【書籍化】物語に一切関係ないタイプの強キャラに転生しました 作:音々
波乱万丈というか、もしくは原作のスタートが近づいているから世間も物騒になっていると言うべきなのか。
あるいは、【光王】や【十三階段】への不満を持つ者が増えているのか。
連れられて店の外に出た俺とルアンは、そこで複数人の武装した人間の仲間と思わしき人物等に取り囲まれる。
……その者達の共通点はなく、各々特徴のない簡素で実用的な武装で身を固めている。
当たり前だとは思う。
テロ行為は社会に己の存在を知らしめるためにそれぞれシンボル的なものを掲げるかもしれないが、しかし彼等はあくまで犯罪行為を働く者達である。
そして彼等の目的は間違いなくルアンが持っていた大金の入ったジュラルミンケース。
だとすると俺は完全に巻き込まれた人間なのだが、しかし彼等にそれを説明したところで聞き入れてくれるかどうか。
なんにしても、この状況は無駄口や反抗的な行動をする事なく彼等に従っていた方が良い。
彼等の目的はあくまでお金。
それを回収したらすぐに帰っていく事だろう――
「お前」
……
「おい、お前」
「あ、はいなんですか?」
いきなり話しかけられるとは思ってもみなかったので反応に遅れる。
顔を上げて話しかけてきた者――男だった――を見た俺は「はて?」と首を傾げる事となった。
何やら苛立たしげな表情をしている男、何やらどこかで見た事があるような……?
「お前、あの時の警備員か?」
警備員?
一瞬何を言っているのか分からず首を傾げたが、しかしすぐに「そう言えばそこそこ前にアルバイトで警備員やってた時があったな」と思い出す。
そして、それを辞める事となった原因まで記憶を辿ったところで、目の前の男が何なのかを悟った。
「もしかして、あの時の侵入者」
「ああ、そうだ」
「……」
なんという。
「……お前の所為で俺はアルバイトを辞める事となったんだが」
「そうか、俺もお前の所為で目的を達成――ん?」
男は俺の言葉を聞き、さっきの俺を真似するように首を傾げる。
「……お前、アルバイト?」
「そうだが」
「正社員ではなく?」
「正規雇用はされてなかったよ」
「……」
マジかよみたいな顔をされた。
「俺はアルバイトに負けたのか……」
「……いや、それより。というかまだ捕まってなかったのか」
素直な感想。
会社の上司には侵入者がいた事はちゃんと伝えたし、だから通報されたのだからとっくのとうに捕まっているのだと思っていた。
どうやらまだ捕まっていなかったらしい。
もしかすると何か大きな組織が後ろにいるのだろうか?
それこそ、レジスタンスみたいなものが……
「というより、早く解放してくれ。お金が目的なら俺達にはもう用はないだろ」
「う、む? ああ――そうだな、さっさとずらからないと面倒な連中に見つかっちまうからな」
という訳で、その場から解放されるのかと一瞬思った俺はやれやれと肩の力を抜きながらちらっと後ろの方を見た。
気持ち的には「さっさと家に帰ってベッドに潜り込みてー」って感じだった。
そもそもタナトスがジュラルミンケースを拾ってこなかったらこんな風にはならなかった訳だし、帰ったら説教だな。
彼女達は少し、一般常識がところどころ抜けている感じがするし――
「社会のゴミ共、【光王】様の敵。ここで消え去るが良い」
なんか、明らかにヤバそうな人がポップしたのですが。
具体的に言うとダブルソードで頭に羽根飾りを付けた蛮族スタイル。
ネットミームかあるいはアスキーアートにされてそうな格好してんな。
しかしそのダブルソードからは明らかに莫大な魔力が放たれているのを感じるし、恐らくそれらは魔剣。
……明らかにそれは【十三階段】からの刺客だし、何なら俺達をこの場で消し去ろうとする死神でもあるのだろう。
「う、撃て!」
一瞬惚けていた男達だったがすぐに我に返り、現れた敵に対して攻撃の指示を出す。
炎の弾丸が弾け、ライトに照らされた夜の街を俄かに明るくした。
恐らくその一撃一撃自体にはそこまで威力はないだろうが、それでもその弾幕は視界を遮り彼等に逃げる為の猶予を与えてくれる。
実際、気づいた時には俺達を取り囲んでいた者達はいなくなっていて、そしてそこには俺とルアン、そしてダブルソードな兄貴だけが残されていた。
「……」
「……」
「……社会のゴミ共」
え、俺達?
「ここで、粛清する」
なんか明らかに攻撃態勢に入っているのですけど、これって俺が相手しなくちゃいけない奴ですか?
……いけない奴ですね、はい。
「し……っ!」
「な、ぐ……っ」
ダブルソード――いや、二刀流というのは基本的に防御的な剣術である。
マンガやゲームでの超攻撃的なスタイルは創作物だからこそ許されているものだ。
まあ、この世界は創作物のそれなのだが――しかし、少なくとも目の前の男の剣術は極めて防御的であり、俺のデュランダルによる一刀をしっかりと防ぎきる。
ギン、と鋼同士がぶつかり合う音。
男は衝撃を流す様に自ら数歩背後に下がり、それから俺の方をじっと見つめてくる。
その瞳には何かしら確信が宿っていた。
「なる、ほど――騎士かお前」
頷き、それから男は魔剣の内右手に持っていた方を、捨てる。
代わりに左手に持っていた方の剣を両手で構え、上段に構えた。
一瞬、男の表情が無へとなり、そして。
「きぃいえええええええええええええええええええええええええっっっっ!」
奇声を発し、突っ込んでくる――!