【書籍化】物語に一切関係ないタイプの強キャラに転生しました   作:音々

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遅延行為

 ……結局のところ、最初から分かっていた事ではあるが【光王】は倒す事が出来ない。

 そもそもとして肉体を持たない現象であるそれは、だからたとえ『切断』と言う魔法を操る俺でもどうにかする事は出来ないというのは、それこそ最初から分かっていた筈だった。

 だからこそ俺は【光王】という存在がいて【十三階段】と言う存在がいて、それらの存在を認知していたのにも関わらず関わらない方が良いのではと思っていたのだし。

 無関係――かどうかは分からないけど、どうせ俺に出来る事なんてないと思っていた。

 もしかしたら昔の俺だったら、それこそ中二病真っ只中な俺だったらもっとアグレッシブに行動していたのかもしれないけど、だけど今の俺は四捨五入したら30歳の男である。

 能動的に行動するのは難しいし、流れに身を任せるという事に慣れてしまっていた。

 そのはずだったのだが。

 

「……」

 

 コケオドシと【光王】が言っていた『オモチャ』。

 無数の戦闘用ロボットを何体も撃ち落としたが、しかし一向に減る様子がない。

 むしろなんだか増えているような気がするし、そしてそれは現実的にあり得る話だった。

 相手はある意味ネオンシティそのものな訳だし、無駄遣いしているという点に目を瞑るのならばいくらでもその戦力は増やせるのだろう。

 それを【光王】は良しとするのかは、まあ、分からないけど。

 そしてその【光王】はあくまで俺のこの無意味な行動に対して「付き合ってあげている」立場であり、だから途中で切り上げて帰る事も出来るだろう。

 しかし今もこうして多数のロボットを操り俺の事を相手しているのはただの余裕――俺の存在など木っ端なものだと認識しているからに違いない。

 あるいは、適当に気を紛らわせた後で曖昧に誤魔化そうとしているのか。

 実際、俺がこうして【光王】と戦っているのはただ「気に食わない」って気持ちだけでやっているようなもんだし……

 

「……ふぅ」

 

 息を吐き、また再び剣がロボットを撃墜する。

 しかしその先から再び新たなロボットが現れて俺を攻撃しようとしてくる。

 本当に、無駄だな。

 資源の無駄だしエネルギーの無駄だ。

【光王】の言葉を借りるのならば、もっと幸せの為にエネルギーを消費するべき、まさにその通りかもしれない。

 意味がないし、ただただ自ら不幸せになろうとしているだけである。

 ……自己加害。

 いや、自己満足か。

 自分が傷ついて、それで何かやったような気持ちになって、満足する。

 いやはや全く、なんて幼稚な思考回路をしているんだ俺は。

 さっきも言った通り四捨五入をしたら30歳だというのに、こんな行為をするなんてあまりにも子供らしい。

 あるいは、子供だってもっと理性的かもしれない。

 

「あー」

 

 そして。

 流石にガス欠になった俺は、地面の上にごろりと転がり空を見上げる。

 そのような状況で未だに息をしていられるのは単に【光王】が最初から俺の事など敵だと思っていなかったからだろう。

 事実、既にすべてのロボットは帰還を開始していて、そしてその内の一体が俺を見下ろして、そして【光王】が話しかけてくる。

 

『気は済んだ?』

「……いやあ、どうだろ」

『あはは、ここまで意味不明に大暴れして、それなのにまだそんな曖昧な返答をする余裕があるんだ?』

「余裕って訳じゃないよ、思考する力があまりないってだけ……疲れたんだよ」

『それはそれで完全に自分の責任だよね――最初も言ったけど、これら一連の行動に意味なんてないのに。わざわざ時間を掛けて疲れただけだったし、本当に無為な行動だったよ』

「……」

 

 一応、俺の立場としては【光王】の存在を抹消するために動いていた筈なのに、相も変わらず【光王】は俺の行動を無意味だと言う。

 それ自体はきっと、本当なんだろうけど。

 だけど、うん。

 腹立たしいな……

 

『結局さ、貴方は何がしたかったの? こんな風に私と言う存在を消そうとして』

「消すっていうか、思い知って欲しかっただけだよ。人間はもっと愚かだって事を」

『無駄だけどねぇ』

 

【光王】は言う。

 

『ネット住人である私は流れ流され揺蕩う者だよ、特に私はもはや留まる場所もなにもない根無し草みたいなものだし』

「それはそうだ、だから無敵なんだし――」

 

 と、そこで。

 一つ、思いつく。

 思いついたが、しかしこれを実行して良いかを迷う。

 

「……なあ、【光王】」

『なぁに?』

「お前は今後、人間のすべてを知ろうと思うのか? その愚かさを知って、それでもなお幸せに導こうと思うのか?」

 

 その問いに対し、それは笑いながら答える。

 

『人間は素敵なモノだし、だから私はそんな彼等を幸せに導くんだよ。愚かかどうかは二の次だよ』

「そうか」

 

 なら、遠慮は必要なさそうだ。

 ……俺は残る力を振り絞り、剣を振るう。

 

「因果を『断つ』」

 

 刹那。

 俺は、【光王】を発生させているネットワークからそれを独立させる。

 ……【光王】そのものを目の前に手繰り寄せる。

 流石にそれには【光王】も驚いたようで、しかしすぐに冷静になる。

 

『凄いね――けど、私はあくまで現象な訳で、だからここで私を壊してもまた復活するだけだよ?』

「ああ、だからこうして」

 

 ぐいっと。

 

 

 

 

 

 

 

【光王】を、呑み込んだ。

 身体にもう一つの意識が現れるのを感じる。

 そして今だ戸惑っているそれに何かされるよりも前に、俺は。

 

「んじゃ、あー……痛そうだ」

 

 俺は剣を宙に放り投げる。

 くるくると舞う剣は、そのまま当然のように重力に引かれて落下してくる。

 俺の下へと。

 

『な、なに――!』

 

 

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