、錬金でゴールドを作成できればそれは素晴らしいことですが、出来るのですか?」
「ほれ」
ルイズが悩んでいる時間はそんなに長くなかったが、ブウはその長くない時間で行動を起こす。
あ、そういえば昨日も月を壊すのに一瞬の逡巡すらしなかったわね……気が遠くなりそうな思いの中でルイズはそう思った。
「ご、ゴールド!? 石ころどころか、つ、机ごとだなんて!!」
しかし気が遠くなりかけたルイズの意識を現実に戻す大きな声。
どうやらブウは月を壊すだけでなく、ゴールドの錬金すら余裕のようだ。それも教師用の教卓ごとゴールドにするレベルで。
土メイジの錬金の中でも黄金は難易度が高く、スクエアのメイジが精神力を高めに高めても少数作るのがやっとと言われている。が、ブウは小石どころか机という大質量を一瞬で黄金にしてみせた。
ちなみにその魔法は杖じゃなく、頭の突起物からの不思議な光線によるものだが、誰もそこには突っ込まなかった。
ルイズは自分の軽い一言でブウが月を吹っ飛ばした事を思い出し、決心する。
これからの人生を自分はブウの力が暴走しないように抑えるために使おう、と。
例え同級生から侮辱の言葉をかけられても、それ以上にブウが暴れないように気をつけなきゃならない。
そうしないと、月を壊したブウの力が、地上に向けて放たれるかもしれないのだから。
しかしルイズの決意とは裏腹に、ブウの快進撃は止まらなかった。
土くれのフーケなる盗賊が出てきたときは、口から息を吹きかけただけで30メイルのビッグサイズゴーレムを吹き飛ばしたり。
幼馴染の王女が外国の王子に宛てたラブレターを回収してきて、と言えばその日のうちにアルビオンまで飛んでいき、行きがけの駄賃とばかりにアルビオンに蔓延る反乱軍を吹き飛ばす、など。
このままではいやでもブウが目立ち、ブウの力に目をつけた者が余計なちょっかいをかけ、いずれブウの逆鱗に触れ月をも吹き飛ばす力が地上で発動しかねない、そう思った。
だからルイズは学校を自主退学し、広い領地に引きこもることでブウの力を外に触れさせないようにしようと考えた。
その際に、実家に帰った時には両親から怒られたが、病弱な姉をブウが一発で治療したことで両親の機嫌がよくなったのは儲け物と言えよう。
そうして、姉の領地に大きな館を建てて、そこに引きこもりブウとともに静かな日々を送ろうと思ったルイズだが、世界はそれを許さない。
レコンキスタが一瞬で崩壊したことで、レコンキスタを裏から操っていたガリアの王がブウに興味を持ったり。
ロマリアがブウの使う魔法の異質さから異端認定し、ブウの身柄を引き渡さねばトリステインを滅ぼすための聖戦をしかけるだなんて言ってきたり。
これに対し、トリステインの考えなしの貴族連中であればブウを引き渡す、処刑するなりして処分してしまえなどという。
ある程度ものを考える頭のある貴族なら、ブウの力で敵をやっつければいいだなんて言う。
ブウの力なら一人でハルケギニア全てと戦い勝利できてしまいそうだが、それが正しいことなのかどうかがわからない。
だからルイズは今日も悩む。