【書籍化】物語に一切関係ないタイプの強キャラに転生しました 作:音々
子供にいろいろなものをねだられて困るような経験をした事のない母親のフラーだったからという訳でもなく、純粋に息子のケビンから求められたのがあまりにも子供らしくないしろものだったかららしい。
「受験勉強のために栄養ドリンク━━『エリクサー』が欲しいって言うのよね」
「それはなんて言うか」
まだそのケビンくん━━偶然にも主人公のデフォルトネームと同じ名前だ━━が初等部の学校に通うような年齢なのに、受験のための勉強のお供として栄養ドリンクを欲しがると言うのは、この世界が異世界である事を加味してもあまり健康的とはいえなかった。
しかも欲しいものというのは、つい最近『ラクカイ』で見つけた『エリクサー』。
ていうか『エリクサー』なのに栄養ドリンクとして扱われているのかと思ったが、しかしよくよく考えてみるとこの世界のそれって魔法薬みたいなものなのだろうか……?
「なんか友達が愛飲しているとかで勧められたみたいなのよね」
「いやでも、非合法でないだけであって合法とは言い難い代物なのかも……?」
「ええ、そうね。魔法薬関連の規制はちょくちょく変更があるらしくて、だからそれが今は合法でも将来的に禁止される可能性もあるし」
「それ以上に、子供がわざわざ栄養ドリンクを使って勉強するのはあまり健康的とは言えないよなぁ」
もしくは栄養ドリンクと一言で言ってもそこまで強力なものではなく、滋養効果のある素材とかカフェインが入っているだけのジュースという可能性もある。
何にせよ、親の彼女にしてみれば得体の知れないものを子供に飲ませるというのはあまり良い気分がしないだろう。
「それなら」と、俺は一つ提案してみる事にする。「俺がそれ、試してみようか」
「ルクス君が?」
「効き方が年齢によって異なるのはあるだろうけど、だけど飲用制限みたいなのはないみたいだったし。俺がまず試してみて、その後に買ってあげるかどうか決めるのはどうだ?」
「うーん……」
と、いう事があったのがつい先週の話。
俺はバリバリ働きながらノルマを猛スピードでこなし、そしてその合間にフラーへと『エリクサー』の効果について感想を述べる事にする。
「やばいわ」
「う、うん」
「凄い効き目だった」
「そ、それはルクス君の働き方を見ればわかるけれども……だ、大丈夫なの?」
「恐ろしいほど疲れが取れる」
俺はぐっと力こぶを作る仕草をし、答える。
「飲むとすぐに疲れがポンと取れる。眼球疲労も嘘のようになくなってパソコンを長時間見続けても全く目がしょぼしょぼしないし、なんだか肩の凝りも無くなったような感じ」
「それは流石にプラセボ効果なのでは……?」
「思い込みなのかもしれないけど、少なくとも俺には効いてると実感を感じているし、とにかくやばい」
と、いう訳でと俺は結論を述べる。
「だからまあ、若人には必要のないやつだな、これは間違いなく限界社会人が飲むもので、未来ある若者はこんなものに頼らず頑張って欲しい」
「そ、そうね━━そうするわ。正直、あなたの最近の働きようを見てて、正直社畜ロボットみたいで怖かったもの」
「ははは! 社畜なのは間違いない!」
ともあれ。
その後、俺は勿体無いので購入した分の『エリクサー』は最後まで使い切り。
そして、その後に地獄が待っていた。
「あんなに頑張れるのが分かったんだ、これぐらいいけるだろ?」
「あい……」
残されたのは、栄養ドリンクによってブーストされた俺が消化出来る仕事量。
なんかそれが仕事のデフォルトとなり、アホみたいな仕事の量を振られるようになってしまった。
「……『エリクサー』、定期購入するか?」
「あ、あはは……」