【書籍化】物語に一切関係ないタイプの強キャラに転生しました 作:音々
少しだけ『ネオンライト』の世界について語ろう。
この世界では現在悪の組織━━【十三階段】と呼ばれる組織が暗躍していた。
彼らは超常的な力である魔法を研究し、そして悪用している。
そんな彼等は現状、世界で最も経済的にも権力的にも重要な都市であるネオンシティを手中にし、そして今もなおその根を世界中に伸ばそうとしていた。
まさしく物語の世界に登場する悪の組織だ。
そしてそんな彼等がわざわざネオンシティを守護していた騎士の血族を衰退させ、歴史の中から抹消させたのにはそれなりの理由がある。
騎士の血族には代々、いわゆる家系とも呼べる魔法が伝わっている。
聖剣魔法。
名前の通り、聖剣を操る魔法だ。
ただの剣に強力な属性を付与したり何もないところからエネルギーの剣を作り出したりなどその形は様々だが、なんにせよ強力なのは間違いない。
そんな彼等は皆正義を胸にネオンシティを守護してきた。
だからこそ、【十三階段】にとっては邪魔な存在であり、ゆえに消す事にした。
子孫の繁栄を阻止し、没落させ、血脈を物理的に断つ。
それこそ、事故に見せかけたりして。
物語の主人公であるケビンはその母を組織の手によって亡くし、原作スタート時には闇堕ちみたいな事になっていたが、それはさておき。
現状、このネオンシティの暴力的な存在はほとんど組織が握っていると考えてもらって良い。
しかしながら、ゲームのクリア後に登場するいわゆる裏ボス的存在はみな、組織とは全く関係を持っていなかった。
一応3人いる裏ボスのうち一人は次作の伏線的存在だったため、組織と完全に関係がなかったと言えば嘘になってしまうかもだが、残り二人は完全に無関係である。
そのうちの一人は、倒すと仲間に出来るキャラだった。
そしてもう一人は、倒すと最強装備をドロップするという装備コンプリートの難関として立ち塞がった。
「なあ、ルクスさんさぁ」
……そんな裏ボスもまた原作スタート前には相応の年齢であるのはそりゃそうなのだが、目の前にいる子供が将来的に主人公らをワンパンしてくるとは到底思えなかった。
少年の名前はネイン。
なんか騎士の血族ではない浮浪児なのに何故か聖剣魔法を扱える、存在自体がバグみたいな存在だ。
いやまあ、聖剣魔法が使えるという事は逆説的にこの少年には騎士の血が流れているという事だろうが、何にしてもそんなとんでも存在がただの寂れた公園にポップしたりするのは完全にバグを疑ってしまう。
実際、原作でも彼は出現条件を満たしても最後はレアポップして登場してくれるのを祈る必要があった。
こんな最後に運要素を混ぜてくるなよと思ったが、まあ、やり込み要素なんてそんなものだろう。
「ルクスさんって、なんでそんな強いんだ?」
そんな風に尋ねてくるネイン少年10歳の鋭い回し蹴りを受け止める。
彼の聖剣魔法は自己強化系。
原作ではその一発一発が必殺級で常に回避か無敵を要求してくるクソ具合だったが、今のところ体はまだ子供なので威力はそこそこ。
俺でも受け止められている。
「今まで俺とタメ張れる奴なんていなかったからよぉ、正直驚きだぜ」
「まあ、ネイン君が相当な実力者なのは知っているよ」
「簡単に受け止めながらいうセリフじゃ━━ねぇ!」
たん、と空中に飛び上がり。
そして何もない『空間』を蹴って加速した彼の刺突の如きキック。
普通に2段ジャンプするな、ゲームキャラか?
ゲームのキャラだったわ。
紙一重でかわし、その足を掴み遠くに放る。
対し彼は器用に猫のように宙で体勢を整え、着地する。
「はー、すげーな。俺もルクスさんと同じ歳になったら同じようになれるかな」
「余裕でなれるだろうよ。俺は順当に歳を重ねただけだし、天才の君なら簡単に俺を超えられる」
「嫌味にしか聞こえない言葉なのに嫌らしさを感じないのは流石だぜ、ったく」
ぐっと伸びをし、それからちらりと公園の外に視線を向ける。
「どうした?」
「いんや、なんでも? 無粋な奴だけど無粋な事してくるほど無粋じゃないんだなって」
「……?」
「ま、そこらへんはある意味ホッとするけどな」
俺の反応を見、少しだけ面白そうな表情をする。
それからベンチの上にあったペットボトルを手に取り、一息に中身を飲み干した彼は「ゴミ捨ててくる」と公園の外へと駆けていく。
「……いや、ゴミ箱は公園にあるが」
とはいえ、その時には既に彼の姿は見えなくなっていたが。
◆
その男はただ、ルクスという男の情報を探る為だけにその場所に来たのだ。
シゼンを倒した騎士の末裔。
その実力を探るために放たれた男。
しかしそこで目撃したのは、それこそ物語で語られるべき超常の絶技だった。
少年はまるで当然のように空間を蹴り、風━━いや。
烈風の如き勢いで動き回り、そしてその身体を凶器と化し必殺の暴力を振るう。
恐らく、その少年はたった一人で組織に仇なす事が可能で、かつそうなれば致命的なダメージを与えられる事だろう。
それほどの危険人物の術、を、
まるで児戯のように手玉に取る男。
烈風を涼風のように受け止めて、受け流し、はたき落とす。
信じられない光景だった。
目の前で起きている出来事はまさしく、神話として語られるべき事象。
問題なのは、それらが下手したら組織に対して向けられる可能性があるということであり。
だからこそ、この情報は持ち帰らなくては。
ただちにあれらを全勢力を以て駆逐すべきだ。
だから━━
「どこいくんだ、てめえ」
「が、ひゅ……ッ」
男の意識は、そこで途切れた。