問題児たちが異世界から来るようですよ?-時間神の恩恵を持つ男-   作:大禍時悪

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第一章-黒瓜黒継、箱庭の地に降り立つとのこと-

 ボチャン、と超高高度から湖に落下したとは思えないほどあっけない音で着水した。途中何か膜のようなもののおかげだろうか。幸いすぐ近くに陸地があったのでさっさと陸地に這い上がる。

 

「うわ、服がびたびただよ。はぁ……」

 

 不揃いに切られた前髪をかきあげる。濡れた服を肌から離すようにつまんだ後、ブン! っと右手についた雫を払うように振るう。その刹那、余すところなく濡れ鼠になっていた学生服がすべて乾いていた。

 

「し、信じられないわ! まさか問答無用で引きずり込んだ挙句、空に放り出すなんて!」

 

「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ」

 

 二人の男女は服を絞りながら文句を言っていると、そのうち一人の金髪の少年が、黒瓜の服がすでに乾いていることに気付いた。

 

「なあお前、服が乾いてるみたいだがそれを俺にもやってくれないか?」

 

 ヤハハ、と笑いながらそう提案してきた。

 

「わかった。ほかのお二人さんはどう?」

 

 金髪の少年の肩をポンと叩き、指をパチリと鳴らす。すると先ほど同様少年の服が乾いていた。

 

「そうね、じゃあお願いしようかしら」

 

「……私も」

 

 ショートカットの少女とロングヘアの少女の服を一度触り、またパチリと指を鳴らす。

 

「まず間違いないだろうけど、一応確認しとくぞ。もしかしてお前達にもあの変な手紙が?」

 

「そうだけど、まずは”オマエ”って呼び方を訂正して。―――私は久遠飛鳥よ。以後は気を付けて。それで、そこで猫を抱きかかえてる貴女は?」

 

 ああ、その通りだ。と答えようとしたらすかさずロングヘアの少女、久遠飛鳥が反論していた。

 

「……春日部耀。以下同文」

 

「そう、よろしく春日部さん。で、さっき服を乾かしてくれた、いかにもやる気のなさそうな貴方は?」

 

 やる気のなさそうな、という枕詞がついたのでおそらく俺のことだろう。

 

「黒瓜黒継です。夢にまで見た異世界でただいまテンション爆上がり中です。以後よろしゅう」

 

「よろしく黒瓜くん。最後に、野蛮で強暴そうな貴方は?」

 

「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と容量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」

 

「そう。取扱説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君」

 

「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」

 

 ケラケラと楽しそうに笑う逆廻十六夜さん。

 とても高圧的で上から目線の久遠飛鳥さん。

 先ほどから一切口を開かない春日部耀さん。

 そしていじめられっ子でひねくれ者の俺。うん俺も含めて協調性0だね、うん。

 

「で、呼び出されたはいいけどなんで誰もいねえんだよ。この状態だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明する人間が現れるもんじゃねえのか?」

 

 逆廻十六夜と名乗った少年が苛つきながらぼやく。

 

「あれじゃない? 説明を聞きたければまず町まで来い的な、実は最初の試練でしたとか。あらヤダ斬新……でもないね」

 

 その場のノリで適当なことを黒瓜は言ってみた。でも最初に説明がないのは本当に斬新だと思っていた。

 

「いいな、それもそれで面白そうだ」

 

「でも、説明もないまま動いては危険じゃない?」

 

「俺は問題ない」

 

「そう。身勝手ね」

 

「さて冗談はこれくらいにして、さっきから向こうでこっちを観察してる人にでも聞いてみる?」

 

 黒瓜は真正面にある草むらの方を、軽く睨む様に目を細めて見る。

 

「なんだ、貴方も気づいていたの?」

 

「ええ、まあ。いじめられっ子は他人の視線には敏感なんで。でもここにいる人はみんな気付いているんじゃ?」

 

 ちらりと十六夜と耀に目を向けながら話を振る。

 

