【書籍化】物語に一切関係ないタイプの強キャラに転生しました 作:音々
「遠慮はいらん、敗者は殺せ」
「いや、確かに危ない奴だけど殺すとかはないだろ」
「一思いに殺れい!!!!」
「なんだこいつ」
なんだこいつ。
……当然、話も聞かずに話ができそうなやつを――いやまあ、ある意味話の通用しなさそうなやつではあるけれども、とは言え今の俺はなんだかんだで情報が欲しい。
なので俺は一度ルアンには帰ってもらい、そして再びラーメン屋に戻るのだった。
「大丈夫なのか、そいつ?」
最後までルアンには心配されていた。
やはり優しい大人なのだろうし、だからこういう事には付き合わせるわけにはいかないだろう。
兎に角、俺と一緒にラーメン屋に入った彼は無言で食券を━━おい、何頼んでやがる?
「いや、ここで話をするならば、ラーメンは必須であろうよ。店内の一部を借りるのにお冷やだけで済ます訳にはいかぬであろう?」
それはそうだが、切り替え早いなこいつ。
ともあれ俺も仕方がないのでラーメン(昔ながらの)を購入。
店員にそれを渡して席に着く。
「で、お前は誰なんだ?」
「我の名前か? 我はアーサー」
なんか真っ当な名前すぎて偽名っぽい。
しかし名前は重要ではないし、むしろ彼から引き出す情報の方が大切だ。
ここで水を差しても話にならない。
「やっぱり、【十三階段】の関係者なんだよな?」
「いや、我の所属は【十三楽土】だが、似た名前の組織があるのだな」
「……?」
「……?」
お互い、無言で視線を合わせる。
「……いや、その【十三楽土】は【十三階段】だと思うのだが」
「……そうなのか? 世の中分からない事がたくさんあるのだな」
「……てっきり魔剣を使っているのだから、それこそ【十三階段】の幹部なのかと」
「……いや、我のその魔剣? はただの自衛用の武器だぞ」
「んなわけあるか」
しかし、嘘を吐いている感じではなかったため、俺は痛み始めた頭を押さえたい気分に駆られつつ、質問を続ける。
「その魔剣はどこに手に入れたんだ?」
「フリマアプリで売ってたな、四捨五入して6万円だった。クレカで買ったぞ」
「……」
一瞬こいつの頭を引っ叩いてやろうかとも思ったが、しかしシリアスに考えるのならば危険な代物を普通に流通させている奴がいる、という事だろうか。
それはそれで恐ろしい事だし、間違いなく闇の社会の活動の一端を垣間見ている訳だが。
「で、その【光王】様ってのは、どこで知った?」
「コテハンだ」
「……こてはん?」
「匿名掲示板の有名人だな。このネオンシティの未来の事を真剣に考えているらしくて、時々『猿でもわかる! ネオンシティ』みたいなスレを立てていたりする。そしてとても親切に相談に乗ってくれるからみんなから【光王】様と親しみを込めて呼ばれているな」
なるほど。
……無関係な一般通行人だったかこいつ。
どう考えてもあの【光王】がネットの匿名掲示板に書き込んでいるとは思えないし、いわゆる『騙り』かたまたまだろう。
いやあ、こんな偶然もあるもんだなぁ。
一気に脱力した。
肩を落とすとそのタイミングでラーメンが運ばれてくる。
「ずるずるずる」
「なんかなー」
「ずる、そういえば先ほどの言葉で思った事なのだが」
「なに?」
「その、【十三階段】というものがなんなのかは分からないが、少なくとも幹部になるのは我みたいな馬鹿で粗雑な奴ではなく、普通にスパダリ系の人間だと思うぞ?」
こいつがいてもおかしくないと思えるほど原作の幹部どもは色々あれなのが一番問題だった。