【因果一角】 ユニコーン 作:可能性の獣
□アルター王国 カルチェラタン 喫茶店
「いやーゴメンゴメン!でもほら、バーちゃんもノーちゃんも無事だったし、ね!」
四つのグラスのうち、二つの中身が減っていた。
バナージはそろそろピッチャーが来てくれないかと思ったが、店員はギリギリバナージ達のテーブルが見える位置から動かない。
ため息と共に背けていた視線をテーブルへ戻せば、隣にグゥを抱えたノヴァが座っている。
目から光が失せており、視線は正面でショートケーキをつつく女性に固定されていた。
バナージはそっと視線を明後日に戻した。
窓の外は雨上がりのいい空と、ついでに虹までかかっていた。
「……」
「バーちゃん、どうにかできる?」
やめてくれ、こっちに話を振らないでくれ。
既に剣呑な空気──ユニコーンを装備していないので感覚強化は発動していないが──が肌をひりつかせている。
どうにかしてやりたいバナージだが不用意に突っ込んでノヴァの顰蹙を購入したくはなかった。
よって、不本意ではあるが(一応)命の恩人に対してつっけんどんな態度をとることとなる。
「自分で何とかしてください。あとなんですバーちゃんって。年寄りみたいじゃないですか」
「じゃあバナちんなんてど──」
「怒りますよ、AR・I・CAさん」
いつの間にやら完食されたショートケーキは彼女のパーソナルカラーとよく似ていた。
AR・I・CAはドライフ皇国スタートのマスターであり、バナージとノヴァの窮地をあまりに強引な方法で解決した蒼い〈マジンギア〉の担い手である。
フィックからの試作機甲稼働試験、そして王国への配送依頼を受けた彼女はその途中で角持ちの〈マジンギア〉の様子を窺っていたノヴァを発見した。
そして何を思ったか彼女は姫君誘拐でバナージの救出を計った。
バナージは跳躍と滑空を続ける蒼い〈マジンギア〉の追跡することで〈ゴブリン・ストリート〉の包囲網を脱出し、どうにかカルチェラタンに辿り着いた。
到着する頃にはHPもMPも枯渇して干物になったバナージを助けてくれたので、彼としては──手段はともかくとして彼女に救われたのは事実であるし──それほど強い悪印象を覚えていない。
しかし同行者はご立腹だった。
誘拐前後についての発言をAR・I・CAが妙に避けているため、そこでノヴァの虎の尾を踏んでしまったのだろう、とバナージは考えていた。
アタリがついたところで雰囲気の悪さをどうこうできはしないのだが。
「ユニコーン、少し外に出るぞ」
「ちょっと、まだホットドッグ食べきれてないんだけど」
「……外の席で好きなだけ食べていいから」
結局、自分での解決は諦めることにした。
ユニコーンの強化された感覚を引きずっているせいか、周りの空気を鋭敏に感じ取ってしまっている。
正直、あまり長居していたくはない。
(分かっていたつもりだったけど、ニュータイプもニュータイプで辛いものなんだな)
バナージはもそもそとホットドッグを食べるユニコーンを連れ、全員分の会計と追加注文があった時は外の自分に声をかけるよう店員に言伝し、刺すような視線と恐れの感情から逃げ出すように退店した。
テーブルに残された二人は外まで出て行く二人を見送ってから、盛大にため息をついた。
「大丈夫だよ、安心して。バナージ君とユニちゃんはノーちゃんのジョブについては多分まだ分かってないと思う」
「あなたが口を閉じていれば、ですが」
「もちろんチャックするよ?秘密の一つや二つ、誰にだってあるもんだし。伏せた手札が多いに越したことはないからね!とはいえ、今回はそれに当てはまるか怪しいけど」
何が言いたいんですか、と睨むノヴァにそりゃあ当然でしょとばかりにAR・I・CAは胸を張る。
「名前の通り、それがいつまでも隠し通せるものじゃないってこと。ね、【
AR「フフフ……バナち──」
蕉「やめないか!」バシィ!
バナナは漢字で甘蕉と書くらしい。
ログインしたてのAR・I・CAさん。まだ△ないのでこの時期はフリーです。
原作で初ログイン時期が確定したらお墓を立ててください。
これから方々飛び回って当分皇国に自分からは近づかない(少なくとも現皇帝が崩御するまでは)と思われるバナージが初期は単なる生産系でしかない△との接点を作るのはまあまあ難しいので、ここで未来の【撃墜王】と出会っておくことで△勧誘の糸口を作る必要があったんですね(訳知り顔)
【
【喜劇王】の就職条件は他人と自分を偽り続け、尚も心から笑いたいと、自分の人生に喜びが訪れることを諦めなかったことを想定してました。
が、今のところジョブの中で何らかの固有の名前が入ってるのティターニア(妖精)とタルタロス(神)くらいしかありません。
そこに近代の人物ぶち込むのは無理筋と思ったのと、チャップリンじゃないルビを振ろうとすると解散した芸人が頭をよぎるのでお蔵入りとなりました。
正直語呂と通りがいいので使いたかったぜ、【