「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ?」

 

「風上に立たれたら嫌でもわかる」

 

 風上にいたらわかるってどういうことだろう、と疑問に思ったとき先ほど見ていた草むらから、がさりがさりと音を立てて黒い髪の少女がぴょこり、と顔を出した。ウサギの耳が生えているのが若干気がかりだったが。

 

「や、やだなあ御三人様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ? ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたら嬉しいでございますヨ? ってそこの黒髪の殿方はなぜダメージを受けているのですか!?」

 

 御三人様、といった中に俺は含まれていないようだ。また苛めか、無理やり呼び出しておいて俺はいない人扱いですか。まあ、黒ウサギ? さんの値踏みするような目で見られてるし、睨んでも怖い顔じゃないって遠まわしに言ってるんだねきっと。とそう考えることによってこのウサ耳さんの精神攻撃から何とか立ち直る。

 

「断る」

「却下」

「お断りします」

「そんなことよりじろじろ見んのやめてくれない」

 

「あっは、取り付くシマもないですね♪」

 

 黒ウサギは両手をあげて降参のポーズをとる、だけど値踏みする視線は変わることはない。どうしたものかと黒瓜が考えを巡らせていると耀が黒ウサギ近づいて……。

 

「えい」

 

 思いっきり引っ張った、ウサ耳を。鷲掴みにして。黒ウサギは声にならない悲鳴を上げた。

 

「ちょ、ちょっとお待ちを! 触るまでなら黙って受け入れますが、まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きにかかるとは、どういう了見ですか!?」

 

 あれ、本物の耳だったんだ。てっきり飾りか何かだと思ってた。春日部さんが好奇心のなせる業、とつぶやくと、逆廻さんも久遠さんも黒ウサギさんに近づいて、逆廻さんは右耳を久遠さんは左耳をそれぞれつかんでまた思い切り引っ張った。再び黒ウサギさんの声にならない絶叫が響き渡った、南無。ちなみに二人が手を離した後、俺は黒ウサギの了承を取り軽く触らせてもらった。意外とすべすべしていましたまる。

 

「―――あ、あり得ない。あり得ないのですよ。まさか話を聞いてもらう為に小一時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはきっとこのような状況のことを言うに違いないのデス」

 

 しょんぼりとうなだれた黒ウサギさんはブツブツと涙目でつぶやく。そりゃ一時間近くも話聞いてくれずに弄られてたら涙目にもなるよね。黒ウサギさんはゴホン、と咳払いをしつつ両手を広げて宣言した。

 

「それではいいですか、御四人様。定例文で言いますよ? 言いますよ? さあ、言います! 『ようこそ”箱庭の世界”へ!  我々は皆様にギフトを与えられた者だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼンさせていただこうかと召喚いたしました!』」

 

「ギフトゲーム?」

 

 四人が四人とも頭にはてなマークを浮かべた。

 

「そうです! 既に気づいてらっしゃるでしょうが、御四人様は皆、普通の人間ではございません! その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその恩恵を用いて競い合うためのゲーム。そしてこの箱庭の世界は強大な力をもつギフト保持者がオモシロオカシク生活できる為に造られたステージなのでございますよ!」

 

「質問いいかい? ギフトとやらの保持者ってことは、特異な人しかいないって認識でいいんだよね、どんな能力をもっていても軽蔑されたりしない世界なんだよね?」

 

「YES! 決してそんなことはありません。確かに”恩恵(ギフト)”によっては非常に驚かれたり恐れられたりすることはありますでしょう。でも軽蔑されることはありません」

 

 黒ウサギはそう断言した、それが聞ければこの箱庭の世界で生活するうえで黒瓜にとっては十分だった。

 

「ありがとう、続けて」

 

 俺が話を主権を戻そうとすると久遠さんが挙手をした。

 

「初歩的な質問をいい? 貴女の言う”我々”とは貴女を含めた誰かなの?」

 

