【書籍化】物語に一切関係ないタイプの強キャラに転生しました   作:音々

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交差する運命

 アルバイトを辞めさせられてからもう既に何週間も経過しているので、流石にそろそろ新しいアルバイトに応募をしてみようかと思っていたところだった。

 

「なあ。短期のアルバイトなんだけど、お金に困ってないか?」

「……いや、お金は困ってるけど」

「日給10万だけど、やるか?」

「やります」

 

 いや、よくよく考えると日給10万って明らかに怪しいだろと思ったが、気づいた時には俺は真っ黒なフード付きのコートを着、そして顔には真っ白な仮面を付けられていた。

 

「いや、おい待てやラムダこの野郎」

「なんだ?」

「なんで俺、お前の仕事を手伝う事になってるんだ?」

「アルバイトだが」

「……普通に考えなくても、悪事の手伝いはしないぞ。何なら今からお前を然るべき場所に連れて行くぞ?」

 

 低い声で脅す様に言うと、俺にメールで仕事の情報を渡してきた男――ラムダは慌てたように手を振って見せた。

 

「い、いやいや! 確かに今回の仕事の依頼主は【十三階段】だけど、仕事内容はあくまで失せものの回収だからな?」

「しかしその失せもので悪事を働かないとは限らないだろ」

「お前なー、以前も言ったけど別に【十三階段】は悪徳組織じゃないんだぞ? いやまあ、俺もただの下っ端だから、上層部が悪い事に手を染めている可能性は否定出来ないけど」

「……本当にその、失せものを回収するだけなんだよな?」

「おう、お前は付いてきてくれるだけで良い。簡単な仕事だろ?」

 

 いや、むしろそれだけの仕事なのに10万をポンとくれるのは怪しい限りなんだが。

 そう思いながら俺達は車に乗って移動し、そしてついた場所を見て流石に文句を言いたくなってしまった。

 

「俺達は漬物を回収しにきたのか?」

「い、いやいや絶対漬物じゃないのは確かだ! ――いやでも、俺も実は回収するものの見た目は知らないんだ」

「じゃあ、何を回収しに来たんだよ」

「企業秘密――って言いたいところだが、特別に教える。このレーダーに反応しているものを回収して来いとの事だ」

「……なるほど?」

「まあ、兎に角俺が行って怪しいものはないか聞いて来るから、お前は外で待機な? 何かあったら声を掛けるから」

 

 そう言ってラムダは堂々とした足取りで店へと歩いていく。

 そして俺はそのまま待っているのも何なので、もし何かあった時の為に自らの気配を『切断』する事により、他人から俺が「ルクス・ライト」である事が分からないようにする。

 もし仮にこんな怪しい事をしているのを知っている人に見られたら大惨事だ。

 まあ、そんな事はないだろうけど――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ズゥン……

 

 

 

「……ん?」

 

 と。

 そこで。

 

 店の入り口から吐き出されるように、ラムダが吹っ飛んだのが見えた。

 ――はい?

 

「貴様のような奴などに渡すモノなど一切ないわ!!!!」

 

 と、そのような怒号と共に現れたのは白髪の少女だったが、しかしその手に握られていたのは――純白の、剣。

 なんか、格好良いな。

 魂が求めているというか、運命的な何かを感じる。

 しかし、何やらその少女はそのままラムダに止めを刺そうとしていたので俺は慌てて間に割って入り「少し、待とうか」と必死に宥める事にした。

 

「……っ」

「君がこの男にどのような事をされたかはあずかり知らぬ事ではあるが。それでもその剣は人を傷つける為のものか?」

「き、貴様――何者だ……!」

「名乗るほどの者ではない。ただ、この店にあるものを回収しに来たこの男、その付き添いでしかないさ」

 

 そう言ってとりあえずラムダを抱えてこの場からひとまず退散しようとした、その時だった。

 

 

 バシ、バシっ!

 

「……」

「て、てめえっ!」

「危ないな」

 

 と、()()()()()()()()()()()()()()()()

 防いだは良いが、流石にビビった。

 な、何でここにネイン君がいらっしゃるんすかね……?

 流石の俺でもここまで来ると明らかにヤバい状況に首を突っ込んでしまったのではないかと思い始めるが、しかしラムダ本人も下っ端だから事情を知らない可能性があるし。

 とりあえずここは、説得のフェーズ。

 

「君達に危害を加えるつもりはない――という言葉に意味はないだろう。少なくともこの男は君達に何らかの不利益を与えようとし、そして君達に武力行使を選択させる余地を与えた。その時点で俺の言葉など君達の前では正しく騒音でしかないのかもしれない」

「……」

「ただ、しかし。それでも俺は君達に武器を向けるつもりはない――ただ、そうだな。この店の『あるもの』はいただきたい。それはこの男が欲しているものだからね」

「く、ぅ……」

 

 冷や汗を流した白髪の少女は、しかし俺に向かって叫ぶ。

 

「貴様などのような者達に、私はもう、屈する事はない!」

「……」

「私にはもう……愛する者がいるのだからっ!」

「だがしかし、それが今何の関係がある?」

 

 あくまで俺はその「失せもの」を回収しに来ただけなのだけど。

 そして少女は俺の言葉で鼻白む。

 どうやら彼女の琴線に触れたようだった。

 相手の手に剣が握られているのは間違いないので、俺は慌てて「まあ、待て」と命乞いする事にする。

 

「君にどのような意思があるにせよ。俺は君達を傷つけるような事はしたくない。ただ君がその剣から手を放すだけで、この場は極めて穏便にすべてが収まる事だろう」

「……そう、だな。私がどれだけ『これ』を振るったところで意味はないだろう」

 

 お、これは説得ロール成功かな?

 

「ネイン、私を使え」

「は?」

「私の力、一時だがお前に貸す。共にこいつを倒すぞ」

「……ああ!」

 

 二人の少年少女が手を取り、そして極光が迸る。

 そして――後には純白の大剣を握りしめる裏ボスの姿がそこにあった。

 

「行くぞ、化け物……ここでお前を、倒す!」

 

 マジかよこれは流石に死ぬが?

 

「……壁で『隔てる』」

 

 流石に目の前の化け物とやり合うのは怖過ぎたので、ここは魔法で彼との間を無限に『切断』する事により、物理的にこの場所へと辿り着けないようにする。

 それからようやっと意識を取り戻したらしいラムダに「おい、逃げるぞ」と声を掛けた俺は、ふとそこで店の入り口からこっそりとこちらを覗く少年がいるのに気づく。

 やっべえ、これってもしかして友達を攻撃してきたヤベー奴みたいに思われたか?

 しかし、なんか雰囲気が誰かに似ている……ああ、そうか主人公に似ているな。

 髪色といい髪型といい、とはいえ裏ボスのネインと一緒にいる筈がないし、他人の空似であろう。

 とはいえ、思わず呟いてしまう。

 

「君は……彼によく似ているな」

 

 そこまで言ったところでラムダに「おい、一旦逃げよう」と裾を引っ張られる。

 俺もこの場に居続けると鬼に金棒な裏ボスが突貫して来るので素直に彼に従ってこの場から立ち去る事にするのだった。

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