「YES! 異世界から呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するにあたって、数多とある”コミュニティ”に必ず属していただきます♪」

 

「嫌だね」

 

 黒ウサギの説明にほぼノータイムで拒否を示す十六夜。

 

「属していただきます! そして『ギフトゲーム』の勝者はゲームの“主催者(ホスト)”が提示した商品をゲットできると言うとってもシンプルな構造となっております」

 

「・・・・・・”主催者”って誰?」

 

 耀が挙手をして黒ウサギに問う。

 

「様々ですね。暇を持て余した修羅神仏が人を試すための試練と称して開催されるゲームもあれば、コミュニティの力を誇示するために独自開催するグループもございます。特徴として前者は自由参加が多いですが”主催者”が修羅神仏名だけあって凶悪かつ難解なものが多く、命の危険もあるでしょう。しかし、見返りは大きいです。”主催者”次第ですが、新たな”恩恵”を手にすることも夢ではありません。後者は参加のためにチップを用意する必要があります。参加者が敗退すればそれらは全て”主催者”のコミュニティに寄贈されるシステムです」

 

「後者はかなり俗物ね」

 

「質問、ゲームに参加するにはどうしたらいい?」

 

「コミュニティ同士のゲームを除けば、それぞれの期日内に登録していただければOK! 商店街でも商店が小規模のゲームを開催しているのでよかったら参加していってくださいな」

 

 その言葉を聞いて飛鳥がピクリと反応した。

 

「……つまりギフトゲームとはこの世界の法そのもの、と考えてもいいのかしら?」

 

お? と驚く黒ウサギ。

 

「ふふん? 中々鋭いですね。しかしそれは八割正解の二割間違いです。我々の世界でも強盗や窃盗は禁止ですし、金品による物々交換も存在します。ギフトを用いた犯罪などもってのほか! そんな不逞の輩は悉く処罰します―――が、しかし! ギフトゲームの本質は全くの逆!  一方の勝者だけがすべてを手にするシステムです。店頭に置かれている商品も、店側が提示したゲームをクリアすればただで手にすることも可能だということですね」

 

「そう。中々野蛮ね」

 

「ごもっとも。しかし”主催者”は全て自己責任でゲームを開催しております。つまり奪われるのが嫌な腰抜けは初めからゲームに参加しなければいいだけの話でございます」

 

 フッと一息つくと黒ウサギが指をパチリと鳴らす、すると空からカジノによくあるトランプゲームをするテーブルが一つ降ってきた。そして黒ウサギはいつの間にか持っていたトランプをシャッフルしつつ言った。

 

「話を聞いただけではわからないことも多いでしょう、なのでここで簡単なゲームをしませんか?  先ほども言いましたが、箱庭で生活するには必ずコミュニティに所属しなければなりません。皆様を黒ウサギの所属するコミュニティに入れてさしあげても構わないのですが、ギフトゲームに勝てないような人材では困るのです。ええ、まったく本当に困るのです、むしろお荷物、邪魔者、足手まといなのです」

 

 黒ウサギはカードをシャッフルするのをやめて、テーブルの上に一列にカードを広げ四人を挑発するようにニタニタと笑いながら煽る。

 

「俺たちを試そうってのか?」

 

 十六夜はにやりと笑い目を細めて黒ウサギを見る。だが飛鳥が勢いよく立ち上がる。

 

「ちょっと待ちなさい、私たちはまだ一言も―――」

 

「自信がないのでしたら、断ってくださっても構わないのですよ?」

 

 黒ウサギは飛鳥のセリフを遮るようにさらに煽る。そして頬に手を当てて余裕の表情。

 

「それで? ゲームのルールはどうすんの? そのカードを使うんだろ?」

 

「そうですね、ではこの52枚のカードの中から絵札を選んでください。ただしチャンスは一人につき一回、一枚までです」

 

 黒ウサギは先ほど一列に開いたカードを指差して宣言した。

 

「方法はどんなことをしてもいいの?」

 

「ルールに抵触しなければ、ちなみに黒ウサギは”審判権限(ジャッジマスター)”という特権を持っていますのでルール違反は無理ですよ。ウサギの目と耳は箱庭の中枢とつながっているのです」

 

「チップは? お前の言うギフトをかければいいのか?」

 

「今回皆さんは箱庭に来たばかりですので、チップは免除します。しいて言えばあなたがたのプライドをかけるといったところでしょうか?」

 

 黒ウサギの言葉と精一杯のドヤ顔にまた目を細めて睨みつけてへぇ、とつぶやく十六夜。そこで耀が挙手をする。

 

「私たちが勝った場合は?」

 

「そうですね、その場合は神仏の眷属であるこの黒ウサギが、何でも一つだけあなた方の言うことを聞きましょう」

 

 ウサ耳をピコピコと動かしながら両手を広げて言った。

 

「「何でも……か」」

 

 俺と逆廻さんは、ほぼ同時に同じことをつぶやいた。ただし逆廻さんの視線は黒ウサギさんの胸元にいっていた。その視線に気づいた黒ウサギさんは、両手で体を抱き隠して慌てて訂正をした。

 

「で、でも性的なことはダメですよ?」

 

「冗談だよ。で、どうする?」

 

 呆れたように逆廻さんはため息をつきながら言った。ただし女性陣からは冷ややかな目で見られていた。その冷ややかな目線には俺も含まれていたようだ、ひどい。

 

「どうもこうも」

 

「うん、やろうか」

 

「ギフトゲームがどんなものか知っておきたい。是が非でもやろう」

 

 四人とも了承の意を見せる。すると四人の目の前に一枚の古ぼけた茶色い紙が現れた。それを十六夜がつかみ取り内容に目を通す。

 

 こういうのを羊皮紙って言うんだっけか、初めて見たよ。

 

「それは?」

 

「これは”契約書類(ギアスロール)”です。いわばゲームに関する契約の書。ゲームのルールやクリア条件が書かれています」

 

『ギフトゲーム名”スカウティング”

 

 ・プレイヤー一覧 

 逆廻 十六夜

 久遠 飛鳥

 春日部 耀

 黒瓜 黒継 

 

 ・クリア条件 テーブルに並べられたカードの中から絵札のカードを選ぶ。

 

 ・引けるのはプレイヤー一人につき一回一枚まで。

 ・カードを引く時を除き、カードに触れてはならない。

 

 ・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなかった場合。

 

 宣誓、上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。 

                                 ”サウザンドアイズ”印』

 

「OK、だが始める前にそのカードを調べさせてもらうぜ?」

 

 黒瓜以外の三人は熱心に、あるいは真剣にカードのチェックや(おそらく)仕込みをしている。黒瓜は彼らがカードをチェックしている間に”契約書類”を見る。禁止事項は引くとき以外、カードに触れてはいけない。それだけだ、それ以外は何をやってもいいのだろうか、そのラインをある程度見極めるのもこのゲームの目的一つだ。しかしこの箱庭の世界では元いた世界での常識は加味されるのであろうか、それが気がかりだった。お世辞にも黒瓜の考え付いた手段は褒められたものではない。しかしこれからこの世界で生活するうえで、このギフトゲームというゲームは切り離せないものになるだろう。むしろここでそれを見極めるために黒ウサギはこのゲームを提案したのだろう。

 

 よし、と決意を固めるとほかのお三方の確認も終わったようだ。

 

「黒継、お前は調べなくていいのか?」

 

 まさか逆廻さんが、会って小一時間しかたってないのに俺の名前を呼び捨てにしたことに若干驚いた。

 

「あ、ああ、大丈夫だ。その代わり、と言っては何だが一番手で行かせてもらってもいいか?」

 

「俺はかまわないぜ。二人はどうだ」

 

 久遠さんと春日部さんからもお先にどうぞ、とジェスチャーをもらったので軽くうなずき、カードの並べられたテーブルの前に立ち一通り並べられたカードを眺める。

 

「ではゲーム開始でーす」

 

 黒ウサギはピシッとポーズを決めてゲーム開始を宣言する。

 

「改めて聞くが、あの”契約書類”に書かれていることがルールの全てなんだよな?」

 

「YES! その通りでございますよ」

 

「本当に、すべてなんだな?」

 

「は、はい」

 

 二重の最終確認を済ませて深呼吸をする。そしておもむろに右足を振りかぶって。

 

 

 フンッ! という掛け声とともにテーブルを思い切り()()()()()。ガゴンッ!  と鈍い音を立ててテーブルは回転しながら空高く舞い上がる。上に載っていたほとんどのカードが表向きになって、パラパラと黒瓜たち四人の前に散らばる。そしてその中からスペードのキングを引く。

 

「な……な、な」

 

「じゃあ私これ」

 

「私はこれ」

 

「んじゃ俺はこれ」

 

 黒ウサギが絶句している間に飛鳥はハートのキングを耀はスペードのクィーンをそして十六夜はクラブのキングをそれぞれ引いた。その直後テーブルが元あった場所に土煙を上げて落下した。

 

「ちょ、ちょっと待ってください。今のは……」

 

「ルール違反……か? 俺は何もルールに抵触していないぞ? ”契約書類”にはカードを表にしてはいけない。なんて記述はなかったしテーブルに触っちゃいけないって記述もなかった。それを踏まえて俺はあれがすべてだな? と聞いたんだ。それをあんたはその通りと肯定した、なら俺を糾弾するいわれはないと思うんだが?」

 

 黒瓜は真ん中に穴をあけて落下してきたテーブルに足を乗っけて、屁理屈と詭弁を総動員して黒ウサギの非を主張する。それはそうですが……と言葉を濁す黒ウサギのウサ耳がピコピコと動いた後、その耳をへにょりとたらし。

 

「箱庭の中枢から有効であると、判定が下されました……」

 

 と、とてもしょんぼりとしながら言ったのだった。

 

「やるわね貴方。でもおかげでこちらの考えていた手が無駄になったわ」

 

「……うんうん」

 

「ごめんちょ。でもギフトゲームに前の世界の常識は加味されないってことがわかったし、それでいいじゃない。あ、そうだ聞き忘れてたんだけど仮にギフトゲームでルールに抵触する行為を行った場合は、それを行ったプレイヤーだけが失格になるのかい? それとも参加プレイヤー全員?」

 

 半ば放心して呆れていた黒ウサギが、ハッと表情を戻して質問に答えてくれた。

 

「それはゲームの内容によって異なりますが、一般的にはルールに抵触した場合、その時点で参加者側の敗北となります」 

 

「そっか。てことは黒ウサギさんが審判をしている場合は、違反ギリギリを攻めるのはやめた方がよさそうだね。うん、了解」

 

「おい、黒ウサギ早速だが言うことを聞いてもらうぞ?」

 

 黒ウサギはビクリと跳ねるとまた両腕で体を隠した。

 

「う、だめですよ。性的なことは」

 

「まあ、それも魅力的ではあるんだが、俺の聞きたいことはただ一つ」

 

「な、なんですか?」

 

 十六夜は、少し間をおいてから何もかもを見下した視線で。

 

「この世界は……面白いか?」

 

 と口にした。その言葉の答えを俺たちは待った。すべてを捨ててまで来たこの箱庭の世界に、その代償に見合うだけの催しがあるのかが知りたかった。黒ウサギはにっこりと満面の笑みをもってその質問に応じた。

 

「YES。『ギフトゲーム』は人を超えた者たちだけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界よりも格段に面白いと、黒ウサギは保証します♪」

 

 そう、この世界は面白い。すなわち黒瓜が、今まで抑圧していじめっ子たちにただ一度しか振るわなかった力を、抑えることなく出すことができる世界なのだとこの時に確信した。

 

 

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